「あのね・・・」
電話の向こうの友に向かって、思いの丈を語るミカ。アヤカは途中で茶々をいれて
くる貴子の言葉を手で制し、彼女の話を黙って聞いていた。ミカが自分の思いをすべて
語り終えたところでアヤカが口を開くと、やはり自分の今後進む道についてミカに
語った。二人は互いにの進むべき道について何かしらの答えをすでに出しつつあった。
少なくとも、アヤカが科警研での活動に新たな道をみいだしたのは確かなようだった。
「それでね、実は今後ろに走ってるトラックなんだけど・・・」
そう言ってアヤカはルームミラー越しにちらりと後方を見やる。後ろには10トン
級の大型トラックが彼女のクーペの後をついてきていた。
このトラックに積み込まれている物こそ、彼女が科警研の一員として取り組まなければ
ならない古代の謎であった。実はこの古代の遺物は、Z対が発見したときにはすでに
ドクトルGらの手によって破壊されてしまっていた。すでに瓦礫とかわらぬ有様であり
素人目には石のかけらと言われても何ら不思議は無いほどの代物だったので、彼らに
とっては何の価値もない物と思われていたのだ。
しかし、城南大学に秘密裏に移送されていたその瓦礫は、謎の文字が記された古代の
遺物であることが判明した。そのためZ対はこの遺物の価値に気づいたゼティマの手に
わたらぬよう、彼らの目を盗んで回収したのだ。
「私の最初の仕事は、この遺物の正体を探ること、かな。ほら、私たちが組織にいた
ころは専門の分野ってなかったでしょ?生物学も物理学も、考古学もある程度押さえて
おかないと話にならなかったから」
そう言ってアヤカは笑う。電話口から聞こえる彼女の笑いに答えるように、ミカも笑みを
浮かべた。そして、そんな彼女にアヤカはなおも言葉を続けた。
「最後の答えはあなた自身が知ってるはずよ。すべてはあなた次第、自分の声に従う
事ね」
すべては自分次第。自分の声に従う。ミカはアヤカの言葉を心の中で何度も繰り返し
呟く。答えはすぐには出せそうになかったが、それでも不思議と心の曇りは晴れた
ような気がした。
「判った、ありがとう。・・・じゃあね」
「うん、じゃあね」
お互いの進む道を語り合った二人の、締めの言葉としてはあっさりとした一言。しかし、
二人の間はそれで良かった。ミカは通話を終えて携帯電話をポケットにしまうと、天
を仰いで一つ息をつく。
(今の自分の気持ちを・・・あの人に伝えなきゃ。行かなくちゃ、あの人に会いに)
腰を下ろしていたベッドから勢いよく立ち上がると、階段を駆け下りてミカは教会を
出る。表に止めておいたマシンに跨ると、勢いよく吹き上がるエンジン音とともに
走り出した。今の自分の気持ちを伝えておきたい、一人の少女に会うために。
一方、科警研を目指すアヤカ達の知らないうちに、彼女たちの身近な場所で驚くべき
異変が起き始めていた。彼女たちは知らない。後方を走るトラックの中でうごめき
始めた古代の遺物の胎動を。砕け散った瓦礫は神秘の力で寄り集まって再び形を無して
いく様を。ギシギシときしむ荷台から、ボルトや金具などあらゆる金属が古代の遺物に
吸収されていく驚くべき有様を。それは今まさに、現代に蘇ろうとしているのだった。
第56話 「悪魔のZ計画・ヨロイ軍団総攻撃!」 終
今回のお話は以上です。
明日明後日とお休みを頂きまして、火曜日から後編をスタートさせて頂きたく
思います。次回「仮面ライダー4号は君だ!」でもよろしくおつきあい下さい。
>>322 お手数をおかけします。昨日は所用ありまして更新できませんでしたが、今晩で
一応前編は終了となります。お気遣い頂きありがとうごさいます。