雪崩を打って襲いかかる戦闘員達を次々とたたきのめす3人ライダー。パンチ
キックが空を切り、襲い来る悪の使者は片っ端からなぎ倒されていく。その様子を
苦々しく見ていた原始タイガーは、戦闘員達に見切りをつけるやライダー達の眼前
にまたも地獄の業火を放つ。燃え上がる火柱はそこに手下であるはずの戦闘員が
生き残っていようともお構いなし。3人ライダーの身長を超える炎が逆巻き
立ちはだかる。
「見るがよい、これがわらわの奥の手じゃ」
「気をつけろ!あの虎の怪人がまた何かしてくるぞ!!」
V3の言葉に頷くダブルライダー。そしてV3の予感していたとおり、原始タイガー
が動き出した。自ら燃えさかる炎の中に飛び込むと、次の瞬間炎の壁を突き破って
現れたのは巨大な牙、それも猛スピードで走る「牙」だ。その牙こそ、原始タイガー
版ライダーマシンとも言うべき彼女のバイクなのだ。
「ヒャッヒャッヒャッ!マシンは何もお前達だけのものではないぞぇ!!」
響き渡る爆音とともに疾走する牙マシン。原始タイガーはあろう事か味方である
はずの戦闘員までも豪快にはねとばして3人ライダーに迫る。強烈な体当たりを
紙一重の差でかわしたライダーに対し、器用にアクセルターンを決めた原始タイガー
は再度の攻撃を試みようと爆音をとどろかせる。砂埃を上げてスピンするタイヤが
悲鳴にも似た音を立てる。
「逃げてばかりではわらわには勝てぬぞえ?」
原始タイガーは再び炎を吐いてライダーを責め立てる。炎をかわしたと思ったら
その直後には牙マシンの突撃が襲い、3人は原始タイガーに対してやや劣勢に
立たされていた。
「なかなか手強いやっちゃ・・・こうなったら!」
「奥の手を使うれす!」
「よし!『ライダートリプルパワー』だ!!」
爆風を手で避けつつライダーあいは信号電波でサイクロンを呼び寄せる。その姿を
見たライダーののも同じように信号電波でサイクロンを呼び、ダブルライダーが
駆る2台のサイクロンは自動操縦で疾走してきた。ダブルライダーとV3は、
スピードを増すサイクロンに身を躍らせて飛び乗る。ダブルライダーを乗せて並列
して走るサイクロンの上に、まるで曲乗りでもするかのようにV3が着地すると
いよいよ3人ライダーのパワーは高速回転する風車とともに最大出力を発揮する。
「何をする気じゃ・・・よせ、よさぬかぁぁぁ!!」
牙マシンを急速ターンさせて逃走を試みる原始タイガーだったが、3人ライダーの
スピードは容易く怪人を捕らえた。
「ライダー、トリプルパワー!!」
あわせた心が三位一体の闘志となって怪人に襲いかかる。もはや原始タイガーにこの
攻撃から逃れる術はなく、マシンもろとも大爆発した。
トリプルパワーで怪人を撃破し、スピードを徐々に落とした3人ライダー。直後
3人の背後に再び火柱が燃え上がり、それはやがて人の形を成した。原始タイガー、
魔女スミロドーン最後の悪あがきか。
「わらわの命の火は消える。その前に、お前達に面白いことを教えよう」
スミロドーンの言葉に3人ライダーはゆっくりと振り返り答えた。
「奴らが何を企んでいるのか、教えて貰おうか!!」
V3の言葉にスミロドーンは息も絶え絶えになりながら答えた。彼女の口から語られた
のは、ヨロイ軍団の恐るべき企みだった。
「わらわの役目はお前達を足止めし、プルトンロケットをゼティマ基地から発射基地の
蠍谷に移送する時間を稼ぐ事じゃ・・・今頃ヨロイ元帥は、無事ロケットを運び終えた
事じゃろう。お前達の仲間も見事我らの作戦にかかったのじゃ」
カタツブラーがコンビナートを襲ったのも、原始タイガー達がダムに毒を投入しようと
していたのも、すべてはヨロイ元帥がプルトンロケットを蠍谷に運び、発射準備を整える
ための陽動作戦だったというのだ。
「Z作戦発動の時は近い、お前達に止める術はないわ。ゼティマに栄えあれ!」
そう言い残し天を仰ぐスミロドーン。その姿は再び燃え上がる炎の中に消え、3人ライダー
には悪の野望を語るメッセージだけが残された。原始タイガーの敗戦を見届けたカメレオン
の姿もまた、いつの間にか消失していた。