同じ心を抱えた二人が東京を目指していたそのころ、中澤家にも遅い朝がやって
きた。この時期どうしても布団から出てくるのが辛くなるのは、改造人間たる彼女
達も同じである。
朝食の準備が出来たとはいえ、時計の針はすでに正午近くを差している。この家
の住人にとっては、朝昼兼用の食事は決して珍しいことではなかった。いつもの
ように食卓には起居を共にする少女達の人数分だけの食事が並ぶ。しかしその食卓
の風景は、この日ばかりはいつもと違っていた。
「おはよー」
「おはよ」
互いに朝の挨拶を交わしながら少女達が寝室から出てくる。まだ寝ぼけ眼の少女達を
笑顔で見つめているのはキッチンに立つ彩だった。
「よし、みんないるかな?」
「パトロールに出たガキさんとよっちゃん以外はみんないるよ。多分もうじき
帰ってくると思うけど」
義姉への点呼報告を行ったのは義妹の真里。この家での「中間管理職」的な役割
を担っているのは彼女だった。やがて朝から洗面所の使用についてもめていた圭織と
なつみが一番最後に現れ、二名の欠員をのぞいた全員が食卓に勢揃いしてにぎやかな
朝食が始まろうとしていたその時だった。
「ただいま〜!」
玄関から聞こえてきた明るい声。そして、靴を脱ぎフロアを踏みしめる音が聞こえる。
パトロールに出ていたガキさん〜新垣里沙とよっちゃん〜ひとみが帰ってきたのだ、と
居合わせた少女達は直感する。果たしてそれは現実となり二人の姿がリビングに現れた
のだが、その後だった。
「おじゃましま・・す」
聞こえてきたのは遠慮がちに挨拶する数人の少女たちの声。互いに顔を見合わせる
少女達に対してちょっと申し訳なさそうにガキさん・・・里沙が説明する。
「ごめんなさい。朝ご飯まだだって言うから、連れて来ちゃった」
そんな彼女の言葉の直後、ドアの影から小さなつま先がひょっこりとのぞく。そして
ちらりと見えた揺れる黒髪。それからおそるおそる顔を出したのは、中学生くらいの
三人の少女達だった。
「おはよう・・・ございます」
食卓に居並ぶ「先輩格」とも言うべき少女達に恐る恐る挨拶する三人の少女たち。
道重さゆみ、亀井絵里、そして田中れいな。謎のベルトを守るためにオルフェノクと
戦う少女達である。
「前に言ってた子達だよ。ウチらを助けてくれた」
真里の言葉に食卓に座った少女達も何かを思い出したようだ。実は過去において、
少女達はお互いの素性をよく知らぬまま偶然にも危機を助け合っていた間柄だった。
裕子を奪回出来たのはれいなと絵里の協力があったからであり、そしてファイズギア
を奪回できたのはまいとひとみの力があればこそだった。せっかくだから一緒に
朝食を、ということになり新たに3名を加えた大所帯の朝食は和やかに進む、はず
だったのだが・・・。