吸血カメレオン。それは黒部ダムでの作戦においてライダー達の前から姿を
消したあのヨロイ軍団の一員、カメレオンが強化手術によって新たな力を得た
姿である。
奇怪な大きな目玉が印象的な外観こそ以前と変わらないが、吸血の名が示す
とおり彼は新たに人間の血を吸う力を手に入れた。長く延びる舌で相手をとらえ、
その舌先で相手の血をすする悪魔の怪人となって生まれ変わったのだ。しかし
単に血を吸うだけが能の怪人ではない。すでに東京入りを果たしていた彼はその
恐るべき力を使い、雅達少年ライダー隊をその毒牙にかけんと忍び寄っていた
のである。
場所は夢が丘の商店街。折しも商店街では春の大売り出しが行われていたこと
もあって多くの人でごった返していた。老若男女が行き交い、久々に活気を
取り戻した通りに、ちょっと変わったデザインの帽子を被った少女達の姿が
あった。真っ赤な帽子のセンターには白いライン、そのセンターラインを挟む
ようにして配置された緑色の円が2つ。それはまるで2つの目のようにも見え、
それが印象的な意匠を形作っていた。その帽子のデザインは、仮面ライダーの
マスクを象ったものだ。そして、少女達の胸元に輝くのはやはり仮面ライダー
のマスクを象ったペンダント。このペンダントは無線通信や発信器に仕える
優れものなのだ。そう、彼女たちこそ「少年仮面ライダー隊」なのである。
彼女たちは、自らライダー達の手助けをするためにこうしてパトロール〜少なく
とも彼女たち自身はそう思っているようだ〜活動を行っている。しかし、敵は
そんな「何とか探偵団ごっこ」気分で立ち向かえるような相手ではない。世界を
股に掛けた悪の秘密結社。少女達の身を危険にさらす事にもなりかねない恐ろしい
敵なのだ。そう、少女達を狙って敵が差し向けた先兵こそが、あの吸血カメレオン
なのである。人混みに紛れて、少女達の後をつける一人の男。黒いスーツに身を
包み、サングラスと黒いハットを被った男の姿は誰が見ても警戒心を抱かせるに
十分であった。しかしながら、日々の営みに追われる人々の目には意外なほど
この怪人物の姿は映っていなかった。この怪人物にしても、目標はあくまで
視線の先を行く数人の少女だけであった。