続きです。
「本当ならさ、みんなの年齢だったら普通に学生やってたり
普通に社会人やってたりしてる筈じゃない。
友達と遊びに行って旅行して・・・・
実際何も知らない人達はそうしてる。アホみたいな連中の存在なんか
知らないから、遊んだり、普通に仕事したり、勉強したり・・・・
きっと私だって雅恵やめぐみがあんなじゃなかったら、
みんなの事知らなかったらそうしてた。
でもそんなの変じゃん!おかしいよ!何で矢口や圭ちゃん達だけが
そんな普通の事が出来ないの?周りの人達がああやって何も知らないで
いられるのはみんなが頑張ってるからでしょ?
だったらみんなだって少しでもいい、普通の女の子らしくしようよ」
斉藤の言葉に矢口は黙って頷く。
実際最近の自分達はみんなで遊びに行ける時間が増えた。
改めてそう感じたのは今の斉藤の言葉があっての事だ。
苦しいのは自分達だけじゃない。
その苦しみを理解してくれようとする仲間達だって
自分達と同じ位悩んでいたのだ。
中澤は立場上、みんなの普通の生活を考える前にどうしても
戦いを優先してしまう。これは仕方の無い事だ。
しかし斉藤達は違った。普通の人間としての生活
それを必死になって考えてくれていたのだ。
「ありがとう・・・・ホント・・・オイラ嬉しいよ・・・・
正直言って悔しかった・・・・他の・・何も知らない子達は
普通に生活してるのに・・・なんでオイラ達だけこんな事やってるんだって
でも違った・・・・少なくともボスと柴ちゃんと大谷ちゃんと
村田ちゃんは解ってくれた。それに弁慶さんや稲葉さんだってそうだ
みんな・・・オイラ達の事知ってる人はそうなんだよね・・・
ごめん・・・勘違いしてたよ」
矢口は涙を浮かべながら、けれど嬉しそうに笑った。
「でも油断はしない事。まだまだ全てが終った訳じゃないしね。
これからやらなくちゃいけない事はいっぱいあるんだから・・・・
でも、私も感謝してるよ・・・本当にありがとう・・・」
保田もまた涙を浮かべながらも笑顔でこう言った。
「そんな改まって言われると照れちゃうけど、
それが私達に出来る精一杯の協力かな・・・・?
本当の戦いになったら私達は足手まといになりそうだからね。
雅恵やめぐみだってきっとそう考えてるよ。
口には出さないけど・・・・・・・・ってうるさいなぁ」
斉藤がそう言った時、事務所の前に数台の車がとまる音が聞こえて来た。
「どうやら、バカどもが仲間を連れて来た様だな・・」
弁慶は表を見ながら言った。
「まったく・・・・こまった連中だ・・・少し痛い目みないと解んないみたいだね」
「あれ?ボス、それはいいの?連中をんでシバクんでしょ?」
「それとこれは別!商売の邪魔をする奴はぶっ飛ばせ!」
そう言って斉藤達が表に出ようとした時
「こら、そんな所に車止めるな!邪魔だろうが!」
「うるせー!引っ込んでろ!」
「なんだとー!」
大谷と外の連中の怒鳴り合う声が聞こえて来た。
「やれやれ・・・こっちが行く前に向こうがキレか・・・・」
ハローワーク商会のお隣は勿論、インテリアショップ「ペガサス」である。
店の前に車を止められた大谷と村田が怒って飛び出して行ったのだ。
慌てて外に出て行った斉藤達であったが、そこには既に大谷と村田に
やられた男達が横たわっている。2人が最後の1人を倒そうとした時
「ストップ!」
斉藤が2人を止めた。
「なんだよ!」
「悪い悪い、そいつら、こっちに用があって来た連中なんだ」
「だったらちゃんと言っとけ!ここはペガサスの駐車場だ!」
「へいへい・・・すんませんでした・・・さてと・・・・」
斉藤はそう言うと残った1人を締め上げる。
「そんじゃ、親分の所に案内して貰いましょうか?」
「待ってくれ・・・そんな事したら俺が酷い目に・・・」
男は情けない目で懇願する。
「言わないならここで酷い目に合うか・・・」
弁慶が拳を握り締めた。
「わっ、解った・・・案内する・・・だから・・・・」
「承知した、安心しろ。お前らの組織は今日で終わりだ。
気の毒だがお前は失業だ。明日からまともな仕事を探すんだな」
弁慶はそう言うと拳を下ろす。
こうなったら仕方が無い、男は覚悟を決めると斉藤達を案内するべく
斉藤、矢口、保田、弁慶のの4人を車に乗せると出発した。
「なんなんだよ・・・こいつらは・・・・」
まだその場に気絶する残された男の仲間達を見て大谷が言う。
「本当にごめんね、実は・・・」
柴田が2人に事の詳細を説明する。納得したした2人は
その場にのびている男たちを起こした。
「ほれ、起きろ、商売の邪魔だ!」
哀れにも横たわる男達に容赦なく蹴りを入れる大谷、
最近店の売上が伸びずイライラしていた所だったので
ここぞとばかりの八つ当たりであった。
「う・・・ん・・・」
目を覚ました男達は起き上がると言う。
「・・・・お前達何もんだ?只者じゃねーよな?
それともただヤクザに喧嘩売るアホか?」
「どう言う意味だよ?」
「ワカラねーのか?要は仕返しがあるって事だよ。
これでも俺たちゃぁ紫龍会だぞ。聞いたことくらいあるだろう?
この国でもそれなりの組織だ。怖くないのか?
「何が?」
「要は素人さんが勝てる相手じゃねーって事だよ」
男たちは勝ち誇ったに言う。だがその場の3人は普通だった。
「それで?どうなる訳?」
「お前達は知らんだろうが紫龍会はアジアンマフィアともつながりがある
そして俺たちはその傘下の組織の人間って事だ。
お前達に逃げ道は無いぞ」
「ふーん、でも今仲間がその傘下の組織とやらをぶっ潰しに行ったけど?」
「何?・・・・バカなやつらだ。そんなことしたら命がいくつあったって
足りる訳がない。可哀想に、お前達の仲間は帰って来ないぞ!」
「まったく・・・チンピラは・・・すぐそう言う事言うんだから。
バックがどうとか、俺達の親分はどうとか・・・ちっとはさあ
自分の力でどうにかしようとか思わない訳?」
大谷や村田があきれた様な表情を浮かべる。
すると男達はそれでも続けた。
「何とでも言いやがれ!結局強いバックがある奴が勝つんだ!」
「はぁー・・・情けない・・・これだからチンピラは・・・」
「随分と余裕だな、それも今の内だけだがな」
強がる男達であったがそれもそこまでであった。
「もう、今強がったってしょうがないでしょ?立場解ってんの?」
柴田はそういうと構える。
「赤心旋風脚!」
そう叫んだ柴田の右足が男達の車のドアに大きなへこみを作る。
「げ!何なんだこいつらは・・・・すみませんでした。勘弁して下さい」
男達はそう言うとあっという間に逃げ出していった。
「口ほどにもない・・・・」
大谷はそう言うと村田と共に店に戻り、柴田もそれに続く。