「何故です、何故計画を・・・」
『ヨロイ元帥よ、その前にするべき事があるのだ。君も知っている通り、我々の
計画を悉くじゃまする者達がいる。仮面ライダーだ。奴らを排除しなければ計画の
成功はあり得ぬ』
まず計画ありきのヨロイ元帥に対して、ライダー抹殺を優先すべきとする首領。
元帥にはその理由が理解できない。しかし、この時すでに世紀王誕生の報を受けて
いた首領にとって、まず先に排除すべきは仮面ライダーだった。
「話には聞いておりますが、しかしこれまでも仮面ライダーの妨害があったに
しろ世界征服のための計画は進められてきたはずでは・・・!」
『儂は研究の成果を大いに買っているのだ。その上で作戦の時期を探る必要が
あると思っておるのだ』
納得がいかない様子のヨロイ元帥は思わず声を荒げて首領−鷲のレリーフへと
詰め寄ろうとする。そんなヨロイ元帥を制するように、悪魔元帥が割ってはいる。
「貴様の実験の成果を重んじてのお言葉だと言うことが判らんか、ヨロイ元帥!」
「しかし!!」
ヨロイ元帥は口惜しさを満面ににじませて唇を噛む。しばしの沈黙の後、彼は居並ぶ
幹部と首領に宣言した。
「判った・・・ならば、ライダー抹殺とプルトンロケット攻撃の二正面作戦を
もってZ計画としようではないか。首領様、作戦の許可を!」
しばしの沈黙が両者に流れる。そしてとうとう、元帥の異常なまでの熱意に首領が
折れた。Z計画の実行を条件付ながら許可したのだ。しかし、それは決して後戻りの
できないものであった。
『よかろう、ヨロイ元帥。ただし!儂の意に背いてでも計画を実行する以上は
失敗はすなわち死と心得よ・・・良いな?!』
「・・・しかと心得ましてございます」
ヨロイ元帥はただただ焦っていた。今の彼にとっては作戦の内容などどうでも
良かった。ただ、彼は目の前にあるチャンスが費えるやもしれぬ事実に耐えられ
ないのである。掴みかけた自分の手柄をみすみす手放すなど、およそ考えることが
出来ないのだ。いかに無理を通そうとも、成果を上げさえすれば問題ないでは
ないか。そんな思いでヨロイ元帥は司令室にある怪人を呼び寄せる。
「作戦の指揮を我が軍団最強の怪人に命じる・・・出でよ、ザリガーナ!!」
怒気をはらんだ声が総司令室に響く。その直後ドアが開き、そこから一体の異形の
影がまっすぐに伸びた。全身を鋭い棘が覆う赤い外骨格に身を包み、腕には巨大な
はさみを持つザリガニの改造人間の姿がそこに現れた。
「元帥閣下、そして偉大なるゼ−ティマ首領様。ライダー抹殺とZ計画の指揮、
このザリガーナめにお任せあれ」
ザリガーナはヨロイ元帥が誇る軍団の切り札、最強の怪人である。元帥は自らの
威信を一人の改造人間に託し、軍団の指揮を委任すると居並ぶ幹部達を睥睨して
言い放った。
「よく見ておくがいい、ヨロイ軍団の戦いを!勝利は我らのものだ!!」
半ばやけっぱちのように言い放つとマントを翻し、ヨロイ元帥は軍団員を引き連れ
ザリガーナとともに総司令室を後にした。