「ヒュヒュヒュヒュ〜。小娘め、俺の舌を喰らえ!」
不気味に裂けた口から長い舌が延び、あっという間にれいなの首に巻き付く。少女達
に突然襲われたこともあってか、れいなの手元にはファイズギアはない。怪人の舌の力
は強烈で、締め上げるばかりかその巻き取りの力も相当なものだ。絡め取られたれいなは
なすすべもなく、自らの意志とは無関係に吸血カメレオンの方へと歩まされてしまう。
「くっ・・・」
「さぞや苦しかろう・・・だが俺の舌に絡め取られたが最後、ただでは済まん。
完全に自由を奪ったところで、死ぬまで生き血をすすり上げてやるわい」
徐々に迫る怪人の不気味な顔。両者の距離は吸血カメレオンの舌が不気味に蠢く毎に
狭まっていき、れいなの身体は怪人のそばへとたぐり寄せられていく。
「ちくしょう、離せっ!」
「バカめが、放せと言われて放すヤツがあるか」
あがくれいなの力も生身の故か怪人には及ばず、とうとうその身体はまさにカメレオン
のすぐそばまでたぐり寄せられた。手を伸ばせば容易にその身体をつかむ事が出来る
くらいの至近距離だ。遂に万事休すか。
吸血カメレオンの両腕がれいなの肩をガッチリつかむ。ピクピクとまるで別の生き物
のように動く舌先が首筋へと延び、弄ぶようにはい回る。
「小娘の血、いただくぞ・・・」
吸血カメレオンの不気味な笑みと共に、舌先は動脈を探り当てて肌に強く押しつけられる。
このままさらに力を込めれば皮膚に突き刺さって動脈へと至り、れいなの血は怪人の言葉
どおり彼女が命を落とすまで吸い尽くされてしまうのだ。と、その時だ。
「待てぇっ!!」
どこからともなく響くのは、悪を許さぬ正義の戦士の声。カメレオンの巨大な目が声の
主を捜して不気味にぎょろぎょろと動き回ると、すぐにその姿を倉庫の屋根の上に発見
した。見覚えのある少女の顔に、カメレオンの口元がまがまがしく緩む。
「ヒュヒュヒュヒュ〜。誰かと思えば貴様か、仮面ライダーV3!」
「ゼティマ怪人・吸血カメレオン、そのコを放せ!」
危機一髪のところに現れたのは誰あろうライダーV3だった。しかし、駆けつけたのは
彼女だけではない。屋根の上にはさらにもう一人の戦士の姿があった。
「Xライダーもいるやよ!」
そう言うなり仮面ライダーXは手にしたライドルのスイッチを切り替え、スティック
にチェンジすると上空高く跳躍した。
「とうっ!!」
大跳躍から勢いよく振り下ろされるライドルスティックの一閃が、見事にカメレオンの
不気味な舌を切り裂いてれいなを救った。宙に舞う赤い帯のようなものこそ、切り
落とされた吸血カメレオンの舌だ。
「グエーッ!貴様ぁ、よくも俺の舌を斬ってくれたな!」
「自慢の舌が気の毒なことやの。けど、この子達を操ってたお前は許さんよ!」
吸血カメレオンはかろうじて短く残った舌を素早く口の中にしまい込むと、着地して
身構えるXライダーに襲いかかる。一方V3はれいなとともに、怪人の虜となった少年
仮面ライダー隊を救出するべく行動を開始した。ゼティマの改造人間の企みを防いだ
仮面ライダーと、怒りの怪人が激突する。