拳を振り上げて襲い来る吸血カメレオン。これに対して受けて立つのはXライダー。
必殺の吸血舌はすでに切り落とし、一番の武器を失った怪人はXライダーにとって
さほど組しがたい敵ではない。怪人のパンチ攻撃をブロックすると、がら空きの
土手っ腹に一撃を加える。
「とうっ!」
「ぐうっ!!」
悶絶して動きの止まったカメレオン。Xライダーはこの機を逃すまいとすかさず懐
へと入り込み、怪人とがっぷり組み合うとそのまま自ら背中から倒れ込み、巴投げ
のような体勢のまま猛回転する。必殺の荒技「真空地獄車」の序曲となる連続回転が
吸血カメレオンを痛めつける。
「受けてみろっ!真空っ、地獄車!!」
怪人もろとも跳躍し、そこからの急降下でさらにダメージを与えた後、大きく投げ
飛ばした敵にとどめのXキックを食らわせれば技は完成する。だが、Xライダーが
必殺の投げ技で吸血カメレオンを空中へと投げ飛ばしたその直後、Xキックを怪人に
放とうと跳躍したXライダーの眼前に突如として銀色のマントがはためくと、何者
かが跳び蹴りを放ってこの必殺の一撃を撃墜してしまった。
「うあっ!」
謎の敵のキックが直撃したXライダーは空中で姿勢を崩してしまった。しかし
落下の直前で受け身を取り、素早く回転していったん謎の敵との間合いを開く。
そして、素早く立ち上がったXライダーは敵の正体を知った。銀色のマントを翻し
復讐に燃える赤い仮面の男、彼の名はアポロガイスト。
「ヨロイ元帥の計画を後押ししてやるつもりはないが、貴様が現れたのなら話は
別だ・・・我らが軍団の怨み、今こそはらす!!」
かつてXライダーが仲間達と共に壊滅させた、呪博士率いる支部組織。キングダーク
さえも破壊されてしまったことで、一人生き残ったアポロガイストは少女達に対して
激しい怒りの炎を燃やしていた。
「あのなんとか博士の仲間やったか!」
「貴様達のおかげで生き残ったのは俺とこの一体の改造人間だけだ、Xライダー!
我らが怨念の化身、出でよ!コウモリフランケン!!」
アポロガイストがマントを翻し、アポロショットで指し示した先に立つ怪しい影。
影の主たる怪人は翼を不気味にはためかせ、そこから跳躍と共に羽ばたくと背中の
大砲をXライダーめがけてぶっ放す。
「Xライダー。我が軍団最後の刺客、コウモリフランケンを倒せるか!」
GOD機関の怨みを一身に背負って生まれた怪人、コウモリフランケン。はためく
翼は蝙蝠の、そしてその顔はまさにフランケンシュタインの怪物そのままの顔立ちを
しており、名は体を表すの例え通りの容貌を持つ怪人である。
「Xライダー、俺はお前を殺すためだけに生まれたのだ。ここで死んで貰う!」
空中からの砲撃を止めたかと思うと、今度はいきなり急降下してきてキックを放つ。
この一撃をすんでの所でかわしたXライダーに対して、吸血カメレオンもどうにか
復調したか戦列に復帰する。コウモリフランケンと吸血カメレオン、二大怪人との
変則タッグマッチを強いられたXライダーはこの難敵にどう立ち向かうのか。
今日の分は以上です。続きはまた明日。
一方、カメレオンによって操られた少女達を解放するためにれいなと共に集団の
なかに躍り込んだV3だったが、一種の催眠状態にある少女達に自身の意識などは
なく、カメレオンに命じられるままに牙を剥き、二人に食いつかんと襲ってくる。
『ゼーティマー、ゼーティマー・・・』
「ちっくしょー、おいら達のことわかんないのかよ!」
群がる少女達にまとわりつかれ、手出しの出来ないV3とれいな。と、意を決した
れいなが手近な少女のみぞおちに一撃を食らわして昏倒させる。
「仕方ない、痛い目みないと判らんっちゃろうね・・・うりゃ!」
的確な力加減とコントロールで当て身を入れていくれいな。しかし、V3〜真里に
してみればこの突飛すぎる行動はとうてい理解できる物ではない。
「ちょっと!何やってんだよ!!」
「しょうがないでしょ、このコ達のためですって・・・てやっ!!」
れいなにみぞおちを強打された少年仮面ライダー隊の少女達はゆっくりと地面に
崩れ落ちていく。生身の人間であるれいなが殴ればさすがに命の危険はあるまい。
やり方が手荒いのはこの際仕方ない、V3はそう己を無理矢理納得させた。そうこう
しているうちに、れいなは妙に慣れた手つきで全員を戦闘不能にすることが出来た。
敵に気を失った相手を操るだけの能力は無いと見たV3とれいなは、Xライダーに
加勢するべく、ゼティマの改造人間達の元へと駆けていく。
同じ頃、中澤家を訪ねていたミカは玄関先で立ちつくしていた。チャイムを
押す、ただそれだけのことが出来ない。真里に会わなければならない。会って
今の気持ちを伝えなければならない。だが会えばきっと言えなくなる。そんな
葛藤のただ中で、彼女は踏み出すべき一歩を踏み出せないでいたのだ。と、
そんな小さな影を認めた一人の女性の姿があった。彼女は玄関先に立っている
ミカの元に歩み寄ると、思い詰めたような表情でドアの前に立つミカに声を
かけた。
「誰やろ思たら・・・どうしたの?」
「あ、中澤サン」
その女性−中澤裕子はドアを開けると、そのままミカを部屋の中へと招き入れた。
そして裕子はミカをリビングへと通すと、自分はキッチンへと向かいコーヒーの
準備を始める。
「みんなとは合流せえへんかったの?」
「合流・・・ですか?」
裕子の言葉に思い当たらないといった表情を浮かべるミカ。彼女の言葉に
戦いのことを知らないと察した裕子は、今現在起きている戦いはもう他の
少女達に任せた方が良いかもしれないと思い、早々に話題を切り上げる。
「ん?あぁ・・・何でもない」
そう言うと裕子はコーヒーをカップに注ぐ。香ばしい香りを漂わせながら細く
立ち上る湯気。2つのカップをトレイに乗せると裕子はリビングにいるミカの
ちょうど正面に位置する形で座る。
「ずいぶん思い詰めたような顔してたけど、何かあったん?」
「実は、矢口サンにどうしても伝えなきゃいけないことがあったんです」
「そっか。もしあたしで良いなら話聞くけど?」
裕子に対する敬意は他の少女達と同様にミカも持ち合わせている。今の自分の
気持ちを伝えなくてはならないという意味では真里と同じくらい大事な存在
である。ミカは口を開くと裕子に対して思いの丈を伝える。自分の思いのすべて
を伝えた彼女は唇をかみしめてうつむいていた。この時点で、まだ彼女は自分の
選択に結論を出すことが出来ていなかったのだ。謎のオーパーツの正体を解明
することで、この戦いの終わりが見えるかも知れない。しかし、今まさに日本を
襲う危機を無視して渡米することは出来ない。