仮面ライダーののBLACKRX

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231ナナシマン
 その日の夕刻。東京に到着した明日香たち二人がマンションに帰り着いた。これから
の生活のことを考え、あれこれと準備をしているうちに夕方を回ってしまったのだ。

 「いっぱい買い物しましたね」

 麻美の言葉に柔らかな笑みを浮かべて明日香がうなずく。やがて二人は抱えきれない
ほどの荷物とともに部屋へと上がり込む。落ち着いた内装の室内は、スマートレディに
用意された部屋を明日香の好みに合わせて内装を設えたものだ。

 「何か大人っていうか、都会的な感じしますよね。福田さんって、結構オシャレ」

 「え?そうでもないよ」

互いに笑顔で言葉を交わす少女二人。と、二人の帰りを待ちわびていた一人の女が
部屋の奥から現れた。

 「全くアンタってコは、今までどこ行ってたんや?」

ドアにもたれかかり、二人を見つめている女性の口元が心なしか引きつって見える。
明日香の帰りが遅いことに、彼女は明らかに怒っていた。
232ナナシマン:04/03/18 22:45 ID:HdIXneqq
 「ごめんね?平家さん。ちょっと北海道まで」

 「あきれた・・・アンタにとって北海道は『ちょっと』の距離なんか?」

明日香の言葉にみっちゃん〜平家みちよはため息をつきながら答えた。彼女は
スクイッドオルフェノクに襲われて一度命を落としたものの、オルフェノクとして
再び蘇ったのである。オルフェノクの中には、このように他のオルフェノクから
エネルギーを注入されることでオルフェノクへと変貌を遂げた者もいるのだ。
明日香とみちよ、二人もまた運命の導きによって出会った者同士だった。

 「この人は平家さん。こう見えても結構良い子だよ?」

 「こう見えても、って失礼な事言うな!それに何やねん、年上捕まえて良い子
とか言うて」

 二人の掛け合いに麻美の顔に笑みがこぼれる。と、ここまで会話を交わして
いながら明日香にはどうにも腑に落ちないことがあった。
 
 「って・・・平家さんなんでウチにいるの?」

 「ええやん・・・ウチも行くトコないねんから・・・」

そう言ってみちよはドアに人差し指を立て、くりくりと回しながら口をとがらせて
答える。触れてくれるな、とでも言いた気げな素振り。
233ナナシマン:04/03/18 22:46 ID:HdIXneqq
「どういう事なの?」

明日香の言葉にも、みちよは答えにくそうにしている。そんな彼女の様子を見て、
麻美が一言ぽつりと呟く。

 「もしかして、追い出されたとか」

 「ギクッ!」

どうやら図星だったらしい。実はオルフェノクになって以降、みちよはこれまで
働いていなかったのである。正確には、働くことが出来なかったのだ。収入の道
を断たれ、結果住んでいた部屋を追い出されてしまったのだ。
 しかし、それはやむを得ない話かも知れない。もし、彼女がオルフェノクに
なった経緯について目撃者でもいようものならばどうなるか。そうでなくとも、
もう彼女は普通の人間ではなくなってしまったのである。そんな人間の居場所が、
一体どこにあるというのだろうか。

 「麻美ちゃん、それくらいにしな?」

明日香はその事を知っている。そこに思いを至らせることが出来る。彼女はまだ
そこに思いの至らない麻美を諭すように言う。優しい口調ながら、不思議な
説得力のある一言だった。自分の不明を恥じ入るように、肩をすくめる麻美の
両肩を支えるようにして、明日香は彼女を自分の前に立たせて言った。

 「このコは安倍麻美ちゃん。私たちと同じ、私たちの仲間」
234ナナシマン:04/03/18 22:47 ID:HdIXneqq
 と、ここで何かに気がついた明日香が口を開く。いつもなら部屋にいるはずの
あの少女がいないのだ。

 「あれ・・・松浦さんは?」

そう、キングストーンを継承し世紀王の宿命を負わされた少女、松浦亜弥の姿が
見えないのだ。そんな明日香の言葉に、みちよが答えて言う。

 「あぁ。あの子やったら買い物に行ったがな。アンタら帰り遅いから、お夕飯
の準備買いにな」

 明日香にとっては気がかりなのは、何もみちよや麻美だけではない。亜弥もまた
人ならざるさだめを負う者同士として、明日香には気がかりな存在だったのだ。

 「どこまで行ってるんだろ」

 「多分商店街までやろ・・・せや、この子の面通しがてら迎えに行かへん?」
 
みちよの提案に二人も賛同し、北海道からの荷物もそのままに明日香達三人は
駐車場へと向かう。