魔女スミロドーンの言葉通り、少女達は各地でヨロイ軍団を中心としたゼティマ怪人達
と死闘を繰り広げていた。横浜ではスーパー1とストロンガーが、みなとみらい爆破を
企む怪人達を撃破した。また成田空港を狙う怪人達にはXライダーとスカイライダー
が立ち向かった。そしてさいたま新都心では人造人間の少女達とイナズマンがそれぞれの
敵と戦っていた。しかしその戦いはすべて、敵の真の企みを隠匿するための作戦でしか
なかったのである。
一方、少女達が激しい戦いを繰り広げている中にあってただ一人その戦列に加わる
ことなく一人辛い胸の内を抱えていた少女がいた。そう、誰あろうミカである。彼女は
胸に秘めた悩みを未だ誰にも打ち明けられずにいた。ゼティマの追跡から逃れるために
身を隠している廃屋と化した教会、その屋根裏で彼女は一人手紙を読み返しながら
思いを巡らせていた。
「親愛なるミカ・トッド様」という書き出しで始まる一通の手紙が、彼女の心を
悩ませかき乱している。その手紙の差出人は、かつて脳改造セクションの責任者として
ZXこと小川麻琴にとって無くてはならないそんざいであった、あの夏まゆみであった。
彼女はアメリカで身の安全と引き替えに、ゼティマに対抗するための政府機関の研究に
協力していたが、ある日彼女の元に一枚の写真がとどいた。
ハワイ沖で発見された謎の金属塊。それは人類の歴史において一度も姿を見せたこと
のない謎の物体であり、まさに「オーパーツ」と呼ぶにふさわしいものであった。
金属塊は現在この写真の送り主にして、かつてのミカの同僚であったレフア・サンボの
手を離れてまゆみの所属する機関で元で厳重に保管されているというが、彼女らを擁する
機関の科学力をもってしてもその正体は判明しないという。
そして、写真の添え書きにはレフアによるミカを研究機関の一員として迎えることを
勧める旨の文面があり、そのためまゆみはミカに対して写真を添えて手紙を送ったので
ある。つまり、まゆみからの手紙はミカに対して研究のための渡米を求める内容のもの
だったのだ。
(私の力を必要としてくれる人がいる。けれど、大切な仲間達を置いていくことは
できない・・・どうしよう)
一人思い悩むうち、その手は自然とポケットの中へと伸びていた。ミカは携帯電話を
取り出すと、今の自分の思いを打ち明けられるたった一人の相手へとかける。彼女に
とっては大事な友人だったが、戦いの日々に追われ最近会う機会が少なくなっていた
のだ。耳元で呼び出し音がいつもより少し長く鳴っている。もしかして、手の放せない
用事で電話に出ることが出来ないのか・・・通話終了のボタンに指が伸びる。ちょうど
その時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ALOHA!久しぶりね。元気?」
電話の向こうから聞こえてくる声に笑みがこぼれる。電話の相手はアヤカだった。
今ちょうど彼女は科警研を目指して移動中であった。クーペの助手席には、彼女
を科警研に推薦してくれた稲葉貴子が乗っている。
「楽しそうやんか?誰やの?男?」
「違いますって、ミカですよぉ」
「嘘やって絶対・・・言うてみ?」
電話の相手を詮索してアヤカをからかっている貴子の声も聞こえてくる。楽しそうな
車内。一人きりの部屋。ミカの口元に寂しげな笑みが浮かぶ。だが、今の気持ちを
話せる相手は彼女しかいない。唯一の友人にすら話すのは勇気のいることだったが
ミカは緊張を振り払うようにして口を開いた。