仮面ライダーののBLACKRX

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1名無し募集中。。。
  仮面ライダーのの・辻希美は改造人間である。彼女の宿敵、ゼティマは
世界征服を企む悪の秘密結社である。仮面ライダーののは人間の自由の為に
ゼティマと戦うのだ!

過去スレ
小説「仮面ライダーのの」
http://teri.2ch.net/mor2/kako/992/992448019.html
仮面ライダーののU
http://choco.2ch.net/ainotane/kako/1000/10006/1000651650.html
仮面ライダーののV
http://choco.2ch.net/ainotane/kako/1004/10046/1004640107.html
仮面ライダーののV3
http://tv2.2ch.net/ainotane/kako/1013/10136/1013617420.html
仮面ライダーののX
http://tv2.2ch.net/ainotane/kako/1035/10356/1035609787.html
仮面ライダーのの555(ファイズ)dat落ち中
http://ex2.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1047519023/
仮面ライダーののアギト dat落ち中
http://ex2.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1059481473/
仮面ライダーののBLACK ※前スレ
http://ex4.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1066924108/
2名無し募集中。。。:04/02/17 20:21 ID:2bEzL0tH
1 戦いに身を投じた少女達(名称は本編に準じる)

辻希美
 仮面ライダーののに変身する。 倉庫での火災により瀕死の重傷をおうが、
加護博士の手により 失った部分を人口物で置き換え、加護亜衣の皮膚を
移植され生まれ変わる。必殺技はライダーののキック、きりもみシュート
など。本編の主人公である。

加護亜依
 辻の親友。辻と同じく倉庫での建造物落下により瀕死の重傷を負う。
加護博士により、新しい体を組成されしばらく脳だけになって研究所の地下
で眠っていた。 新しい体を得て復活するが、自らの願いにより辻と梨華美の
手により改造され仮面ライダーになる。ZXとの死闘の中で、ついに隠されて
いた霊石アマダムの力が覚醒。仮面ライダークウガとしての力を得る。

ひとみ
 加護博士、つんく博士により作成された人造人間キカイダー。 いつも背に
ギターを背負っている。不完全な良心回路を持つため、プロフェッサーギル
の笛の音を受けると善と悪の心の葛藤に悩まされる。必殺技は両手をクロス
して放つデン・ジ・エンド 。
3名無し募集中。。。:04/02/17 20:22 ID:2bEzL0tH
梨華
 ひとみと同じく加護博士、つんく博士により作成された人造人間で、常に
ひとみと行動を共にしている。ビジンダーに変身するが、実はその体内には
爆弾が埋め込まれている。ひとみより3ヶ月先に完成していたため、試作品
ながら完成された良心回路を持つ。必殺技はビジンダーアロー、ビジンダー
レーザー。

市井紗耶香
 生身の体ながら何をやらせても日本一の少女。強化服と専用車ズバッカー
を持ち、快傑ズバットになる。親友福田明日香を殺害した犯人を探すうちに
それがゼティマの仕業と知り、以来ゼティマを潰す為組織を追う。

マキ(後藤真希)
 加護博士、つんく博士が作成した人造人間で、またの名をハカイダー。暴走
して一時ゼティマに壊滅的なダメージを与えた。のちにプロフェッサーギルの
手で服従回路を搭載され、完全な悪の僕となる。頭部にはつんく博士の脳が
搭載されているが、彼女以前に作られたもう一体のハカイダーには事故死した
少女、後藤真希の頭脳が納められた。しかしそれは動き出すことなく今も
封印されているという。自ら弟ユウキを手にかけながらも、未だキカイダー・
ひとみとの戦いに執念を燃やし、常に付け狙っている。
4名無し募集中。。。:04/02/17 20:25 ID:2bEzL0tH
保田 圭(ケイ)
 祖父とともに、南米アマゾンで暮らしていたがゼティマの襲撃をうける。
その際、祖父の隠し持っていた腕輪とベルトを身につけ、その力により
仮面ライダーアマゾンに変身する。二つの腕輪を狙う十面鬼、ゼロ大帝が
彼女の直接の敵といえる。ついに腕輪を狙う敵の思惑を知り、祖父の託した
腕輪を命に代えても守り抜くと誓う。必殺技は大切断。

飯田圭織
 宇宙研究施設E&Sの研究員。惑星開発用改造人間計画に自ら志願し、
ヘンリー博士、同僚のりんねの手によりコードネームスーパー1に改造
される。が、研究所はゼティマに破壊され博士、りんねは死亡。その復讐
と世界平和のため仮面ライダースーパー1を名乗る。 必殺技はスーパー
ライダー月面キック、ファイブハンド。

安倍なつみ
 ゼティマに親友を殺され、その復讐の為にゼティマに捕まりわざと
改造手術をうけ、カブトムシの強靭な筋肉と発電機をうめこまれて
仮面ライダーストロンガーになる。同じく改造手術を受けた少女あさみ
こと電波人間タックルを助け共に行動していた。 ドクロ少佐との戦いに
おいて超電子人間に生まれ変わり二段変身「チャージアップ」を果たす。
5名無し募集中。。。:04/02/17 20:25 ID:2bEzL0tH
矢口真里
 石黒彩の義妹。ゼティマに人質となって捕まっていた。その正体は宇宙
からやってきた異星人であり、身分を偽って地球に滞在し星雲仮面
マシンマリとして悪と戦っていた。だが怪人ハサミジャガーに瀕死の
重傷を負わされ、辻と加護の手によって仮面ライダーV3として復活する。
必殺技はきりもみ反転キック、遠心キックなど。

紺野あさ美
 友人達と訪れていたキャンプ場でガメレオジンの無差別殺戮に遭遇。
仲間達の命を守るために単身戦いを挑むが破れ、その命は風前の灯火と
思われていた。しかし加護生化学研究所の最新技術による改造手術で
一命を取り留め、スカイライダーとなった。必殺技はスカイキック、
大反転スカイキックなど。 仲間との特訓の末、パワーアップを果たした。


高橋 愛
 ゼティマに襲われ、父の命をかけた改造手術によってXライダーと
なった。自在に姿を変える武器「ライドル」を手に、悪に敢然と
立ち向かう。クモナポレオンとの戦いにおいて敗北した後、真里と
ミカの手によって「マーキュリー回路」を取り付けられ驚異のパワー
アップ「大変身」を可能にした。必殺技はXキック、ライドルによる
攻撃に加えてパワーアップ後は真空地獄車を会得。

6名無し募集中。。。:04/02/17 20:26 ID:2bEzL0tH
ミカ・トッド
 元ゼティマの天才科学者。裏切り者のぬれぎぬを着せられて硫酸の
プールで処刑されそうになるが、仲間によって助けられる。しかし
右腕は壊死してしまい機械の腕「カセットアーム」になってしまった。
その力を駆使してライダーマンに変身する。生身に近い身体なので
直接戦闘は不得手だが、カセットアームによる攻撃で他のライダーを
サポートする。

村田めぐみ 
バイクロッサーメグミの能力を持つ、武器としてクロスブレードと
バスタークロスを持つ。更に専用マシーンにメグミローダーがある。

大谷雅恵
バイクロッサーマサエの能力を持つ、武器としてスリングクラッシャーと
クロスシューターを持つ、更に専用マシーンにマサエクロンがある。
マサエクロンはバイクロッサーの必殺武器ブレーザーカノンとして使用。

7名無し募集中。。。:04/02/17 20:26 ID:2bEzL0tH
新垣里沙
 幼少の折に母と生き別れ、地底都市デスパーシティに育った。五郎
老人と共に子供達の世話をしていたが、デスパー軍団の手が及ぶことを
恐れて地上に脱出する。その際に五郎の手によって超能力に覚醒。
やがて目の前で五郎を殺されるに至ってその力が発動し、彼の遺志を
継いでイナズマンとなった。必殺技はイナズマンフラッシュ、超力
稲妻落とし。

小川麻琴
 かつてパーフェクトサイボーグZXを名乗っていたが、クウガの力に
覚醒した亜依との戦いを経て少女達に合流する。全身の99%を改造
されて過去の記憶を奪われた彼女だったが、少女達との交流の中で新たな
心の絆を見出そうとしている。必殺技はZXキック、ZXパンチなど。

ユキ
 江戸時代、修行の旅の果てに忍者集団「谷一族」に入門し頭領谷の鬼十の下に
師事した忍の者。師のつてによって美浜藩に仕えるが、秘儀「化身忍者誕生の法」
を狙う血車党の下忍達との死闘の果てに深い傷を負うが、化身忍者誕生の法に
よって変身忍者嵐として蘇る。「秘剣影うつし」などの忍術技を駆使する。
8名無し募集中。。。:04/02/17 20:26 ID:2bEzL0tH
まい
 札幌の地に甦った第4の人造人間、キカイダー01。変身したひとみの身体とは
左右逆転した赤と青の体色を持ち、太陽電池で駆動する。「妹たちを護る」という
使命を躊躇無く遂行するべく、三姉妹のうち彼女だけは良心回路を持たない。ついに
二人の妹、ひとみと梨華との出会いを果たしたのもつかの間、れいなからファイズ
ギアを奪い、ファイズに変身したセンチピードオルフェノク・琢磨逸郎との戦いに
突入。戦いの末にこれを退けファイズギアを奪回した。必殺技はブラストエンド。

田中れいな
 ファイズギアの所持者であり、仮面ライダーファイズに変身する。かつて流星塾
という教育の場にいた子供達の一人であり、ファイズギアは彼女たちが父と敬愛
する人物から送られたものである。同窓生は次々と連続殺人の犠牲となっている
ことから、それを意図する者達を倒すことが彼女の戦う意義であると思われる。
必殺技はクリムゾンスマッシュ。ホースオルフェノクこと福田明日香との邂逅を
果たすが、二人はまだ互いのもう一つの顔を知らない・・・。


亀井絵里
 カイザギアの所有者であり、仮面ライダーカイザに変身する。カイザギアはその
力に耐えられなかった者の肉体を破壊してしまう恐るべきギアだったが、ギアに
選ばれたのは他ならぬ絵里であった。かつてはれいならと同様に流星塾の同窓生
だったが歳月が人を変えたか、以前とは別人のようになってしまったという。
必殺技はカイザブレイガンによる斬撃など。
9名無し募集中。。。:04/02/17 20:27 ID:2bEzL0tH
2.少女達を取り巻く人々

中澤裕子
 加護博士、つんく博士の助手。
ハカイダーマキ襲撃の際、組織への疑問から脱走。後に辻と出会い、彼女の
保護者となる。現在は同居人も増え、家もにぎやかしい限りである。一時は
敵の手に落ちていたが見事生還を果たし、希美と亜依を特訓したりと少女達
の精神的支柱として大きな存在感を示している。


石黒 彩
 加護博士、つんく博士の助手。真里の義理の姉でもある。薬物により洗脳
されたうえ、真里を人質にとられゼティマで働いていたが洗脳を脱し少女達
とともに暮らしている。ハサミジャガーの襲撃によって死んだかに思われた
が、ミカによって一命を取り留め、現在はすっかり傷も完治している。


稲葉貴子
 FBI捜査官。中澤、石黒らとコンタクトをとる際、ゼティマに襲われひとみ
に助けられる。コンタクトの目的は現在不明だが、なんらかの重要な情報を
持っていると思われる。
10名無し募集中。。。:04/02/17 20:30 ID:2bEzL0tH
木村絢花(アヤカ)
 ミカと共に組織を脱走した科学者の一人。日本に逃亡した後、親戚の経営
する病院で女医として勤務しており、重傷を負った彩の主治医として回復に
尽力した。ヨロイ元帥への復讐と組織への復帰に揺れるミカの前に姿を現し、
カセットアームの真の力を教えると囚われの友レフアを救い出した。


ソニン
 生物学者としてゼティマに囚われ無理矢理研究をさせられていた。実験体や
人質を解放するため自ら肉体強化を受けるが記憶と正気を失い、ゼティマから
追放される。やがて人の心を取り戻した彼女は記憶を取り戻す旅に出てユウキ
と出会う。そのとき高圧電流に触れ、ベルスターに変身する能力を得た。
 戦いのさなかついに自らの記憶を取り戻すが、その代償は大きく変身能力と
ユウキを失った。現在変身することは出来ないが、そのパワーは怪人並。

斉藤瞳
 2人の幼馴染、現在は2人のお隣で何でも屋を営む。2人がバイクロッサー
である事を知り協力、戦いに身を投じる。両親は現在何かの組織を調べる為に
家を開けている。

柴田あゆみ
両親の死後、2人が引き取られた施設で出会う。その頃から姉妹の様な関係。
現在は斉藤の会社で唯一の従業員。斉藤と同じく2人に協力。 また合気道の
達人でもあるが力不足を感じ修行中。
11名無し募集中。。。:04/02/17 20:31 ID:2bEzL0tH
上原学園長と斉藤大吉
学園長は村田、大谷、柴田のいた施設の園長。3人が一番尊敬できる人物で
よき相談相手でもある。また大吉は斉藤の父親。現在とある組織について
調べる為、妻を連れあちこち飛び回る。その組織が何なのかは現在は不明
である。また、村田、大谷にとっても父親の様な存在である。

五木治部太輔弘繁
 越前美浜藩藩主。名君の誉れ高き人物であるが、同時に秘儀「化身忍者
誕生の法」を代々守り次いできた。参勤交代先の江戸屋敷にて血車党の
襲撃を受けた彼はユキの命がけの働きによって難を逃れる。ユキの師である
谷の鬼十の言葉を受け入れ、ユキに化身忍者誕生の法を施すことを許した。

堀内伝兵衛孝雄・高山源五右衛門厳実
 堀内は美浜藩家老、高山は五木に使える御用人であり、いずれ劣らぬ
忠義の人である。
12名無し募集中。。。:04/02/17 20:32 ID:2bEzL0tH
道重さゆみ  
 れいなと二人で怪人達の待つ奥多摩へとやってきた、ちょっと内気そうな感じの
少女。れいな、絵里と同様流星塾の同窓生。しかし、そんな彼女にも異形の者達の
魔の手が忍び寄り・・・。

福田明日香
 かつて何者かによってその命を奪われたかに思われたが、「人を超えし者」
オルフェノクとして再びこの世に甦った。オルフェノク達に加担することを拒否
した彼女は、異形の身と化しながらも人の心を持ち続ける決意を抱く。そんな
彼女が新たに得た姿はホースオルフェノク。

平家
 戸田ことスクイッドオルフェノクの手にかかって命を落としたはずのコンビニ
店員。しかしその後彼女の身体は異変を起こし、一瞬蛇を思わせる異形の姿を
見せた。自らの教育係であった戸田の言葉を思い出した明日香は、彼女の身に
起きた異変の意味を知る。
13名無し募集中。。。:04/02/17 20:32 ID:2bEzL0tH
3.「ZETIMA」〜ゼティマとは?

 世界征服を企む悪の秘密結社であり、その野望のために日々改造人間や人造人間を
産みだし尖兵として送り込んでいる。内部組織や配下組織には判っているだけでも
ダーク、シャドウ、デスター、テンタクル、デルザー軍団、 サタン帝国(壊滅)
があるがこれら傘下組織の長達もまた組織内での覇権を狙っており、組織内部にも
権謀術数の世界が渦巻いている。
 謎に包まれた存在であるゼティマ首領を頂点に最高幹部である悪魔元帥の元に彼の
幕僚と各支部の幹部が名を連ね、また「三神官」と呼ばれる最古参の幹部が存在する。
 ゼティマは世界征服のために各地で暗躍しているが、特に「世紀王」と呼ばれる
次期大首領候補捜索は組織の存亡に関わる大事であるようだ。彼らの悪事の一端は
少しず明らかになってきているが、その実態には未だ謎が多い。
14名無し募集中。。。:04/02/17 20:32 ID:2bEzL0tH
4.二人の「世紀王」と新世界の王「創世王」

 5万年に一度の日食の日に継承者の証「キングストーン」を継承した者を「世紀王」
と呼ぶ。キングストーンは二つ存在し、同様に世紀王も二人存在する。そして互いに
相争い、勝者が敗者のキングストーンを奪い継承権を獲得すると言われている。この
戦いによって選ばれた継承者は「創世王」として来る新世界に君臨し、その力は宇宙
をも掌中に収めるとされている。
 ゼティマの最古参幹部である「三神官」は掟に則り二人の運命の娘を捜しているが、
未だ発見には至っていない。

15名無し募集中。。。:04/02/17 20:33 ID:2bEzL0tH
5.「オルフェノク」とは・・・

 人の世に隠れ、人を超えた異形の者達。それが「オルフェノク」である。彼らは一度
死を経験して再び異形の者として甦ると言われている。ハイテク企業スマートブレイン社
がこの異形の者達に関わっていると思われるが、その実態は明らかではない。どうやら
彼らもまた「創世王」の出現を待望しており、そのためにファイズギアとカイザギアを
狙っているようである。
16名無し募集中。。。:04/02/17 20:34 ID:2bEzL0tH
6.「グロンギ族」とは?

 ン・ダグバ・ゼバを長として、かつて古代において「ゲゲル」と称する殺人ゲームを
展開していた。それぞれが動植物の能力を持つ異形の姿へと変身する力を持ち、その特殊
能力を生かし定められたルールに沿って人間狩りを行う。古代遺跡に封じられていたが
何者かがその封印を解き次々と現代に蘇った。元々独特の言語を持つが、現代日本語を
マスターした個体も出現しており、我々の目に触れないところで彼らのゲームはすでに
始まっているかも知れない。
17ナナシマン:04/02/17 20:39 ID:2bEzL0tH
 本日をもちまして新スレに移行いたしました。本スレで通算9スレ目、今後とも
ご愛顧いただけますよう作者の皆様とともにがんばりますので、よろしくお願い
いたします。
18名無しスター:04/02/17 21:17 ID:89Nkvz1q
>>1
乙です。
がんばっていきまっしょい。
19名無し天狗:04/02/17 21:25 ID:ai1d1/2E
改めまして、名無し天狗でございます。
全スレでは大変ご迷惑をお掛けしましたこと、関係者ご一同様、
並びにご覧の方々にこの場をお借りしてお詫び申し上げます。
(☆)物語もいよいよ佳境!
呪われし神話の行方やいかに!?(☆・☆・☆)
20名無し天狗:04/02/17 21:42 ID:ai1d1/2E

  第五十二話「呪われし神話の行方〜変身忍者嵐・第三章〜」

前スレのあらすじにございます。

(☆)越前美浜藩士・くノ一ユキとその叔母・お順は藩主・五木弘繁公の命により
信州諏訪は高島へと向かいました。その目的は諏訪神社奉納の霊石「亜摩陀無」を
血車党より守ること。諏訪への道中、ユキはかつて同じ美浜藩の者であった盗っ人・
鼬小僧の狼藉を懲らしめ、その村の名主から「亜摩陀無」にまつわる伝説を知ります。
それは神武天皇の昔、「愚論義」なる魔物の横暴から人界を救うため「凛斗」なる神々の一族が
「多岐優空我命」を差し向け、愚論義を討伐した、と言う物です。その折に空我命が鍛冶師と神官に
命じて作らせ、身に付けましたる武具こそが霊石「亜摩陀無」と、それを収める「嗚呼玖瑠」にございます。
血車党は愚論義を使い、この世の中全てを我が物とし、歴史を捻じ曲げようと画策したのですからさぁ大変!!
(☆)ユキたちは急ぎ、諏訪神社へと飛びます!そして諏訪神社に於きましても宮司より高島城に伝わる
もう一つの神話の伝説〜八岐大蛇の首の一つが黒い龍となり、沼の奥より数百年に一度、狙った土地を襲う〜
を知ったユキたちは二手に分かれ、ユキは高島城にて「龍討伐の勇者」となり、お順は「亜摩陀無」の警護に当たります。
(☆)ですがその高島城は、既に血車党の陰謀の真っ只中に陥っていたのでございます・・・・・・。
21名無し天狗:04/02/17 22:00 ID:ai1d1/2E
(☆)昨日とは打って変わって龍討伐から手を引かせようとする、
佐伯重定の身体と記憶を盗み取った「蝦蟇丸」。

その気配を、幽かではございますが感じ取ったユキは、
高島家家中の中で一番不審であるとされる沼部師兼こと「黒龍丸」との繋がりと、
彼らの目論みを探るべく、暫く「蝦蟇丸」を泳がせることに致しました。

「黒龍丸」が諏訪藩を攻撃する「運命の百八日目」が、刻一刻と迫ります・・・!

(☆)そして日が沈んだ頃、風呂に入って身体をほぐし、部屋で龍対策を練るユキに
「蝦蟇丸」・・・の変化(へんげ)たる重定がよそよそしくお茶を持って来ました。

「ユキ殿、今日は事の外お疲れでござろう。どうじゃな?お茶でも一服…。」

姿形はもとより、声色までもが生前の重定そのもの。
ですがユキはその時見逃しませんでした。

重定の足元に、影が映っていないのを・・・・・・。
22名無し天狗:04/02/17 22:17 ID:ai1d1/2E
(☆)ですが様子見のため、ここは「蝦蟇丸」の思惑に乗るフリをして、
逆に「蝦蟇丸」、そして「蝦蟇丸」を操っているであろう「黒龍丸」を欺こうと
ユキは考えます。

(☆)そしてユキは「蝦蟇丸」の勧めたお茶をゴクリ・・・。
「蝦蟇丸」はしてやったり、と幽かにほくそ笑みつつユキに声を掛けます。

「では、くれぐれもお身体をお厭い下され。」

・・・「蝦蟇丸」が部屋を出てよりやや間を置いて、ユキは厠(かわや。便所のことですな)
へ行くなり先程のお茶をゲェ〜〜〜〜・・・と残らず吐き出しました。
お茶を差し出された時、ユキは匂いから遅効性の眠り薬が盛られていることに
感付いていたのであります。

(☆)お茶に薬が含まれていたことを素早く見抜いたユキではありましたが、
それは同時に、「蝦蟇丸」の工夫の無さを露見させる一幕でもございました…。

事の仔細を知るべくユキは眠らされたフリをして、夜が更けるのを待って
行動を起こすことに致しました。
23名無し天狗:04/02/17 22:40 ID:ai1d1/2E
(☆)そしてその日の夜更け・・・
「蝦蟇丸」は手筈通りにコッソリと城を抜け出し、
諏訪神社へと向かおうとしております。

抜き足・差し足・忍び足…と、そこへ!

「おや?佐伯殿、斯様な夜更けにいずこへ参られますか?」

挙動不審の重定=「蝦蟇丸」を、寝ずの警護の者が呼び止めます。

「あ・・・イヤ、ちょっと、夜風に吹かれとうなってのぉ…。」
「夜風に吹かれるような刻限ではござりますまい。
 ・・・?佐伯殿、ご貴殿の身体より、何やら死臭のような匂いが致しまするが…何故に?」

(☆)然様。「蝦蟇丸」は重定の死骸を喰ろうて化けたのでございます。
それ故、重差だの死臭まで写し取ってしまったのでしょう。
「黒龍丸」も、まさか斯様な不覚をとっていたなどとは、
考えも及ばなかったに相違ございません。

「・・・・・・!!」

意外なところを衝かれて追い詰められたのか、「蝦蟇丸」は口から
毒の油を吹きつけ、警護の家臣を殺すとそのまま大きく跳び上がり、
塀を越えて諏訪神社へと跳梁致します。
24名無し天狗:04/02/17 23:19 ID:ai1d1/2E
その「蝦蟇丸」に、人知れず身を潜めていた血車党の下忍共が追従します。
狙うは当然、霊石「亜摩陀無」!これが彼奴らの手に渡れば
人々は愚論義と戦う力を失うてしまいます!!(☆☆・☆)

一方、高島城では…

「クフフフ…愚論義の者共が一斉に暴れだせば、
 この城中は龍退治どころでは無くなる…当然無二斎は事態の収拾に大童になるであろう。
 じゃがいくら軍勢を繰り出したところで、生身の人間が魔界の者に叶う筈など有り得ぬわ。
 仮に嵐が挑むにせよ、計り知れぬ大人数の愚論義を相手に、どこまで粘れるかな?
 尤も、「蝦蟇丸」の盛った眠り薬のお陰で、奴は丸一日泥の眠りの中だがな。
 混乱は明日・百八日目の夕刻には頂点に達するであろう。藩の領民の大多数が死に絶え、
 軍勢も全滅した時!ワシが諏訪藩に止めを差す…。
 無二斎め、首を洗って待つが良い!!ウァッハッハッハハハハハハ・・・・・・!!!!」

「黒龍丸」が、更なる悪の企みを巡らしておりました・・・。
25名無し天狗:04/02/17 23:20 ID:ai1d1/2E
今宵は、ここまでに致しとう存じます。続きはまたの講釈で…。
26川o・-・):04/02/18 00:09 ID:hmiOeXvH
川o・-・)<前スレの時系列を貼っておきます
3万年前 
 三神官、剣聖ビルゲニアを封印。

江戸時代前期・三代将軍家光の治世
嵐、誕生。血車党との死闘。

10年以上前
村田、大谷の両親死亡。ゴーラ像奪われる。

4年前〜
研究所の爆発事故により、後藤真希死亡(?)。
ハカイダー(オリジナル)完成。すぐに封印。
流星塾に子供が集められる。
飯田、りんね、アメリカに渡る。

3年前
3月 01(まい)完成。仏像の中に隠される。
ソニン、ゼティマに囚われの身となる。

2年前
1月 ビジンダー(梨華)完成
4月 キカイダー(ひとみ)完成
福田明日香死亡(?)。市井紗耶香、ズバットへ。
安倍、ストロンガーへ、あさみ、タックルへ改造される。
9月 ハカイダー(マキ)完成。暴走のため組織はいったん壊滅。
安倍、あさみ、組織を脱走。
27川o・-・):04/02/18 00:17 ID:hmiOeXvH
1年前
流星塾、解散。
矢口真里、地球へ。石黒の義妹となるがゼティマに囚われの身となる。
倉庫の爆発により、加護亜依死亡。
ソニン、研究途中、自らを強化人間に。しかし組織に捨てられる。
ソニン、ユウキと出会う。カゲスター、ベルスター誕生。

半年前(連載開始)
仮面ライダーのの、誕生。加護博士死亡(?)。
「連続少女殺害事件」。ファイズのベルト、道重の元へ。
辻と、中澤、石黒が合流。
暴走していたハカイダー、プロフェッサーギルに服従回路をつけられる。
アマゾンのジャングルにて仮面ライダーアマゾン(ケイ)誕生。
アメリカのE&S研究所にて仮面ライダースーパー1(飯田)誕生。りんね死亡。
キカイダー、ビジンダー、辻達と合流。
九郎ヶ岳の発掘現場からグロンギ目覚める。
28川o・-・):04/02/18 00:17 ID:hmiOeXvH
現在
加護亜依復活。仮面ライダーあい、誕生。
矢口、仮面ライダーV3へ。
スカイライダー(紺野)誕生、合流。
スーパー1、アマゾン合流。ン・ダグバ・ゼバ登場。
Xライダー(高橋)誕生。ストロンガーと行動を共にする。
ライダーマン(ミカ)合流。
バイクロッサー(メグミ、マサエ)誕生。
ZX(小川)完成。
タックル死亡。ストロンガー、X、合流。
バイクロッサー組、合流。
X、マーキュリー回路設置、「真空地獄車」習得。
イナズマン(新垣)誕生、合流。
01復活。
カゲスター死亡。ソニン、守備隊の隊長へ。
ライダーのの、あい、ZXと戦闘、敗北。中澤連れ去られる。
ダブルライダー復活、中澤奪還作戦。
ファイズ(田中)、カイザ(亀井)、道重、登場。
ZXとの再戦。霊石アマダム目覚める。ZX合流。麻琴とあさ美の
絆が深まる。
01合流。
13人のゼティマライダー出現。
福田明日香、ホースオルフェノクとして覚醒する。
ラッキークローバー暗躍。

川o・-・)<あとのフォローはお願いします。
29名無し天狗:04/02/18 15:10 ID:g/upJP6e
と、「黒龍丸」、何やらピーンとひらめいたようであります。

「・・・?待てよ、不意討ちと言うのも面白い。
 数百年に一度、ワシは国を襲うて来たが、いずれも例外なく
 詳しく日付けを定めることなく現われてやった!
 いつもは最低百八日目で事を起こしたが、それより早く動くのもまた一興…。
 もう百七日もおり続けたのだ、もういいだろう。
 城下は「蝦蟇丸」に任せて、ワシはじっくりと高島城を平らげるとしよう…。
 そう言うことだ、使いの者よ。魔神斎殿と骸丸に、よしなに頼む。」

(☆)何と「黒龍丸」、笠雲が晴れるか否かの百八日目を待たず
百七日目の夜、つまり今宵行動を起こすつもりのようであります!!
「黒龍丸」の言葉を受け、いずこかに潜んでいた血車党の下忍が
報告に向かいます。

(☆)所変わって再び諏訪神社、「蝦蟇丸」と血車党下忍の一団は
境内に侵入し、「亜摩陀無」の行方を探索致しております。

「ゲロゲーロ!まだ見つからんのか!?」
「社の中も隈なく探りましたが、未だ見つかりません…!」

「蝦蟇丸」には一応ではありますが
下忍を指揮する権限があるようでございます。

「もっとよく探せ!
 ・・・いかに結界が張られていようとも、このワシが断ち切ってくれるわ!!」
30名無し天狗:04/02/18 15:30 ID:g/upJP6e
息巻く「蝦蟇丸」。と、その彼に声を掛ける者が。

「ヘッヘッへお侍…こんな夜更けに神社で何なさってるんで?」

「蝦蟇丸」はこの時、まだ佐伯重定に成り済ましておったのです。

「イ、イヤ…参拝じゃよ。そうそう、参拝。な。」
「嘘言っちゃいけませんや。参拝に来たってツラじゃあござんせんぜ。」
「な…何を申すか無礼者!大体その方は何者なんじゃ!?」
「ワシですかぃ?ワシゃあ鼬(いたち)小僧ってケチな野郎でさぁ。
 昔ゃ盗っ人で世間からはみ出しとりやしたが、
 今は性根をスッカリ洗って諏訪のお社の周辺警護…。
 このお社で怪しい真似なさると、お侍でも容赦しませんぜ!!
 ・・・それにお侍、あんたにゃ死人の臭いがする…。」

そう言うや重定…「蝦蟇丸」を睨みつける鼬小僧!!

「やっぱり只モンじゃねぇ!“月ノ輪”姐さん、ちょいとお願いしますよ。」
「おう!!」

鼬小僧の求めに応じて現われたのは先刻よりの熊の面のくノ一!!
その名を“月ノ輪”と申します!!

「蝦蟇丸」の脳裏に主人「黒龍丸」の言葉が響きます。

『熊の面のくノ一には用心せよ・・・。』

その熊の面のくノ一・“月ノ輪”を前に「蝦蟇丸」はたじろぎます!
31名無し天狗:04/02/18 15:45 ID:g/upJP6e
(☆)舞台は目まぐるしく変わって再び高島城。
ここは藩主・無二斎信智公のご寝所であります。

「無二斎殿、よくお眠り遊ばされておいでのようですな…。」

そこに忍び入ったのは他ならぬ「黒龍丸」!!
「黒龍丸」は信智公の傍近くまで近づくと、小声でこう囁きます。

「…言い伝え通り、沼の奥より黒い龍が現われましたぞ!
 信州諏訪藩、あなたのご治世は今!終焉の時を迎えるのです…。
 この藩は我ら血車党の物!お命!頂戴仕る・・・・・・!!」

言うや「黒龍丸」は刀を抜くと、布団の中の信智公を貫かんと打ち下ろします!!

・・・ところが!!(☆・☆)
32名無し天狗:04/02/18 16:07 ID:g/upJP6e
「黒龍丸」の刀の切っ先が布団を突く瞬間、
その布団がバァッ!!と跳ね上がり、「黒龍丸」に覆い被さったのであります!

「な、何だ!?」

慌てて布団を撥ね退ける「黒龍丸」。そこにいたのは・・・・・・!!(☆)

「・・・!!き、貴様…ユキ!!?」
「お主が沼部殿か…お初にお目に掛かる。
 やはりお主が、此度の一件の首魁であったのか…。
 初対面で私がわかると言うことは、当然お主は
 血車党の回し者と言うことになるな!!」

(☆)言うが早いかユキは背の太刀・ハヤカゼを抜いて
「黒龍丸」に斬り掛かります!
そのユキの刃を咄嗟に受ける「黒龍丸」!!

「貴様ぁ・・・無二斎をどこへ遣った!!
 イヤ、それよりも貴様は「蝦蟇丸」の眠り薬を飲んだ筈…。」
「ほう、「蝦蟇丸」と申すのか、あの重定殿の偽者は。
 その「蝦蟇丸」こそ今どこにいる!?」
「知る必要は無い!貴様こそワシの問いに答えろ!!無二斎はどこだ!!」
「それこそ貴様の知ったことでは無い!!」

鍔迫り合いの中、口論する両名。
実は信智公は、ユキの注進から危険を察して領内の未開の山奥へと落ち延び、
谷一族に守られていたのであります。
33名無し天狗:04/02/18 16:35 ID:g/upJP6e
「それに眠り薬など、匂いでわかったわ!!」
「く…おのれええええ!!!」

(☆)激しい斬り合いの末、両名共に城の外へ!!
そして互いに譲らず、一進一退の激しい攻防!!

「「蝦蟇丸」め、一体何をもたついておるのだ!!
 もうそろそろ愚論義が暴れだしてもよい頃合いなのに、
 何の音沙汰も無いとは!!」
「!やはり「蝦蟇丸」は諏訪神社か!!」
「そうともよ!!」

「蝦蟇丸」の行動の遅れに苛立つ「黒龍丸」。と、そこへ…

(☆)「「蝦蟇丸」とはこ奴のことか!?」

「黒龍丸」を嘲笑う女の声と共に彼の物に突き付けられた物、
それは!!(☆)

畳一畳分の大きさの灰色の蝦蟇蛙の上に裃姿の侍の上半身、
されど頭は灰色の蝦蟇蛙その物と言う世にも禍々しき化け物の死骸!!

「が…「蝦蟇丸」!?えぇい、この役立たず!!」

そして「黒龍丸」の目の前に現われたのは、諏訪神社を血車党から
幾度と無く防いできた熊の面のくノ一…“月ノ輪”その人であります!!
34名無し天狗:04/02/18 16:45 ID:g/upJP6e
「そうか・・・あなたが諏訪のお社を・・・かたじけない。」

神社を救った恩人と対面し、ユキの心は感謝で満ち溢れておりました。
と、更に思い掛けない人物が“月ノ輪”の背後よりヒョッコリと現われたのであります。

「お主・・・鼬小僧!!?」
「ハハハハ…心配ご無用!性根はもう直りやしたぜ!!
 名主さんから諏訪神社のことを知って、この姐さんと一緒に守ってたわけでさ。」
「妙な気は起こさなかったであろうな?」
「まさか。」

ともあれ、心強い助太刀を得て、ユキは更なる勇気を振り絞り、
目の前の「黒龍丸」に挑みます!!(☆・☆)

「貴様ら・・・もう許さん!許さんぞおおおおおおお!!!!」

(☆)怨嗟の声を上げるや「黒龍丸」は真の姿を現わします!!(☆)
35名無し天狗:04/02/18 16:59 ID:g/upJP6e
その真の姿たるや、首の根よりの胴体が人間の身体の形を成し、
逞しい四肢もまた人間の手足の如く。長い首と尾を持ち、
全身を真っ黒な鱗に覆われた、身の丈三十尺はあろうかと言う
巨大な「龍人」にございます!!(☆・☆・☆)

他を圧倒するその姿を目の当たりにして、ユキもまた化身の術に入ります!
片膝をついてしゃがみ、ハヤカゼを逆手に持ち、その峰に左手のひらを添えて
グッと両目を閉じると、ユキは一心に念じました・・・。

「吹けよ嵐・嵐・嵐!とぉりゃあああぁぁー!!」

(☆)裂帛の気合いと共におもむろに立ち上がったその瞬間、鳥の羽が竜巻となって
ユキの身体を取り巻き、彼女の身体を「人ならざる者」へと変えていきます!!
(☆)やがて羽竜巻が吹き払われた時、ユキは赤鷹の鳥人へと変貌を遂げたのであります!!

「変身忍者!嵐!!見参!!!」

(☆)然様。この鳥人こそ、唯一血車党に抗う力を持つ「変身忍者嵐」その人でございます!!
36名無し天狗:04/02/18 17:02 ID:g/upJP6e
ただ今は、ここまでに致しとう存じます。続きは今宵の講釈で…。
37名無し天狗:04/02/18 20:56 ID:xlgcZOru
(☆)「猪口才な、死ねええええ!!!」

猛り狂う「黒龍丸」は口から火炎を吐いて嵐を襲います!
その火炎を嵐はサッとかわし、「黒龍丸」に飛び掛かりますが、
「黒龍丸」に容易く弾かれ、天守閣の石垣に激突!!

苦悶に顔を歪める嵐。ですがすぐに立ち上がり、
両脚を八の字に踏ん張って身構えます。

(☆)そこへ“月ノ輪”が嵐の加勢に入ります。

「今こそご恩返しの時!嵐殿、助太刀仕る!!」
「かたじけない!!」

嵐と“月ノ輪”は協力して「黒龍丸」退治に乗り出しました。
二人は「黒龍丸」の周りをビュンビュンと飛び回り翻弄します!!

「えぇい、小賢しい!!」

どうやら「黒龍丸」その大きな図体故にあまり素早くは動けぬようであります。
ですが強固な鱗に覆われた身体を盾に二人の刃を悉く弾き返します!!

(☆)と、嵐は「黒龍丸」の死角に回りつつ頭上近くまで跳躍し、
以前戦った「血車大蛇」の時のように彼の者の目を狙います!!

「この手の魔物は目だけは脆い!もらった!!」

(☆)だが「黒龍丸」も負けてはいない!!
その両目が邪悪に光ったかと思うと、
そこから奇妙な光線が放たれたのであります!!(☆・☆・☆)
38名無し天狗:04/02/18 21:12 ID:xlgcZOru
この「黒龍丸」の怪光線を嵐は寸での所でかわします!
嵐にかわされた光線はそのまま彼方の櫓に命中、その刹那!(☆)
櫓は轟音と共に、木っ端微塵に大爆発!!

流石は伝説の魔物…嵐と“月ノ輪”に戦慄が走ります。

(☆)勝利を確信した「黒龍丸」はその巨体と怪力に物を言わせ、
城中の建物や塀を片っ端から破壊して参ります!!
忽ち城中より響く高島家の家臣並びに女中たちの逃げ惑う悲鳴!!
崩れ落ちる壁や天井に石垣が彼らを襲い、ある者は下敷きや生き埋めとなって死に、
ある者は退路を断たれて立ち往生するなど右往左往!!
瞬く間に高島城は地獄絵図の様相を呈したのであります!!(☆☆・☆・☆)

この凄惨な様を目の当たりにして成す術無き嵐たち。
このまま、黙って指を咥えて見ているしか無いのでありましょうか…。

(☆)だが嵐は挫けません。気力を振り絞って立ち上がると、
相討ち覚悟で「黒龍丸」を凝視します!
どうやら、狙いは一つと見たようであります。
39名無し天狗:04/02/18 21:33 ID:xlgcZOru
「いくら外見を強くしようとも、その“内側”まではどうすることも出来まい!」

(☆)何と嵐は、「黒龍丸」の体内に飛び込み、
体内から一気に攻めようと言うのであります!!(☆・☆☆・☆☆)

確かに内臓は脆うございます。
しかしその手段はあまりと言えばあまりに無謀!!(☆・☆)
下手を致さば胃液で消化されることも充分に有り得ます!!
生還の可能性は殆ど皆無に等し!!(☆)
ですがこの魔物の横暴を食い止めるにはそれしか他に道は無しと、
嵐は決死の覚悟で臨みます!!

嵐一人を死なせてはならじと、“月ノ輪”が声を掛けますが、
この時思い掛けぬ言葉が!!

「嵐殿・・・ユキさん!!あたしも行きます!!共にあの龍を!!」
「・・・・・・!!その声は……!!?」

驚く嵐。確かにそれは聞き覚えのある声でした。

「あなたは・・・お美和さん!?お美和さんなのか!!?」
「ええ!今度はあたしがあなたを助ける番です!!」

(☆)・・・実はお美和は谷一族の隠れ里で治療を受けた際、
「何としてもユキさんに恩返しがしたい、ユキさんの力になりたい!!」と
頭領・谷の鬼十に必死に嘆願しておりました。
初めは断った鬼十ではありましたが、お美和の心からの訴えと
その熱意を汲み、これまでの「狂い毒蛾」の禍々しい化身を打ち消し、
新たに“月ノ輪”の力を与えたと言う訳でございます。
40名無し天狗:04/02/18 21:53 ID:xlgcZOru
「お美和さん…あなたはそこまで……
 相判った。我々にもこれまであなたには大きな恩がある。
 共に修羅の道を歩もうぞ!!」
「はい!!」

「何をゴチャゴチャ言っておるかああ!!!」

お城を破壊していた「黒龍丸」は狙いを二人に変えて
ズンズンと肉薄します。
嵐と“月ノ輪”、いやさ、ユキとお美和は決死の覚悟で
その「黒龍丸」の口内へと飛び込んで参ります!
互いの真意を知った二人に、もう、迷いはございませんでした。

(☆)大きく跳躍した嵐と“月ノ輪”は、
吸い込まれるように「黒龍丸」の口内へと入って行きます。

「ぐっ!!貴様ら、何をするつもりだ!!?」

うろたえる「黒龍丸」。二人は既に咽喉の奥へ!!(☆☆)
二人は食道を通過中の折にも、その肉壁を斬り付けておりました。

「・・・・・・!!ぐおおおおおお!!!!」

轟音を響かせて「黒龍丸」は転倒、そのまま苦悶からのたうちます!!
(☆)一方、嵐たちは「黒龍丸」の内臓と言う内臓をズタズタにしつつ、
奥へ奥へと進みます!!

(☆)やがて二人は「黒龍丸」の胃袋に到達致しました!!
41名無し天狗:04/02/18 22:11 ID:xlgcZOru
嵐たちに体内を悉く斬り刻まれ、「黒龍丸」は先刻までの勢いが嘘のように
全身を痙攣させております。

一方、胃袋の中の嵐たちは、時折溢れ出す胃液に注意しつつ、
その肉壁に深々と刀身を突き入れ、大きく斬り裂いて参ります。
そして胃袋を完全に使い物にならなくした二人は二手に分かれます。
“月ノ輪”は腸を、そして嵐は心臓を各々狙い、生還を誓って散って参りました。

(☆)やがて心臓を見つけた嵐は、その名の通り嵐の如く怒涛の斬撃を見舞います!!
一方の“月ノ輪”も、その姿の元となった月ノ輪熊を思わせる奮迅の大暴れ!!
あれよあれよと言う内に腸の肉壁は刀傷で完膚なきまでボロボロに!!

流石の「黒龍丸」も、もはや、これまででございます。

暫くの痙攣の後、二人の猛襲を受け続けてきた「黒龍丸」は、
伝説の魔物とは思えぬ程、弱々しく無惨な最期を遂げたのでした。

そして夜明けを迎えた時、嵐と“月ノ輪”は「黒龍丸」の口の中から
奇跡的に生還し、互いの健闘を称えて力強い握手を交わしたのです。
その二人の姿を、昇る朝日が美しく照らしておりました・・・。
42名無し天狗:04/02/18 22:29 ID:xlgcZOru
それ以降、血車党は「君子危うきに近寄らず」とて
諏訪神社から手を引き、ここに信州諏訪藩の危機は、完全に去ったのであります。

尚、この霊石「亜摩陀無」とそれを収める「嗚呼玖瑠」が三百年以上の時を越えて
平成の世に加護博士を通じて現在の仮面ライダーあいこと加護亜依の元に亘ったのは
皆様ご存知の通り。まさに、亘るべき人物に亘ったと申せましょう。
そして同じ平成の世に目覚めた愚論義を相手に、ライダーあいは「多岐優空我命」の
ご加護のもと、戦い続けているのであります。

(☆)さて、無二斎信智公も無事高島城にご帰還。
将軍家よりお城の修築のお許しを頂戴し、併せて此度の一件の犠牲になった
全ての者たちを心より供養致しました。

「イヤ、ユキ殿、此度のこと、実にかたじけない。そなたこそ、神に匹敵する勇者なり!!」

信智公はユキに多大なる感謝の意を表します。ですが・・・

「私は大したことは致しておりませぬ。私はただ諏訪藩の危機を救いたいと思うた、
 それだけでございます。」
「いつもながら謙虚じゃのぉ。うむ、実にあっぱれ!」
「勿体のう存じます。それに…あの「黒龍丸」を斃したのは……嵐殿でござる。」
「何?嵐?何者じゃそれは?今いずこにおる?召抱えたいものじゃ。」
「イエ…あのお方はもういずこかへと旅立って参りました。
 それに…嵐殿もきっと今の私と同じ気持ちでございましょう。」
「そうか……。」

最期まで謙虚さを忘れぬユキでありました。
43名無し天狗:04/02/18 22:58 ID:xlgcZOru
ここに信州諏訪は、ようやく平和を取り戻りました。空は一点の曇りも陰りも無く、
平和の戻った信州諏訪を祝福するかの如くカラリと晴れ渡っております。
あの忌まわしき笠雲も、もうございません。

「お美和さん、先程は実にかたじけない。しかし、よいのか?
 これでまたあなたは血車党に狙われることになるが・・・。」
「構いません!あたしはもう昔のあたしじゃないんです。
 それに…ユキさんはあの時仰ってたじゃないですか。
 「共に修羅の道を行こう」って。ですから、これからの旅もご一緒します!
 楽しくワイワイやりながら、土地土地の民謡を唄いながら、ネ♪」
「お美和さん…
 フフ…そうだな。旅は人数が多いほど楽しい!」

かくしてお美和は、再びユキたちと旅をすることになったのでございます。(☆)と、そこへ・・・

「おぉ〜〜〜い、待ってくれぇええ〜〜〜!!!
 …待って下せぇ、ワシも仲間に入れて下せぇ!!」
「鼬(いたち)小僧!!?」
「ワシゃユキ殿や名主さん、諏訪神社の宮司さんと出会って、今度こそ本当に目が醒めた!!
 自分の人生を見つめ直し、あんた方に恩返しして、必ず真人間になってみせまさぁ!!ですからどうか・・・!!」

鼬小僧は真剣です。目が訴えております。

「仕方ないな、今度だけだぞ。」
「!!…ありがてぇ、ありがてぇええぇ!!!」
「但し、今度また道を踏み外したその時は…わかっておろうな?」
「へぇ!そりゃあ勿論…!!」

(☆)こうしてまた一人、粗忽者の鼬小僧が新たに旅の一行に加わり、四人の…
時折「三人と一頭」になるやもしれませんが、彼女たちの世直し旅は続くのでございます。

  第五十二話「呪われし神話の行方〜変身忍者嵐・第三章〜」 完
44名無し天狗@締め口上:04/02/18 23:03 ID:xlgcZOru
(☆)これをもちまして「変身忍者嵐・第三章」、読み切りにございます。
長らくのお付き合い誠にありがとうございまする。
この「締め口上」までが私めの此度の講談の全てにござりますれば、
データスレご編纂の方には重ね重ねご迷惑とは存じまするが何とぞ
お引き合わせの程宜しくお願い申し上げます。

では、皆様方の無病息災をお祈りしつつ、
私めの講談、一先ずお開きと致しとう存じまする。
45名無し天狗:04/02/19 16:44 ID:jyrtToCk
今回の講談で語り損ねた点をいくつか・・・

・高山厳実は“月ノ輪”と鼬小僧の加勢に入り、共に「蝦蟇丸」を斃す
・「亜摩陀無」は神社の地下に隠匿
・「黒龍丸」の変身は眼帯を外して自らの封印を解いた
・お順も「蝦蟇丸」撃退に参加

…などなどでございます。誠に相済みませんです。
46名無し募集中。。。:04/02/19 23:00 ID:FmHmM7mw
 お疲れ様でした。今までにない新しい語り口で新鮮でした。こういう多種多様な
表現方法が同居するのがこういうスレのいいところかも。
47名無し天狗:04/02/19 23:35 ID:6cm0TZjs
>46さん
ありがとうございます。
今後の励みになります。
48名無しハンペン:04/02/20 19:46 ID:oXz6ILjC
そろそろスレタイに沿った展開を。
ということで、まずはインカの秘宝の話から。
またしばらくよろしくお願いします。
49名無しハンペン:04/02/20 19:46 ID:oXz6ILjC
第53話 「死闘! 十面鬼」
50名無しハンペン:04/02/20 19:47 ID:oXz6ILjC
「十面鬼よ。ギギとガガの腕輪の奪還はどうなっている」
「は、ははっ、今しばらくお待ちを」
「馬鹿めが! あれはお前が考えているよりもずっと大事なもの。
 もう我々に猶予の時はないのだ。一刻も早く腕輪を手に入れねばならん」
「その通りだ。約束の刻はすぐそこまで迫っている」

薄暗い部屋。
その中央に位置するものは、最初大きな岩のように見えた。
だがよく見ると、それにはいくつもの邪悪な顔が埋め込まれていた。
怪人、十面鬼。
己の欲望のために、自らの体を改造した恐るべき悪魔。

その十面鬼を周りに浮かぶのは、白いローブを身に纏った三人の神官。
ダロム、バラオム、ビシュム。
世紀王を探索する使命を帯びた三人は、そのために必要である腕輪の奪還を
十面鬼に命じていた。

「よいか。腕輪を手に入れることは、我らゼティマにとって最重要項目だ。
 それができぬとあらば、貴様の立場も危うくなる。
 いや、立場どころか命すら無事である保証はないのだぞ」
「ぐ、く……。分かった。
 今度こそ必ず腕輪は手に入れる。あ奴、アマゾンを倒してな」
「よかろう。これが最後のチャンスだ。次はないものと思え」
「分かっている。この俺、ゴルゴスの命に賭けて」
「必ず手に入れるぞ」
「アマゾンの首とともに」
「インカの至宝を我が手に」

ゴルゴスの言葉に残る顔が追従する。
ゴルゴスは拳を握り締めた。その心の底にどす黒い決意を込めて。
51名無しハンペン:04/02/20 19:47 ID:oXz6ILjC
その頃、アマゾンライダーことケイは、『ペット探偵』のアルバイトに精を出していた。

「やっぱり……ここにもあったか」

うっそうと茂った雑草の奥。
そこには動物の”ふん”が転がっていた。

「この感じからすると……近いわね。
 食べるものがあって、雨を避けることが出来て……」

ケイは右手にそびえる壁を見上げた。
壁の向こうは工事現場のようだった。
不景気の所為で工事自体が中止になったのか、造りかけのビルはそのままで放置されている。
暮れかけた夕日に浮かび上がる、うち捨てられた鉄骨は、まるで何かの死骸に見えた。
もちろん、中から人の気配は感じない。

「やっぱ、ここかな」

辺りに誰もいないのを確認し、ひょいと壁に飛び乗る。
自分の身長の倍ほどもある壁を難なく乗り越え、ケイは向こう側に着地した。

きょろきょろと辺りを見渡す。
配材がところかまわず積み上げられていた。
その中で、野生のカンがある一点を示す。
52名無しハンペン:04/02/20 19:47 ID:oXz6ILjC
「いたいた」

果たして、積み上げられたパイプの陰に、真っ白いネコが小さく丸まって隠れていた
怯えさせないようにそっと手を差し込む。

「よしよし、もう大丈夫だよ。
 さ、おうちに帰ろうね」

任務を完了させ帰路につこうとしたケイは、何かの気配を感じて足を止めた。

「何これ……この感じ……」

決して強くはないが、確かに感じる良くないものの気配。それはビルの中から感じられた。
一瞬躊躇した後、ケイはビルの入り口へと向かう。
建物の中は妙に生臭い匂いが充満していた。
生きているものの気配は感じない。いや、むしろこれは……死の香り。
薄暗いその中へと慎重に歩を進める。
ケイは柱の陰に倒れているものを見つけて目を見開いた。
ねぐらを求め建物に入り込んでいたホームレスだろうか、
何人かの男がそこに折り重なって倒れていた。
慌てて駆け寄り抱え起こす。しかし、男の体は既に冷たく固くなっていた。

「一体、誰がこんなこと……」

男の首筋にケイは目をとめた。
そこは何かに刺されたように、小さな穴が二つ並んで開いていた。

「これは……」
53名無しハンペン:04/02/20 19:48 ID:oXz6ILjC
傷を調べようとしたケイは、別の気配を感じて顔を上げた。
気配の先、入り口に鋭い目を向ける。

「キョエーイ!! ここにいたのか、アマゾン! 腕輪を渡せ!」

奇声を上げて入ってきたのは、白いフリンジのついた赤いボディスーツを着た女達。
十面鬼直属の部下である女戦闘員、赤ジューシャ達であった。

「おまえら、どうしてここに! まさか……この人達もおまえらが!」
「何のことだ。我らの目的はお前の持つ腕輪と……お前の首だけだ!」

ネコを抱えたまま、襲いかかる赤ジューシャの攻撃をひらりとかわす。
バランスを崩した敵に蹴りを叩き込みながら、ケイは珍しく頭を使っていた。

──この人達を襲ったのはこいつらじゃなかった。じゃあ一体誰が。

右から来た敵に肘を当て、左から来た敵に脚払いを食らわせる。
そのまま距離を取ったケイは、赤ジューシャの集団と対峙した。

「さあ、来い!」

小脇にネコを抱えながら、そう叫ぶ。
54名無しハンペン:04/02/20 19:50 ID:blG1fSmT
突然、天井付近からバサバサと羽根の音が響いた。
とまどう赤ジューシャの一人に、暗闇から影が襲いかかる。

「うわああああ!」
「な、何!?」

飛んできた影は赤ジューシャの首筋に牙を突き立てた。
一筋の赤い血がつぅっと垂れる。

──どさりと音を立てて赤ジューシャが倒れた。
体を隠していたものがなくなり、乱入者の正体が明らかになった。
尖った耳、手から伸びる薄い羽根、白い牙から真っ赤な血が滴る。
まるで人とコウモリを掛け合わせたような姿。
怪人は、耳に付けたピアスをかちゃりと鳴らす。

「ラヅゴグザグ ヂゾグデデジャス」
「おのれ! 何者だ!」

仲間の敵を取ろうと赤ジューシャ達が殴りかかる。
それらの攻撃を難なくかわし、コウモリ怪人は赤ジューシャ達に翼を振るった。
そして、倒れたジューシャに次々牙を突き立てていく。
腐臭漂うビルの中に、何度も悲鳴が響き渡った。
程なく赤ジューシャ達は皆、床にその体を横たえた。
獲物のいなくなった怪人は、ゆっくりとケイに向き直る。
55名無しハンペン:04/02/20 19:51 ID:blG1fSmT
「な、何なの、こいつ」

突然の出来事に呆然としていたケイは、殺気を感じて思わず身構えた。

「ズギザ ゴラエザ」

突っ込んでくる怪人の攻撃を、ケイは身を沈めてかわした。
そのままごろごろと転がり、敵から離れる。

「そうか、こいつがさっきの人達を襲った犯人」

無惨にも殺された人の無念を思い、ケイの胸に怒りが燃える。
抱えていたネコをそっと床に置くと、ケイは相手を睨み付けた。
そして、両手を広げて叫ぶ。

「ウゥゥゥ……アァァマァァゾォォォォーン!」

怒りのこもった目が赤く光った。まばゆい光がその体を包み込む。

「ケケェェェェン!」

大トカゲに似た緑色の体。
アマゾンライダーは威嚇するように一声叫んだ。
56名無しハンペン:04/02/20 19:51 ID:blG1fSmT
続く
57名無しハンペン:04/02/21 20:25 ID:IkdDh/iF
「ビカラグ バス ビ ”ライダ”!?」

アマゾンを見た怪人は驚いたような声を出した。
だが、すぐに思い直したようにケイを指さす。

「チョグゾギギ ゴセグ ジャデデジャス!」

言葉は分からないが、戦おうという意志は感じられた。
無論、ケイも退くつもりはない。

翼を振り上げ、殴りかかってくる敵。
右へ左へと、軽やかにアマゾンは身をかわす。
焦れたのか、怪人は大きく翼を振り上げた。
勢いを付けた攻撃を前転してやり過ごし、無防備になった背中に飛びかかる。
今度はアマゾンがその手を振り上げた。
何度も手刀を打ち下ろすと、たまらず怪人の口からうめき声が漏れる。
アマゾンはさらにアームカッターで切り裂こうと、腕を振り上げた。
怪人はそこを力任せに振りほどかれく。再び距離を取る両者。

「ギギィ………」

怪人は歯をむき出した。吹き寄せてくる感情、それは明らかな怒りだった。
ばさりと音を立ててコウモリ怪人は舞い上がった。
空中から勢いを付けて襲いかかる。鋭い爪がぎらりと光る。
アマゾンの肩から血が噴き出した。
58名無しハンペン:04/02/21 20:26 ID:IkdDh/iF
「くっ、このぉ!」

アマゾンも爪を振るうが、敵の変則的な動きにその反撃も相手の体をとらえきれない。
狭い場所をうまく使って変幻自在に攻撃してくる敵により、
次々とアマゾンの体に傷が刻まれていく。
黴くさい廃屋の中に、濃厚な血の香りが混じった。

「がぁぁ!」

このままでは埒があかないと感じたアマゾンは、地面を蹴る。
三角跳びの要領で大きく舞い上がる。
しかし、やはり空中での姿勢制御は相手の方が上手だった。
すんでの所で身を翻した怪人は、逃げ場の無くなったアマゾンを地面に叩きつける。
よろよろと起きあがったアマゾンに、怪人は後ろから組み付いた。恐るべき牙が首筋を狙う。
だが、それこそがアマゾンの誘いだった。掴んできた腕に逆に噛みつく。
叫び声をあげてのけぞった敵に、オーバーヘッドキックの要領でつま先を叩き込んだ。
慌てて飛び離れた怪人は、想像以上に乱暴なアマゾンの戦い方に業を煮やしたのか、
羽を広げて窓から外へ飛び出した。

「待て!」

その後を追って、アマゾンも外に飛び出す。
59名無しハンペン:04/02/21 20:27 ID:IkdDh/iF
だが、そこに待ち受けていたのは、予想もしなかった相手だった。

「アマゾンよ!」
「お前は……十面鬼!」

たくさんの顔が埋め込まれた、巨大な岩の真ん中から伸びる男の上半身。
その名の通り、鬼のような顔を歪ませているのは、十面鬼ゴルゴスであった。

「どうしてお前がここに!?」
「もちろん、貴様の腕輪を求めてだ。
 思わぬ邪魔が入ったがな」
「じゃま……。そうだ! 今の奴は一体……」
「奴はおそらくグロンギ。古代より蘇りし者達」
「グロンギ?」
「お前が知る必要など無い!
 それよりもアマゾンよ、決着を付けようではないか」
「決着ですって」
「そうだ、俺とお前二人っきりでな。
 これが最後の戦いだ。俺は必ずお前の腕輪を奪い取る。
 断れば……手当たり次第に人間どもを皆殺しにしてやる」

不気味な顔でこちらを睨む十面鬼を、アマゾンは真っ直ぐ睨み返す。

「そんなことはさせない!」
「では鬼天狗岳に来い。一対一の決闘だ」
「いいわ、受けてあげる」
「良い覚悟だ。先に行って待っているぞ」

不気味な笑い声とともに飛び去っていく十面鬼を、アマゾンは黙って見つめつづけた。
60名無しハンペン:04/02/21 20:28 ID:IkdDh/iF
「キュー、どうするんだケイ」
「モグラ! いたの?」

変身を解いたケイは驚いて足元を見下ろす。
そこには、モグラ獣人がぼこりと地面から顔を出していた。

「ここは俺もねぐらにしてた場所なんだよ。
 それより本当に一人で行くつもりなのか。
 アイツは恐ろしい奴だぞ。決闘だと言ったって罠に違いない」
「それでも行かなきゃ。これはあたしの問題。
 あたしがケリをつけなきゃいけないの」
「ケイ……」
「ありがと、心配してくれるんだね」

にっこりと笑うケイに、モグラ獣人はあたふたと手を振る。

「ば、馬鹿やろう。俺は……別に……」
「大丈夫。きっと戻ってくる。
 ね、モグラ、悪いけどこのネコ、みんなのところに届けておいて。
 あたしの代わりに。お願い」
「……分かった。気を付けろよ」
「うん」

顔を上げたケイの目には、確かな決意の色が炎のように激しく映っていた。
61名無しハンペン:04/02/21 20:28 ID:IkdDh/iF


いずことも知れない場所に、奇妙な衣装を着た数人の男女が集まっていた。
聞き慣れない言葉を使う、見慣れない格好をした者達。
戦闘集団グロンギ族。諏訪神社の碑文にも記されていたという太古の怪人達。

「ゴオマ」

額に薔薇のタトゥーを施した、白いドレスの美女が声を発した。
呼びかけられた男が顔を上げる。暑苦しい黒のコート、目深にかぶった黒の帽子。
男はぎょろりと目を見開く。その前に美女は静かに立った。

「ダダバダダ ゴグレ ダ ”ライダ”」
「ゴグザ ババジ ギダレヅンダゼ」

男は得意げににやりと笑いピアスをかちゃりと鳴らす。
その顔に美女は手を伸ばした。頬から顎へと細くしなやかな指が動く。
男の顔にうっとりするような恍惚の表情が浮かんだ。
だが突然、その手がツタに覆われたような不気味なものに変わった。

「グゥ……ゥオオ……」

ツタに絡め取られた男は苦悶の声を上げた。男がのたうつ様子を女は無表情なまま眺める。
散々悲鳴をあげさせ、ようやくツタが離れた。男はずるずるとその場に崩れ落ちる。

「余計なことを」

小さな声でそう呟き、倒れ伏した男を冷たく見下ろす。
62名無しハンペン:04/02/21 20:29 ID:IkdDh/iF
「ズギザ ゴレン バンザ」

集団の中から一人の男が歩み出た。
大きく盛り上がった全身の筋肉。意味ありげに描かれた顔の文様。

「ゴセビ ジャサゲソ」
「ザインか」

ザイン──それが男の名前だろうか。
男は野性味溢れる顔でにっと笑った。
そして傍らに置いてあった石板に線を引く。

「ドググジバンゼ バギンビンザ」
「いいだろう」

美女は、男にいくつかの勾玉のようなものがとめられた、腕輪らしきものを渡した。
そして男の腹に巻いていたベルトに指輪を押し当て、右に捻る。
何かのスィッチが入ったようなかちりと言う音がした。

「ゴゼバ ボギズドバヂバグ」

ザインは倒れたままの男──ゴウマを見下ろし嘲笑する。

「バゾガゲデジャスン ズ・ザイン・ダ」

ザインは意気揚々と外へと向かう。
その後ろ姿を、ゴウマは暗く燃える目でずっと見送っていた。
63名無しハンペン:04/02/21 20:35 ID:gjUi9Pbf
続く

すみません、sage忘れてました。
それと明日はお休みさせていただきます。
64名無し天狗:04/02/21 20:56 ID:R1aAzeDA
>名無しハンペンさん
>61
「諏訪神社の碑文にも記されていたという太古の怪人達。」

日本神話に無理矢理こじつけた私の設定が活かされていたとは!!
本当にありがとうございます!!!

続きをお待ちしてますのでマイペースで頑張ってください!!
65名無し募集中。。。:04/02/22 00:58 ID:JGbhjJvK
ザインったらアレか、AKIRAだね。
66名無し天狗:04/02/22 13:01 ID:32q+jaj2
<*これは「保全カキコ」です。
 名無しハンペンさんのお話しの流れには含まれません。>


・・・加護亜依の左二の腕を強く締め付ける紫色のマフラー…。

「…何やろ…、マフラーがウチに何か訴えかけて…導いてるような気が……。」
67名無し天狗:04/02/23 16:50 ID:mD8hh41A
保全がてらに時系列追記・・・(お節介?)

3万年前 
 三神官、剣聖ビルゲニアを封印。

神武天皇の時代
「凛斗(りんと)」一族の多岐優空我命(たきすぐるくうがのみこと)、
愚論義(グロンギ)を信州の九郎ヶ岳に封印。

江戸時代前期・三代将軍家光の治世
嵐、誕生。血車党との死闘。

10年以上前
村田、大谷の両親死亡。ゴーラ像奪われる。

4年前〜
研究所の爆発事故により、後藤真希死亡(?)。
ハカイダー(オリジナル)完成。すぐに封印。
流星塾に子供が集められる。
飯田、りんね、アメリカに渡る。

3年前
3月 01(まい)完成。仏像の中に隠される。
ソニン、ゼティマに囚われの身となる。

2年前
1月 ビジンダー(梨華)完成
4月 キカイダー(ひとみ)完成
福田明日香死亡(?)。市井紗耶香、ズバットへ。
安倍、ストロンガーへ、あさみ、タックルへ改造される。
9月 ハカイダー(マキ)完成。暴走のため組織はいったん壊滅。
安倍、あさみ、組織を脱走。
68名無し天狗:04/02/23 16:50 ID:mD8hh41A
1年前
流星塾、解散。
矢口真里、地球へ。石黒の義妹となるがゼティマに囚われの身となる。
倉庫の爆発により、加護亜依死亡。
ソニン、研究途中、自らを強化人間に。しかし組織に捨てられる。
ソニン、ユウキと出会う。カゲスター、ベルスター誕生。

半年前(連載開始)
仮面ライダーのの、誕生。加護博士死亡(?)。
「連続少女殺害事件」。ファイズのベルト、道重の元へ。
辻と、中澤、石黒が合流。
暴走していたハカイダー、プロフェッサーギルに服従回路をつけられる。
アマゾンのジャングルにて仮面ライダーアマゾン(ケイ)誕生。
アメリカのE&S研究所にて仮面ライダースーパー1(飯田)誕生。りんね死亡。
キカイダー、ビジンダー、辻達と合流。
九郎ヶ岳の発掘現場からグロンギ目覚める。
69名無し天狗:04/02/23 16:52 ID:mD8hh41A
現在
加護亜依復活。仮面ライダーあい、誕生。
矢口、仮面ライダーV3へ。
スカイライダー(紺野)誕生、合流。
スーパー1、アマゾン合流。ン・ダグバ・ゼバ登場。
Xライダー(高橋)誕生。ストロンガーと行動を共にする。
ライダーマン(ミカ)合流。
バイクロッサー(メグミ、マサエ)誕生。
ZX(小川)完成。
タックル死亡。ストロンガー、X、合流。
バイクロッサー組、合流。
X、マーキュリー回路設置、「真空地獄車」習得。
イナズマン(新垣)誕生、合流。
01復活。
カゲスター死亡。ソニン、守備隊の隊長へ。
ライダーのの、あい、ZXと戦闘、敗北。中澤連れ去られる。
ダブルライダー復活、中澤奪還作戦。
ファイズ(田中)、カイザ(亀井)、道重、登場。
ZXとの再戦。霊石アマダム目覚める。ZX合流。麻琴とあさ美の
絆が深まる。
01合流。
13人のゼティマライダー出現。
福田明日香、ホースオルフェノクとして覚醒する。
ラッキークローバー暗躍。
ケイの腕輪と世紀王との関係が明らかに。
ゼティマ北信越支部(旧GOD機関)壊滅。
70名無しハンペン:04/02/23 19:26 ID:VWN6n3kp
ライガーのライバルだった時期もありましたね>AKIRA

>名無し天狗さん
年表作成お疲れ様でした。

続きです。
71名無しハンペン:04/02/23 19:26 ID:VWN6n3kp


その少し後、ジャングラーを駆ったケイが鬼天狗岳に到着した。
辺りはすっかり暗くなっている。夜目の利くケイでも全てを見通すことは出来ない。

「良く来たな、アマゾンよ」

ぼうっとケイを中心に鬼火が燃えた。円形にその場が照らし出される。
円の中心、その上空には十面鬼が巨体を浮かべていた。

「約束通り、決着を付けようか」
「望むところよ。……アァァマァァゾォォォォーン!」

アマゾンに変身したケイは、背びれを逆立てて身構える。

「死ね!」

十面鬼の巨大な口から火球が打ち出された。
素早い動きでその攻撃をかわす。アマゾンの周りで、次々に火球が弾けた。

「どうしたアマゾン! お前の力はそんなものか!」

休む間もなく繰り出される攻撃。
ついにアマゾンの目の前に火球が落ちた。爆煙が巻き起こる。
72名無しハンペン:04/02/23 19:26 ID:VWN6n3kp
「どうだ!」
「ケケェェ!」
「なに!?」

爆煙に紛れ、アマゾンは十面鬼の背後を取った。
腕のアームカッターがぎらりと光る。

「ぬぉお!」

闇を引き裂く一閃。
だが、アマゾンの攻撃は十面鬼を捉えきれなかった。
十面鬼はぎりぎりのところで斬撃を避けていた。
邪悪なる九つの顔。その視線に死角はなかった。

「ふはは! 無駄だ無駄だ!」

十面鬼はアマゾンを振り落とすと、そのまま勢いを付けて押しつぶした。

「うわあ! ……ぐぅぅ」

アマゾンの体がみしみしと音を立てる。
どうにか抜け出そうとあがいてみても、不安定な体勢ではパンチもキックも効果がない。
ずんと音を立てて、さらに体が地面にめり込んだ。
内臓が傷ついたのか、アマゾンの口から血が噴き出す。
73名無しハンペン:04/02/23 19:27 ID:VWN6n3kp
「これで終わりだ。一息に踏みつぶしてくれる」

ぐったりしたアマゾンを見て、十面鬼は勢いを付けるため浮かび上がった。
宿敵にとどめを刺すべく、再び地面に向かう。
だが、アマゾンはその攻撃をすんでの所でかわしていた。
そのまま、岩に埋め込まれた顔をアームカッターで切りつける。

「大切断!」
「うぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ」

斬りつけられた顔が、断末魔の悲鳴を上げる。
生前、悪の限りを尽くした男の顔は、みるみる岩そのものへと変わっていった。

「うおおお! 俺の、俺の顔がぁ!」

十面鬼が叫ぶ。
そして怒りに満ちた目で、よろよろと立ち上がったアマゾンを見据えた。
74名無しハンペン:04/02/23 19:27 ID:VWN6n3kp
「おのれ……おのれ許さんぞ!
 もう貴様はただでは殺さん、地獄の苦しみを与えてくれる。
 いでよ、獣人ども!」

十面鬼が呼びかけると、闇の中から異形の影がいくつも現われた。
闇の力が作り出したおぞましき化け物達。
敵意のこもった複数の目がアマゾンに向けられる。

「くっ! 卑怯な!」
「言っただろう。俺にはもう後がないんだ。
 どんな手を使ってでも貴様を殺し、その腕輪を奪い取る!」

満身創痍のアマゾンに獣人達が襲いかかる。
先ほどのダメージは深刻だった。体が思うように動かない。
それでもアマゾンは必死で戦った。
祖父より預かった大事な腕輪を守るために。

「ええい! そんな死に損ないに何を手間どっている!
 腕輪だ! 腕輪を狙え!」

十面鬼が叫び、カタツムリ獣人がアマゾンの右手に飛びついた。
腕輪を求めてむしゃぶりつく。

「くっ! このぉ」
「今だ! 食らえ!!」

十面鬼は、ガガの腕輪をはめたアマゾンの右手に向かって、火球を吐き出した。
食らいついてくる獣人を、アマゾンはふりほどくことが出来ない。
爆発が起こり、アマゾンは吹き飛ばされた。
カラン、と乾いた音がして、ガガの腕輪が地面に落ちる。
75名無しハンペン:04/02/23 19:28 ID:VWN6n3kp
「ぐぅ! があぁ!」

アマゾンはのたうち回った。
ちぎれてしまった腕を抱えて。
火球は、獣人もろともアマゾンの左手を吹き飛ばしていた。

「くくく、どうだアマゾン」
「うう……仲間を犠牲にしてまで……。なんて奴なの……」

失った腕からはどくどくと赤い血が流れていた。
だが、それほどの攻撃を受けても、腕輪は無傷で残っていた。
十面鬼が手を振ると、地面に落ちた腕輪が宙へ浮かび、その手元へ飛んでいく。

「これでようやく、ガガの腕輪が俺の元へ帰ってきたか。
 良いことを教えてやろう。アマゾン。
 これはな、もともと俺が受け取るはずのものだったんだ」
「な、なんですって」
「俺はもともと神官『バゴー』の弟子だったのだ。
 奴の元でインカの秘術を学んだ。そして知ったのだ、この腕輪の伝説を」

勝利を確信したのか、十面鬼は得意げに語り始めた。
76名無しハンペン:04/02/23 19:31 ID:VWN6n3kp
「二つの石を持つ者同士がそれを奪い合い、両方を手にした者が全てを統べる。
 その石を封じ込めたのがこの腕輪だ。
 石を奪い合う二人の候補者。その一人が俺だった。
 だが、バゴーは石の力を恐れた。だから俺の元から腕輪を奪い取り一人の男に渡した」
「それが……おじいちゃん……なの……」
「だがここにガガの腕輪は手に入った。
 後は貴様からギギの腕輪を手に入れれば全てが終わる。
 そうなったらゼティマなんぞ関係ない。
 俺が……この俺が世界の王となってやる!」
「……そんなことはさせない。お前にだけは腕輪は渡さない!」
「ふん、その体で何が出来る。
 さあ、ひと思いにとどめを刺してやろう。
 それでギギの腕輪も俺のものとなるのだ!」

取り巻いていた獣人達がその輪を縮める。
アマゾンはずるずると後ずさった。だが、とても逃げ切れるはずがない。
獣人達は目の前まで迫っていた。
カマキリ獣人の刃がアマゾンに伸びる。絶体絶命。死の予感がアマゾンを襲った。

とん、這いずるアマゾンの背中が何かに当たった。
慌てて後ろを見上げる。
そこには不思議な衣装を着た男が、のっそりと立っていた。
男は目の前に立つカマキリ獣人を見据え、口を開く。

「ゴラゲグ ビベングデビ パパンビンレザ」
77名無しハンペン:04/02/23 19:31 ID:VWN6n3kp
男はケイが目に入っていないかのように前に進み、丸太のように太い腕でカマキリ獣人を掴んだ。
その手の先から、男の体がどす黒い色に変わっていく。

「ウォォォォォォ!」

男が叫んだとき、その体は異形の怪人へと変わっていた。
怪人は、顔の真ん中に生えたサイのようなツノで、カマキリ獣人を貫く。
ぶしゅっと獣人の体から黄色い体液が吹き出した。
動かなくなった獣人を確認し、怪人は腕にはめた腕輪の勾玉をかちりと動かした。

「な、何故ここにグロンギが!
 ええい、面倒だ! まとめて殺してしまえ!」

獣人吸血コウモリ、獣人ヤマアラシ、ヘビ獣人、黒ネコ獣人、トゲアリ獣人、獣人ヘビトンボ。
突然現われた邪魔者を倒すべく、全ての獣人が怪人に向かう。

「ザボゾロザ!」

だが、群がる獣人をものともせず、サイ怪人──ズ・ザイン・ダは暴れ回る。
何が起こったのかは分からないが、とりあえずの危機は去った。
アマゾンは傷ついた体を無理矢理引きずり起こす。
しかし、このぼろぼろの体で一体何が出来るというのか。
憎むべき敵を前にして、ただ手をこまねいているしかない。
無力な自分が悔しかった。
78名無しハンペン:04/02/23 19:31 ID:VWN6n3kp
(……汝、戦う力を欲するか……)

不意に頭の中に声が響いた。

(この……この声は!?)

それは初めて日本に来たときに聞いたものと同じ。
戦士としてケイに戦う道を示した声だった。

(この声……腕輪? ギギの腕輪がしゃべってるの?)
(汝……今まで以上の力を欲するか……。
 全てを滅ぼすやも知れぬ、強大な力を……)
(力……欲しい。あたしは力が欲しい。アイツを、敵を倒すための力が!)
(強大すぎる力は全てを滅ぼす。汝の体すらも。……それでも汝は力を欲するか)
(……例えこの身がどうなってもかまわない。
 前にも言った。これ以上、アイツラのために命が奪われるのは許せない。
 それに、そんな強大な力があるのなら、アイツラに渡すわけにはいかない!)
(……よかろう。
 では我と我の片割れを合わせよ。さすれば我らはお前に大いなる力を与えん)

声はそう告げると二度と聞こえなくなった。

(片割れ……ギギの腕輪とガガの腕輪を合わせろってこと?)

「ドゾレザ!」
79名無しハンペン:04/02/23 19:32 ID:VWN6n3kp
アマゾンが顔を上げると、死闘はもう終わりを告げていた。
辺りに獣人達のバラバラになった体が散らばり、毒々しい色の体液がぶちまけられている。
吐き気を催す光景の中、無事でいるのは空中に浮かぶ十面鬼と、それを見上げるザインだけだった。

「おのれ、良くも我が獣人達を」

ザインを押しつぶそうと十面鬼は勢いを付けて降下した。
だが、その突進をザインはがっしりと受け止める。

「なにぃ!」

恐るべきパワー。ザインはそのまま十面鬼を投げ飛ばす。
そして鋭いツノを突き立てるべく、一気に飛びかかった。

「ギベ!」

どしゅ、と硬いものが肉に突き刺さる鈍い音がした。
にやりと笑ったザインの口。
……そこから真っ赤な血が噴き出す。

「グゴァァ!」
「馬鹿め。貴様のような奴が、このゴルゴスに敵うとでも思っていたのか!」

笑う十面鬼の顔にも、噴出した血が降り注ぐ。
ザインの背中に十面鬼の右腕が突き抜けていた。
心臓をつぶされたザインはびくびくと痙攣を繰り返す。
80名無しハンペン:04/02/23 19:32 ID:VWN6n3kp
「次はお前だ! アマゾン」

ザインの死体を振り捨てた十面鬼が叫ぶ。
しかし、瀕死のアマゾンはどこへとも無くその姿を消していた。

「ど、どこへ行った!?」

9対の目が宿敵を捜して彷徨う。

「ケケーーーー!」

十面鬼の右後ろからアマゾンが飛び出した。
それは先ほど失った顔の部分。唯一の死角からの攻撃であった。
最後の力を振り絞った素早い動き。
まるでろうそくの火が消える寸前の輝き。

「おのれアマゾン! だが無駄だ!」

アマゾンの爪が空を切った。
必死のその動きも十面鬼を捉えることは出来なかった。
遂に力を使い果たしたアマゾンに、ガガの腕輪をつけた十面鬼の右腕が伸びる。

──ドシュ!

鋭い爪がアマゾンの心臓を貫いた。
81名無しハンペン:04/02/23 19:33 ID:VWN6n3kp
「くくく、やったぞ! アマゾンはこの俺が倒した!」
「……ゥゥウ……ガアアアア!」
「ぬお!」

自分の体を貫いた腕に、アマゾンは噛み付いた。
そのまま腕輪ごとその腕を喰い千切る。

「ぐあああああ!
 ぐ、ぅ……おのれ! この死に損ないが!」

食いちぎった腕を咥え、フーフーと荒く息を継ぐアマゾンを、十面鬼は睨んだ。
怒りの中に、わずかな怯えをにじませて。
どう考えても限界はとうに超えているはずだった。
おそらく意識も定かではないだろう。
それなのに、何が一体この体を駆り立てるのか。

──おじいちゃん……。あたしに……あたしに力をちょうだい。

残った最後の力を振り絞り、アマゾンは祈りを捧げた。
その途端、二つの腕輪が光を放った。
食いちぎられた十面鬼の腕がぼろぼろと崩れ、ガガの腕輪が空中に浮かぶ。
ふわふわと漂った腕輪は、自分の半身を求め、ギギの腕輪と重なった。

次の瞬間、辺りが真っ白い閃光に包まれた。
82名無しハンペン:04/02/23 19:35 ID:PYsKUElK
「な、何だ。何が起こったのだ!」

目を焼くほどの光の中に十面鬼は見た。
ぼろぼろだったアマゾンの体の傷が再生していくのを。
そして、自分が心臓に開けた穴がみるみる修復していく様子を。

「ケェェェェェェェェ!」

アマゾンが叫んだ。
ずりゅっ、と音を立てて、失ったはずの右腕が肩から新しく『生えた』。

「馬鹿な! 腕輪の力とはこれほどの──」
「ケケェッ!!」

アマゾンが飛んだ。驚くべき跳躍力。月を背にシルエットが浮かび上がる。
それを見た十面鬼の背にぞくりと怖気が走った。

「ええい! 死ねぇ!」

十面鬼は火球を打ち出した。直径2メートルもある巨大な火球。
だがそれは、アマゾンにぶつかる寸前、真っ二つに割れた。
まるでチーズを切ったときのような、鮮やかな断面を見せて。

「ば、馬鹿なぁぁぁぁぁぁ!」
「スーパー! 大・切・ダァァァァァン!!」

すたりとアマゾンは地面に着地した。
一瞬の静寂。
立ち上がるアマゾンの背後で、十面鬼の体がずるりと斜めにずれる。
83名無しハンペン:04/02/23 19:35 ID:PYsKUElK
爆発の炎に照らされ、アマゾンはよろよろと歩いた。

(やった……ついに十面鬼を……。でも……体が……)

目の前が霞んだ。変身を保っていられずアマゾンはケイへと戻る。

(汝……強大な力を使いこなすに至らず。やはり……まだ足りぬ……)
(何? 何のこと……)

やっとのことでそう疑問を浮かべる。
だがそれだけだった。
すっかり力を使い果たしていた。
急速に意識が薄れていく。

(約束の刻は近い……今度こそ『黒き太陽』と『影なる月』が……)

それが最後だった。
意識を失ったケイは、その場にばたりと倒れた。
84名無しハンペン:04/02/23 19:36 ID:PYsKUElK
「なるほど、これが腕輪の力」

死屍累々の惨状。そこに現れた一人の男。
銀の鎧を纏い、炎のような装飾の冠をかぶった仮面の男。
パルチア王朝の末裔、「ゼロ大帝」は鎧を鳴らしつつケイに近づく。

「だが、やはり石の力は不完全だったか。まあ、それも仕方あるまい。
 『運命の者』その片方が十面鬼では、さすがに役者が不足だろう。
 ふふ、所詮こやつらは試作品に過ぎんのだからな」

そう言うとケイの横にひざまずき、腕輪に手を伸ばした。
かちりと音がして、ゼロ大帝の手に光が落ちる。
手のひらで輝くもの。それは小さく透明な石だった。

「これが『太陽の石』と『月の石』か。これで世紀王様をお迎えすることができる」

満足げに微笑むとゼロ大帝は立ち上がった。
足元のケイを見下ろす。その目が、すぅっと細まった。
おもむろに腰に下げた剣を抜き、その切っ先をケイに向ける。
85名無しハンペン:04/02/23 19:36 ID:PYsKUElK
「俺の思惑通り、十面鬼は死に、腕輪の中の石は二つとも手に入った。
 お前のおかげだ、アマゾンよ。
 だから今日のところはお前の命預けておいてやろう。
 だが次こそは、お前の首このゼロ大帝が頂く。
 楽しみにしているが良い。くくく、ふはははははは」

剣を手に下げたまま、ゼロ大帝は歩み去った。
後に残されたのは数多くの死体と傷ついた戦士だけ。
無情なまでの荒れ果てた地に、冷たく乾いた風がいつまで吹いていた。


第53話 「死闘! 十面鬼」 ─終─
86名無しハンペン:04/02/23 19:37 ID:PYsKUElK
これでようやくBLACKに繋がります。
立て続けになりますが、BLACK松浦編は25日から開始します。
よろしくお願いします。

なお、あまり関係はありませんが、グロンギ語に関しては以下のページを参考にしてます。
ttp://www2.plala.or.jp/haniwarock/gurongi.htm
ttp://fukuoka.cool.ne.jp/shadowmoon/kuuganikki/glongi/home.html

さらに関係ありませんがこういうのもあったりします。
ttp://undina.hp.infoseek.co.jp/flash/ondul_tools.html
87名無し天狗:04/02/24 19:50 ID:gGKwHAWu
>名無しハンペンさん
BLACK…どんな展開になるか楽しみです!

ところで・・・以前ナナシマンさんとお話ししたことがあるんですが、
赤ジューシャの今後が気になります…戦闘員の中じゃショッカーと同じくらい
好きなモンで…。
88名無しハンペン:04/02/25 13:36 ID:dfQISR3a
>名無し天狗さん
原作とはずれますが、ガランダーに吸収されててもいいんじゃないでしょうか?
基本的に出したいものを出したい人が好きなように使えば良いかと。
思い入れがある方が良い話ができると思います。

中途半端な時間ですが更新します。
89名無しハンペン:04/02/25 13:46 ID:dfQISR3a
「ブレーザーカノン!」
「V3ィィ反転キィィィック!」

──どおぉぉぉぉおん

大爆発を起こすロボットが、大きなディスプレイに映し出された。

「ええい! またしても!」

その光景を見て歯がみする一人の男。
その後ろにいるもう一人の老人も、忌々しげに舌を鳴らした。
ゼティマの下部組織、デスターを率いるドクターQ。
そして元テンタクルの首領、プロフェッサーK。

「あやつらの所為で、ワシらの仕事はあがったりじゃわい!」

彼らの仕事、それは子供達を泣かせること。
子供達の涙こそが、魔神ゴーラの像からダイヤを吐き出させるために必要なのである。
加えてプロフェッサーKにとって、子供はアレルギーの元。
だからこそ彼らはその叡智を振るい、子供を泣かせることにその全てを賭けてきた。
子供達をいじめること、それは趣味と実益をかねた、彼らの生き甲斐と言っても良いものなのだ。
しかし、最近ではそれも満足には出来なくなっていた。
90名無しハンペン:04/02/25 13:48 ID:dfQISR3a
「なぜだ! なぜアイツラはこんなに早く我らの計画に気が付くのだ!」
「……たしかにおかしい。ここ最近、奴らの来るタイミングが早すぎる。
 まるで、子供達となにかネットワークでも持っているかのようじゃ」
「ば、ばかな! そんなことにでもなったら、ワシらの生活は……」
「首領、今日のダイヤですわ」

落ち込む二人の老人に、若い女性の声がかかった。
ドクターQの秘書であるシルビア。
そしてその後ろには、いつものようにシルビアと張り合うリタの姿。

「ちょっと! あたしが持っていくって言ったでしょ」
「うるさいわね! 早い者勝ちよ!」
「これ、やめんか! ……むぅ、やはり今日も少ないのぉ」

ここのところ、魔人ゴーラの像から手に入るダイヤの量は激減していた。
犯罪組織とはいえ、所詮ゼティマの下部組織。
ノルマがこなせなければ待っているものは厳しい処分だ。

「さてさて、これからどうしたもんか……」
「あら? お父様、これなにかしら」

リタがダイヤの入れ物を指さす。
その指の先には、ダイヤとは異なる輝く石があった。
91名無しハンペン:04/02/25 13:48 ID:dfQISR3a
「なんじゃ、これは」

ドクターQは首を捻りながらそれを手に取った。
ピンポン球ぐらいの大きさの二つの石。
まるで自らが光を放っているかのように、赤と青にぼんやりと輝く。

「なぜこんなものが……」
「それを渡して貰おうか。ドクターQ」

不意に名前を呼ばれ、ドクターQは慌てて振り返った。
いつの間に現われたのか、白いローブを着た三人組が、部屋の中央にふわりと浮かんでいた。

「お、お前達は……三神官!」
「ごくろうであったな、ドクターQ」
「それこそが、我らの求めていた石」
「ふふ、今まで待った甲斐があったというもの」

ダロムが手を伸ばすと、Qの手にあった石がふわりと浮かび上がり、その手の中に収まった。

「そ、その石はいったい何なんじゃ!」
「これは『王者の石』。
 インカの秘宝、ギギとガガの腕輪に納められし秘石、『太陽の石』と『月の石』。
 それらと合わさることで『キングストーン』へと変わる魔石だ」
「そ、そんなものがなぜゴーラ像から!」
「ふふふ、もともとゴーラ像とはこの『王者の石』を造るためのものなのだ。
 ダイヤなぞ、その時に出来るただの失敗作に過ぎん」
「な、なんだと……」

驚きの事実に呆然とするドクターQ達。
92名無しハンペン:04/02/25 13:48 ID:dfQISR3a
「これで全ての準備は整った」
「後は運命の娘の覚醒を待つのみ。
 彼のものの19回目の生誕の日を。
 明日の日食の時を」
「だが良いのか? 運命の日に生まれたのはただ一人。
 もう一人は……」
「心配はいらぬ。このビシュムの左目が見た未来は絶対。
 世紀王となる運命の娘は、あの二人を置いて他にはない」

そんなQ達を気にもとめず、三神官達は謎めいた会話を続ける。
それが、二人の少女に過酷な運命をもたらす悪魔の言葉であることは、
まだ誰も知る由もないことであった。

「よかろう。では迎えに行くとしよう。
 我らの王となる運命の娘を」
「うむ、世紀王『影なる月』を」
「そして……『黒き太陽』を」
93名無しハンペン:04/02/25 13:49 ID:dfQISR3a
仮面ライダーのの 第53話

  「 黒 き 太 陽 」

94名無しハンペン:04/02/25 13:50 ID:dfQISR3a
「太陽?」
「そ、亜弥ちゃんは太陽みたいな人だねって言ったの」

そう言って、少女は切れ長の目を細め口元に笑みをたたえた。
言われた方の少女は、ふっくらした唇をすぼめ、すねたように上目遣いになる。

「えー、あたしってそんなに暑苦しい?」
「あのー、そんなにくっつかないでくれる?
 てか、重いんですけど」
「へへー、いいじゃん。ミキたんとこうしてるの好きなんだからー」
「もー、しょうがないなあ」

明るい日の光が差す部屋。
真っ白なシーツの敷かれたソファーの上。
他に何も存在しないかのように、まるで子猫のようにじゃれ合う二人。

「どうだー。暑苦しいだろー」
「だから、そうじゃなくって。
 亜弥ちゃん見てると、なんだかぽかぽかと暖かい気分になるって言ってんの」
「んん、そう? それは嬉しいな」
「ホント、亜弥ちゃんの笑顔見てると癒されるよ」
95名無しハンペン:04/02/25 13:54 ID:dfQISR3a
言葉通り、少女──藤本美貴は嬉しそうに微笑んだ。

「あー、まあそうだね。ほら、あたしって癒し系? みたいな」

そう言ってもう一人の少女──松浦亜弥もにっこり笑う。

「お、自分で言うかな。そういうこと」
「にゃははは。あ、そうだ。あたし、新しい入浴剤買ってきたんだ。
 今日も一緒にお風呂入ろうね」
「おー、いいね。あ、ラベンダーじゃん。好きなんだこれ」
「でしょでしょ。絶対気に入ると思ったんだー」

美貴の言葉に亜弥はまたはしゃいだ。
くるくると良く変わる表情。
生命力が、その小さな体に漲っているように感じられる。

「いいよねぇ、亜弥ちゃんは。いっつも楽しそうでさ」
「なによぉ、たんは楽しくないって言うの?
 あたしと一緒にいるっていうのに」
「ちょ、ちょっとぉ。だからそんなにくっつかないでってばぁ」

またひとしきり、二人のじゃれ合う声が聞こえた。
幼い頃からずっと一緒に育ってきた。まるで姉妹のような関係。
仲の良い、かけがえのない存在。
96名無しハンペン:04/02/25 13:57 ID:dfQISR3a
「はー、あんまり変なコトさせないでよね。もう若くないんだから」
「なぁにいってんの。あたしと2つしか違わないでしょ」
「いやいや、明日でもう美貴19歳になるんだよ」

なおもくっついてこようとする亜弥を引きはがし、美貴はソファーの上のクッションを抱えた。

「……あれから十年か」
「そうだね……」

一瞬だけ、二人の間にしんみりとした空気が流れた。
その空気を切り替えるかのように、亜弥はまた笑顔で美貴に尋ねる。

「ね、明日さ、パーティーがあるんでしょ」
「そ、なんか父さん気合い入ってるみたいでさ。
 ここ一週間その話ばっかなんだから」
「船上パーティーかぁ。いやー楽しみだなぁ」
「ちょっと、主役を差し置いて目立とうとか考えてんじゃないでしょうね」
「ま、まっさかぁ……」
「あやしいなあ、その態度。
 さ、正直に白状しなさい!」
「きゃあ、ミキたんやめてよぉ」

今度は美貴が亜弥を押し倒した。
くすくすと笑う二人の声がいつまでも続く。
今日も明日もそれは変わらない。永遠にこの幸せは続いていく。
そう信じていた。
19回目の美貴の誕生日。
あの、運命の日を迎えるまでは。
97名無しハンペン:04/02/25 13:58 ID:dfQISR3a
続く。

ということで明日、藤本美貴19回目の誕生日。
98名無し天狗:04/02/25 15:45 ID:xbZWqupE
>名無しハンペンさん
なるほど・・・こりゃ楽しみだ。
あと、打ち合わせスレの不始末、失礼しました。
99名無し天狗:04/02/25 21:04 ID:C8q0XTo3
>名無しハンペンさん
・・・?あれ?「54話」じゃありませんでしたっけ?
100名無し一等海士:04/02/26 11:12 ID:ATEg8X9E
久しぶりに着て見たら前スレはdat落ちしていたんですね
>前スレの誰か
幸か不幸か僕はその「まさか」とは違うけど
乗ってる船が出港で今日まで閲覧できなかったのです
>明日(今日)はミキティの誕生日
そうなのですか初めて知りました。当言う事は僕の乗っている船の
就役記念日と同じなんですねファンとして奇遇に感じます

というわけで100get!!
101名無しハンペン:04/02/26 16:39 ID:y5k+nFcJ
>名無し天狗さん
あ、自分で書いた話を抜かしてた。すみません、正しくは54話です。

>名無し一等海士さん
もろもろ含めておめでとうございます。これまた奇遇な事に今日の舞台は船の上だったりしますが。
航海のご無事をお祈りしてます。

では続きです。
102名無しハンペン:04/02/26 16:39 ID:y5k+nFcJ
「皆さん、紹介します。私の娘、美貴です」

大きなバースデーケーキに立てられた19本のろうそく。
一息に吹き消すとたくさんの歓声と祝福の拍手が湧いた。
ぽんぽんと抜かれるシャンパンの音。
テーブルに溢れんばかりに並べられた料理。
ざわざわとあちこちで歓談の輪が広がる。

「なんか……すごいね」
「うん。美貴もこんなにすごいとは思わなかった」

ようやく人の輪から離れた二人は、目の前に広がる豪奢な光景を見て、
あらためて何度目かの吐息を漏らした。
船上パーティだと聞かされてはいたが、その規模は予想以上だった。
豪華な客船の貸し切り、船内に造られたきらびやかな会場、見たこともない高そうな料理。
そして何十人もの招待客、それも美貴や亜弥でさえ知っているような著名人ばかりだ。

「父さん、こんなに顔が広かったっけ?」
「知らない。今まで聞いたこと無かった」

藤本総一郎──大学で遺伝子工学を教えている美貴の父。
比較的裕福ではあったが、ここまで人脈があるなど二人は知らないでいた。

「美貴、こっちにおいで」

その父が美貴を手招いた。
どうやらまた招待客に紹介するのだろう。
誇らしげな父の様子に、二人は嬉しいような照れくさいような複雑な感情を抱いていた。
103名無しハンペン:04/02/26 16:40 ID:y5k+nFcJ
「ほお、これはかわいらしいお嬢さん達だ」

父の横に立った男がそう言って目を細めた。
30代だろうか、まだ若いと言っても良い見かけなのに、
仕立ての良い上品なタキシードがしっくりと良く似合っていた。

もちろん、美貴も亜弥もここぞとばかりに着飾っていた。
美貴の格好はホルターネックの白いブラウスに、
ほっそりとした腰回りをぴったりと包む黒のロングタイト。
首には真珠のチョーカーをあしらっている。
亜弥は腰のところできゅっと絞った、マーメイドスタイルのピンクのドレス。
髪に薔薇のコサージュを付け、むき出しの肩にはふわりとショールを羽織っていた。

「いや、本当に素晴らしい。まさに上の上だ」
「こちらはスマートブレインの社長、村上さんだ」
「スマートブレインって、あの?」
「すごい! 大企業じゃないですか」
「ははは、私はただの雇われ社長ですから」
「いやいや、君の辣腕ぶりは私の耳にも入っているよ」
「からかわないでくださいよ、藤本教授」

温厚そうに笑う村上。つられて二人も微笑んだ。

「ああ、失礼。主賓をいつまでも引き留めてはいけませんね。
 それでは、またお会いしましょう。いずれ……ね」

村上の目が亜弥に向けられた。
その瞬間、視線を受けた亜弥の体がぴくんと跳ねた。
まるでネコに睨まれたネズミのように。
104名無しハンペン:04/02/26 16:40 ID:y5k+nFcJ
村上と別れ、二人でシャンパンをちびちびなめる。

「しっかし、スマートブレインの社長ってまだ若いんだね。
 それになかなか格好良かったし。
 ね、あの人、亜弥ちゃんのこと見てたよ。どう、玉の輿狙ってみたら?
 ……って、どうしたの?」

ぼんやりと何かを考え込んでいる亜弥を、美貴は不思議そうに覗き込んだ。
亜弥は先ほどの村上の視線を思い出していた。
何かを探るような、全てを見通されるかのような、強い視線。

「あの人……なんか……怖い」
「え?」
「あ、ううん。なんでもない。なんでもないよ。
 それにぃ、あたしはぁミキたん一筋だから」
「なにそれ、ヘンなの」

おかしそうに笑う美貴を見て、亜弥も元気よく顔を上げた。
心に突き刺さった小さなとげを振り払うように。

「ね、ちょっとデッキに出てみない。なんか外の風に当たりたくなっちゃった」
「酔っちゃったんじゃないの? 飲み慣れないシャンパンなんか飲むから」
「なによー、たんだってまだ未成年でしょ」
「ま、そこは固いこと言いっこなしで」

ふざけあいながら、二人はパーティ会場を抜け出し、デッキへと出た。
105名無しハンペン:04/02/26 16:41 ID:y5k+nFcJ
天気も良く、太陽がさんさんと照っているとはいえ、さすがに外の風は寒かった。
火照っていた体が、一気に引き締まる。

「うー、さすがに寒いね」
「うん、でもこうやってくっつけば大丈夫」
「あー、ホントだ。やっぱ亜弥ちゃんあったかいわ」
「そりゃ、あたしは太陽ですから」
「ふふふ」

二人はぴたりと寄り添い、海を見つめた。
先ほどの喧噪が嘘のように、デッキの上は静かだった。
冷たい海風が、時折二人の髪を通り過ぎていく。

「あれからもう……十年経ったんだね」

美貴がぽつりと呟いた。

「亜弥ちゃんが、美貴のうちに初めて来たとき。
 あれは美貴の9歳の誕生日だった」
「あたしね、あの日のこと一生忘れないと思う。
 ミキたんが……あたしに言ってくれたこと」
106名無しハンペン:04/02/26 16:42 ID:y5k+nFcJ
亜弥が3歳の時、亜弥は突然ひとりぼっちになった。
事故だった。両親を乗せた飛行機が、原因不明の墜落をしたのだ。
亜弥はその後、親戚の家に引き取られた。母方の遠い親戚だったという。

それから4年が経ち、亜弥は美貴のところへやってきた。
美貴の父が何故、親友の娘を急に引き取ろうとしたのかは分からない。
見知らぬ家に連れてこられたその日、亜弥はにこにこ笑っていた。
幼い顔に、愛想の良い満面の笑みを浮かべて。
美貴の父はとても喜んだ。『かわいい娘が出来た』と。
そんな亜弥を、美貴はずっと見ていた。静かにずっと。

二人っきりになるとすぐ、美貴は亜弥の前に立った。
とまどったように見返す亜弥を、美貴はそっと、
まるで繊細なガラス細工を扱うように優しく抱きしめた。
そして、亜弥の耳元でこう呟いた。

「無理して笑わなくても良いんだよ」

亜弥の目が大きく見開いた。
突然ぽろぽろと涙がこぼれる。固まったような笑顔のまま。
美貴はずっと亜弥を抱きしめていた。亜弥の涙が止まるまでずっと。

引き取られた先で、亜弥はひどく辛くあたられていたらしい。
亜弥が泣き出すと、余計に仕打ちは辛くなった。
だから亜弥は笑った。常に笑顔のままでいた。
笑みという仮面をその心にかぶったのだ。
それがあっけないほど簡単に外された。
一人の少女によって。
107名無しハンペン:04/02/26 17:05 ID:DC5n4PDw
「だからあたしにとって、ミキたんはすごく大切な人。
 かけがえのない大事な人。
 あたしが本当の顔を見せることができるのはミキたんの前だけ。
 あたしはミキたんのためならどんなことだってできる。
 ずっと、ずっと一緒だよ。これからも」
「亜弥ちゃん……」
「ね、ミキたんは……ミキたんはあたしのことどう思ってるの?」
「あたしは……あたしは亜弥ちゃんのこと……」

手すりを掴んでいた美貴の手に、ぴたりと何かが止まった。

「きゃあ!」

驚いた美貴は慌てて手を振る。デッキにぽとりと落ちたそれは、一匹のバッタだった。

「何でこんなところに」
「み、ミキたん……」

亜弥の震える声に顔を上げた美貴は目を見開いた。
目に映るバッタの大群。どこから現われたのか、無数のバッタが辺りを覆い隠していた。

「いやあ、何これ!?」

身を寄せ合った二人はデッキにしゃがみ込む。
108名無しハンペン:04/02/26 17:06 ID:DC5n4PDw
「ついにこのときが来た。約束の刻が」

恐怖におののく二人に、不気味なしゃがれ声が届いた。
おそるおそる顔を上げる。そのまま息を呑んだ。
これまで以上に想像もつかない光景に、二人はもう声も出ない。

寄せては返す波の上、空中に漂う3つの白いローブ。
不気味な顔をあらわにし、三神官の一人ダロムが重々しく呟く。

「さあ、ご一緒に。我が御子よ」

差し出された手から逃げるように、美貴はぶんぶんと首を振る。

「恐れることはない。あなたは選ばれし者なのだ」
「そう、あなたは運命の娘なのよ」

そう言ったビシュヌは亜弥にも目を向ける。
その目が微かに細まった。

「間違いない。もう一人はこの娘だわ」
「そうか、やはり」
「ええい、松浦め。こざかしい真似を」
「まあ良い。これで二人の娘が揃った。儀式は滞りなく行われるだろう」
109名無しハンペン:04/02/26 17:06 ID:DC5n4PDw
「何なの? 何なのよ一体!? もうヤだよ、こんなの……訳分かんないよ……」

感情のままに叫び、力無くうなだれる美貴。
その体を抱きしめるようにして、きっと三神官を睨んでいた亜弥の顔がすぅっと翳る。
亜弥の顔だけではない。周囲が闇に落ちようとしていた。

「太陽が……消える。なにこれ、日食……なの?」

巨大な生き物に食われたかのように、太陽はその姿を消そうとしていた。
運命の日。
約束の刻。
5万年に一度の日食の日。

「全ての準備は整った。
 我らの王たる存在、世紀王様を迎える準備が」

亜弥と美貴を取り囲んだ三神官は、そのまま上空をゆっくり回る。

「さあ、藤本美貴。そして……松浦亜弥よ。
 我らとともに約束の地へ」

亜弥は美貴を抱きしめる手に、ぎゅっと力を込めた。
110名無しハンペン:04/02/26 17:06 ID:DC5n4PDw
続く。

ちょっと暴走してます。ごめんなさい。
111ねぇ、名乗って:04/02/26 17:37 ID:zqnvIoI/
名無しハンペンさん
>航海の無事を祈っております
ありがとうございます
111get!!
112名無し天狗:04/02/26 18:07 ID:kn0qM7Bm
>名無しハンペンさん
暴走なんてとんでもない!!
今更とは思いますが…

・二人は年こそ違えど日食の日に生まれた
・美貴の誕生日が「5万年に一度の日食の日」だった

…ってことで差し支えないでしょうか?
113名無し天狗:04/02/26 18:10 ID:kn0qM7Bm
あともう一つ…

>引き取られた先で、亜弥はひどく辛くあたられていたらしい。

…南光太郎もそうだったんでしょうか…?
114名無し募集中。。。:04/02/26 22:46 ID:Sgf4zlpH
別に揚げ足を取るとか決してそう言う意味では無いんですが、
108の「ビシュヌ」は「ビシュム」ですね。
115名無しスター:04/02/27 00:42 ID:o9SwoFJH
                                       /    。/   \。/
あやみきキタ━━━( ´D`)━( ´D)━(  ´)━(  )━(  )━(● )━(w● )━(●w● )━━━!!!!!


先が楽しみです。がんばってください。
116名無し募集中。。。:04/02/27 12:30 ID:tGcIgmWf
>>113
光太郎は両親が消されてすぐに引き取られたはず。
117名無し天狗:04/02/27 14:10 ID:w+OLumjD
>116さん
引き取られたのはわかってるんですが
引き取られてからの「その後」を知りたいわけで…。
118名無しハンペン:04/02/27 16:41 ID:+RHvqXf1
>・二人は年こそ違えど日食の日に生まれた
については後ほど本編で。(次次回更新分くらい)

>・美貴の誕生日が「5万年に一度の日食の日」だった
5万年に一度(の儀式のための)日食の日なのだと解釈してます。
つまり誕生日と手術の日、両方5万年に一度の日食の日な訳ですね。

>…南光太郎もそうだったんでしょうか…
そういう設定は無かったと思います。向こうも一緒に風呂はいるくらい仲良かったですし。
松浦の笑顔の裏に影が欲しかったのと、ただの仲良しではない二人の絆を出したかったんで
勝手にこちらで設定しました。(もう一つ理由があるんですがそれも後ほど)

>108の「ビシュヌ」は「ビシュム」ですね。
うう、ごめんなさい。こんなんばっかりや……。ご指摘ありがとうございました。

レスありがとうございました。あやみきがんばってます(w では続きです。
119名無しハンペン:04/02/27 16:41 ID:+RHvqXf1
薄暗く小さな部屋に亜弥と美貴は浮かんでいた。
二人の周りを触手のようにチューブが取り囲み、身も知らぬ機械に赤や青の光が時折輝く。
呪術と科学の融合した、不気味な空間。

「二人の体、細胞の一つ一つを強化改造した。次はいよいよ……」

ダロムが取り出したのは赤と青に輝くピンポン球ぐらいの石。
インカの秘法「太陽の石」と「月の石」それにゴーラの像から出現した「王者の石」。
これらを合わせて作られた「キングストーン」。
ダロムが手をかざすと、二人のお腹の上に置かれた石がずぶずぶとめり込んでいった。

「うあ、うああああああ」
「く、くぅうううう」

美貴と亜弥の苦痛に満ちた声が部屋に木霊する。

「後は人間としての記憶を消し去るだけ。それで改造手術は完了する」

重々しくダロムが呟いた。
傍らのバラオムとビシュムもゆっくり頷く。

「待ってくれ、約束が違う! 記憶を無くすのだけはやめてくれ。二人とも私の娘だ」

突然、そこへ入ってきたのは二人の父、藤本総一郎だった。
三神官に対し声を荒げると、気丈にも詰め寄る。

「プロフェッサー藤本。亜弥と美貴はもはやあなたの娘ではない。
 世紀王ブラックサン、そしてシャドームーンなのだ」
120名無しハンペン:04/02/27 16:42 ID:+RHvqXf1
ダロムは総一郎を宥めるようにそう言い、右手を掲げた。その爪がぐいっと伸びる。
伸びた爪から亜弥の体に光が走った。
光はシーツに覆われた腹部から、ゆっくり頭へと上がっていく。

「いやあああああ!」
「亜弥ちゃん!」

拘束された体を必死で動かし、美貴が亜弥へと手を伸ばす。

「み、ミキたん……」

亜弥はすがるような目でその手を見つめた。その間もダロムの右手は頭へと進む。
光はもう、額のすぐそばまで迫っていた。

「やめろ!」

一声叫んで、総一郎は飛びかかった。
不意をつかれ、ダロムはバランスを崩した。
右手の爪からでた光が、亜弥の拘束を切り裂く。
光はそれに止まらず、辺りをズバズバと焼き切った。
至る所でショートした機械が、ばちばちと火花をあげる

「きゃああああ!」

光は美貴の上にも届いていた。
切り裂かれた配線がその上に降りかかる。
美貴は苦しそうに悲鳴をあげ続けた。

「ミキたん!」
「美貴!」
121名無しハンペン:04/02/27 16:42 ID:+RHvqXf1
叫ぶ総一郎にバラオムの手から光線が飛ぶ。

「うわあああ!」
「父さん!」

拘束は全て断たれ、亜弥の体は自由になっていた。
混乱する三神官を押しのけ、亜弥は倒れた父親の元に駆け寄った。
顔面をくしゃくしゃにした娘に、総一郎は必死で叫ぶ。

「私にかまわず逃げろ!」
「でも……でも……」

抱え起こそうとした亜弥の手を総一郎は握り締めた。

「良いから行くんだ。お前だけは……お前だけは」
「父さん!」

総一郎は亜弥を自分の入ってきたほうへ押しやった。
そのまま仁王立ちになり、背後の娘に向かって叫ぶ。

「行け、亜弥! 逃げろ、逃げろ!」
「父さーーーーん!」
122名無しハンペン:04/02/27 16:43 ID:+RHvqXf1


亜弥は必死になって逃げていた。どこをどういう風にたどってきたのか分からない。
自分が上に進んでいるのか、下に進んでいるのか、それすら分からないでいた。
それでも亜弥は自分の脚を動かし続けた。
前へ前へと。

「逃げても無駄だ、松浦亜弥」

ふわふわと宙に浮かびながら、三神官はその後を追っていた。
5万年も待っていた神聖な儀式。それをこんなことで無駄にするわけにはいかない。
既に改造手術は済んでいる。後少し、後少しなのだ。
神官達もまた必死あった。

「さあ、我らと来て改造手術を完了し、ゼティマの世紀王ブラックサンになるのだ」
「いや! そんなのいや!」
「駄々をこねてはいけませんブラックサン」
「お前はやがて改造人間の王として君臨する、栄光の娘なのだ」
「あたしは……あたしはあなた達の思い通りにはならない!」
「ええい!」

バラオムの手から光線が伸びた。
亜弥の真横の壁が爆発する。爆風に飛ばされ亜弥はばったりと倒れた。
しかし、すぐさま起きあがり、再び前へと進む。
123名無しハンペン:04/02/27 16:43 ID:+RHvqXf1
傷ついた美貴も、父親も残し、自分だけ逃げだした。そのことが胸にのし掛かる。
それでも、進まなければならない。
ここで亜弥まで捕まってしまえば、希望は全て失われてしまうのだ。
どうにかこの場所を抜け出し、誰かに助けを求めなくては。
助けを──だが、一体誰に?

「きゃああ!」

バラオムの光線が先ほどよりも近いところに命中した。
びしりと床にひびが入る。ぐらりと亜弥の体が傾いだ。
先ほどまで踏みしめていた地面が、急に頼りないものに変わる。
がらがらと何かが崩れる音。
──不意に訪れる浮遊感。
亜弥の足元には大きな穴が開いていた。

「しまった!」

神官達の焦り声が聞こえた。
しかし、それもすぐに遠くなる。
ばたばたと耳元でシーツが音を立てる。
亜弥の体は真っ逆さまに下へと落ちていった。
124名無しハンペン:04/02/27 16:46 ID:EP1FoHec
「う、こ、ここは……」

軽く意識を失っていたらしい。
ぼんやりする頭を振り、亜弥は体を起こした。
自分の置かれていた状況が急速に蘇ってくる。
きょろきょろと辺りを見渡す。
どうやら追っ手はまだここまでは来ていないようだった。
亜弥は自分が落ちてきたところ──真上を見上げる。
左右の壁がどこまでも続く。その先はとても確認できなかった。
数十メートル、あるいはそれ以上の距離を落ちてきたらしい。
それなのに、自分の体には傷一つついていない。

(一体どうなっちゃったの……あたしの体……)

不安が胸に暗い影を落とす。亜弥は視線を落とした。
体に巻きついたシーツをぎゅっと握り締める。
それでもここであきらめるわけにはいかない。
そう思い亜弥は再び顔を上げた。
通路はずっと先まで続いているようだった。
今まで以上に重く感じる脚を引きずり、亜弥はそれでも前へと進んだ。

通路の先は、まるで木の根のように白いパイプが絡み合っていた。
かき分けるように進んだ亜弥は、突然ぴたりと足を止めた。
125名無しハンペン:04/02/27 16:47 ID:EP1FoHec
「なに……これ?」

頭の中に、何かが直接語りかけてくる。
その声に誘われるように先へ進んだ。
絡み合うパイプをぐいっとかき分ける。
不意に真っ白だった世界に、鮮やかなライムグリーンが現われた。

「あたしを呼んだのはお前……なの?」

それは一台のバイクだった。
オフロードタイプというのだろうか、しなやかさを感じさせる細身の車体。
グリーンを基調にカラーリングされたその姿は、どことなくバッタに似て見える。
亜弥はそのバイクにそっと手を触れた。
その途端、まるで命が吹き込まれたように、バイクのあちこちがちかちかと輝いた。
目を細め、滑らかな表面を愛おしげに撫でた亜弥は、小さな声で呟いた。

「そう……お前、バトルホッパーって言うの」

バイク──バトルホッパーは亜弥の質問に答えるようにブルンとエンジンを鳴らした。
126名無しハンペン:04/02/27 16:47 ID:EP1FoHec
続く。

アヤンキーって名前にしようかとも思いましたが、さすがにやめました(w<バトルホッパー
127名無し天狗:04/02/28 02:03 ID:6zofcr0Y
>名無しハンペンさん
アヤンキー・・・
「J」のベリーのように松浦の下僕的キャラとして使ってみるとか…ダメ?
128名無しハンペン:04/02/28 16:42 ID:VvvDITq9
>名無し天狗さん
今後の扱いについては他作者さんにお任せします。
(Jは見てないのでなんとも……)
129名無しハンペン:04/02/28 16:42 ID:VvvDITq9
深夜の公園。
閑静な住宅街な所為か、人通りは全くない。
耳が痛くなるほど静まりかえった空間。
ただ街灯の明かりがわずかに辺りを照らしているだけだった。

亜弥は暗がりの中、茂みに身を潜めていた。
油断無く辺りをうかがう。しかし、敵が追ってくる様子はなかった。

あの後、亜弥は何かに導かれるようにバトルホッパーにまたがった。
その途端、バイクはものすごい勢いで走り出した。
もともと亜弥はバイクの免許など持ってもいない。
しかし、まるで意志を持っているかのようにバトルホッパーは走り続けた。
迷路のような通路も、答えが分かっているかのようにあっさりクリアした。
そのおかげで亜弥はあそこから逃げ出すことが出来たのだ。

(これから、どうしよう……)

警察は当てにならない。なんとなくそんな予感がした。
第一、どう説明すればいいのだろう。あんな不可思議な体験。
かといって家に帰るわけにもいかない。
父親が関わっていた以上、何者かが待ち受けている可能性は高い。

(なによりも、こんな格好じゃあ……)

亜弥はしゃがみこんだまま、むき出しの両肩をぎゅっと抱えた。
こんなところに身を隠しているのも訳がある。
逃げ出すだけで精一杯だった。途中で見つけたのはバトルホッパーだけ。
他には何も手にしていない。つまり……。
そう、亜弥は今ぼろぼろのシーツ一枚を身に纏っているだけなのだった。
130名無しハンペン:04/02/28 16:44 ID:VvvDITq9
(ううう、恥ずかしいよお)

冷たい夜風が、身に染みる。
亜弥も年頃の娘。こんな格好では人前に出て行くことも出来ない。
と言って、夜が明けてしまったらそれこそどうしようもない。
絶体絶命、亜弥は頭を抱えるしかなかった。

「どないしたん?」
「ひぃぃ!」

後ろから声を掛けられ、亜弥は思わず仰け反った。
考えに浸りすぎていたのか、人の気配を全く感じていなかった。
不幸中の幸いだったのは、掛けられた声が女性のものだったことだろうか。
ごくりと唾を飲み込み、おそるおそる振り返る。
目の前に立っていたのは、縮れた髪を明るい色で染めた細身の女だった。
亜弥よりも年上、二十台半ばぐらいだろうか。
シンプルな白のTシャツ、デニムのジャンバー、洗いざらしのジーンズ。
手にはコンビニの袋を下げている。

「いや……それが……その……」
「なんやの、その格好? なんかのプレイ?」
「プ、プレッ! ち、違いますよぉ! これは……ちょっと……」
「あっそ」

真っ赤になって首を振る亜弥の横を、女は興味なさそうに通り過ぎる。
そして背中越しに亜弥に話し掛けた。
131名無しハンペン:04/02/28 16:45 ID:VvvDITq9
「ふん、なんか訳ありみたいやね。
 ええよ、おいで。服くらい貸したげるわ」
「へぇ!?」
「へぇ、じゃないやろ。
 あんた、いつまでその格好でおる気やのん?
 朝になったら、ここも人通りが多くなるで。
 あんたみたいのんがおったら、通勤中のサラリーマンさんの目の毒やわ」
「あ、あの……でも……あたし……」
「心配せんでエエよ。別にとって食うたりはせぇへんから」

と、こちらを振り返る。
一見ぶっきらぼうな口調だが、その言葉はなぜだか信頼できる気がした。
戸惑う亜弥に、女は自分の着ていたジャンバーを投げてよこす。

「あんた、名前は?」
「あ、あの、ま、松浦、亜弥でぇす」
「へえ、かわいい名前やないの。
 あたしは平家みちよ。んじゃ、ついといで。すぐそこやから」

平家はそう言ってすたすたと歩き去る。
亜弥は意を決したように頷くと、その背中に小走りでついていった。
132名無しハンペン:04/02/28 16:47 ID:VvvDITq9
「どや? 気に入った服はあったかいな」
「あ、はい」

亜弥が連れてこられたのはえらく高級なマンションだった。
見上げるほどに大きな建物。ピカピカと磨き上げられたフロア。
広く明るい入り口を、着のみ着のままの亜弥は、急いで通り抜けなければならなかった。

「サイズは? 大丈夫やった?」
「あ、あの、ムネがちょっと……キツイです」
「やかまし! ……ったく、最近の若い子は体ばっかり大きなってからに」

身長はそんなに変わらないんだけどな、と心の中で突っ込む。
結局、シンプルなジーンズとトレーナーを借りることにした。
着替えの前に、熱いシャワーも借りていた。人心地ついた亜弥はほっとため息をつく。
──それにしても……と、亜弥は改めて部屋を見渡した。
吹き抜けの広いリビング。豪華なソファー。メゾネットタイプの2階。

「すごいお部屋ですね。
 平家さん、一人で住んでるんですか?」
「いや、同居人が一人おるよ。今は出かけとるみたいやけど。
 あ、断っとくけど男や無いよ。お・ん・な、やからね」
「でも二人でこんな大きな部屋……」
「まあ、うちらが金出したわけでもないしな」
「ええ? どういうことですか?」
「人にはいろいろ事情があるっちゅーことやね。
 今のあんたみたいにな」
「あ……」
133名無しハンペン:04/02/28 16:49 ID:V4pQLfCK
思わず言葉に詰まった亜弥に、平家は声を掛けた。
立ったままの少女を見つめる目は、意外に優しい。

「もし行くとこあれへんやったら、しばらくここにおってもエエで。
 どうせ、部屋も余っとるんやし。もう一人おるんも悪い子やないから」
「……ありがとうございます。でも……」

亜弥は手の中のメモを握り締めた。
それは、父親があのとき渡してくれたもの。
亜弥が駆け寄ったとき、手の中に押し込んできたもの。
そこにはこう書かれていた。

『キャンプディアブロ跡地に来い。必ず一人で』

総一郎があの後どうなったかは分からない。
それでも行ってみなくてはならない。真実を知るためにも。
それに、亜弥を狙っている集団は恐ろしい相手だ。
これ以上、平家に迷惑を掛けるわけにはいかない。
関係ない人間を巻き込むことは出来ない。
亜弥はもう決心していた。

「あたし行かなきゃいけないところがあるんです」
「行かなきゃいけないところ? こんな時間にかいな」
「本当にありがとうございました。あたしこのことは絶対忘れません」

まっすぐこちらを見詰める亜弥の目。
それを見た平家は、ため息をつくとがしがしと頭をかいた。
134名無しハンペン:04/02/28 16:50 ID:V4pQLfCK
「そのトレーナー」
「え?」
「そのトレーナー、あたしのお気に入りやねん」
「え!? あ、あの、だったら別のに着替えて──」
「いや、ええよ。その代わり絶対返してな、トレーナー。……約束やで」
「平家さん……」

今までとは違い、真剣な目で見詰められた亜弥は、唇を引き結んで頷いた。

「分かりました。絶対お返しします。ここに返しに来ます」
「ん。ほな気ィつけて行っといで」
「はい!」

元気に出て行った亜弥を見送り、平家はソファーにどさりと寄りかかった。

「はー、なんでまた厄介な子と関わりになるかな。あたしは」

やれやれと首を振る。かちゃり、とドアの開く音がした。

「平家さん、今この部屋から誰か出てったみたいだけど」
「あ、お帰り明日香。いや、まあ話せば長いねんけどな」

だが帰ってきたばかりの少女は、平家の言葉が聞こえていないかのように目を細めた。

「今の子……。なんだろう、すごく気になる。
 平家さん、悪いけどまた留守番お願い」
「あれ? どっか出かけるんかいな。せっかく弁当買うてきたのに。
 おい、明日香、明日香ぁ!」

平家の声を背に受けながら、福田明日香は亜弥の後を追いかけ再び夜の街へと飛び出した。
135名無しハンペン:04/02/28 16:51 ID:V4pQLfCK
続く。

短いですが切りが良いのでここまで。明日で終わります。
136名無し天狗@携帯から:04/02/28 18:18 ID:+O6Bbcvk
オルフェノクとの接触…何やら波乱の予感!
137名無し天狗@携帯から:04/02/28 22:05 ID:+O6Bbcvk
うゎ…ageちゃった…
すみません。
138名無しハンペン:04/02/29 16:26 ID:18w2bDGf
>名無し天狗さん
レスありがとうございます。
では続きです。
139名無しハンペン:04/02/29 16:27 ID:18w2bDGf
キャンプディアブロ跡地。
ぼろぼろになった廃屋の前で、亜弥はバイクを止めた。
明かりのほとんど無い敷地は、何も見えないほどに暗い。
月明かりを頼りに、亜弥は父親を探した。

「父さん、父さーん」
「亜弥」

暗がりから声が届いた。
建物から現われた父の姿。安心した亜弥は急いで駆け寄る。

「父さん、無事だったのね」
「亜弥、お前も……心配したぞ」
「父さん。ゼティマって何? どういう関係なの?
 父さん……まさか」
「亜弥……私はお前が思っているとおりゼティマのメンバーだ」

亜弥はひゅっと息を飲む。
予想はしていたとはいえ、改めて聞くとやはりそれは衝撃的な告白であった。

「これから話す事は本当のことだ。落ち着いてよく聞いてくれ。」

そう前置きすると、総一郎は静かにしゃべり始めた。
140名無しハンペン:04/02/29 16:28 ID:18w2bDGf
「そう今から19年前のことだ。日食の闇が街を覆っていた。
 その日食の闇の中で美貴は生まれた」

亜弥は黙って父の話を聞いていた。いつも笑顔でいたその顔を、辛そうに歪めて。

「5万年に一度の日食の日、運命の子が生まれる。
 ゼティマの世紀王に選ばれる運命の子が。それは予め決められていたことだった」
「それが……それがミキたんだったって言うの?」
「そうだ。美貴は運命の子として選ばれた。ゼティマの王、改造人間の王として」
「そんな……。でも、でもそれじゃどうしてあたしが!」
「亜弥。私はお前を引き取り、私としてはお前を美貴と姉妹として、
 分け隔てなく育ててきたつもりだ。それだけは信じて欲しい」

突然、総一郎はそう言いだした。
続く言葉の意味を感じ取ったのか、亜弥は唇を噛み締める。

「世紀王となるべき運命の子は二人で一組になる。
 しかし19年前の日食の日、運命に選ばれた子は美貴だけだった。
 だが、ゼティマにはどうしてももう一人運命の子が必要だった。
 だから、私たちは造ることにしたんだ。運命の子を」
「造る?」
「そうだ。私とお前の父親の二人でな」
「パパが!?」
「私たち二人は、人工的に運命の子を造り出す研究をしていた。
 そして私たちは、運命の子と同じ因子を一人の胎児に埋め込んだのだ」
「まさか……それが……」
「そう、松浦は自分に授かった子にその実験を行った。それがお前なんだよ、亜弥」
141名無しハンペン:04/02/29 16:28 ID:18w2bDGf
信じられない事実を聞かされ、亜弥は目を見開いた。
ふっくらと艶やかな唇がわなわなと震える。

「実験は成功だった。
 だが、生まれた娘を見た松浦は自分のしでかした事を後悔した。
 だから、お前の因子を封印したんだ。
 そしてゼティマには失敗だったと嘘をついた。
 だが、そのせいで責任を取らされたヤツは……」
「責任……それじゃあの事故は!」
「ゼティマに目をつけられたら逃げられはしない。
 逆らうものには死が待っている。
 生き延びるためにはゼティマに従うしかないんだ」
「そんな! それじゃ父さんがあたしを引き取ったのは!?」
「違う! それは違う。
 松浦は私の親友だった。だからその意思を継いでやりたい。そう思ったんだ。
 引き取られた先で、お前が辛い目にあってた事を私は知った。
 だから私は、お前を引き取ったんだ。
 しかし、お前の事がゼティマにばれてしまった。
 やはり運命には逆らえない。私はそう思った」

うなだれる総一郎を見て、亜弥は拳を握り締めた。
溢れてくる感情を抑えきれず、涙声で叫んだ。
142名無しハンペン:04/02/29 16:30 ID:njEiG32y
「父さんは、父さんは悪魔の集団に私たちを売ったの!?
 あたしと……ミキたんを!
 あたしは、あたしは改造されてもう普通の人間じゃないんだよ」
「これからの世界はゼティマによって選ばれた人間しか生きられない。
 人類は淘汰されてしまうんだ。
 だから、お前と美貴だけは生き延びてくれ。ゼティマの世紀王となって。
 私は……私はそれだけで……」

泣きじゃくる娘の肩を総一郎は掴んだ。その目には真摯な光が溢れている。
親が子を思う気持ちに偽りはない。例えそれが間違ったものであったとしても。

「父さん、奴らは人間の自由を奪おうとしてるんだよ。
 そんなの……そんなのあたしは許せない。
 絶対に、あたしは奴らの思い通りにはならない。
 あたしは戦う。戦ってみせる。あたしと……ミキたんの運命を弄んだ奴らと!」
「亜弥……」
「父さん……父さんだって戦わなけりゃこの廃墟と同じじゃない。
 そんな父さん、見たくない!」

娘に諭され、総一郎は黙り込んだ。
不意にその首に白いものが巻き付く。

「うわあああ!」
「父さん!」
143名無しハンペン:04/02/29 16:31 ID:njEiG32y
白い糸に引きずられ、総一郎は地を滑っていった。
その後を追って亜弥は全力で走る。
そこへ横から何かが飛び掛ってきた。
引き倒され、あやはごろごろと地面を転がる。
顔を上げた亜弥の目の前にある醜悪な顔。
残酷な神が、気まぐれに蜘蛛と人間を混ぜ合わせたような不気味な顔。

「いやあああ!」

同じような怪人が、亜弥の周りを取り囲んでいた。
化け物たちが見守る中、ぎちぎちと音を立てて、クモ怪人の牙が亜弥の首筋に迫る。

「亜弥!」
「父さん!」

その牙をかわしながら、声のするほうを向く。
総一郎は糸に引っ張られ、鉄塔の上まで引き上げられていた。
父を助けるため、亜弥は必死で怪人を振りほどこうともがく。
だが、力ではとてもかないそうに無い。

「うわあああああ!」

総一郎の悲鳴が聞こえた。
その声がだんだんこちらに近づいてくる。
どさり、と重たいものが地面に落ちる音がした。

「父さん!? 父さん!」

横を向いた亜弥の目に入ったのは、人形のようにぐったりと四肢を投げ出した父の姿だった。
144名無しハンペン:04/02/29 16:34 ID:y9k0IzTy
──プツン。

亜弥の中で何かが弾けた
体の奥にあるどこかのスィッチが入った感覚。
細胞の一つ一つに、何かがみなぎってくる感じ。
上に乗っかっていたクモ怪人の頭をぐいと掴むと、強引に力ではねのける。

亜弥はゆっくり起き上がった。
周りを取り囲む怪人たちは、襲い掛かってくる様子は無い。
ただ怯えたように亜弥を取り巻くだけ。

体の底から湧きあがってくるイメージに誘われるように、亜弥は体を動かした。
力を貯めるようにぐっと腕を曲げる。
体内に埋め込まれたキングストーン周辺の細胞が、強烈な光とともにベルトの形を造った。
亜弥の右腕が自然に弧を描く。両腕が腕がぴしりと斜めに伸ばされた。

「変……身!」

ベルトの真ん中のエナジーリアクターがエネルギーを増幅して全身に送り出す。
特殊冬眠遺伝子・MBGの働きで亜弥の身体が変わっていく。バッタを模した異形の姿へと。
その身体を真っ黒な強化皮膚・リプラスフォームが覆いつくす。

変身は終了した。
しゅうと音を立てて、変身に使われたエネルギーが、蒸気となってリプラスフォームの
間から噴き出す。
145名無しハンペン:04/02/29 16:35 ID:bExrfREo
闇夜に浮かぶ漆黒の姿。
黒い戦士は一息にジャンプすると、父親の近くのクモ怪人を殴りつけた。
殴られた怪人は、奇妙な声をあげると、不気味な体液を撒き散らしながら崩れ落ちる。
それにかまわず、亜弥は父親を抱え起こした。

「父さん!」
「あ、亜弥、亜弥なのか……」

総一郎は目を開いた。しかし、その目にはもう力が無い。

「お、お前……そ、その姿は……仮面、ライダー。黒い、仮面ライダー」
「仮面ライダー?」
「ゼティマに、逆らう者達の、名前だ。
 自由のために戦う者達……その姿はバッタに似ていると……そう聞いていた」
「自由のために……戦う」
「だが、なぜお前が……。まさか、世紀王とは……」
「父さん! しっかり!」

亜弥の叫びが、途切れかけていた総一郎の意識を呼び覚ました。
しかし、それももう限界に近い。

「亜弥……美貴を……美貴を頼んだぞ」

がくりとその体が力を無くした。
亜弥の手に抱いた体が、急に重さを増す。

「父さん! そんな……」
146名無しハンペン:04/02/29 16:35 ID:bExrfREo
父親の亡骸をそこに横たえ、亜弥は立ち上がった。
ゆっくりと後ろを振り返る。
静かに溢れてくる気迫に、怪人たちは自然と後ずさった。

「うわああああ!」

大声で叫んで亜弥は怪人の群れに飛び込んだ。

その強さは圧倒的だった。
シンプルなパンチ。
ただそれだけで、怪人の体が吹き飛び、不気味な悲鳴が響き渡った。
その動きはまさに黒い疾風。
亜弥の体が動くたび、その拳が汚れた体を打ち抜いていく。

怒りに任せて殺戮を繰り返す亜弥の手に、白い糸が巻きついた。
混乱していたクモ怪人たちも、ようやく冷静さを取り戻したようだった。
一人一人の力では敵わない。しかし、数では圧倒的に怪人側が有利だ。

亜弥の両手両足にも糸が巻きついた。
何本も絡み合った糸は、亜弥の力をもってしても簡単にちぎれそうに無い。

「うう……くっ!」

亜弥は自由を求めてもがく。
しかしクモ怪人たちは、円を描くように移動し、うまくその力を分散させてしまう。
身動きの取れなくなった亜弥に、別のクモ怪人が飛び掛った。
月明かりに、はえ揃った牙がぎらりと光る。
147名無しハンペン:04/02/29 16:36 ID:bExrfREo
どん、と音がして亜弥の右手が自由になった。
飛び掛ってきた相手の顔が、カウンターのパンチで弾け飛ぶ。

亜弥は自由になった右手を見た。
どこからか飛んできて、亜弥の拘束を断ったもの。
地面に突き立ったそれは、大きな一本の剣だった。

再び糸が吹き付けられる。
それをかわし、亜弥は全身の糸を手刀で切り裂いた。
返す刀で、クモ怪人にもチョップを食らわせる。
亜弥の右手が、怪人の体の半ばまで食い込んだ。

怪人たちは再び混乱に追い込まれた。
統制の取れなくなった相手は、もう敵ではない。
亜弥はベルトに手を当てた。
キングストーンから生まれ出たエネルギーが、その右手に宿る。
亜弥はぐいっと顔を上げた。
流れるような動きで、怪人に次々と拳をぶち当てる。
あっという間に、その場に立っている怪人は、もう最後の一匹になっていた。

「やあああ!」

亜弥は空中に飛び上がった。
足先に力をこめ、ぐんと体を伸ばす。
華麗なフォームで繰り出される飛び蹴り。
空気との摩擦で足先が赤熱する。
148名無しハンペン:04/02/29 16:37 ID:bExrfREo
キックを食らったクモ怪人は、後ろに大きく吹き飛んだ。
よろよろと立ち上がった後、ばたりと倒れる。
爆発の閃光が、夜の明け始めた敷地を照らし出した。

着地の態勢から、亜弥はゆっくり立ち上がった。
その姿は既に元の、愛らしい少女のものに変わっていた。

じっとその手を見つめる。
キズ一つない、白くしなやかな指先。
しかし、今の自分はもう普通の人間ではない。
先ほどの力、ヒトならざるものの力。もう、元には戻れないのだ。
そのことをまざまざと実感する。

ふと、亜弥は思い出したように顔を上げた。
顔を横に向ける。
地面に突き刺さったままの剣。
自分を助けてくれたあの剣は、一体誰が、何のために投げてきたのか。
149名無しハンペン:04/02/29 16:37 ID:bExrfREo
後ろから聞こえてきた足音に亜弥は振り返った。
こちらに近づいてくる小柄な少女。
思わず身構える亜弥に、少女は静かに話し掛けた。

「心配しないで。あたしは敵じゃないわ」

少女は地面に突き刺さっていた剣へと歩み寄った。
そしておもむろにそれを引き抜く。
奇妙な音とともに、一瞬の内に少女の体は別のものに変わっていた。
チェスの駒に似た、鎧とも生物とも判別のつかない姿形。

「あ、あなたも!?」
「そう、あたしもよ。ヒトではない力を持ったもの」

再び少女は元の姿に戻った。同時に剣もどこかに消えてしまう。

「じゃあ、さっき助けてくれたのはあなたなんですか?」
「言ったでしょ。あたしは敵じゃないって。
 むしろ、あたしはあなたに力を貸してあげられると思うわ」
「力?」
「そう、仲間として……ね。
 あなたが戦おうとしている相手は、恐ろしい力を持ってる。
 残念だけど、一人じゃ勝ち目はないよ」
「仲間って……もしかして他にもまだこんな力を持った人がいるんですか?
 あ、でもどうしてあたしの事……」
「あたしは福田明日香。平家さんの同居人なの。
 部屋から出てくるあなたを見かけてね、それで追いかけてきたってわけ」
150名無しハンペン:04/02/29 16:38 ID:bExrfREo
「平家さんの!? それじゃまさか」
「ええ、平家さんもあたしと同じ。オルフェノクよ」

偶然か、運命か。
不思議な因縁を感じ、亜弥は思わず言葉を失った。
福田は亜弥の前に立つと、軽く目を細める。

「ねえ、聞かせて。
 あなたは何者なの? あなたのさっきの姿、あれは一体何?
 あなたもオルフェノクなの?」
「オルフェノク……。
 いいえ、違います。あたしはオルフェノクじゃない」

亜弥の記憶に、先ほどの父の言葉が蘇った。
自由のために戦う戦士の名前。
そう、これから亜弥は戦い続けなければいけない。
自由を取り戻すため、そして美貴を助け出すために。
だからこそ名乗るのだ。ゼティマへの反逆の意味をこめて。

「あたしは……あたしは仮面ライダー。
 仮面ライダーBLACK!」

決意を込めた亜弥の叫びが、朝靄の中に響き渡った。



第54話 「黒き太陽」 ──終──
151名無しハンペン:04/02/29 16:43 ID:bExrfREo
実は1からキャラクターを造るのは今回初めてだったりします。
松浦自体、他のスレでもあまり書いたことがなかったので、いろいろビデオなどで研究して
かなり自分好みのキャラにしてしまいました。その結果……。
まじで松浦にハマってしまいました。ヤベー、アヤヤカワイイヨアヤヤ
152名無し募集中。。。:04/02/29 18:50 ID:jcMi55lm
松浦BLACKついに登場。面白かったでつよ。今後はあやみき同士の戦いと葛藤の
ストーリーとかあったりするのかな?
153名無し募集中。。。:04/03/01 01:00 ID:BlwOp7WE
初めからイッキに読んでしまいました。自分も特撮好きモーヲタなんで
読んでてすごい楽しいですw

ところで、仮面ライダーののX以降のログとかは無いんでしょうか?
あと、まとめサイトとかあるといいなぁって思うんですが。

無理ですかね?
154名無し募集中。。。:04/03/01 01:48 ID:M/IMwR/A
155名無し募集中。。。:04/03/01 02:08 ID:BlwOp7WE
>>154
キタ━━(●´ー`)━━ノリ川(●´)━━(川川)━━(´○ノ川━━~~-y(`ー´○)━━!!
と思ったのですが、自分が読みたいのは
仮面ライダーのの555(ファイズ)
仮面ライダーののアギト
仮面ライダーののBLACK

ここら辺なんですよねぇ・・・せっかくあげてもらったのに申し訳ありません。
156名無し募集中。。。:04/03/01 02:11 ID:t0TyGGH7
jbbsにまとめサイトがある。

過去ログはないけどね・・・
ttp://jbbs.shitaraba.com/music/6849/
157名無し天狗(実家より):04/03/01 11:07 ID:KsALoK+M
>名無しハンペンさん
素晴らしいストーリーをありがとうございます!
今後に期待です。

>ALL作家様&ROMの皆様
スイマセンがチョット複雑な事情がありまして
あまり頻繁に来ることが出来なくなりました。
執筆の方は、いつになるかわかりませんが
「落ち着き次第」再開しようと思いますのでご了承下さい。
当分は保全のみになってしまいます…本当に申し訳ありません。
158名無し募集中。。。:04/03/01 14:39 ID:/kkFHfKI
>>155
かちゅ用でよければ手元にあります。
適当なアプロダ教えてもらえればUPできますよ。
159名無し募集中。。。:04/03/01 15:01 ID:BlwOp7WE
>>158
む・・・自分が使ってるのはJaneなんですけど、互換性あるんですかね?
しかも、アプロダは詳しくないのでわかりませんです。申し訳。
160158:04/03/01 19:00 ID:OeJVs1d8
よく考えたら●持ってるんだった。てことでjane用も用意しました。
上にあったあぷろだに上げときます。
http://non-stop.maxs.jp/up/source/tsuji1951.zip
ついでにかちゅ用も置いときます。
http://non-stop.maxs.jp/up/source/tsuji1952.zip
161ナナシマン:04/03/01 22:44 ID:w22f+wOb
取り急ぎレスのみ失礼します。

>>157
 読んで頂けているだけでもありがたいことですが、その上参加して頂けた事には
僕自身とても感謝してます。事情もおありのご様子ですのでご無理なさらぬよう、
まずはご自身の事を優先されてください。その上で今後ともお付き合い頂ければ
幸いです。

>>160
 本来なら僕の方で用意しなければならないところだったと思いますが、お手数を
おかけして申し訳ありません。
162燃えろ!兄弟拳:04/03/01 23:03 ID:GxZZ0olW
川σ_σ||<始めるよ。   ( `_´)<始まるよ!

川σ_σ||<久々のいんたーみっしょん。( `_´)<次のお話までの繋ぎです。


「よしっ!いた!」

矢口はそう言うと無線機を手にする。
今現在矢口がいる建物にはホッパーがアンテナに偽装されて立っていた。

「ボス、圭ちゃん、そっちの方にいるよ。
 今いる大通りから二つ目の信号を右折、三本目の路地!」
「こちら斉藤、了解。これより追跡を開始する」

矢口からの連絡を受けたハローワーク商会の「ボス」こと斉藤は
指示通り車を走らせた。
163燃えろ!兄弟拳:04/03/01 23:04 ID:GxZZ0olW
             いんたーみっしょん
            【戦え!ペット探偵!】

ハローワーク商会のペット探偵業は順調に売上を伸ばしていた。
もっともそれは矢口や、保田達がいての事である。
本日は行方不明になった猫の捜索の仕事が入ったので
斉藤、矢口、保田のチームで仕事を行っていた。

「さて、ここか・・・・矢口、路地に着いたけどまだいる?」

無線機に呼びかける斉藤。

「うん、まだいるよ。丁度2人がいる真上。見えない?」

捜している猫は建物の上にいる様だ。斉藤が見上げると
丁度建物の窓のところにいた。

「何だよ、あんなとこにいやがって・・・・仕方ない、上に行くか・・」

斉藤は建物の階段を上って行こうとすると

「任せて!」

保田はそう言うなり勢い良く走り出し、建物の僅かな凹凸を利用して
器用に壁を登るとあっという間に猫を捕まえて戻って来た。
164燃えろ!兄弟拳:04/03/01 23:06 ID:n/Qm7VD3
「・・・・・圭ちゃん・・・・・・やっぱ凄いわ・・・・」

保田の人間離れした動きに呆然とする斉藤、
だが次の瞬間ハッとしたように周りを見渡した。

「・・・・・誰にも見られてないな・・・・ふぅ・・・圭ちゃん頼むよ
 そう言う事やる時はこっちで言うからさぁ」

あんな動きを他人に目撃されたらそれこそ大騒ぎである。
そんな斉藤の心配を気にしないかの様に保田は笑うだけであった。

それから2時間後、場所はハローワーク商会の事務所。
事務所には猫の飼い主が訪れていた。

「ありがとうございます。この子ったらいつの間にかいなくなってて・・・」

飼い主がそう言って猫をなでていると

「失礼ですが、そちらの猫ちゃんは少々過保護の様ですね。
 部屋の中に閉じ込めておくだけでじゃ駄目ですよ」

斉藤はそう言うと領収書を渡した。
165燃えろ!兄弟拳:04/03/01 23:07 ID:n/Qm7VD3
「えっ?どうして解るんですか?確かにこの子には一部屋与えて
 そこにいつも置いておりますが・・・・」
「はっきり言って運動不足から来るストレスが原因で逃げ出したと思います。
 こちらも職業柄ペットについての勉強もやっていますからね。
 せっかく見つけたのにまた逃げ出したりしてら大変でしょう。
 その後のアフターケアもサービスの一環ですよ。
 ですから少しはその子を自由にさせてあげて下さい」

斉藤が笑顔でそう言うと飼い主は「解りました」と言って
更に一万円、お礼として置いて行った。

「ふはははは・・・どうよ、これこそ最高のサービスでしょ。
 あんな「一日いくら」なんて商売やってる所は駄目だよ。
 そこ行くとうちは一調査10万円。だいたい二日でケリがつくし
 こうやってアドバイス料も貰えるからね。おいしいよ」

ほくほく顔の斉藤に矢口が手を出した。

「んじゃお給料頂戴!」
「はいよ、じゃあ圭ちゃんと矢口で4万円ね、
 それからお礼の一万円は圭ちゃんに」

斉藤はそう言うと合計5万円を2人に手渡す。
斉藤が飼い主に言った猫のストレスのアドバイスは
保田が「猫がそう言っている」と言ってたから出来た事なのである。
166燃えろ!兄弟拳:04/03/01 23:09 ID:OFNVeOr+
「いつも悪いね。こんな割の良い仕事なんて今まで無かったよ。
 でもさ、こんなに貰っちゃって大丈夫なの?」
「平気だよ、脱税なんかしてないし、なんと言ってもFBIからの入金は
 非課税だからね。実際の申告より会社の収入は多いんだよ」
「そっか、それじゃ安心だね。だったらオイラ達の取り分もっと増やしてよ」

矢口がそう言うと斉藤は笑顔で言った。

「それは無理だなぁ。だいいち働き分に合った給料しか出すなって
 中澤さんに言われてるし、こっちの取り分もあるし、後は・・・」

斉藤がそう言いかけた時であった。

「お邪魔しますよ!」

柄の悪い2人組がハローワーク商会にやって来た。
見るからにその筋の人ですと言わんばかりの風体に
思わず矢口は笑い出しそうになっていた。
167燃えろ!兄弟拳:04/03/01 23:10 ID:OFNVeOr+
「いらっしゃいませ、ハローワーク商会にようこそ。
 本日はどのようなご依頼でしょうか?」

斉藤が2人組に椅子を勧めると柴田がお茶を持って来た。

「いやね、別に仕事の依頼で来た訳じゃないんですよ。
 実は最近こちらの評判を耳にしましてね。
 何でも格安でペットを探し出すとか・・・すごいですねぇ」
「いやーそれ程でも・・・まあでも値段なら何処にも負けないと思います」
「そうですかぁ〜。でもね〜・・・・それがこちらには具合が悪いんですよ。
 実はね、私の所も同じ商売をやっておりましてね。
 お客をみんなこちらにとられてしまいまして・・・・」
「そうですか、それは悪いですね。でもこちらも商売ですから
 お客様のニーズに合わせるのはご時世でしょ」
「そうですね。それも大事ですが・・・・ねえ斉藤さん、
 やっぱり同じ仕事をやるもの同士お互いに上手くやって行きましょうや」

斉藤と2人組のやり取りを見ていた矢口はそこでやっと
こいつらが何しに来たのかが解った。
168燃えろ!兄弟拳:04/03/01 23:12 ID:15OYT8Ic
本日はここで切ります。
2・3日で終了の予定でございます。
169燃えろ!兄弟拳:04/03/01 23:15 ID:15OYT8Ic
いけね。最初に入れ忘れた。

このお話はハローワーク商会ペット探偵開業当時のお話です。
なので現在の時間を遡ってご覧下さい。
170名無し天狗(実家より):04/03/02 11:35 ID:Pj8cefs3
>兄弟拳さん
誠に相済みませんです。

「監視」の目をくぐって保全。(今はこのくらいしか…)
171名無し天狗(実家より):04/03/02 11:36 ID:Pj8cefs3
>ナナシマンさん
誠に相済みませんです。

「監視」の目をくぐって保全。(今はこのくらいしか…)
172名無し一等海士:04/03/02 20:39 ID:1CxXP/VB
名無し天狗さん
>「監視」の目をくぐって保全。(今はこのくらいしか…)
大変でしょうけどナナシマンの言うとおり自分のことを優先してください
173燃えろ!兄弟拳:04/03/02 22:41 ID:mXXiINAe
続きです!

「なんだよ、それって談合じゃんか」
「お嬢さん、人聞きの悪い事言っちゃいけませんよ。
 私達は談合に来てる訳じゃないですよ」
「じゃあ、何だよ?」
「せっかちな人ですね。でははっきり言いましょう。
 ハロ−ワーク商会も私達の事務所の傘下に入っていただきます」

2人組はそう言うと名刺を差し出した。そこには
「ギャラクシーカンパニー」と書かれていた。
ギャラクシーカンパニーとは最近良くない噂を聞く探偵事務所である。

「なるほどね、ギャラクシーさんでしたか、ではこちらもはっきり言いますね。
 そのお話はきっぱりとお断りします」

斉藤は名刺を手にしながら笑顔で答えた。

「おや、そうですか・・・まさか斉藤さんは、うちがどんな所か
 知らない訳じゃないですよね?」
「勿論知ってますよ。悪徳業者でそのバックに暴力団がついてる事も」

斉藤がそう言った瞬間、2人組の顔色が変わった。
174燃えろ!兄弟拳:04/03/02 22:42 ID:mXXiINAe
「暴れても構わないですけどここにある家具はオーダーメードだから
 高いですよ。たぶんあんた達のシノギじゃ買えない物ばっかりだよ」

斉藤はその場に座ったまま余裕の表情を浮かべていた。
確かにハローワーク商会の事務所にある家具は
全てインテリアショップ「ペガサス」のオーダーメードである。
だがそれ程高いと言う訳でもない。
イチビる2人組に斉藤はハッタリをかましたのだ。

「さすが大吉さんの娘だけあるな。度胸が据わってやがる」

 この業界では斉藤大吉の名は意外に知られている。
何処から聞きつけたのかFBIとつながりがあるとさえ噂されていた。

「だがな、ちょっと調子に乗りすぎたみたいだな」

2人組の1人がそう言って斉藤に殴りかかろうとした時であった。
突然2人組の身体が持ち上がった。

「何だ?」

慌てた2人組が後ろを振り返るとそこには大男が立っている。
175燃えろ!兄弟拳:04/03/02 22:43 ID:mXXiINAe
「何だてめえは?」
「おとなしく帰るか、それとも痛い目をみるか・・・どっちを選ぶかな?」

大男はそう言って2人組を睨みつける。
ただならぬその男の威圧感。
「こいつには勝てない」そう思ったのであろう、2人組はおとなしく
引き上げて行った。

「弁慶さん、ちょうどいい所に来てくれたね」

矢口がそう言うと

「NO、彼はこの事務所の用心棒」

斉藤が言う。

「へっ?そうなの?でも用心棒なんていらないじゃん、
 オイラ達に勝てるやつなてそうはいないと思うけど・・・」

矢口がそう言うと斉藤は笑いながら言った。
176燃えろ!兄弟拳:04/03/02 22:44 ID:lANMvHlX
「確かに、今の連中をぶっ飛ばすくらいは、私とあゆみでも出来るし
 もっと大人数で来られても、今いる4人に勝てる連中なんてそうはいない。
 でもね、解るでしょ、矢口も圭ちゃんも女の子なんだよ
 もっとさ、普段から普通にしようよ。普通の女の子みたくさ・・・」
「・・・・解ってるよ・・でもボスにはオイラ達の気持ちなんて・・・」

そう言いかけた矢口はハッとする。

「ごめん・・・・オイラ達を心配してくれてるんだよね・・・」
「確かに私達は生身の人間だから矢口達の気持ちは解らない・・・
 でもね、だからこそみんなには普通の女の子でいて貰いたいの。
 それにみんなはあまりそう言う事考えていないみたいだけど、
 人間を改造する技術があるならそれを元に戻す技術だって
 あるかもしれないじゃん」

斉藤がそう言うと矢口は小さく頷いた。
177燃えろ!兄弟拳:04/03/02 22:45 ID:lANMvHlX
「うん・・・・」
「諦めちゃ駄目だよ。実はね、これはみんなには言って欲しくないんだけど
 余計な期待を持たせるだけだから・・・」
「何?」
「稲葉さんとお父さんにね、捜して貰ってるの。そう言った技術が
 何処かに無いかって・・・。望みは薄いけど・・・・」
「ホント?・・・・・ありがとう・・・・」

矢口の目に涙が浮かぶ。
「普通の女の子でいたい」・・・これは中澤家の面々が誰しも心の隅に
持っている気持ちである。だが今の状況はそれを許してはくれない。
そんな矢口達の気持ちを仲間である斉藤は良く解っているつもりであった。
だが実際は自分は生身の人間である。
瀕死の重傷を負って、仕方のない決断の上に改造された矢口達の
本当の苦悩など解る筈もない。
ならばせめて自分ができる事をやろう。斉藤がそう思った時に
柴田が提案したのがペット探偵であった。
しかしそれを始めれば今回の様な事が起こる事は解っていた。
だからイマイチ決断できなかったのだが
中澤家の面々のすれ違い、飯田と安倍の喧嘩の話など
自分達ならそれ程気にしない事が中澤家では起こっている事を知って
ならば自分も仲間である以上、「リスクを負うべきではないのか?」
そう考えてペット探偵の開業を決意したのだ。
弁慶に用心棒を頼んだのも矢口達にここにいる時くらいは
普通にして欲しいと考えていたからなのである。
178燃えろ!兄弟拳:04/03/02 22:48 ID:lANMvHlX
今日はここで切ります。
おやすみなさい。
179名無し募集中。。。:04/03/03 03:30 ID:icP9Vdei
>>158
いまいちJaneの使い方を熟知してなかったので、試行錯誤しながら
ようやく見れるようになりました。ホントありがとうございます(´Д⊂
これでやっと現行スレに追いつけます。作者さんがんばってください。
180燃えろ!兄弟拳:04/03/03 23:14 ID:nxF7z/mC
続きです。

「本当ならさ、みんなの年齢だったら普通に学生やってたり
 普通に社会人やってたりしてる筈じゃない。
 友達と遊びに行って旅行して・・・・
 実際何も知らない人達はそうしてる。アホみたいな連中の存在なんか
 知らないから、遊んだり、普通に仕事したり、勉強したり・・・・
 きっと私だって雅恵やめぐみがあんなじゃなかったら、
 みんなの事知らなかったらそうしてた。
 でもそんなの変じゃん!おかしいよ!何で矢口や圭ちゃん達だけが
 そんな普通の事が出来ないの?周りの人達がああやって何も知らないで
 いられるのはみんなが頑張ってるからでしょ?
 だったらみんなだって少しでもいい、普通の女の子らしくしようよ」

斉藤の言葉に矢口は黙って頷く。
実際最近の自分達はみんなで遊びに行ける時間が増えた。
改めてそう感じたのは今の斉藤の言葉があっての事だ。
苦しいのは自分達だけじゃない。
その苦しみを理解してくれようとする仲間達だって
自分達と同じ位悩んでいたのだ。
中澤は立場上、みんなの普通の生活を考える前にどうしても
戦いを優先してしまう。これは仕方の無い事だ。
しかし斉藤達は違った。普通の人間としての生活
それを必死になって考えてくれていたのだ。
181燃えろ!兄弟拳:04/03/03 23:15 ID:nxF7z/mC
「ありがとう・・・・ホント・・・オイラ嬉しいよ・・・・
 正直言って悔しかった・・・・他の・・何も知らない子達は
 普通に生活してるのに・・・なんでオイラ達だけこんな事やってるんだって
 でも違った・・・・少なくともボスと柴ちゃんと大谷ちゃんと
 村田ちゃんは解ってくれた。それに弁慶さんや稲葉さんだってそうだ
 みんな・・・オイラ達の事知ってる人はそうなんだよね・・・
 ごめん・・・勘違いしてたよ」

矢口は涙を浮かべながら、けれど嬉しそうに笑った。

「でも油断はしない事。まだまだ全てが終った訳じゃないしね。
 これからやらなくちゃいけない事はいっぱいあるんだから・・・・
 でも、私も感謝してるよ・・・本当にありがとう・・・」

保田もまた涙を浮かべながらも笑顔でこう言った。

「そんな改まって言われると照れちゃうけど、
 それが私達に出来る精一杯の協力かな・・・・?
 本当の戦いになったら私達は足手まといになりそうだからね。
 雅恵やめぐみだってきっとそう考えてるよ。
 口には出さないけど・・・・・・・・ってうるさいなぁ」

斉藤がそう言った時、事務所の前に数台の車がとまる音が聞こえて来た。

「どうやら、バカどもが仲間を連れて来た様だな・・」

弁慶は表を見ながら言った。
182燃えろ!兄弟拳:04/03/03 23:16 ID:nxF7z/mC
「まったく・・・・こまった連中だ・・・少し痛い目みないと解んないみたいだね」
「あれ?ボス、それはいいの?連中をんでシバクんでしょ?」
「それとこれは別!商売の邪魔をする奴はぶっ飛ばせ!」

そう言って斉藤達が表に出ようとした時

「こら、そんな所に車止めるな!邪魔だろうが!」
「うるせー!引っ込んでろ!」
「なんだとー!」

大谷と外の連中の怒鳴り合う声が聞こえて来た。

「やれやれ・・・こっちが行く前に向こうがキレか・・・・」

ハローワーク商会のお隣は勿論、インテリアショップ「ペガサス」である。
店の前に車を止められた大谷と村田が怒って飛び出して行ったのだ。
慌てて外に出て行った斉藤達であったが、そこには既に大谷と村田に
やられた男達が横たわっている。2人が最後の1人を倒そうとした時

「ストップ!」

斉藤が2人を止めた。
183燃えろ!兄弟拳:04/03/03 23:16 ID:nxF7z/mC
「なんだよ!」
「悪い悪い、そいつら、こっちに用があって来た連中なんだ」
「だったらちゃんと言っとけ!ここはペガサスの駐車場だ!」
「へいへい・・・すんませんでした・・・さてと・・・・」

斉藤はそう言うと残った1人を締め上げる。

「そんじゃ、親分の所に案内して貰いましょうか?」
「待ってくれ・・・そんな事したら俺が酷い目に・・・」

男は情けない目で懇願する。

「言わないならここで酷い目に合うか・・・」

弁慶が拳を握り締めた。

「わっ、解った・・・案内する・・・だから・・・・」
「承知した、安心しろ。お前らの組織は今日で終わりだ。
 気の毒だがお前は失業だ。明日からまともな仕事を探すんだな」

弁慶はそう言うと拳を下ろす。
こうなったら仕方が無い、男は覚悟を決めると斉藤達を案内するべく
斉藤、矢口、保田、弁慶のの4人を車に乗せると出発した。
184燃えろ!兄弟拳:04/03/03 23:18 ID:nxF7z/mC
「なんなんだよ・・・こいつらは・・・・」

まだその場に気絶する残された男の仲間達を見て大谷が言う。

「本当にごめんね、実は・・・」

柴田が2人に事の詳細を説明する。納得したした2人は
その場にのびている男たちを起こした。

「ほれ、起きろ、商売の邪魔だ!」

哀れにも横たわる男達に容赦なく蹴りを入れる大谷、
最近店の売上が伸びずイライラしていた所だったので
ここぞとばかりの八つ当たりであった。

「う・・・ん・・・」

目を覚ました男達は起き上がると言う。
185燃えろ!兄弟拳:04/03/03 23:19 ID:nxF7z/mC
「・・・・お前達何もんだ?只者じゃねーよな?
 それともただヤクザに喧嘩売るアホか?」
「どう言う意味だよ?」
「ワカラねーのか?要は仕返しがあるって事だよ。
 これでも俺たちゃぁ紫龍会だぞ。聞いたことくらいあるだろう?
 この国でもそれなりの組織だ。怖くないのか?
「何が?」
「要は素人さんが勝てる相手じゃねーって事だよ」

男たちは勝ち誇ったに言う。だがその場の3人は普通だった。

「それで?どうなる訳?」
「お前達は知らんだろうが紫龍会はアジアンマフィアともつながりがある
 そして俺たちはその傘下の組織の人間って事だ。
 お前達に逃げ道は無いぞ」
「ふーん、でも今仲間がその傘下の組織とやらをぶっ潰しに行ったけど?」
「何?・・・・バカなやつらだ。そんなことしたら命がいくつあったって
 足りる訳がない。可哀想に、お前達の仲間は帰って来ないぞ!」
「まったく・・・チンピラは・・・すぐそう言う事言うんだから。
 バックがどうとか、俺達の親分はどうとか・・・ちっとはさあ
自分の力でどうにかしようとか思わない訳?」

大谷や村田があきれた様な表情を浮かべる。
すると男達はそれでも続けた。
186燃えろ!兄弟拳:04/03/03 23:20 ID:nxF7z/mC
「何とでも言いやがれ!結局強いバックがある奴が勝つんだ!」
「はぁー・・・情けない・・・これだからチンピラは・・・」
「随分と余裕だな、それも今の内だけだがな」

強がる男達であったがそれもそこまでであった。

「もう、今強がったってしょうがないでしょ?立場解ってんの?」

柴田はそういうと構える。

「赤心旋風脚!」

そう叫んだ柴田の右足が男達の車のドアに大きなへこみを作る。

「げ!何なんだこいつらは・・・・すみませんでした。勘弁して下さい」

男達はそう言うとあっという間に逃げ出していった。

「口ほどにもない・・・・」

大谷はそう言うと村田と共に店に戻り、柴田もそれに続く。
187燃えろ!兄弟拳:04/03/03 23:21 ID:nxF7z/mC
今日はここで切ります。
予定より少しのびそう。
188名無し募集中。。。:04/03/03 23:25 ID:4AEPyOuL
乙。こういうサイドストーリーがあると世界観に深さが出るね。
189燃えろ!兄弟拳:04/03/04 23:51 ID:oECVP2th
続きです。


一方斉藤達は・・・・

「邪魔するよ!」

紫龍会と書かれた事務所らしき建物に乗り込むなり斉藤が言い放つ。
突然の訪問者に中にいた人間は一瞬唖然としていた。

「なんだテメーらは?」

すぐに元気のいい連中が騒ぎ出した。
だが4人は悠然と歩き出すと部屋の奥に座っている男の前に進んで行った。

「貴方が親分さん?」
「おたくらは?」
「初めまして、ハローワーク商会の斉藤です」
「ハローワーク商会・・・・ああ、貴女が・・・で今日はどんな御用で?」
「聞かなくても解ってるでしょ?随分とナメタまねしてくれたからその御礼にね」
「はははは・・・御礼か。随分と威勢がいいな。だがいつまでそうしていられるかな?」

そう言って紫龍会親分が立ち上がった時であった。
190燃えろ!兄弟拳:04/03/04 23:52 ID:oECVP2th
「全員動くな!警察だ!麻薬取り締まり法違反の容疑で全員逮捕する!」

突然警察がなだれ込んで来た。
騒然とする現場に危うく斉藤達まで逮捕されそうになった時であった。

「あれ?ひょっとして斉藤さんですか?」

一人の女性が声をかけて来た。

「斉藤ですが貴女は?」
「私はFBIの石井リカです。斉藤さん達の事は稲葉から聞いています。
 しかしどうしてまたこんなところに?」
「実は・・・・」

斉藤は成り行きを石井に話した。

「そうですか、では今日はお引取り下さい。こちらも特命で動いていますので
 見なかった事にします。この仕事も稲葉から引き継いだ物なので
 余計な仕事はこちらも増やしたくないですし・・・・」

石井はそう言うときびきびと指示を出し現場の混乱を収めると帰り支度を始めた。
191燃えろ!兄弟拳:04/03/04 23:53 ID:oECVP2th
「それでは皆さん、私はこれで・・・・」

石井がそう言って帰ろうとすると

「ちょっと待ってください。石井さん、お願いがあるんですけど・・・」

斉藤が石井に言う。

「何でしょう?」
「あの実は・・・私達ここ来るのにあいつらの車で来たから帰りの足がなくて・・・」
「ちょっとボス・・・図々しいよ・・・」

斉藤の言葉に矢口が慌てて止める。
その様子を見ていた石井は薄笑いを浮かべると頷いた。

「良いですよ。ご自宅まで送ります。乗ってください」

石井はそう言うと一台のミニバンを指差した。
全員が乗り込むと石井は車を発進させる。
192燃えろ!兄弟拳:04/03/04 23:53 ID:oECVP2th
「どうもすみません無理言っちゃって・・・」
「良いですよ。それに皆さんともお話したかったし。
 えーっと、今ここにいるのは・・斉藤さん、矢口さん、保田さんで合ってます?」
「はい」
「そちらの男性は?」
「弁慶と申します」
「ああ、弁慶さんですか。貴方の事も稲葉から聞いてます。
 で、いきなり本題なんですけど、あの紫龍会はぶっちゃけると
 ゼティマとの繋がりがあります。で稲葉さんにその事を連絡したら
 もしかしたらあなた達とハチあわせるかも知れないからって・・・
 まさか本当にいるなんて思っていなかったからびっくりしましたよ」

石井の話によく訳が解らないまま頷く4人。

「石井さんも、ゼティマを追ってるんですか?」
「いえ、私は麻薬専門です。ただその追ってる麻薬組織が
 ゼティマと絡んでいる事が多くて・・・元々稲葉さんも私の先輩で
 一緒に仕事してたので色々と情報交換はしてるんですよ」
「そうだったんですか・・・・じゃあおいら達の事も・・・・」
「はい、聞いています。どんな事情があるのかもね。
 でも心配しないで下さい。その事を知っているのは
 稲葉さん達のチームと私を含めて数人です」
「そうですか。それを聞いて安心しました」
「稲葉さんもそうですけど、私だって皆さんは同じ仲間だと思っています。
 勿論同等の立場の人間としてです」

石井に言葉に矢口が少し表情を歪める。
193燃えろ!兄弟拳:04/03/04 23:54 ID:oECVP2th
「勘違いしないで下さい。私だって奴らの為に
 多くの仲間や友人を失っています。だから皆さんと同じなんです」

そう言う石井の言葉に矢口の表情が元に戻った。
ここにもう一人辛い思いをした仲間がいる事が解ったからだ。

「ごめんなさい、おいらまた・・・・」
「いえ、私の言い方も悪かったみたいですね。ごめんなさい」

そうこうしているうちに車はハローワーク商会にたどり着いた。

「ありがとうございました。本当に助かりました」
「いえ、私も皆さんにお会いできて良かったです。
 本当・・・稲葉から聞いていた通りの人達で・・・・
 では、またいつかお会いする事もあるでしょうからそれまでお元気で・・・」
「はい、石井さんも・・・」

そう言うと石井は帰って行った。4人はそれを見えなくなるまで見送る。
194燃えろ!兄弟拳:04/03/04 23:55 ID:oECVP2th
「今の誰?」

斉藤達が帰ってきたのが解った大谷が外に出てきた。

「新しい仲間だよ」
「は?」
「稲葉さんの後輩だって・・・」
「ふーん・・・・」

斉藤の言葉に大谷はただそう言うだけであった。
一瞬見ただけであったが大谷も何か感じ取ったのだろうか?
それ以上は聞こうとはしなかった。
同じ悲しみを持つ者同士が共に戦う。
今の彼女達にはそれだけで充分なのかもしれない。

              いんたーみっしょん
             【戦え!ペット探偵!】
                 終わり
195燃えろ!兄弟拳:04/03/04 23:57 ID:6jlqJ2aO
以上で今回は終わりです。
読んでいただいた皆様、ありがとうございました。

196保全:04/03/05 22:48 ID:pvHIvflC
やるせない思いに少女はただ意味も無く歩いていた。

「緑の大地、四季の花々・・・」

本当ならば一緒に楽しめた筈の親友は今どうなっているのか?

「一緒に歩いた白い砂浜、一緒に拾った桜貝・・・」

思い出の砂浜をただ歩き続ける。
何を信じたら良いのか、自分は今どうしたら良いのか?
少女は何も解らなかった。

「まだ人の胸にぬくもりがあって、まだ海がコバルトの時代・・・
 あの頃は良かった・・・古き良き時・・・・」

1人になってまだ数日であったが遠い昔の様な記憶。

「あの頃がずっと・・・ずっと続いて欲しかった・・・・」

悲しみに震える少女、仮面ライダーBLACKこと松浦の戦いは
まだ始まったばかりである
197名無し募集中。。。:04/03/05 23:16 ID:He6o4lK+
>>196
乙。雰囲気がBLACKっぽくていいかも。
198名無し募集中。。。:04/03/06 00:33 ID:l5H6qZyn
>>196
LONG LONG AGO,20TH CENTURY乙。
199名無し募集中。。。:04/03/07 11:09 ID:21IIQly6
保全
200 :04/03/07 20:12 ID:rw3z4fEU
200
201ナナシマン:04/03/08 23:09 ID:scWrKiCt
第55話 「白い翼」


 北海道、室蘭。ある日の昼下がりのこと。時ならぬ「爆弾低気圧」の折り、
風雪が街をも凍れと吹き付ける中一人の少女が寒さに身を縮めながら通りを行く。
その日人通りは少なく、また行き交う車もまばらだった。それでも彼女はどうしても
この大雪をついてでもやらなければならない事があった。アスファルトを覆う雪を
慎重に踏みしめながら、少しずつ前に進む。鈍色の寒空に消えていく少女の白い
吐息。やがて少女は交差点へとさしかかった。白いヴェールの彼方に一点だけ
灯ったかのような、信号灯の光が奇妙なコントラストを描く。少女が顔を上げた
その時、信号はまだ青だった。

 (大丈夫、まだ行ける)

 周囲を確かめながら、少女は横断歩道を渡り始めた。そして四分の三程度を渡り
終えたその時だった。

 『キイイイイイーッ!!』

激しいブレーキ音を響かせながら突如交差点に突っ込んできたのは、一台の乗用車
だった。遠く関東方面からやって来たこの車は、突然の大雪に対する備えが不十分の
まま北海道に来てしまったのである。少女がこの車の存在に気づいたときには、
すでに回避は不可能だった。車は道路脇に乗り上げたが、自走することが可能だった
のかけたたましくタイヤが悲鳴を上げると、脱兎のごとく現場から走り去っていった。
一方、その車にはねとばされる形で少女もまた雪の降り積もる歩道に倒れていた。

 「おねえ・・・ちゃん・・・」

遠のく意識の中で、少女が呟いた言葉。事故の瞬間、走り去っていく車の、それこそ
乗っていた者の顔までも見えたほどゆっくりと流れた時間。やがてそれは、全身を
襲った衝撃にかき消された。そしてそのまま、少女のまぶたはゆっくりと重く閉じ
られていった。
202ナナシマン:04/03/08 23:09 ID:scWrKiCt
 そして少女が再び目を開いたとき、彼女は闇の中にいた。やがて顔、いやむしろ
全身に違和感を感じた彼女は、その正体を確かめるべくゆっくりと手を伸ばした。
どうやら、それは布か何からしい。そう感じた彼女は、自分の身体を包むように
かけられていた布らしきものを取り払い、ゆっくりとその身を起こす。目が徐々に
慣れてくると、彼女は自分がどうやら部屋の中にいるらしいことに気がついた。
そして、そこには自分一人しかいないことも同時に知った。薄暗い部屋の中に、
なぜかたった一人で横たわっていたのである。さらに、少女は着ていた服ではなく
何か検査衣のようなものを着させられていることに気づいた。ベッドとも台とも
つかぬものに横たえていた身体をすっかり起こした彼女は、裸足のまま床へと
降り立つ。皮膚感触、呼吸、嗅覚、視覚。その全てが今まで通りであることに
彼女は不思議な感覚を覚えていた。あれだけの事故に遭っていながら、である。

 (死ぬかと思ったのに何ともないや・・・なんでだろ)

 交通事故に遭ったことは自分でも理解していた。はねられ、跳ばされ、
叩き付けられる瞬間まで記憶していた。それなのに、なぜ今自分は全くの無傷で
そこにいるのかが判らなかった。戸惑いながら薄明かりの中で自分の身体の隅々に
視線を走らせるが、とくに変わったことはないように思えた。自分はすっかり
平気なのだと思うまでにはならなかったが、少なくともこの居心地の悪い部屋に
いる理由は無いように思えた。こんなところにいつまでもいたのでは、生きた
心地がしないと少女は思っていた。
203ナナシマン:04/03/08 23:10 ID:scWrKiCt
 仕方なく少女は検査衣のまま部屋から外へ出ることにした。ドアノブにゆっくり
と手を掛けると、大した手応えを伝えることなくドアは開いた。あっけないほど
簡単に外に出ることが出来た少女の目に映ったのは、先ほどの部屋よりは少し
明るい通路だった。それと同時に少女の鼻を刺激したのは薬品のにおい〜どうやら
消毒用のアルコールのようだ〜だった。その瞬間、彼女は一応自分を納得させる
答えを導き出すことが出来たと思った。事故にあった自分は病院に運ばれ、そこで
意識を取り戻したのだと理解することが出来た。

 「よかった・・・助かったんだ」

 命に関わる事故だった。しかし奇跡的に彼女は一命を取り留めた。安堵の表情を
浮かべ、ふと見つめた部屋。だがそこに、少女の予想だにしない事実の証左となる
プレートが掲げられていた。がっくりとうなだれ、膝をつく少女。彼女の目に
飛び込んできたプレートには、明らかにこうかかれていた。『霊安室』と。
204ナナシマン:04/03/08 23:11 ID:scWrKiCt
 その部屋が何のためにあるのか、それくらいの事は少女も十分理解していた。
少なくともそこは生者が世話になるような部屋ではない。人間はまれに死後数時間
から十数時間経過した後突然息を吹き返すケースがあるという。従って彼女がその
例外的ケースに当てはまったという事実も無いわけではない。だが、今の彼女に
そのような判断は出来なかった。

 「いやあぁぁぁぁぁぁ!!」

 頭を抱え、髪を振り乱しながら少女は乱れた足取りのまま通路を走る。それは
おおよそ正常な人間の有様ではなかった。薄暗い通路を抜け、どこを目指すでもなく
ただこの場から逃れるために走る少女の姿は、行き会った何人かの病院関係者に
目撃されていた。

 「あれって確か・・・」

 「おととい事故にあった女の子じゃないか?」

 「んな馬鹿な!」

 彼らの会話が事実ならば、明らかに人間の蘇生時間を超えて少女が蘇生した事に
なる。少女が意識を取り戻したことはすぐに病院内に知れ渡ることとなり、すぐさま
彼女の身柄を取り押さえるために職員や警備員達が行動を開始した。程なくして少女に
対する包囲網は縮まっていき、少女は中庭に追いつめられた。彼女が事故に遭って
以来、嵐のような風はやんだものの雪は未だ降り続き中庭を白く染めている。
205ナナシマン:04/03/08 23:12 ID:scWrKiCt
 「安倍さん!落ち着きなさい!!」

 「とりあえず落ち着いて話し合いましょうよ?ねえ?!」

 取り囲む警備員や病院職員が口々に彼女の名を叫ぶ。何とか少女をなだめようと
する者がいる一方で、その傍らにはさすまたを手にした警備員の姿もある。状況を
理解できないのはお互い様だった。少なくとも彼らにとって少女〜安倍麻美は
おとといの事故で命を落とした、そう思われていたからである。

 (確かに心停止の状態にあったのに・・・なぜだ)

 (この子は事故で死んだんじゃないのか。何がどうなってんだ)

 (気味が悪いわ・・・はやく取り押さえてよ)

 (警察を呼べ!俺たちじゃ太刀打ちできないかも知れん)

口にこそ出さなかったが彼らは麻美に対して一様に不気味さと嫌悪感を抱いていた。
しかしそれは通常ならば相手にダイレクトに伝わる感情ではなかった。だが、今
自分を取り巻く人々の抱くこれらの感情が、麻美の心に直接伝わってきたのである。
心の声は口々に言う。
206ナナシマン:04/03/08 23:13 ID:scWrKiCt
 (化け物!)

 (このバケモノ!)

自分をなだめすかすために繕う引きつった笑顔の下に、悪罵の言葉を吐く別の
顔が隠れている、麻美はそれを思いがけずして見透かしてしまった。少女の
猜疑心が、明らかな敵対心と憎悪に変わる。

 「あたしは・・・あたしは化け物なんかじゃない!!」

 雪降り積もる中庭に響く怒りの叫び。まるで自分たちの心を見透かされたかの
ような言葉に、一瞬戦慄を覚える病院関係者達。麻美はそんな彼らをにらみつける。
彼女の瞳に燃える怒りにも似た不気味な赤い光が宿ったその直後、少女の背中に
大きな白い翼が生えたように見えた。そしてその翼が翻った瞬間、そこから無数の
光の矢のようなものが放たれると、それは次々と居合わせた人々へと浴びせられた。
一瞬のひらめきと共に、雪の中に舞う光の羽根におそわれて青白い炎を吹き上げ
ながら崩れ落ちる職員達。彼らの命は一瞬にして奪われた。それはあまりにも
短時間の出来事だった。
207ナナシマン:04/03/08 23:14 ID:scWrKiCt
本日は以上です。続きはまた明日。
208名無し募集中。。。:04/03/09 01:33 ID:vc8O4/XO
更新乙です。何かと思ったらこういうことだったのかぁ…
最後の最後でやっとわかりましたw
209ナナシマン:04/03/09 22:32 ID:LeDdy8RV
 あまりに超常的すぎる惨劇の後、麻美はすっかり我を忘れ、たった一人雪の中に
たたずんでいた。しかし、運命は残酷にも彼女を現実へと引き戻し、己の罪を
まざまざと見せつけた。麻美は事の重大さに気づき、身震いが止まらない。

 「なんで・・・どうして・・・」

 一瞬の憤りに身を任せ、目の前にいた者達全てを殺めたのは自分。視線を落とせば
ついさっきまで人の姿をしていた者達の亡骸〜それはもはや灰か砂のようなもので
しか無かったが〜が雪の上に残されている。中には未だ青白い炎がゆらめいている
ものもあった。私は取り返しのつかないことをしてしまった、そんな自責の念と
この世ならざる力を突然に発揮したことに対するとまどいなど、およそ十代の少女が
一人ではとうてい背負いきれない思いが行き場を失い、涙となってこぼれそうに
なっていた。と、その時である。

 ふと自分の背後に人の気配を感じ、麻美は振り返ったその先に一人の少女の姿を
見た。小柄なその少女が、かつて姉が友人だと言って紹介した少女であることに
気づくのには、そう時間はかからなかった。

 「・・・福田さん?」

その少女〜福田明日香は黙ってうなずいた。麻美の周りにはかつての教育係だった
戸田が示したオルフェノクによる襲撃の痕跡が残されている。彼女は事の一部始終を
瞬時に理解した。麻美の身に何が起きたのか、それを理解した上で彼女は麻美の
そばへと歩み寄る。だが、そんな彼女を麻美は拒絶した。
210ナナシマン:04/03/09 22:38 ID:LeDdy8RV
 「来ないで!!」

 己の意志に関わらず人ならぬ者として覚醒した麻美は、自分の運命に明日香を
巻き込むことをおそれていた。しかし、混乱し狼狽する麻美の気持ちは誰よりも
明日香自身が一番理解できていた。なおも歩み寄る明日香、後ずさる麻美。
そんな麻美の心を解きほぐすかのような穏やかな笑顔とともに、明日香はゆっくりと
右手を差し出す。

 「怖がらなくていいよ・・・私も、同じだから」

 「・・・?!」

 「私も、あなたと同じだから」

「自分と同じ」、そんな明日香の言葉が麻美の心を包み込む。麻美にとって明日香は
まったく知らない相手ではなかったし、そして何よりその彼女が同じ境遇にある者
であると聞いた時、麻美はいまこの世の中で信じられるのは明日香だけだと感じた。
麻美は明日香に応えておずおずと右手を差し出すと、明日香の手を握り返した。

 人が来てからでは騒ぎになる。この街にいてはいずれ自分たちを脅かす意図を
持つ者達の手が伸びるかもしれない。そう考えた二人は病院を後にすると、空港へと
向かった。明日香は自分が北海道に来たのは姉であるなつみの消息を知るためだと
麻美に語ると、一方の麻美もまた東京に行った姉の身を案じていたと伝えた。
211ナナシマン:04/03/09 22:39 ID:LeDdy8RV
 「高校も卒業したし、東京に行きたかったんです。お姉ちゃんに会いに。
なのに・・・」

 「事故に遭って・・・今ここにいる」

明日香の言葉にこくり、とうなずく麻美。しかし、事故に遭ってから思いもよらぬ
形で再び蘇ったことに対するとまどいは隠せない。ふと病院での惨事が頭をよぎる。
自分の中に眠る未知の力が、いつ己の意志に反する形で現れるかは判らないのだ。

 「はい・・・でも私、これからどうなっちゃうんですか」

 「私も探してるところだよ。答えはまだ出てない」

自分の中に眠る恐ろしい力〜オルフェノクとしての力を押さえ込むように、両手を
固く組んで自分の手に押し当てる麻美。彼女の恐れと戸惑いは、明日香の目にも
見て取れた。そんな自分を見る明日香の視線を感じ、麻美はぎこちない笑顔とともに
言った。

 「でも、福田さんと一緒に東京に行けば・・・なんとなく判る気がしたから」

 「なら、一緒に探そうか。少ないけど仲間もいるし」

この時、二人の心は決まった。室蘭から機上の人となった二人は、数時間後東京に
たどり着いた。
212ナナシマン:04/03/09 22:39 ID:LeDdy8RV
 今日の分はここまで。明日は宴会が入ってしまったので、もしかしたらお休みするかも
しれません。
213ナナシマン:04/03/09 22:54 ID:LeDdy8RV
>固く組んで自分の手に
 自分の胸に、ですね。お詫びして訂正します。
214名無しハンペン:04/03/11 17:07 ID:CpnvO2vB
>>212
「鶴」いよいよ登場ですね。他キャラとの絡みが今から楽しみです。


ナナシマンさんの掲示板をお借りしてこんなもの始めました。
興味のある方は読んでみてください。

「すごい科学で語ります」
http://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/music/6849/1078735751/

感想もお待ちしてますので上記スレにお願いします。
215ナナシマン:04/03/11 20:05 ID:f5YmsIxD
 同じ心を抱えた二人が東京を目指していたそのころ、中澤家にも遅い朝がやって
きた。この時期どうしても布団から出てくるのが辛くなるのは、改造人間たる彼女
達も同じである。
 朝食の準備が出来たとはいえ、時計の針はすでに正午近くを差している。この家
の住人にとっては、朝昼兼用の食事は決して珍しいことではなかった。いつもの
ように食卓には起居を共にする少女達の人数分だけの食事が並ぶ。しかしその食卓
の風景は、この日ばかりはいつもと違っていた。

 「おはよー」

 「おはよ」

互いに朝の挨拶を交わしながら少女達が寝室から出てくる。まだ寝ぼけ眼の少女達を
笑顔で見つめているのはキッチンに立つ彩だった。

 「よし、みんないるかな?」

 「パトロールに出たガキさんとよっちゃん以外はみんないるよ。多分もうじき
帰ってくると思うけど」

 義姉への点呼報告を行ったのは義妹の真里。この家での「中間管理職」的な役割
を担っているのは彼女だった。やがて朝から洗面所の使用についてもめていた圭織と
なつみが一番最後に現れ、二名の欠員をのぞいた全員が食卓に勢揃いしてにぎやかな
朝食が始まろうとしていたその時だった。
216ナナシマン:04/03/11 20:27 ID:f5YmsIxD
 「ただいま〜!」

玄関から聞こえてきた明るい声。そして、靴を脱ぎフロアを踏みしめる音が聞こえる。
パトロールに出ていたガキさん〜新垣里沙とよっちゃん〜ひとみが帰ってきたのだ、と
居合わせた少女達は直感する。果たしてそれは現実となり二人の姿がリビングに現れた
のだが、その後だった。

 「おじゃましま・・す」

聞こえてきたのは遠慮がちに挨拶する数人の少女たちの声。互いに顔を見合わせる
少女達に対してちょっと申し訳なさそうにガキさん・・・里沙が説明する。

 「ごめんなさい。朝ご飯まだだって言うから、連れて来ちゃった」

そんな彼女の言葉の直後、ドアの影から小さなつま先がひょっこりとのぞく。そして
ちらりと見えた揺れる黒髪。それからおそるおそる顔を出したのは、中学生くらいの
三人の少女達だった。

 「おはよう・・・ございます」

食卓に居並ぶ「先輩格」とも言うべき少女達に恐る恐る挨拶する三人の少女たち。
道重さゆみ、亀井絵里、そして田中れいな。謎のベルトを守るためにオルフェノクと
戦う少女達である。

 「前に言ってた子達だよ。ウチらを助けてくれた」

 真里の言葉に食卓に座った少女達も何かを思い出したようだ。実は過去において、
少女達はお互いの素性をよく知らぬまま偶然にも危機を助け合っていた間柄だった。
裕子を奪回出来たのはれいなと絵里の協力があったからであり、そしてファイズギア
を奪回できたのはまいとひとみの力があればこそだった。せっかくだから一緒に
朝食を、ということになり新たに3名を加えた大所帯の朝食は和やかに進む、はず
だったのだが・・・。
217ナナシマン:04/03/11 20:28 ID:f5YmsIxD
今日の分はここまでです。続きはまた明日。
218ナナシマン:04/03/12 23:23 ID:E8NWxHDP
ちょっと仕事の都合で今日はお休みします。明日の夜お目にかかります。
219ナナシマン:04/03/13 22:27 ID:GB4dG6eX
 一斉に食事を取る少女達の中に混じって、一人だけ箸も付けずにただ黙ってテーブル
に視線を落としたままの少女が一人。気遣うように里沙が声をかける。

 「どうしたの?食べないの?」

少女〜れいなは連れの二人がにこやかに食事を進めているのとは全く正反対に、一人
とまどいとも疑いともつかぬ渋い表情のまま、配膳された朝食を見つめている。両隣の
絵里とさゆみがもくもくと箸を付けるのを、時折ちらちらとは見るものの自分からは
箸を付けようとしない。目の前にある暖かいご飯とみそ汁が放っておくと朝の冷たい
空気でさめてしまう。

 「もしかして・・・こういうの嫌い?」

 朝食の内容が気に入らないのか、それとも大勢で食べる朝食がイヤなのか。どちらに
しても気になるそぶりだった。彩がかけたそんな言葉に、れいなはふるふると首を
振って一言つぶやいた。

 「・・・すいません。猫舌なんです」

 「え?!」

一同唖然。そして、その直後一同爆笑。突然の告白の間が少女達にはたまらなく
おかしかったのだ。一方、れいなはしばし恥ずかしそうにうつむいていたが、やがて
小さく肩をふるわせる。そして急に席を立つと、黙って外へ出て行った。一同呆然と
する中、れいなの後をさゆみが追う。方や連れのはずの絵里は黙ってみそ汁を
すすっていた。
220ナナシマン:04/03/13 22:28 ID:GB4dG6eX
 家の外に出たれいなはオートバジンに跨り、おもむろにヘルメットを手に取る。
エンジンをスタートさせ、今にも中澤家を去ろうとしていたその時、そんな彼女に
さゆみが追いつき、れいなの態度を問いつめる。

 「れいな、せっかく朝ご飯に誘ってもらったのに失礼だよ」

 「うっさい!猫舌気にしてんの、さゆも知ってるでしょ」

猫舌はれいなにとってあまり触れて欲しくない彼女のウィークポイントだった。
小さいころそれで地元の子供達から馬鹿にされていた事もあった。幼少期のいやな
思い出が、そのたびに蘇ってくるのだろうか。しかし、彼女があの場を去ったのは
なにも猫舌を馬鹿にされて憤慨した、というだけではなさそうだった。その事を
指摘したのは、二人が予想だしない一人の少女だった。

 「本当にそれだけ?」

声の主は里沙だった。さゆみを追って、食事を中座して下りてきたのだ。三人を
朝食に誘った手前、彼女はれいなのとった行動の理由を知りたかったのだ。
221ナナシマン:04/03/13 22:30 ID:GB4dG6eX
 「本当にそれだけ?」

声の主は里沙だった。さゆみを追って、食事を中座して下りてきたのだ。三人を
朝食に誘った手前、彼女はれいなのとった行動の理由を知りたかったのだ。

 「気にしてたことを笑ったのは謝る。けど、何も黙って出てくことないじゃん」

 「人のこと笑うただけで十分。朝ご飯美味しそうやったけど、もういらん!」

居合わせた少女達の代表として、里沙はれいなに対して詫びる。一方、当の
れいなは強情だ。しかし、この時れいなが意地になって口にしたこの言葉を、
里沙は聞き逃さなかった。反撃開始だ。

 「ふぅん・・・美味しそうだったことは認めるんだぁ」

 「それは・・・」
 
とたんに口ごもるれいな。彼女にしてみても、できることなら相伴に預かりたかった
のだが、どうしてもそれができなかった。それは、単に自分が猫舌だという身体的な
理由だけではなかったのだ。そこへさゆみも加勢に加わる。

 「あのお姉さん達なら信じて良いと思う。私たちのこと話してみようよ、ね?」

突如与えられた謎の力、ファイズギアを巡る戦い。その戦いを、れいなはほとんど
一人で戦い抜いてきた。あの琢磨と名乗る男が現れて以降、直接的にギアを狙う
オルフェノクは現れなくなったものの、強力な敵の出現は少女に戦いの激化を予想
させた。味方は確かに多い方がいい。信頼できる相手ならばなおさらだ。だが。

 「それが嫌ったい!」

さゆみの言葉を拒絶するようにれいなが声を荒げる。突然のことに、さゆみの肩が
小さくぴくりと震える。
222ナナシマン:04/03/13 22:31 ID:GB4dG6eX
今日の分は以上です。続きはまた明日。
223ナナシマン:04/03/14 21:51 ID:eU2AoBNM
 ちょっと急な飲み会が入ってしまい、申し訳ありませんが今日はお休みさせて
いただきます。続きは明日。
224ナナシマン:04/03/15 22:43 ID:Z0RzjDi/
 「ごめん・・・でもだめなんだって、そう言うの・・・」

 さゆみの様子を察したか、急にれいなの口調が大人しくなる。どことなく寂しげな
表情を浮かべながられいなは手にしたヘルメットをかぶり、そのままエンジンを
スタートさせる。

 「ウチらのために皆さんが迷惑するようなことは、できないんです」

そんなれいなの言葉に里沙が切り返す。

 「だからって一人で何かできるの?」

里沙の言葉に、すっかりれいなは黙り込んでしまった。全くの正論。両者の戦う相手が
同じとは限らなくても、どのみち一人で戦いを続けられるはずはないのだ。しかし。

「・・・とにかく、今日は帰ります。さゆは絵里にでも送ってもらったら?」

 この場はとうとうれいなは里沙や他の少女達に心を開くでもなく、ぶっきらぼうに
こう言い残すと、エンジン音だけを残して走り去っていった。
225ナナシマン:04/03/15 22:45 ID:Z0RzjDi/
 走り去るれいなの姿を、里沙はため息一つついて見送るしかできなかった。

 「ありゃ相当の頑固モンだね」

苦笑する里沙を気遣うように、さゆみが申し訳なさ気な表情を浮かべて小さく頭を
下げる。

 「すいませんでした・・・朝ご飯までごちそうになったのに」

 「ううん、平気。別にウチらが嫌いだから出てった訳じゃなさそうだったから」

れいなが朝食半ばで席を立ったことは里沙達にとって寂しいことではあったが、
そこに悪意や嫌悪感は無いだろうと里沙は見ていた。しかし、いかに里沙が超能力を
駆使する新人類であったとしても、れいなの心の中まで見透かせるほどの力はない。
二人の間に流れたしばしの沈黙の後で、さゆみがぽつりと呟いた。

 「あの子はいつもあんな感じだから・・・」

 「いつも?」

その言葉を聞き逃さなかった里沙の問いかけに、さゆみは少し思案した後里沙の言葉
に答える。
226ナナシマン:04/03/15 22:46 ID:Z0RzjDi/
 「ひねくれ者なんですよ。そのくせ寂しがりやっていうか」

 「あぁ・・・何となく判る気がする」

 「塾にいたときも思ってることはズバズバ言うから喧嘩ばっかりしてて。それなのに
後で『どうしてあんな事言ったんだろ』って」

思っていたよりもずっと素直な少女。それがさゆみの言葉から里沙が受けたれいなの
印象だった。しかし、その率直さが災いして人から誤解を受けるうちに、意識的に
人とのつながりを持つことを避けるようになったのかも知れない。率直すぎる自分が
それを壊してしまうことを彼女自身がおそれたのだろう、里沙はそう考えた。ましてや
謎のベルトを与えられたことで、彼女たちが「オルフェノク」と呼ぶ異形の者達から
つけねらわれる羽目になったのである。人を巻き込むまいとするれいなの思いが強く
なるのは当然の成り行きというものだろう。

 「いろいろあったかも知れないけどさ、悪いようにはしないよ。みんないい人達
だから・・・三人だけでいるより、ずっと頼りになると思う」

里沙はそういってさゆみの肩を叩く。その言葉にさゆみも小さく頷き、二人はひとまず
部屋へと戻っていった。
227ナナシマン:04/03/15 22:47 ID:IN5PZTSr
本日はここまでです。続きはまた明日。
228名無し募集中。。。:04/03/16 10:58 ID:l4y0SMUC
Q.最近見た映画(ビデオも可)で、これはいい!と思った映画はありますか?

飯田 特にないです。
矢口 「ファインディングニモ」?すごくかわいかった!!日本語版も見たい♪
石川 「パイレーツオブカリビアン」迫力もあったしドキドキしたし、すごくおもしろかった。
吉澤 「勝手にしやがれ!」
辻   「着信アリ」デス♪
加護 「グリーンマイル」ちょっと難しいお話だけど泣けた…。
高橋 「パイレーツオブカリビアン」
紺野 「ファインディングニモ」おもしろかった〜♪
小川 「MOON CHILD」
新垣 2つ観たんですが、「ファインディングニモ」はかわいくて最後は感動で、とても楽しかったです。2つ目は「ブルースオールマイティ」これは本当におもしろかった!
     あとDVDで観たんですが「パイレーツオブカリビアン」はもぉーはまって2、3回観ました!カッコイーですよネ!
藤本 「ラストサムライ」
亀井 「星砂の島、私の島」
道重 「星砂の島、私の島」6期の3人が出演してる映画なんですけど、けっこう感動しました☆みんなぜひ見て下さいネ♪
田中 「仮面ライダー555」

タイムリーなネタ
229名無し募集中。。。:04/03/16 14:20 ID:UqzhnpcU
      ./\__,ヘ,
      | ノノハヾヽ. 。。
      从*´ ヮ`)゚○゚ れいにゃ猫舌たい
      
230ナナシマン:04/03/17 23:27 ID:SVjb+IqO
 現在職場からなんですが、ちょっとこの先を書く上で過去ログを読み返して確認
しなければならない事項がいくつか出てきました。従いまして、続きはその作業が
終わりました明晩と言うことにさせて頂きたく思います。

>>228>>229
 インタビューの事知ってちょっと驚きました。多分ここで「星砂の島〜」をアピール
しておく必要が本来ならあったのでしょうが、一人だけ555って言うのも(w。
231ナナシマン:04/03/18 22:43 ID:HdIXneqq
 その日の夕刻。東京に到着した明日香たち二人がマンションに帰り着いた。これから
の生活のことを考え、あれこれと準備をしているうちに夕方を回ってしまったのだ。

 「いっぱい買い物しましたね」

 麻美の言葉に柔らかな笑みを浮かべて明日香がうなずく。やがて二人は抱えきれない
ほどの荷物とともに部屋へと上がり込む。落ち着いた内装の室内は、スマートレディに
用意された部屋を明日香の好みに合わせて内装を設えたものだ。

 「何か大人っていうか、都会的な感じしますよね。福田さんって、結構オシャレ」

 「え?そうでもないよ」

互いに笑顔で言葉を交わす少女二人。と、二人の帰りを待ちわびていた一人の女が
部屋の奥から現れた。

 「全くアンタってコは、今までどこ行ってたんや?」

ドアにもたれかかり、二人を見つめている女性の口元が心なしか引きつって見える。
明日香の帰りが遅いことに、彼女は明らかに怒っていた。
232ナナシマン:04/03/18 22:45 ID:HdIXneqq
 「ごめんね?平家さん。ちょっと北海道まで」

 「あきれた・・・アンタにとって北海道は『ちょっと』の距離なんか?」

明日香の言葉にみっちゃん〜平家みちよはため息をつきながら答えた。彼女は
スクイッドオルフェノクに襲われて一度命を落としたものの、オルフェノクとして
再び蘇ったのである。オルフェノクの中には、このように他のオルフェノクから
エネルギーを注入されることでオルフェノクへと変貌を遂げた者もいるのだ。
明日香とみちよ、二人もまた運命の導きによって出会った者同士だった。

 「この人は平家さん。こう見えても結構良い子だよ?」

 「こう見えても、って失礼な事言うな!それに何やねん、年上捕まえて良い子
とか言うて」

 二人の掛け合いに麻美の顔に笑みがこぼれる。と、ここまで会話を交わして
いながら明日香にはどうにも腑に落ちないことがあった。
 
 「って・・・平家さんなんでウチにいるの?」

 「ええやん・・・ウチも行くトコないねんから・・・」

そう言ってみちよはドアに人差し指を立て、くりくりと回しながら口をとがらせて
答える。触れてくれるな、とでも言いた気げな素振り。
233ナナシマン:04/03/18 22:46 ID:HdIXneqq
「どういう事なの?」

明日香の言葉にも、みちよは答えにくそうにしている。そんな彼女の様子を見て、
麻美が一言ぽつりと呟く。

 「もしかして、追い出されたとか」

 「ギクッ!」

どうやら図星だったらしい。実はオルフェノクになって以降、みちよはこれまで
働いていなかったのである。正確には、働くことが出来なかったのだ。収入の道
を断たれ、結果住んでいた部屋を追い出されてしまったのだ。
 しかし、それはやむを得ない話かも知れない。もし、彼女がオルフェノクに
なった経緯について目撃者でもいようものならばどうなるか。そうでなくとも、
もう彼女は普通の人間ではなくなってしまったのである。そんな人間の居場所が、
一体どこにあるというのだろうか。

 「麻美ちゃん、それくらいにしな?」

明日香はその事を知っている。そこに思いを至らせることが出来る。彼女はまだ
そこに思いの至らない麻美を諭すように言う。優しい口調ながら、不思議な
説得力のある一言だった。自分の不明を恥じ入るように、肩をすくめる麻美の
両肩を支えるようにして、明日香は彼女を自分の前に立たせて言った。

 「このコは安倍麻美ちゃん。私たちと同じ、私たちの仲間」
234ナナシマン:04/03/18 22:47 ID:HdIXneqq
 と、ここで何かに気がついた明日香が口を開く。いつもなら部屋にいるはずの
あの少女がいないのだ。

 「あれ・・・松浦さんは?」

そう、キングストーンを継承し世紀王の宿命を負わされた少女、松浦亜弥の姿が
見えないのだ。そんな明日香の言葉に、みちよが答えて言う。

 「あぁ。あの子やったら買い物に行ったがな。アンタら帰り遅いから、お夕飯
の準備買いにな」

 明日香にとっては気がかりなのは、何もみちよや麻美だけではない。亜弥もまた
人ならざるさだめを負う者同士として、明日香には気がかりな存在だったのだ。

 「どこまで行ってるんだろ」

 「多分商店街までやろ・・・せや、この子の面通しがてら迎えに行かへん?」
 
みちよの提案に二人も賛同し、北海道からの荷物もそのままに明日香達三人は
駐車場へと向かう。
235ナナシマン:04/03/18 22:48 ID:HdIXneqq
 今日の分は以上です。福田明日香とみっちゃんの邂逅編についてはまた別の
機会に。
236川o・-・):04/03/21 21:53 ID:dQX2FLLG
μ ’ヮ ’μ <保全しておきます
237ナナシマン:04/03/21 23:29 ID:M56FGMHo
 駐車場に停車していた一台の乗用車、それはスマートレディが明日香にマンション
とセットで用意し、与えたものだった。ポケットからおもむろにキーを取り出し、
明日香はキーを車の方に向けるとスイッチを押す。するとその直後、ガチャッという
音とともにロックが解錠された。いわゆるキーレスエントリーと言うヤツだ。

 「車まで用意してくれるとは太っ腹やな」

おそらくは納車されて間もない新車であろうその車をしげしげと見つめるみちよを
よそに、二人は車に乗り込む。

 「平家さん、そろそろ行きましょう」

 「あ、あぁ」

明日香の声に促され、あわてて後席へと身を滑らせるみちよ。前席には明日香と
麻美が乗り込んでおり、出発の準備は整った。

 「ところであんた、運転したことあんの?」

 「え?」

そう言ってみちよが後席から身を乗り出す。他人の運転がどうしても気になる
らしい。旧知の間柄ならばともかく、相手は出会って数日の少女である。心配に
なるのも無理からぬ話ではある。そんなみちよに、明日香が答えて言った。

 「大丈夫だって。お互いちょっとやそっとじゃ死にゃしないでしょ?」

 「・・・そう言う問題とちゃうやろ、自分」

かくして、三人を乗せて車は走り出す。目指すは夢が丘商店街。
238ナナシマン:04/03/21 23:30 ID:M56FGMHo
 車の中で明日香と麻美、そしてみちよは自分がオルフェノクと化した経緯を
打ち明けた。その会話の中で、麻美がぽつりと洩らした言葉が明日香の心に
引っかかった。それは二人の会話が、麻美の姉なつみに及んだときのことだ。

 「私って、いっつもお姉ちゃんと比べられてきたんです・・・」

 「え?」

突然の独白に戸窓う明日香。伏し目がちに呟いた麻美はすっと視線を上げ、
明日香の方を見やるとさらに言葉を続けた。

 「家でも学校でもそう・・・お姉ちゃんはいつも私の上にいて、そんな私は
お姉ちゃんのついでみたいな感じで・・・」

 「そんなことないと思うけど?」

運転中なので目を離すことは出来なかったが、明日香は少女の言葉に対して
真剣に耳を傾けていた。しかし、姉のことを語り出した麻美の表情は次第に
曇り、暗い熱気を帯びた口調で独白は続く。
239ナナシマン:04/03/21 23:31 ID:M56FGMHo
自分を姉〜なつみと比べて卑下した言葉が並ぶ麻美の一人語りを断ち切る
ように、明日香は一言だけ強い口調で言った。

 「よそうよ、そういうの」

凛とした横顔、強い意志とともに放たれた言葉。彼女は彼女なりに真剣に麻美
の言葉に向き合っていた。

 「なっち・・いや、お姉ちゃんとあなたは別の人格じゃん。違うのは当然だよ」

 「でも・・・」

 「もうそうやって自分を卑下するのはやめなよ。辛くなるだけだよ」

明日香のこの言葉に対して、麻美は何も言えなかった。いや、むしろ言わなかった
と言うべきかも知れない。彼女は隣で車を運転する少女の言葉を自分の心で
受け止めたのだ。
240ナナシマン:04/03/21 23:33 ID:M56FGMHo
 車は住宅街を抜けて、やがて市街地へと至る。時はすでに夕方、程なくして
帰宅ラッシュと重なってしまったことで、車は渋滞に巻き込まれてしまった。
ほとんど動かない車列の中で三人を乗せた車は立ち往生し、信号とともに少し
車列が動き出すとまた止まり、とそんな調子をかれこれ20分くらいは
繰り返している。

 「裏道回ればよかったかなぁ」

ハンドルを片手に一人呟く明日香。その口ぶりに少女のいらだちがのぞく。
一方、助手席の麻美は無言のまま対向車線の車列を見つめていたが、その時
彼女は一台の車を見つけた。少女の視線が、乗っていたドライバーと交錯した
瞬間、少女の中にある記憶が蘇る。そしてその記憶は、彼女の負の感情を再び
蘇らせる引き金となった。

 「あっ・・・」

 「どうしたの?」

小さく驚きの声を上げる麻美。その声に明日香が気づき、言葉をかける。しかし
明日香の言葉も耳に入っていない風の麻美は、その直後驚くべき行動に出た。
いきなり助手席のノブを引いてドアロックを解除すると、そのまま車がひしめく
道路へと飛び出していったのだ。
241ナナシマン:04/03/21 23:33 ID:M56FGMHo
 「ちょっ・・・待ちぃや!!」

 「麻美ちゃんっ!」

二人が止めるのも聞かず、麻美は道路へと飛び出すなりそのまま駆けだした。
彼女が駆けていった先に二人が見たのは動き出した一台の車だった。麻美は
その車めがけて走り出したのだ。対向車線を走る二人を車で追うことは出来ない。
さりとてオルフェノクに変化して追うわけにもいかない。

 「麻美ちゃん・・・」

車の中で、明日香はただ黙って小さくなっていく麻美の姿を見つめる事しか
できなかった。一方歩道までたどり着いた麻美は、道路が空き始めてスピードを
徐々に増していく一台の車を逃すまいと懸命に走り出した。彼女が見たその車の
正体こそ、あの雪の日に自分を撥ねた車だったのだ。
 それは言わば自分がオルフェノクと化する原因を作った相手だ。心の奥底から
わき上がる憎しみが、やがて少女の瞳を紅く燃やす。そして次の瞬間、あの雪の
日と同じように白い翼が翻ると同時に少女の体は閃光に包まれ、その収束とともに
姿を現したのは灰白色の甲冑に身を包んだかのような、鶴の意匠を持つ女性的な
フォルムの異形の者だった。さらにそこから変化を遂げ、まるで神話世界の有翼人
のような姿に変わると、翼をはためかせて宙に舞った。
242ナナシマン:04/03/21 23:34 ID:M56FGMHo
今日の分は以上です。続きはまた明日。
243ナナシマン:04/03/22 21:38 ID:chxtshuZ
 空高く羽ばたいた白い翼、その名は「クレインオルフェノク」。鶴の力を持つ
オルフェノクであり、「飛翔態」と呼称されるこの飛行形態に変化することで
高速で空を飛ぶことが出来る。渋滞中の車列の脇で変化することはあまりに不用意
な行為のように思われたが、幸いドライバーはいらだちと二人連れで自分の車の
前しか見ておらず、周囲の風景に目を奪われるようなことはほとんど無かった
ようだ。従って、麻美がオルフェノクに変化するところを目撃した者は皆無だった。

 (逃がさない・・・!)

 車列が流れ始め、ターゲットの車は幹線道路から脇道へとはいる。その道をしばらく
行けば、高速道路のジャンクションだ。クレインオルフェノクは相手に気取られない
よう、高空から車を追跡する。ある程度の高度を保った状態でも、一度オルフェノク
と化した麻美の目が車を見逃すようなことはない。やがて車は料金所を抜け、東京
方面へと滑るように走っていった。そしてクレインオルフェノクも、その頭上から
徐々に車の方へと高度を下げてきていた。襲撃の準備のためだ。両者の距離は徐々に
近づきつつあった。
244ナナシマン:04/03/22 21:38 ID:chxtshuZ
 一方、ガソリンスタンドで給油を終えたれいなは、その足でもう一度中澤家に戻ろう
としていた。さゆみの言葉通り、後になって自分の張ったつまらない意地を悔やみ
始めていたのだ。

 (きちんと謝った方がいいよね、やっぱり・・・)

ヘルメットを被り、オートバジンに跨るとエンジンを始動させる。道は判っていた
からたどり着くのはたやすい。だが、ついたところでそこからの一歩が踏み出せるか
どうか、そこは彼女次第だ。ともあれれいなはガソリンスタンドを発ち、中澤家を目指す。

 だが、陸橋を見上げる交差点に差し掛かったとき、彼女は新たなる戦いの予兆を
目撃した。それは宙に舞う異形の者が一台の車を襲っているその瞬間だった。思わず
れいなはオートバジンを停車して脇に寄せる。この様子を知る者は彼女しかいなかった
が、とうてい彼女には看過できない事態だった。
 頭上を走る高速道路を走る一台の車と、その車を執拗に襲う空飛ぶ異形の姿。空中
から降下を繰り返しながら、両足で蹴りつけたかと思うと今度は翼をはためかせて
何か矢のような物を浴びせかける。やがて車はスピードを落としながら火を吹き始め、
そしてついにガードレールを突き破って陸橋下の交差点に落下したのである。
20メートル程の高さから落下した車は黒煙と炎を吹き上げ、乗っていた者は間違い
なく死んでいるだろう。落下の衝撃か、車の火災か、そうでなければオルフェノクの
力か。いずれにしても目の前で人間の命がオルフェノクの手によって奪われたこと
には変わりない。
245ナナシマン:04/03/22 21:40 ID:chxtshuZ
 「オルフェノクめ・・・!!」

 人目につかない小道に入り込んだところで、れいなはすかさずアタッシュケース
から変身ベルト「ファイズドライバー」を取り出して腰に巻く。そして、ポケット
からファイズフォンを取り出して変身コードを入力する。

 『Standing by』

電子音声が変身準備完了を告げるとれいなは手にしたファイズフォンを掲げ、自分
の目の前で人の命を奪ったオルフェノクに対する怒りとともに叫ぶ。

 「変身!」

ファイズドライバーのバックル部にファイズフォンを装填すると、「Complete」
の電子音声が変身の開始を告げる。ファイズドライバーから延びる赤い光の帯、
「フォトンストリーム」がれいなの体を駆け、次の瞬間彼女の体は閃光に包まれる。
そしてその光の収束とともに現れたのは、銀色のプロテクターと闇に輝く黄色い目を
持つ戦士の姿。仮面ライダーファイズはオートバジンを駆り、飛び去った異形〜
クレインオルフェノクを追って高速道路へと走り出した。
 一方のクレインオルフェノクも、復讐を果たした以上長居は無用、とばかりに
スピード上げて飛び去っていく。ファイズは敵を逃すまいと、アクセルを全開にして
疾走する。

 「くっそぉ〜、追いつかない!」

 夜の闇を高速で飛翔するクレインオルフェノクと、そのスピードに追いつけない
ファイズ。オートバジンの最高速で追跡するが、その差はなかなか縮まらない。
見失わないだけまだましなのかも知れないが、さりとて敵のスピードに追いつか
なければオルフェノクを食い止めることは出来ない。高速道路を走る他の車の間を
縫いながらも、気持ちばかりが焦る。と、その時そんなファイズのすぐ横を爆音
とともに黄色い閃光が駆け抜けていく。ファイズ〜れいなはその正体を直感した。
246ナナシマン:04/03/22 21:43 ID:chxtshuZ
 「絵里!あんたやろ?!」

猛スピードで疾走するオートバジンのすぐ横をすり抜けていったのは、亀井絵里
の駆るサイドバッシャーだった。そんな絵里の態度が気に障ったファイズは
アクセルを全開にして絵里に追いつく。

 「どういうつもり?人のことおちょくっとうと?!」

 「どういうも何も・・・これを渡しに来ただけ」

そう言うと、絵里は手にした何かをファイズに対して投げてよこす。この高速
移動中に不意にそんなことをされては危険きわまりない。そんな彼女の態度が
ますますれいなの気に障る。

 「危ないでしょ!だいたいあんた、こんなのどうしろって・・・」

れいなの言葉を遮るように、絵里はぶっきらぼうに言い放った。

 「私が持ってるより、れいなが持ってた方が良いと思って。それじゃ」

そう言うと絵里はファイズとともにクレインオルフェノクを追おうという気は
さらさら無いと言わんばかりに、ジャンクションを抜けて下道へと走り去って
いった。残されたのは、ファイズの手の中にある物だけ。

 「ったく絵里のやつ・・・ってこれ、何だろ?」

手の中の物を落とすまいと、握りしめた手のひらを開いてみる。そこにあった
のは、一見すると腕時計のようにも見える何かの装置だった。しかし、それが
何かを確かめている場合では無さそうだ。先ほどまでファイズを振り切ろうと
高速で飛び続けていたクレインオルフェノクが突如取って返して夜の街へと
逃れたのだ。
247ナナシマン:04/03/22 21:44 ID:chxtshuZ
今日の分は以上です。2、3日くらいで終了の予定です。
248ナナシマン:04/03/22 21:48 ID:chxtshuZ
>>236
 お手数をおかけしてすいません。今回のお話も後1、2回程度ですが
よろしくおつきあい下さい。
249ナナシマン:04/03/23 23:19 ID:bSj6Xp9d
 突如高速道路から姿を現した奇怪な鳥の怪物が、夜の繁華街を高速で飛翔する。
巻き起こる衝撃波が窓ガラスを打ち砕き、鋭利な刃のごとく街灯を切断する。この
異常事態に、たちまち街は大混乱に陥ってしまった。ファイズもオルフェノクを
追って高速から降りたが、この騒ぎで発生した渋滞に行く手を阻まれてしまう。
このような状況の中、オートバジンで敵を追跡するのは明らかに人目につきすぎる。

 「どうしよう。これじゃ追いかけられない・・・ってうわぁ!」

思案に暮れているその時、いきなりオートバジンがバトルモードに変形し始めた。
ファイズが乗っていようと全くお構いなしに、平気で彼女を振り落とす。刹那の
浮遊と直後の衝撃。ファイズは宙に投げ出され、近くにあった車に叩き付けられた。
ボンネットが激しく変形しフロントガラスも粉砕されたが、運転手の男は大した
けがもなく無事なようだった。思いがけず両者の視線が交錯する。

 「・・・悪かったね」

 「はぁ」

あっけにとられて呆然となる男をそのままに、すっくと立ち上がったファイズは
腕を一振るいするとオートバジンの姿を探す。すると上空で激しく戦いあう二つの
姿が見えた。おそらくどちらかがオートバジン、そしてもう一方がオルフェノク
だろうと思っていたその時、上空からものすごいスピードで何かが落下してきた。
それは運悪く近くのトラックの上に落下して荷台をめちゃめちゃにし、トラックは
やがて炎を上げて燃えはじめた。
250ナナシマン:04/03/23 23:20 ID:bSj6Xp9d
 ファイズが再び視線を上空に移すと、上空から銀色の人型が落下した物を追って
急降下してくるのが見える。オートバジンだ。トラックの荷台に落下した敵の姿を
発見するや、あろうことかバスターホイールを乱射して周囲の車もろとも攻撃する。
人であれ車であれ、そこにあるものはすべて標的になっていた。突然始まった戦い
に道路上は車を捨てて逃げ出す人々でパニックになる中、被弾するたびにボンネット
に火花が飛び散り、あたりに硝煙が立ちこめる。銃声にあわてて身を隠す人々に、
銃弾が一発も当たっていないのは奇跡といって良かった。
 例によってファイズに当たろうともお構いなしの攻撃だったので当然彼女の怒りを
買い、ひとしきり撃ちまくって着地した直後、またも一撃見舞われてビークルモード
に変形・横転したことは言うまでもない。

 一方それと時を同じくして、燃え上がるトラックのひしゃげた荷台から立ち上がる
影があった。黒煙を伴い赤々と燃える炎の中に立つ異形の影。クレインオルフェノク
だ。クレインは再び飛翔態へと姿を変えると上空へと飛び上がった。
 しかしオートバジンとの戦いで傷ついたのか、必至でバランスを保ちながらよろよろ
と羽ばたくと、通りのシンボルである赤いネオンのゲートにぶち当たり、ゲートは
火花を散らせながら真ん中から折れて崩れ落ちる。その光景を尻目に、異形の翼は
ようやく宙へと舞い上がった。
251ナナシマン:04/03/23 23:21 ID:bSj6Xp9d
 その姿を認め、ファイズは先ほど受け取った時計の様な装置〜ファイズアクセルを
手に填めると「アクセルメモリー」をファイズフォンに装着されたミッションメモリー
と換装する。すると、胸部アーマー「フルメタルラング」が展開し、通常は黄色の目
が鮮やかな赤へと変化する。そして、身体に走るフォトンストリームが、銀色の
「シルバーストリーム」と言われる状態へと変化する。これこそファイズの超高速
戦闘形態「アクセルフォーム」なのだ。そして、おもむろにスタータースイッチを
押す。

 『Start up』

 れいな自身この装置の使い方は知らなかったが、ひらめきが彼女にそれを教えた。
突然の変化はれいなに一瞬の驚きをもたらしたが、その後で彼女に新たな力への確信
を与えた。その確信とともに、れいなは走り出した。するとどうだろう、周囲の景色
が目にもとまらぬ速さで彼女の横を流れていくではないか。いや、正しくは彼女自身
が目にもとまらぬ速さで移動しているのだ。

 (・・・速いっ!)

 電子音声とともに始まるカウントダウン。アクセルフォームの効力は10秒間だけ
だがその間は通常の1000倍のスピードで行動でき、技の威力も1.5倍にアップ
するのだ。アクセルフォームとなったファイズはそのスピードに任せて走り出した。
銀色の残像を残し、ファイズは低空飛行を続けるクレインオルフェノクを猛追する。
車を蹴立てて、そして立ち並ぶビルの壁をも蹴ってファイズは1000倍のスピード
でオルフェノクを追う。その姿はクレインオルフェノクの目にも映っていた。

 『嘘・・・追ってきてる?!』

逃げる音速の翼、追う銀色の閃光。高速の追跡戦は最終局面を迎えようとしていた。
252ナナシマン:04/03/23 23:22 ID:bSj6Xp9d
今日の分は以上です。多分明日くらいには終了の予定です。
253ナナシマン:04/03/25 01:22 ID:yzfKMAsn
何とかして敵に追いつこうと全速力でファイズは走る。重力に逆らって屹立する
ビルの外壁を駆け、居酒屋や金融会社のネオン看板を無遠慮に蹴りつけながら走る。
じゃまな物はそれこそ2つや3つは殴り飛ばしながらファィズは敵を追った。一方
彼女の眼下では逃げまどう人々の頭上に飛び散ったネオンや外壁の破片、飛び散る
火花が容赦なく降り注ぎ、あたりはまるで戦場のような有様になっていた。

 そして、疾走を続けるファイズはようやくクレインオルフェノクの頭上を取れそう
な位置まで追いついた。この好機を逃してはならないと、通常ファイズドライバーに
装着しているデジタルカメラ「ファイズショット」を取り外すとミッションメモリー
を装填し、「ナックルモード」と呼ばれるパンチングユニットへと変形させる。
そしてさらにファイズフォンのEnterキーを押し、エネルギーを充填させる。

 『Exceed Charge』

電子音がエネルギーの充填を告げる。対象に直撃させてエネルギーを放出する必殺の
パンチ技、「グランインパクト」を放つべくファイズはオルフェノクめがけて大きく
跳躍する。

 「はぁっ!!」

ジャンプ一番拳を振るい、敵の頭上から放たれる必殺の一撃。だが、ファイズの攻撃
よりもクレインオルフェノクの移動スピードの方がやはり上回っていた。拳は敵に
かすりもせず、そのままの勢いでファイズは近くのビルにグランインパクトを
叩き込んでしまった。アクセルフォームへの変化で倍加したその破壊エネルギーは
実に7.8トンに及び、運悪くこの一撃をまともに食らった雑居ビルの外壁は轟音と
ともに崩れ落ちた。再びファイズはクレインオルフェノクを追うが、その後方では
思いがけぬ大破壊が起きていた。
254ナナシマン:04/03/25 01:26 ID:yzfKMAsn
 「ちっ・・・しくったッ!」

土煙を上げて崩れていくビルの様はすでにファイズの視界の後方へと流れ去った。
攻撃を外してしまったことを悔やんでも仕方ないことではあるが、さりとてこの
高速の戦いをいつまでも続けることは出来ない。再び広がった距離をさらなる疾走
でカバーするべく、ファイズは走る。しかし、どうやらファイズがこの形態を維持
できる時間は残り僅からしい。電子音声がカウントを続けるが、それも残り少なく
なってきていた。

 『3・2・1・・・』

そんな中再びオルフェノクに先行する形で頭上を取ったファイズはジャンプ一番、
クレインオルフェノクに対して飛びかかった。

 「はぁぁぁぁぁぁーっ!」

完璧なタイミング。雄叫びとともにファイズはクレインオルフェノクの身体に
しがみついた。その直後、時間切れを告げる「Time out」の音声が聞こえたかと
思うとファイズアクセルは待機状態に入ったことを告げた。

 『Reformation』

電子音声とともに再びフルメタルラングが閉じ、ファイズはアクセルフォームから
元の姿に戻った。一方のクレインオルフェノクもファイズを振り落とそうとひときわ
大きく翼をはためかせ、やがて両者は市街地を離れていく。
 ファイズは振り落とされまいと必死に身をよじってクレインオルフェノクにすがりつき、
クレインオルフェノクも足蹴りを見舞い、何としても振り落とそうと足掻く。

 「大人しくしろっちゃ!」

などと言ってみたところで大人しくする敵ではない。かくして密着距離の攻防は
しばらく続き、やがて両者は市街地を離れて住宅地上空へとやって来た。
255ナナシマン:04/03/25 01:28 ID:yzfKMAsn
 見下ろせばそこはいつかの河川敷だった。ちょうど川の真上に差し掛かった
ところで、ファイズはひときわ身体を大きくスイングさせる。敵ともろともに墜落
したとしても下は川。衝撃が多少きついのと水を飲むことになるのを我慢すれば
命があるだけまだ救いがあるというものだ。身体が大きく揺れるたびに、両者の
高度は徐々に下がっていく。そしてついにクレインオルフェノクはバランスを
失ってしまい、失速した両者はものすごいスピードで落下していく。

 「うわぁぁぁーっ!」

 『きゃーっ!!』

失速した両者はもつれ合ったまま、真っ逆さまに川の中へと落下した。大きな
水柱が轟音とともに立ち上ると、その姿は水中へと没した。
256ナナシマン:04/03/25 01:29 ID:yzfKMAsn
 れいなが意識を取り戻したとき、彼女は川をまたぐ橋の下にいた。まぶたに
感じる暖かい光に少女のまぶたがゆっくりと開いていくと、やがて視界に入った
のは何者かが起こした焚き火だった。着ていた服はまだ濡れていたが、焚き火の
おかげで身体が冷えるのを幾分か防ぐことが出来たようだ。れいなはゆっくりと
身体を起こす。気がつくと自分の物ではないジャケットが身体に掛けられていた。

 (助けてくれたのかな・・・誰だろ)

 そんなことをぼんやり考えていると、遠くから女の子の声が聞こえてきた。声の
主は二人。一人は初めて聞く声だが、もう一人は何となく聞き覚えのある声だった。
そして、二人はたき火で暖を取るれいなの前に姿を現した。赤々と燃える炎に
照らされた二人の少女とれいなの視線が重なる。自分を助けてくれた人物を、彼女は
その瞬間に理解した。

 「えっと・・・誰やったっけ。こないだの人でしょ?」

見覚えはある。だが、名前がどうしても思い出せない。神妙な顔つきで必死に名前を
思い出そうとするれいなに、小柄な少女は笑いながら言った。

 「忘れちゃったか。じゃ今度はちゃんと憶えときな?一応命の恩人なんだから」

 そう言って少女〜明日香は手にした缶コーヒーをれいなに手渡した。もう一人、
明日香のそばにいる髪の長い少女が誰なのかれいなには判らなかったが、それは
そのうち判ることだろう。たき火のそばで肩を並べ、3人はしばらく暖を取りながら
朝を待った。
257ナナシマン:04/03/25 01:31 ID:upbNpKiW
 雪の中で命を落とし、思いがけず異形の力を得てよみがえった少女、麻美。東京に
向かった姉の姿を求めた彼女は、ただ一人心を許せる少女とともに自分なりの答えを
探す旅を始めた。ひとたびオルフェノクとしての力を振るえば、それは人を傷つけ
悲しみを生み出す悪魔の力以外の何ものでもない。恐れや憎しみ、心の闇がこの異形
の力につけいり再び彼女を悪魔に変えるかも知れない。しかし、自分は一人では
ない。同じ運命と戦う仲間の存在を信じられるし、なにより明日香がそばにいる。
ファイズとの戦いで疲れてしまったのか、室蘭から出てきて以来の心の高ぶりが
ここにきて収まったのか、麻美は明日香の肩にもたれかかったまま、小さな寝息を
立てて眠ってしまっていた。

 一方のれいなも燃える炎を見つめながら、今日一日のことをぼんやりと考えていた。
激しい追跡戦の果てに敵を見失ってしまったことは悔やまれるが、終わってしまった
ことを考えるのはよそう、彼女はそう思った。手にした缶コーヒーがいつもより
おいしく思えたのは、何も身体が濡れて冷えていただけではない。ベルトを狙う者達
との戦いに追われ、心を通わせるものも無く過ごしてきた日々が少しだけ変わって
いくような予感を胸に感じ始めていた。同じ敵と戦う少女達と、再会した奇縁に
結ばれた少女。失うことを恐れて遠ざけてきた心の絆、その暖かさを再び感じた一日
だった。

 互いの運命、そして相反する別の顔があるとは知らぬまま、奇しくも同じ時を
過ごすこととなった三人の少女達。戦いから離れたそのひとときは、三人につかの間の
平穏をもたらした。しかし、この時運命が三人に課す過酷な試練を知るものは、誰一人
いなかったのである。


第55話 「白い翼」 終
258ナナシマン:04/03/25 01:34 ID:upbNpKiW
 今回のお話は以上です。途中HDDの故障や不意の歓送迎会などもありまして、
思うような更新が出来なかった事をお詫びいたしますとともに、今後も当スレッドを
ご愛顧頂けますようお願いいたしまして、終了とさせて頂きます。
259名無し募集中。。。:04/03/27 01:14 ID:gygCY6Fh
ほぜむ
260名無し募集中。。。:04/03/27 22:40 ID:nsC8m+Wa
保全。
261保全:04/03/28 15:04 ID:9ZzMJ/eU
「こら!小さいからってバカにするなよ!変身・・・V3!」

赤い仮面・・・矢口は赤い仮面の戦士V3に変身する。
ダブルタイフーン・・・これこそ彼女の命のベルトである。

「もう容赦しないからな!喰らえ!」

力と技の風車が回る。彼女の前に敵は手も足も出ない。

「この程度か!口ほどにも無い!」

友、仲間、我が家族・・・風のうなりに血が叫ぶ。
共に戦う仲間の為にV3は力の限りぶち当たるのである。
敵は地獄様なの軍団ゼティマ。
今日も戦う正義の仮面ライダーV3!
262名無し募集中。。。:04/03/29 21:17 ID:R90DFDp5
ほぜん。
263名無し募集中。。。:04/03/30 20:06 ID:lwDj0tBJ
保全
264名無し募集中。。。:04/03/31 09:42 ID:QcRiIzEI
 君は 君は 君はライダー ライダーマン
 強く優しい 君はどこにいる
 海から風が教えてくれた 君は僕の 僕の胸に生きている
 君はライダー 仮面ライダー4号だ
265ナナシマン:04/03/31 22:17 ID:ulQ05wt8
第56話 「悪魔のZ計画・ヨロイ軍団総攻撃!」


 世界征服を目論む悪魔達の城、ゼティマ秘密基地。そこでは今日も、世界の平和
を脅かす悪しき企みが行われている。そんな中、その悪魔達も眉をひそめる悪魔の
中の悪魔が再びこの地を訪れた。小笠原の孤島でミサイル実験を行っていた、あの
ヨロイ元帥が帰還したのである。赤銅の甲冑に身を包み、唯一仮面から覗く双眸には
邪悪な輝きと口元に悪辣な笑みをたたえて、彼は小笠原から乗ってきた潜水艦を降り
ドックへと降り立った。

 「久々に帰ってきたが、やはり我が家は格別だ・・・そうは思わんか?」

 部下であるヨロイ軍団の構成員達を引き連れて喜色満面の元帥。彼にとって、
今回の基地への帰還は言うなれば「凱旋」であった。元帥の言葉に軍団の改造人間、
カマクビガメが応えた。

 「すべては元帥閣下のご威光のたまものにございます。閣下直々にプルトン
ロケット開発の成功をお伝えすれば、首領様もさぞやお喜びのことかと」

 「首領様にお喜び頂くだけではない。組織での俺の地位もますます高まるのだ。
貴様も誇るがいい、ゼーティマ一の頭脳を持つこの俺の部下であることをな」

ドックで黙々と働いている戦闘員達を横目に、ヨロイ軍団が目指すのは総司令室。
悪の総本山、ゼティマ首領と他の幹部達が一堂に会する場所だ。元帥にとって、
自らの手柄を報告するにはもっともふさわしい場所である。まさに意気揚々、元帥
とその配下達の前に阻む者は何もないかに思われた。
266ナナシマン:04/03/31 22:18 ID:ulQ05wt8
 銀色のマントが翻ると同時に、総司令室のドアが開く。巨大な鷲のレリーフを
背に、玉座に座る悪魔元帥と彼を囲む四人の幕僚、そして死神博士やゾル大佐ら
幹部達が一同に会する中、彼らがもっとも忌み嫌う男が、彼らの考え得る最大の
戦果をひっさげて現れた。ヨロイ元帥と彼の配下達が次々と司令室に足を踏み入れる
と、幹部達の視線が元帥達に集中する。それの視線の本質が羨望なのか侮蔑なのか
それは元帥には判らなかった・・・というより、今の元帥にとって彼に注がれる
視線が後者であるはずはないのだ。周囲を見渡して得意げな表情を見せるヨロイ元帥
は、悪魔元帥と対峙して開口一番こう言い放った。

 「聞け、悪魔元帥。俺は今ここに、我らの悲願である世界征服を達成する必勝の
策を携えて帰ってきた。プルトンロケット開発、成功のうちに完結したぞ」

 「ほう・・・それは目出度いことだ。小笠原からご苦労であった」

 「フン!俺の労をねぎらうのは貴様ではない、悪魔元帥」

悪魔元帥の冷ややかな視線を意にも介さず、ヨロイ元帥はいよいよ絶好調といった
風で首領に計画の成功を報告した。
267ナナシマン:04/03/31 22:18 ID:ulQ05wt8
 「偉大なるゼーティマ首領様。このヨロイ元帥、ついにプルトンロケットの開発に
成功いたしました。つきましてはかねてより上申しておりました『Z計画』の許可を
頂きたいと存じます・・・」

恭しく一礼した後、口から飛び出すのは露骨な自己賛辞の数々。辟易した表情を
浮かべる幹部達の事など、彼の視界には全く入っていない様子だ。とその時、鷲の
レリーフの胸元が妖しく光る。それを見た幹部達が一礼すると、地の底から響く
ような何者かの声がどこからともなく聞こえてきた。

 『プルトンロケットの開発ご苦労であった、ヨロイ元帥。この秘密兵器が我々の
目的をまた一歩前進させるだろう』

実験成功の労をねぎらう首領の言葉に、ヨロイ元帥は笑みを浮かべて一礼する。この
様子を他の幹部達は苦々しげに見ていた。首領の言葉はさらに続く。

 『しかしヨロイ元帥、計画の実行についてはまだ時期尚早と考える』

 「・・・?!」

Z計画上申の却下、それは元帥にとって意外としか言いようのない言葉だった。
268ナナシマン:04/03/31 22:21 ID:ulQ05wt8
今日の分は以上です。続きはまた明日。
269ナナシマン:04/04/02 00:16 ID:yMIV/oQt
 「何故です、何故計画を・・・」

 『ヨロイ元帥よ、その前にするべき事があるのだ。君も知っている通り、我々の
計画を悉くじゃまする者達がいる。仮面ライダーだ。奴らを排除しなければ計画の
成功はあり得ぬ』

 まず計画ありきのヨロイ元帥に対して、ライダー抹殺を優先すべきとする首領。
元帥にはその理由が理解できない。しかし、この時すでに世紀王誕生の報を受けて
いた首領にとって、まず先に排除すべきは仮面ライダーだった。

 「話には聞いておりますが、しかしこれまでも仮面ライダーの妨害があったに
しろ世界征服のための計画は進められてきたはずでは・・・!」

 『儂は研究の成果を大いに買っているのだ。その上で作戦の時期を探る必要が
あると思っておるのだ』

納得がいかない様子のヨロイ元帥は思わず声を荒げて首領−鷲のレリーフへと
詰め寄ろうとする。そんなヨロイ元帥を制するように、悪魔元帥が割ってはいる。

 「貴様の実験の成果を重んじてのお言葉だと言うことが判らんか、ヨロイ元帥!」

 「しかし!!」

ヨロイ元帥は口惜しさを満面ににじませて唇を噛む。しばしの沈黙の後、彼は居並ぶ
幹部と首領に宣言した。
270ナナシマン:04/04/02 00:17 ID:yMIV/oQt
 「判った・・・ならば、ライダー抹殺とプルトンロケット攻撃の二正面作戦を
もってZ計画としようではないか。首領様、作戦の許可を!」

しばしの沈黙が両者に流れる。そしてとうとう、元帥の異常なまでの熱意に首領が
折れた。Z計画の実行を条件付ながら許可したのだ。しかし、それは決して後戻りの
できないものであった。

 『よかろう、ヨロイ元帥。ただし!儂の意に背いてでも計画を実行する以上は
失敗はすなわち死と心得よ・・・良いな?!』

 「・・・しかと心得ましてございます」

ヨロイ元帥はただただ焦っていた。今の彼にとっては作戦の内容などどうでも
良かった。ただ、彼は目の前にあるチャンスが費えるやもしれぬ事実に耐えられ
ないのである。掴みかけた自分の手柄をみすみす手放すなど、およそ考えることが
出来ないのだ。いかに無理を通そうとも、成果を上げさえすれば問題ないでは
ないか。そんな思いでヨロイ元帥は司令室にある怪人を呼び寄せる。
271ナナシマン:04/04/02 00:18 ID:yMIV/oQt
「作戦の指揮を我が軍団最強の怪人に命じる・・・出でよ、ザリガーナ!!」

怒気をはらんだ声が総司令室に響く。その直後ドアが開き、そこから一体の異形の
影がまっすぐに伸びた。全身を鋭い棘が覆う赤い外骨格に身を包み、腕には巨大な
はさみを持つザリガニの改造人間の姿がそこに現れた。

 「元帥閣下、そして偉大なるゼ−ティマ首領様。ライダー抹殺とZ計画の指揮、
このザリガーナめにお任せあれ」

ザリガーナはヨロイ元帥が誇る軍団の切り札、最強の怪人である。元帥は自らの
威信を一人の改造人間に託し、軍団の指揮を委任すると居並ぶ幹部達を睥睨して
言い放った。

 「よく見ておくがいい、ヨロイ軍団の戦いを!勝利は我らのものだ!!」

半ばやけっぱちのように言い放つとマントを翻し、ヨロイ元帥は軍団員を引き連れ
ザリガーナとともに総司令室を後にした。
272ナナシマン:04/04/02 00:18 ID:yMIV/oQt
今日の分は以上です。続きはまた明日。
273名無し募集中。。。:04/04/02 11:16 ID:k6qf4uHN
http://tv4.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1074341006/

19位 30票 仮面ライダーののシリーズ(羊・連載中)

作者の皆さんおめでとうございます。
274保全:04/04/03 21:12 ID:uaAizfri
               あにばーさりー

「いつまでもみんなが笑顔でいられる・・・な、世の中を目指しています」

珍しくハローワーク商会を訪れた中澤に、斉藤は言う。

「私達ってどうですか?お役に立ってますか?」

真剣な顔でそう言う柴田に中澤は、微笑みを浮かべながら頷いた。

「みんなで手をとって道を行く。平和への道・・この先何があるか解らないけど・・・」

斉藤の後ろにはでペットボトルを持った大谷が立っている。
大谷は力強く中澤にそう言ったのだ。

「みんなで・・・・みんなで協力すれば、もっと強くなって行く。
 確か中澤さんの言葉でしたよね」

宿敵ゼティマ・・・彼らはあまり連帯感がない。
過去の戦いで中澤はそう感じていた。
ならば自分達は協力して戦えばきっと勝てる筈であると
中澤が言っていたのを村田は覚えていたのだ。

「そうや。あんたらのいや、みんなの力は無限や。きっと勝てるで、うちらならな」

中澤の言葉に4人は大きく頷く。

「未来は輝いてるで。仲間の絆はいつまでも続くんや!」

困難に共に立ち向かう仲間・・・・そんな仲間に中澤は改めて頼もしさを感じるのであった。
275名無し募集中。。:04/04/05 09:21 ID:KiGRy1jJ
保全
276名無しスター:04/04/06 19:37 ID:OX/hyDUg
ほぜん
277ナナシマン:04/04/07 19:26 ID:Z5wO53ie
 (仮面ライダー・・・忌々しいあの小娘の仲間か!!)

 先ほどとはうってかわり、歯がみしながら廊下を行くヨロイ元帥。怒りを顕わに
している今の彼に語りかける者など誰もいない。気まずい空気のまま、元帥と軍団
は彼ら軍団専用の部屋へと消えていく。

 「ヨロイ軍団総攻撃だ・・・ザリガーナ、貴様が陣頭指揮を執れ」

 「お任せ下さい。軍団の威信に賭けて」

 「全軍団員に命じよ。ライダーどもは皆殺しにして構わん・・・だが」

彼の頼る一番の部下、軍団最強のザリガーナに背を向けたまま一瞬の沈黙の後、
元帥はマントを翻して振り返ると、仮面の下の目をひん剥いて怪人に命じた。

 「ミカ・トッド・・・ライダーマンだけは生かしたまま連れてこい!俺が
この手で八つ裂きにしてくれる!!」

狂気じみたぎらつく眼光。元帥の口から出たのは、蛇蝎のごとく忌み嫌う一人の
少女の名前。彼の前には常に彼女がいた。ミカ・トッド。かつての教え子にして、
ゼティマにおいてただ一人彼の地位を脅かした存在。不倶戴天の敵である彼女を
葬り去ることは元帥にとって悲願であると言ってよかった。首領の意に背いて
でも、時を得ることが出来た元帥は憎しみと喜びがない交ぜになったどす黒い
感情を隠さず、不気味に笑う。

 「今度こそ貴様を殺す・・・この手でな!ウワーッハッハッハッ!!」

彼の笑いはまさに基地中に響き渡らんばかりだった。悪鬼ヨロイ元帥に率いられた
怪人軍団の魔手が少女達に、そして日本に迫ろうとしていた。
278ナナシマン:04/04/07 19:29 ID:Z5wO53ie
 規制解除キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
でも書き込めるようになってると思ってなかったもので、続き書いてませんでした。誠に
申し訳ありません。続きはまた明日から。
279名無し海士長:04/04/07 22:47 ID:1hrPukPm
昇任age
280ナナシマン:04/04/07 23:18 ID:FdV5WtEB
>>279
 お、おめでとうございます。陸海空問わず、曹昇任は厳しい状況ですが
ガンガッテください。
281名無し海士長:04/04/08 00:18 ID:bF/rXyNa
>280
ありがとうございます僕も年が年なんで早く海曹になれるようガンガリます
それにしてもナナシマンさんや天狗さんたちの文才は凄いと思います
僕も後藤真希のCM(「8&4」?巨大化したごっちんが街中を走り回る奴)を元ネタ
にしたプロフェッサーギルとのSS(ショートコントですが)を書こうと
考えてみたのですがぜんぜんダメでした
一応あらすじとしては
・ある日ギルがあらゆる物体を巨大化する装置を作る
・ごっちんがそこへやってきてそこにいたギルの助手
(ギルはどこかに行っていた)に何をするのか聞く
・助手いわく
「あなたを(勿論ハカイダーマキをという意味)この中に入れて
巨大化させ街中を走り回ったりビルに腰掛けたりしてもらって
人間をびっくりさせるためだけ」に造りました
・後藤半ばあきれながらそんなものを作る暇があるなら
もっと他にやる事があるだろうとその助手を小一時間問い詰める
(この辺のごっちんの台詞は吉野家風に行く予定でした)
・助手(というよりはギル)曰く
「物体の巨大化は[幼稚園児誘拐],[ダムに毒を入れる]と並んで
悪の秘密結社の恒例行事であり前者は他の連中がやっているし
後者は面倒なのでわしはこれにする」
・後藤きれてハカイダーマキに変身し止めに入った助手や怪人達も
巻き込んで破壊する
・そこにギルが現れやっとの思いで止めるがバックアップシステムも
含めて完全に破壊されておりやむを得ず計画を放棄するが
・ギル曰く
「よし、ダムに毒を入れよう」
まだ懲りてないらしい
282ナナシマン:04/04/08 00:48 ID:Z2ugUHK6
>>281
 時間があったらやってみてはいかがでしょうか?(wそう言うことならせっかくですので、
打ち合わせ板の方も覗いてみて下さい。

http://jbbs.shitaraba.com/music/6849/
283ナナシマン:04/04/09 00:08 ID:j500ikze
ちょっと所用ありまして本日の更新はお休みします。続きは今晩あたりに。
284名無し募集中。。。:04/04/09 00:10 ID:+HFFFCeO
>>281
後藤のCMはBAN、8×4はZONEですと、マジレスする俺はZONEヲタ
285名無し海士長:04/04/09 18:16 ID:6OgiyQch
>284
情報ありがとうございます
286ナナシマン:04/04/09 23:43 ID:3QghCHa5
 一方、舞台は変わって夢が丘商店街。大型ショッピングセンターやデパートの進出
によって、少なからぬ打撃を受けつつも地域住民の生活の場としての役割を失わない
地元商店街の空気が息づくこの通りに、一件の小さな家電店がある。昼下がりの
ひととき、この店に一通の手紙が届いた。郵便受けのカタン、という小気味よい音を
聞きつけ、一人の小柄な少女が手紙を取りに店の奥から姿を現した。少女はこの店の
店員だったので、店の主人家族宛の手紙であれば手渡すつもりでいたのだ。

 「・・・誰あてかな?」

所々にパッチワークが施された青色のつなぎ〜それが彼女の作業服だ〜を着た、
ちょっと日本人離れした顔立ちの彼女〜ミカ・トッドは一言そう呟いて郵便受けを
探り一通の手紙を取り出す。と、中から出てきたのはエアメール。一見してそれと
判る、赤と青の模様が縁に入ったあれである。張られた切手には日本ではあまり目に
しないような風景の図柄が入っていた。差出人の名前は無かったが、宛名にあるのは
まがう事なき自分の名前だった。

 (誰からだろう・・・) 

消印からそれはアメリカから、それもロサンゼルスから届いた物だと言うことは判った
のだが、ミカ本人には心当たりがない。一瞬思い浮かんだのは、ゼティマ軍団に拉致
されて少女達とともに救い出したかつての友レフア・サンボの顔だったが、彼女は今は
故郷のハワイに帰っていると聞いた。ロスに移り住んだという話も聞かない。実はミカ
には姉がおりロス在住であるが、実の姉が差出人に自分の名前を書かないと言うことが
果たしてあるだろうか。手紙の内容が気になった彼女だったが、とりあえず仕事を優先
することにした。そして午後7時、店の閉店とともに彼女は手紙を手に加護生化学研究所
へとマシンを走らせた。
287ナナシマン:04/04/09 23:45 ID:3QghCHa5
 研究所に到着すると、彼女は一目散に自室へと駆け込む。途中でメイドの梨華美らと
すれ違ったようだったが、彼女は気にもとめない。たまたまデータ整理のために研究所
にやってきていた加護亜依とすれ違った時、彼女に声をかけられたことにも気づかない
程だった。

 「・・・ミカちゃん、どないしたんやろ?」

亜依のつぶやきはすでにミカの後方、彼女の声は耳に入ってはいなかった。そして自室に
たどり着いたミカは、店からずっと着っぱなしでいたつなぎを脱ぎもせず机に座ると、
机にあったナイフで丁寧に封を切る。と、その中に入っていたのは数枚の写真と便せん
だった。手紙を読み進めていくうちに、彼女は同封の写真を手に取る。そこに写されて
いたもの、その姿に彼女は驚きを隠せなかった。

 「これは一体、何?」

写真の一枚一枚に目を通したところで、彼女は急に立ち上がると本棚に置かれていた
辞典を数冊小脇に抱えて再び机に向かう。同封の写真と辞典を交互に見比べるが、
一時間もしたところで彼女は小首をかしげながら辞典を閉じた。現時点で、彼女には
それが何なのか判らなかった。とりあえずミカは同封されていた手紙の方を読み進めて
いく。10分ほど経ったろうか、手紙を読み終え彼女は大きくため息をついた。

 (私は一体、どうすればいいんだろう・・・)
 
突っ伏したまま黙り込むミカ。手紙の差出人は、彼女に対してある重要な決断を迫って
いた。
288ナナシマン:04/04/09 23:45 ID:3QghCHa5
今日の分はここまでです。続きはまた明日。
289名無し海士長:04/04/10 09:50 ID:/CF3KEsH
ナナシマンさん
乙です。丁度私が舷門(船の出入り口のことです)立直中のカキコだったんですね
今回のお話はミカが主役なんですか?
290ナナシマン:04/04/11 01:08 ID:wTj/VpkQ
 一方同じ頃、ハローワーク商会。
 今日一日の仕事の整理を終え、斉藤瞳は操作していたノートパソコンの電源を切る。
電源ランプが消えるのを確かめたところで、彼女はゆっくりと席を立った。振り返ると
そこにもう一人の女性の姿があった。部屋の奥から姿を現したその女性は、瞳の姿を
認めて声をかけてくる。

 「あぁ、まだ帰ってなかったんだ」

 「うん・・・まぁ、こっちも今終わったところ」

瞳は彼女に、会社で使用していたコンピュータのメンテナンスを頼んでいた。夕べから
調子がおかしかったので彼女を電話で呼び出し、作業を依頼していたのである。黒い
アタッシュケースを手にした黒髪のスレンダーな女性に、瞳は冷蔵庫からコーヒーを
取り出して差し出す。

 「カフェオレしかないけど・・・いい?」

 「サンキュ。ありがと」

瞳の差し出したそのコーヒーを、女性〜アヤカは笑顔で受け取り、細くしなやかな指を
プルにかけて缶を開けた。アヤカがいくらかコーヒーを口にしたところで、瞳がこう
切り出した。
291ナナシマン:04/04/11 01:09 ID:wTj/VpkQ
 「病院・・・辞めたんだってね」

 「うん。叔父に迷惑はかけられないから。それでね、今こんな話が来てるの」

そう言ってアヤカは小脇に抱えたファイルから一通の封書を取り出して瞳に手渡した。
木村絢花様、と日本語表記で記された差出人の字体は丁寧な毛筆で書かれており、裏面
の差出人を見ると「警察庁科学警察研究所」の名が記されていた。

 「警察?科警研って何?」

不思議そうに封筒を見つめる瞳。そのまま封書の中へと指をすべらせ、取り出した手紙
を読む。

 「拝啓 木村絢花様 この度は・・・うぅん、難しいことばっかり書いてあるから
判らないなぁ。どういう事?」

堅苦しい文章が並ぶ手紙の中身に、首をかしげる瞳。内容は概ね次の通りだ。警察庁と
自衛隊などが中心となって結成したゼティマ対策組織がかねてから調査を進めていた、
九郎ヶ原の古代遺跡についてゼティマが発見できなかったある重要な遺物を発見した。
その研究調査について有能な人材を、彼女たちの共通の知人にしてFBI捜査官でも
ある稲葉貴子に紹介するよう依頼したところ、貴子はアヤカの名前を挙げて研究員に
推薦したというのである。さすがは貴子と言ったところだろうか、警察組織への口利きも
お手の物である。恐らくそこには、かの首都防衛隊隊長たるソニンの口添えもあったかも
しれない。
292ナナシマン:04/04/11 01:10 ID:wTj/VpkQ
 「警察庁科学警察研究所・・・そこの職員、かな?私がなるって事」

 「でも、アヤカちゃんって昔ゼティマの研究員だったんでしょ?その事は・・・」

 「手紙の中では触れてないから、知らないか不問にされたのかどっちかね。稲葉さん
が黙ってくれたのかも」

 それだけ聞いたところで、瞳はアヤカに手紙を返す。アヤカは受け取った手紙を再び
ファイルの中にしまうと瞳にこう言った。

 「私には私なりの戦い方ができると思うの。辻ちゃんやミカは自分たちの能力で
改造人間達と戦ってる。変身できない私にも出来る戦い方が見つかった、そんな感じ」

 「そうなんだ・・・」

 やがて二人は外に出るとドアに鍵をかける。表にはアヤカが乗ってきたシルバーの
クーペが止められていた。アヤカはポケットを探ってキーを取り出すと、そのまま車
の方にかざして小さなボタンを押す。ドアロックがガチャリ、という音ともに自動的
に解除されたところでアヤカは言った。

 「送ってくけど?」

 「そうね・・・お願い」

瞳はそんな彼女の好意に素直に甘えた。改造人間や人造人間で無くとも、ゼティマと
戦うすべはある。そしてそれを見つけた彼女は新しい戦いの舞台を見つけたのだ。
そんな思いとともに、瞳はアヤカに促されるままにレザーシートに身を沈める。やがて
小気味よいエンジン音とともに車は走り出した。
293ナナシマン:04/04/11 01:12 ID:wTj/VpkQ
今日のところは以上です。続きはまた。
>>289
 そうですね。主にミカ・・・ココナッツとミニモニ。主体になるかと思います。二話構成
の予定ですので長丁場になるかと思いますが、よろしくおつきあい下さい。
294ナナシマン:04/04/11 23:48 ID:J1/tU3ud
 「中澤さんちでよかったの?」

 「うん。今月のバイト代私に行かなきゃなんだよね・・・」

 車内でのとりとめのない会話が続いている間に、車は中澤家に到着。それから
二人は用事を済ませて再び車中の人となった。

 「さっきの話なんだけど・・・」

 「何?」

 「あたしも自分で首突っ込んでるクチだから人のこと言えないんだけど、まだ
奴らに追われてる身なんでしょ?危険すぎるよ」

瞳の不意の問いかけに、アヤカはハンドルを握ったまま一言だけ答える。

 「判ってる。けど決めたの」

彼女の言葉を聞き、翻意はないと察した瞳はあえて言葉を続けなかった。すっかり
瞳は黙ってしまい、それからしばらく車の外ばかり眺めていたが、やがて車は
ハローワーク商会に戻ってきた。二人が別れの挨拶を交わした後で、車は走り
出した。赤いテールランプが完全に見えなくなるまで、瞳はその様子を見送って
いた。
295ナナシマン:04/04/11 23:50 ID:J1/tU3ud
 その翌日、中澤家の昼下がり。あわただしく飛び出しておのおのマシンを駆って
走り出す数人の少女達の姿があった。実はこの直前、「少年仮面ライダー隊」の
一員である夏焼 雅から無線連絡が入っていたのである。雅の知らせを聞きつけた
少女達は、昼食もそのままに部屋から駆けだしていったのだ。

 「それであの子、何て言ってたの?」

ただでさえ大きな目をより見開いて言うのはアマゾンライダーことケイ。彼女は
十面鬼と命がけの死闘を演じたが、戦いを終えて現れた謎のゼロ大帝によって密林
の秘宝ギギとガガの腕輪に隠されたキングストーンを奪われてしまった。今はその
際に負った傷も驚異的な回復力で治癒し、再び少女達とともに戦列に復帰すること
が出来たのである。

 「国道を臨海工業地帯向けに走ってった怪しい車を見たって。ちらっとだけど、
黒覆面が載ってるのを見たって言ってましたよ」

 ケイの言葉に応えたのは、かつてパーフェクトサイボーグの異名を取った少女。
今は少女達の絆によって人の心を取り戻した小川麻琴だ。

 「とにかく今はその怪しい車を追うことが先決ね。いくよ、小川!」

 「はいっ!!」

ジャングラーとヘルダイバー、2台のライダーマシンは爆音を上げて悪の企みを
追うべく走り出そうとしていた。と、その時。後方からゆっくりともう一台の
マシンが姿を現した。二人にとって、それは意外な少女だった。
296ナナシマン:04/04/11 23:51 ID:J1/tU3ud
 「先輩達、なんかあったっちゃろ?」

聞き覚えのある声に振り返るケイと麻琴。そこにいたのは、銀色のマシンに跨る
少女の姿・・・だったのだが。

 「あんた、何でそんなカッコしてんの?」

その少女〜田中れいなの出で立ちは、何故か白のエプロンが映える黒のメイド服
だった。タイミングを同じくして二人から「かわいい」と声が上がるが、れいなは
恥ずかしそうにうつむいたまま答える。

 「バイトの制服・・・さゆが可愛いのがいいって言うからメイド服になったっちゃん。
ってかそんなんどうでも良いでしょ!」

 彼女はたまたま出前で近くまで立ち寄った際に二人の姿を見かけ、先日の非礼を
詫びるつもりで二人に協力しようとやってきたのだ。耳まで真っ赤になった彼女は
またもむくれっ面で、照れ隠しか派手に一蒸かしするとオートバジンを駆って真っ先に
飛び出していく。

 「バイトどうすんでしょうね?」

 「さぁ・・・でもそれどころじゃないよね。奴らが何をしでかすか判ったモンじゃないし」

れいなのバイトの心配よりは、やはりゼティマの悪事を食い止めることが先決である。
ケイと麻琴もれいなの後を追うように走り出す。目的地は臨海工業地帯。雅の連絡の
とおりなら、ゼティマはまたしても何らかの悪巧みを働こうとしていることになる。
297ナナシマン:04/04/11 23:55 ID:J1/tU3ud
 車を追って走る三人。道中では幸い尾行に気づかれることはなかった。2時を回る頃
三人はゼティマらしき者達がのる怪しい車が向かった臨海工業地帯に入った。
立ち並ぶ工場や石油コンビナートが敵のターゲットだとすれば、ゼティマが企むのは
一帯の大破壊であろう。それだけは食い止めねばならない。三人はそんな思いで敵の
姿を探す。しばし捜索した後、三人の視線の先に先ほどまで追いかけていた車から
降りてきた怪しげな一団が動き回っているのが見えた。改造人間に指揮された黒装束・
黒服面の部隊が、近くにある石油タンクに何かを仕掛けているのが見える。麻琴が
目敏くそれを見つけてケイに知らせた。

 「保田さん、あれ!」

 「間違いないね・・・多分奴らはあのタンクを爆破して一帯を火の海にするつもり
なんだろうね。小川、田中、いくよ!」

三人は作業を続ける敵の背後をついて急襲するべく、壁や植え込みに身を潜めながら
敵の元へと近づいていく。


 一方、そうとは知らぬゼティマの工作部隊はコンビナートに装置を仕掛ける作業に
集中していた。作業の陣頭指揮を執るのは、ヨロイ軍団の一員であるカタツブラー。
大きな貝がトレードマークのカタツムリ怪人だ。

 「お前達、ライダーどもに悟られぬうちに爆薬をセットしろ!この一帯の人間ども
には夕べ俺の卵を産み付けて操り人形にしてある。誰もじゃまだてはせんだろう」

 「イーッ!」

怪人の言葉に呼応する、意気盛んな戦闘員達。この作戦こそ、ヨロイ元帥が宣言した
軍団総攻撃計画の第一歩なのだ。少女達は怪人の悪巧みを食い止めるべく、息を潜め
その背後を突かんと忍び寄る。
298ナナシマン:04/04/11 23:56 ID:J1/tU3ud
今日の分は以上です。続きはまた明日。
299ナナシマン:04/04/11 23:59 ID:J1/tU3ud
>>294
 ここで一部訂正です。

 ×バイト代私に
 ○バイト代渡しに

ですね。失礼いたしました。
300ナナシマン:04/04/12 21:53 ID:6DYuvSVH
ちょっと所用ありまして本日の更新をお休みさせて頂きます。続きは明日。
301ナナシマン:04/04/14 00:24 ID:/kJbmdhz
 誠に申し訳ありませんが、本日更新分に関しましてストーリーを構成し直すため
本日はお休みさせて頂きたいと思います。
302ナナシマン:04/04/15 01:00 ID:RobFTv/X
 「待て!!」

 悪の企みに待ったをかける正義の声がコンビナートに響く。突然の邪魔者に驚く
怪人達に、挑みかかる少女達。ケイ、麻琴、れいな、それぞれの戦う意志が少女
達を戦士に変える。

 「変身!」

 れいなは変身コードを入力したファイズフォンを構えて叫ぶと、そのままファイズ
ドライバーのスロットにファイズフォンを装着する。「Complete」の電子音声とともに
のびる真っ赤なフォトンストリーム。閃光とともに現れたのはファイズだ。

 「変・身っ!!」

 変身の構えとともに空中高くジャンプする麻琴。ZXの名を叫びながら縦横無尽に
飛び回る赤い残像が再び地に降り立つ。仮面ライダーZXの登場だ。

 「アァーマァァァゾォォーン!」

 野生の瞳が真っ赤に燃えて、まばゆい光りとともに現れたのは大自然の戦士。
仮面ライダーアマゾンがその姿を現し、3人のライダーが悪の軍団に完全と立ち向かう。
303ナナシマン:04/04/15 01:03 ID:RobFTv/X
 ライダー達はおのおの群がる戦闘員達を次々となぎ倒していくが、ここで部隊の
指揮官であるカタツブラーが高笑いとともに少女達に言い放つ。

 「威勢の良いのも今のうちよ。お前達、こいつらに手が出せるかな?」

そう言うと同時に、どこからともなく姿を現したのは大勢の作業員。彼らはみな、
このコンビナートで働いていた人たちだ。今や彼らは怪人カタツブラーによって
怪人の卵を産み付けられ、操られているのだ。戸惑うライダー達の事などおかまい
なく、うつろな瞳の人々は戦士達ににじり寄る。

 「くっ・・・」

 「きさん、卑怯やろ!!」

 「いくら貴様らでも、罪もない人間は殺せまい。元に戻すためには俺の生き血が
必要だが・・・まぁあきらめるんだな」

身構えるばかりのアマゾンとファイズ。卑劣にも敵は、無辜の人々の命を盾にして
逃げおおせようとしているのだ。と、その時である。ただ一人ZXが迫り来る人々に
対して立ちはだかると、いきなりの一撃を加えたのだ。

 「それだけ聞けば十分だ・・・マイクロチェーン!!」
304ナナシマン:04/04/15 01:06 ID:RobFTv/X
 「えっ?!」

二人のライダーも一瞬何が起こったのか判らないようであったが、ZXの手から
放たれたマイクロチェーンの切っ先が地を穿ち、それを手にしたZXは彼らの
頭上を、そして地上を縦横無尽に駆けるとまるで縫うように次々と作業員達を
縛り上げていく。そしてとうとう、現れた全員の動きをマイクロチェーンで封じた。
しかし電流を流しさえしなければ、チェーンが彼らの命を奪うことはない。その
様子に危険を感じたカタツブラーが遁走を決め込もうとするが、チャンスは
今しかない。

 「保田さんっ!今っ!!」

ZX〜麻琴の声に答えて駆け出すアマゾン。それはまさに「反射」と呼べるほどの
素早さだった。一方のファイズもオートバジンのグリップに手をかけて引き抜く。
グリップは変形して剣状の武器「ファイズエッジ」と化す。ファイズは素早く
ミッションメモリーを装填、ファイズフォンのENTERキーを押す。
305ナナシマン:04/04/15 01:11 ID:RobFTv/X
 『Exceed Charge』

 「うらぁ!!」

音声がエネルギー充填を告げ、振りかざした真っ赤な閃光の刃から衝撃波が走る。
その衝撃波が怪人に届くと同時に、カタツブラーの身体を宙に浮きあがらせて
動きを封じる。身動きのとれない怪人に対し、身を躍らせて空中から襲いかかる
黒い影。アマゾンの必殺技「大切断」が炸裂する。

 「大っ!切断!!」

背びれがうごめき、アームカッターが鋭い光を放つ。閃きとともに手刀が怪人の
腕を裁ち落とすとのとほぼ同時に、ファイズエッジを構えたファイズがカタツブラー
に一閃。直後に刻まれた赤い閃光の紋章とともに、カタツブラーは灰と化して崩れ
落ちた。ZX〜麻琴の機転によって生き血を手に入れた3人は、無事作業員達を
怪人のコントロールから解き放った。
306ナナシマン:04/04/15 01:12 ID:RobFTv/X
本日の分は以上です。続きはまた。
307名無し海士長:04/04/15 22:01 ID:n+GoW+3O
ナナシマンさん
乙です
ところで今回はれいなは「メイド服」を着てバイクに乗っていたんですか?
なんかそれだけで凄い光景ですね
308ナナシマン:04/04/16 00:51 ID:dC37Ma7z
ちょっと風邪引いてしまって更新が出来ませんで申し訳ありません。とりあえず
お返事のみ。

>>307
 以前そんな書き込みを見たような気がしたので、ネタ拾いしたというだけの
話なんですよ。彼女たちのアルバイトの経緯とかは別の機会に。
309川o・-・):04/04/19 00:15 ID:+PYObwX9
川o・∀・)<ほ 从*・∀.・从<ぜ ノノ*^ー^)<〜 μ ’ヮ ’μ<ん
310ナナシマン:04/04/19 01:44 ID:5ukHpUjK
>>309
 保全していただきありがとうございます。
ちょっとここ何日か風邪を引いてしまいましてお休みしておりました。明日の夜から
再開しますので、よろしくおつきあい下さい。
311ナナシマン:04/04/20 00:29 ID:KTE9Xhh6
 一方同じ頃、ヨロイ軍団の魔手は黒部ダムにも延びていた。怪人カメレオンと
ヨロイ軍団の食客である魔女スミロドーンに率いられた軍団がダムに毒物を投げ入れ、
都民を無差別に殺害しようと企んでいたのだ。しかしこの企みは正義の少女達に察知
され、駆けつけた彼女たちは悪の手先達と対峙した。ゼティマ怪人とにらみ合うのは
ダブルライダー辻希美と加護亜依。そして仮面ライダーV3こと矢口真里。しかし
油断してはならない。魔女スミロドーンは実に100万年を生きた魔人である。

 「おいら達が来たからには、お前達の良いようにはさせないぞ!」

力強い言葉とともに、真里の視線が怪人達を射抜く。悪を許さぬ正義の心。それが
3人の力だ。

 「おのれぇ、後一歩のところで邪魔が入りおったわ」

唇をゆがませて悔しがるスミロドーンの傍らから、彼女を守るように立ちはだかる
のはヨロイ軍団のカメレオン。巨大な眼球と奇怪な体色、そして何より長い舌が
武器の怪人だ。
312ナナシマン:04/04/20 00:29 ID:KTE9Xhh6
 「ヒュヒュヒュ・・・心配はいらん。飛んで火に入る夏の虫とはまさにこのこと。
この黒部ダムがお前達の墓場となるのだ」

 長い舌で舌なめずりするカメレオン。そして覚悟を決めたスミロドーンは突然
身構えると、その身体はいきなり炎に包まれた。

 「見せてやるわ・・・わらわの正体を!」

 やがて燃えさかる炎の中から、一匹の巨大な獣が飛び出して3人の前に姿を
現した。炎に包まれたままの獣がすっくと立ち上がると、やがてその身を包む炎が
消えていく。そこから姿を現したのは鋭い牙を持つ虎の怪人。その姿はさながら
原始時代に生息した虎の始祖、サーベルタイガーのようである。

 「わらわは原始タイガー、ゼティマの悲願のために死んで貰うぞ!」
313ナナシマン:04/04/20 00:30 ID:KTE9Xhh6
 原始タイガーは3人にいきなり灼熱の炎を浴びせる。少女達は素早くこの攻撃を
かわしたが、ダムの柵は炎によって真っ赤に熱せられ雨細工のように熔けて崩れた
ではないか。

 「矢口さん!あいぼん!変身れす!!」

希美の言葉に力強くうなずく二人。3人の少女がその真の力を解き放つ。変身の時、
来る。

 「ライダー、変身!」

 「変身!!」

 「変・身、V3!!」

 思い思いの変身の構えは、自らが備えた正義の力を解き放つスイッチだ。そして
ベルトからほとばしる閃光とともに、姿を現したのは3人の正義の戦士。そう、
仮面ライダーのの、仮面ライダーあい、そして仮面ライダーV3だ。3人ライダー
は立ちはだかるゼティマの軍団を前に一歩も引かず臨戦態勢で身構える。一方の
怪人達も、攻撃の機会をうかがいながらじりじりとにじり寄る。そんな中時を得た
とばかりに鋭く光る眼光は原始タイガーだ。

 「殺っちまいな!!」

怪人の檄が飛び、はじかれるように戦闘員達が3人ライダーに殺到する。さらに
カメレオンも遠巻きに攻撃の機会を狙う。3人ライダーとゼティマ軍団の決戦が
始まった。
314ナナシマン:04/04/20 00:32 ID:KTE9Xhh6
本日の分は以上です。続きはまた明日。
315ナナシマン:04/04/21 00:09 ID:1uEPOQJl
 雪崩を打って襲いかかる戦闘員達を次々とたたきのめす3人ライダー。パンチ
キックが空を切り、襲い来る悪の使者は片っ端からなぎ倒されていく。その様子を
苦々しく見ていた原始タイガーは、戦闘員達に見切りをつけるやライダー達の眼前
にまたも地獄の業火を放つ。燃え上がる火柱はそこに手下であるはずの戦闘員が
生き残っていようともお構いなし。3人ライダーの身長を超える炎が逆巻き
立ちはだかる。

 「見るがよい、これがわらわの奥の手じゃ」

 「気をつけろ!あの虎の怪人がまた何かしてくるぞ!!」

V3の言葉に頷くダブルライダー。そしてV3の予感していたとおり、原始タイガー
が動き出した。自ら燃えさかる炎の中に飛び込むと、次の瞬間炎の壁を突き破って
現れたのは巨大な牙、それも猛スピードで走る「牙」だ。その牙こそ、原始タイガー
版ライダーマシンとも言うべき彼女のバイクなのだ。

 「ヒャッヒャッヒャッ!マシンは何もお前達だけのものではないぞぇ!!」

響き渡る爆音とともに疾走する牙マシン。原始タイガーはあろう事か味方である
はずの戦闘員までも豪快にはねとばして3人ライダーに迫る。強烈な体当たりを
紙一重の差でかわしたライダーに対し、器用にアクセルターンを決めた原始タイガー
は再度の攻撃を試みようと爆音をとどろかせる。砂埃を上げてスピンするタイヤが
悲鳴にも似た音を立てる。

 「逃げてばかりではわらわには勝てぬぞえ?」
316ナナシマン:04/04/21 00:09 ID:1uEPOQJl
 原始タイガーは再び炎を吐いてライダーを責め立てる。炎をかわしたと思ったら
その直後には牙マシンの突撃が襲い、3人は原始タイガーに対してやや劣勢に
立たされていた。

 「なかなか手強いやっちゃ・・・こうなったら!」

 「奥の手を使うれす!」 

 「よし!『ライダートリプルパワー』だ!!」

爆風を手で避けつつライダーあいは信号電波でサイクロンを呼び寄せる。その姿を
見たライダーののも同じように信号電波でサイクロンを呼び、ダブルライダーが
駆る2台のサイクロンは自動操縦で疾走してきた。ダブルライダーとV3は、
スピードを増すサイクロンに身を躍らせて飛び乗る。ダブルライダーを乗せて並列
して走るサイクロンの上に、まるで曲乗りでもするかのようにV3が着地すると
いよいよ3人ライダーのパワーは高速回転する風車とともに最大出力を発揮する。

 「何をする気じゃ・・・よせ、よさぬかぁぁぁ!!」

牙マシンを急速ターンさせて逃走を試みる原始タイガーだったが、3人ライダーの
スピードは容易く怪人を捕らえた。

 「ライダー、トリプルパワー!!」

あわせた心が三位一体の闘志となって怪人に襲いかかる。もはや原始タイガーにこの
攻撃から逃れる術はなく、マシンもろとも大爆発した。
317ナナシマン:04/04/21 00:10 ID:1uEPOQJl
 トリプルパワーで怪人を撃破し、スピードを徐々に落とした3人ライダー。直後
3人の背後に再び火柱が燃え上がり、それはやがて人の形を成した。原始タイガー、
魔女スミロドーン最後の悪あがきか。

 「わらわの命の火は消える。その前に、お前達に面白いことを教えよう」

スミロドーンの言葉に3人ライダーはゆっくりと振り返り答えた。

 「奴らが何を企んでいるのか、教えて貰おうか!!」

V3の言葉にスミロドーンは息も絶え絶えになりながら答えた。彼女の口から語られた
のは、ヨロイ軍団の恐るべき企みだった。

 「わらわの役目はお前達を足止めし、プルトンロケットをゼティマ基地から発射基地の
蠍谷に移送する時間を稼ぐ事じゃ・・・今頃ヨロイ元帥は、無事ロケットを運び終えた
事じゃろう。お前達の仲間も見事我らの作戦にかかったのじゃ」

 カタツブラーがコンビナートを襲ったのも、原始タイガー達がダムに毒を投入しようと
していたのも、すべてはヨロイ元帥がプルトンロケットを蠍谷に運び、発射準備を整える
ための陽動作戦だったというのだ。

 「Z作戦発動の時は近い、お前達に止める術はないわ。ゼティマに栄えあれ!」

そう言い残し天を仰ぐスミロドーン。その姿は再び燃え上がる炎の中に消え、3人ライダー
には悪の野望を語るメッセージだけが残された。原始タイガーの敗戦を見届けたカメレオン
の姿もまた、いつの間にか消失していた。
318ナナシマン:04/04/21 00:11 ID:1uEPOQJl
本日の分は以上です。続きはまた。
319ナナシマン:04/04/22 21:31 ID:jUuekNYx
 魔女スミロドーンの言葉通り、少女達は各地でヨロイ軍団を中心としたゼティマ怪人達
と死闘を繰り広げていた。横浜ではスーパー1とストロンガーが、みなとみらい爆破を
企む怪人達を撃破した。また成田空港を狙う怪人達にはXライダーとスカイライダー
が立ち向かった。そしてさいたま新都心では人造人間の少女達とイナズマンがそれぞれの
敵と戦っていた。しかしその戦いはすべて、敵の真の企みを隠匿するための作戦でしか
なかったのである。

 一方、少女達が激しい戦いを繰り広げている中にあってただ一人その戦列に加わる
ことなく一人辛い胸の内を抱えていた少女がいた。そう、誰あろうミカである。彼女は
胸に秘めた悩みを未だ誰にも打ち明けられずにいた。ゼティマの追跡から逃れるために
身を隠している廃屋と化した教会、その屋根裏で彼女は一人手紙を読み返しながら
思いを巡らせていた。

 「親愛なるミカ・トッド様」という書き出しで始まる一通の手紙が、彼女の心を
悩ませかき乱している。その手紙の差出人は、かつて脳改造セクションの責任者として
ZXこと小川麻琴にとって無くてはならないそんざいであった、あの夏まゆみであった。
彼女はアメリカで身の安全と引き替えに、ゼティマに対抗するための政府機関の研究に
協力していたが、ある日彼女の元に一枚の写真がとどいた。

 ハワイ沖で発見された謎の金属塊。それは人類の歴史において一度も姿を見せたこと
のない謎の物体であり、まさに「オーパーツ」と呼ぶにふさわしいものであった。
金属塊は現在この写真の送り主にして、かつてのミカの同僚であったレフア・サンボの
手を離れてまゆみの所属する機関で元で厳重に保管されているというが、彼女らを擁する
機関の科学力をもってしてもその正体は判明しないという。
 そして、写真の添え書きにはレフアによるミカを研究機関の一員として迎えることを
勧める旨の文面があり、そのためまゆみはミカに対して写真を添えて手紙を送ったので
ある。つまり、まゆみからの手紙はミカに対して研究のための渡米を求める内容のもの
だったのだ。
320ナナシマン:04/04/22 21:32 ID:jUuekNYx
 (私の力を必要としてくれる人がいる。けれど、大切な仲間達を置いていくことは
できない・・・どうしよう)

 一人思い悩むうち、その手は自然とポケットの中へと伸びていた。ミカは携帯電話を
取り出すと、今の自分の思いを打ち明けられるたった一人の相手へとかける。彼女に
とっては大事な友人だったが、戦いの日々に追われ最近会う機会が少なくなっていた
のだ。耳元で呼び出し音がいつもより少し長く鳴っている。もしかして、手の放せない
用事で電話に出ることが出来ないのか・・・通話終了のボタンに指が伸びる。ちょうど
その時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 「ALOHA!久しぶりね。元気?」

 電話の向こうから聞こえてくる声に笑みがこぼれる。電話の相手はアヤカだった。
今ちょうど彼女は科警研を目指して移動中であった。クーペの助手席には、彼女
を科警研に推薦してくれた稲葉貴子が乗っている。

 「楽しそうやんか?誰やの?男?」

 「違いますって、ミカですよぉ」

 「嘘やって絶対・・・言うてみ?」

電話の相手を詮索してアヤカをからかっている貴子の声も聞こえてくる。楽しそうな
車内。一人きりの部屋。ミカの口元に寂しげな笑みが浮かぶ。だが、今の気持ちを
話せる相手は彼女しかいない。唯一の友人にすら話すのは勇気のいることだったが
ミカは緊張を振り払うようにして口を開いた。
321ナナシマン:04/04/22 21:34 ID:jUuekNYx
今日の分は以上です。続きはまた明日。
322名無し募集中。。。:04/04/24 18:36 ID:a+SmldCi
今の羊では必要無いだろうが保全
323ナナシマン:04/04/24 23:37 ID:3r+pRVh6
「あのね・・・」

 電話の向こうの友に向かって、思いの丈を語るミカ。アヤカは途中で茶々をいれて
くる貴子の言葉を手で制し、彼女の話を黙って聞いていた。ミカが自分の思いをすべて
語り終えたところでアヤカが口を開くと、やはり自分の今後進む道についてミカに
語った。二人は互いにの進むべき道について何かしらの答えをすでに出しつつあった。
少なくとも、アヤカが科警研での活動に新たな道をみいだしたのは確かなようだった。

 「それでね、実は今後ろに走ってるトラックなんだけど・・・」

 そう言ってアヤカはルームミラー越しにちらりと後方を見やる。後ろには10トン
級の大型トラックが彼女のクーペの後をついてきていた。

 このトラックに積み込まれている物こそ、彼女が科警研の一員として取り組まなければ
ならない古代の謎であった。実はこの古代の遺物は、Z対が発見したときにはすでに
ドクトルGらの手によって破壊されてしまっていた。すでに瓦礫とかわらぬ有様であり
素人目には石のかけらと言われても何ら不思議は無いほどの代物だったので、彼らに
とっては何の価値もない物と思われていたのだ。
 しかし、城南大学に秘密裏に移送されていたその瓦礫は、謎の文字が記された古代の
遺物であることが判明した。そのためZ対はこの遺物の価値に気づいたゼティマの手に
わたらぬよう、彼らの目を盗んで回収したのだ。

 「私の最初の仕事は、この遺物の正体を探ること、かな。ほら、私たちが組織にいた
ころは専門の分野ってなかったでしょ?生物学も物理学も、考古学もある程度押さえて
おかないと話にならなかったから」

そう言ってアヤカは笑う。電話口から聞こえる彼女の笑いに答えるように、ミカも笑みを
浮かべた。そして、そんな彼女にアヤカはなおも言葉を続けた。
324ナナシマン:04/04/24 23:38 ID:3r+pRVh6
 「最後の答えはあなた自身が知ってるはずよ。すべてはあなた次第、自分の声に従う
事ね」

 すべては自分次第。自分の声に従う。ミカはアヤカの言葉を心の中で何度も繰り返し
呟く。答えはすぐには出せそうになかったが、それでも不思議と心の曇りは晴れた
ような気がした。

 「判った、ありがとう。・・・じゃあね」

 「うん、じゃあね」 

お互いの進む道を語り合った二人の、締めの言葉としてはあっさりとした一言。しかし、
二人の間はそれで良かった。ミカは通話を終えて携帯電話をポケットにしまうと、天
を仰いで一つ息をつく。

 (今の自分の気持ちを・・・あの人に伝えなきゃ。行かなくちゃ、あの人に会いに)

腰を下ろしていたベッドから勢いよく立ち上がると、階段を駆け下りてミカは教会を
出る。表に止めておいたマシンに跨ると、勢いよく吹き上がるエンジン音とともに
走り出した。今の自分の気持ちを伝えておきたい、一人の少女に会うために。


 一方、科警研を目指すアヤカ達の知らないうちに、彼女たちの身近な場所で驚くべき
異変が起き始めていた。彼女たちは知らない。後方を走るトラックの中でうごめき
始めた古代の遺物の胎動を。砕け散った瓦礫は神秘の力で寄り集まって再び形を無して
いく様を。ギシギシときしむ荷台から、ボルトや金具などあらゆる金属が古代の遺物に
吸収されていく驚くべき有様を。それは今まさに、現代に蘇ろうとしているのだった。



第56話 「悪魔のZ計画・ヨロイ軍団総攻撃!」 終
325ナナシマン:04/04/24 23:47 ID:3r+pRVh6
 今回のお話は以上です。
 明日明後日とお休みを頂きまして、火曜日から後編をスタートさせて頂きたく
思います。次回「仮面ライダー4号は君だ!」でもよろしくおつきあい下さい。

>>322
 お手数をおかけします。昨日は所用ありまして更新できませんでしたが、今晩で
一応前編は終了となります。お気遣い頂きありがとうごさいます。
326名無し募集中。。。:04/04/25 17:10 ID:OQK6PNHE
どうでもいい話ですが、黒部ダムって発電専用ダムですし、
第一日本海に流れてるから都民には関係ないですね
327ナナシマン:04/04/27 21:06 ID:wpb1IUSh
第57話 「仮面ライダー4号は君だ!」


 各地に分散し、陽動作戦を展開したヨロイ軍団。その目的は、ヨロイ元帥が完成
させた恐怖の破壊兵器「プルトンロケット」を安全に実験施設のある小笠原から
ゼティマ日本支部、そして発射施設のある蠍谷へと移送することであった。怪人
カタツブラー、原始タイガー、そしてその他の怪人達や戦闘員を動員して敢行された
計画はその当初の目的を果たし、ついにロケットを蠍谷に移送する事に成功した。
荒涼たる大地にそそり立つむき出しの岩山。その奥底にプルトンロケットが隠されて
いるのだ。

 「カタツブラー達は立派につとめを果たした。スミロドーンもな。ザリガーナよ、
ここまで来たらばあとは作戦の成功に邁進するのみ」

見渡す限りまさに死せる大地と言うべき、岩と砂の世界に立つ影2つ。一つは
黒部ダムでの戦いから離脱したカメレオンだった。彼は蠍谷に逃げ延びていたのだ。

 「元帥閣下もそれを望んでおられる。ロケットも到着し、発射台への固定作業が
進んでいるところだ。ただ、やはり気になるのはライダー共だ」

鋭いはさみをかざして言葉を交わす、赤い身体のザリガニ怪人。彼こそもう一つ
の影、軍団最強の怪人としてヨロイ元帥の信任も厚いザリガーナ。しかし彼をしても
ライダーの存在は気がかりの様子だ。陽動作戦の遂行に当たり、軍団にも少なからず
損失が出ているのは二人も認識していた。だがそれも作戦が発動するまでのこと。
328ナナシマン:04/04/27 21:07 ID:wpb1IUSh
 「しかし、仮に奴らが我らの計画に感づいたとしても手遅れだろうな」

 「その通り。せいぜい東京の地獄絵を、歯がみしながら見つめて貰うとしよう」

不気味に笑うカメレオンとザリガーナ。と、二人の眼下に傷ついた身体を引きずり
ながら姿を現した一人の改造人間がいた。鋭い角と硬い皮膚を持つヨロイ軍団の
一員、怪人サイタンクだ。

 「ザリガーナ・・・元帥閣下に取り次いで貰おうか!」

這々の体のサイタンクは大声でわめきながら二人の元へと近づいてきた。身構える
カメレオンを制するようにザリガーナが割って入りサイタンクに告げる。

 「元帥閣下はあいにくお会いにならぬ!俺が話を聞こう」

 「ならば聞け!我らヨロイ軍団、閣下の御意志に従い奮闘した。だが!閣下の
言う陽動作戦とは爆発しない偽の爆弾を仕掛けることだったのか?!」

 「だとしたらどうだというのだ?」

 「何ぃ?!」

 この言葉を隣で聞くに及んでカメレオンも顔色を変えた。だが、ザリガーナは
お構いなしに言葉を続ける。
329ナナシマン:04/04/27 21:07 ID:wpb1IUSh
「それが閣下の御意志だ。たとえ発電用のダムに毒を流すのが無意味だとしても、
最初から偽の爆弾だと判っていながらそれをみなとみらいやコンビナートに仕掛け
させたとしても、任務を忠実に遂行することが我らの義務ではないか」

 「・・・それでは死んでいった者達は犬死にではないか!」

ザリガーナの告げた残酷な言葉に身震いしながら答えるサイタンク。恐るべきは
ヨロイ元帥、自らの部下の命を省みようともしていない。

 「元帥閣下の意図されるところは明快・・・囮は目立てば目立つほど良い。そして、
一人でも敵を倒せればなお良し」

 「爆弾の真偽を知っていれば、戦いを投げ出してそれが叶わぬかも知れぬ、
そう言うことか!」

サイタンクの言葉にザリガーナは黙って頷く。陽動作戦とはいえ前線に立つ怪人達
はライダーを倒す気概で事に当たらなくてはならない。もし怪人達が爆弾が偽物で
あると知っていたり、ダムへの工作が意味のない事だと知っていたなら、作戦を
放棄して遁走する者も出たことだろう。だがそうであってはならない。
 単なる陽動作戦にとどまらず、敵を一人でも減らすためには作戦の最前線に立つ
者の決死の奮起を必要とする。ヨロイ元帥の意図するところはそう言うことなので
ある。
330ナナシマン:04/04/27 21:08 ID:wpb1IUSh
 「運が良ければ我らの命と引き替えに、ライダーの首が手に入る計算だったと
そう言うことか」

 「そう言うことだ・・・だが、貴様は任務を果たせなかったな」

そしてザリガーナはそう言うなり斜面を駆け下り、一気にサイタンクとの距離を
縮めると次の瞬間、鋭く研ぎ澄まされた腕のハサミでサイタンクの首根っこを
挟み込みそのまま一気に
怪人の首を切断してしまった。

 「元帥閣下の御意志に疑問を挟むことは許されん・・・何人たりともな」

ザリガーナの視線の先には、この現場を目撃しているカメレオンがいる。しかし
彼は足下の怪人が放つ鋭い眼光と邪悪な気配に射すくめられて身動きが出来ない。
サイタンクを処刑したザリガーナは大きく跳躍すると、先ほど駆け下りた斜面
を一気に飛び上がって再びカメレオンのそばに立つ。すっかりおびえて大きな
目玉をせわしなく動かすカメレオンの様子を見ていたザリガーナは、ハサミを
突きつけてこう言い放った。

 「我ら改造人間にとって命令は絶対。如何なる些細な疑問も抱くことは
許されぬ。心しておけ」

 その言葉は十分にカメレオンの心胆を寒からしめた。それは一介の怪人の
言葉ではない。まるで自分たちの頭上から言い渡されるような言葉だった。
言葉を失ったままのカメレオンと、仲間に対して一片の情すら抱かぬザリガーナ。
二人の怪人はそのまま山嶺の彼方に姿を消した。
331ナナシマン:04/04/27 21:10 ID:wpb1IUSh
今日の分は以上です。続きはまた明日。
332ナナシマン:04/04/28 22:46 ID:uE1wirOc
今日明日でビデオなどを観て、ちょっとストーリーを練り込みたいと思います。
従いまして、申し訳ありませんが明日までちょっと更新をお休みさせて頂きます。
333名無し海士長:04/04/29 06:08 ID:ErNPKl3H
ナナシマンさん乙です
ヨロイ元帥(またはザリガニーナ)の戦略は
「囮に戦力(それも主力)を派遣させ本陣が手薄になった所を本命で叩く」
という事ですね
334ナナシマン:04/04/30 22:34 ID:FHFmfWY1
 明日の午後から再開ということでまたしばらくおつきあい下さい。
>>333
 デルタgetおめです。
 作戦のその辺りは追々。しかし、悪の手先というのは悲しいモンです。
所詮はトカゲのしっぽでしかないわけでして。
335ナナシマン:04/05/01 15:25 ID:07HxbfH0
 一方発射基地ではいよいよロケット発射の瞬間が近づいていた。司令室では
ヨロイ元帥の指揮の下、科学者達があわただしく準備を続けている。間近に
控えた作戦実行の瞬間を待ちきれないヨロイ元帥は、気ぜわしく室内をうろうろと
歩き回っていたから思うと操作パネルの前で立ち止まり、コンソールに映し出される
各種の情報表示を見ながら、科学者達と言葉を交わす。

 「準備完了の予定時刻を報告せよ」

 「順調に行けばあと6時間で発射準備が完了いたします」
 
 白衣に身を包んだ白覆面の科学者から報告を受けたヨロイ元帥は、不気味な笑み
を浮かべる。気象用のロケットですら10時間を要する準備時間を考えれば、蠍谷
へのロケットの移送から発射台への設置を終え、残る各種最終チェックや推進薬の
充填等の準備を考慮するとこの時間は早いほうなのかも知れない。だが、手柄に
はやる今の彼には長すぎるのか科学者に準備時間を早めるよう催促する。

 「長いな・・・5時間、いや3時間以内で準備せよ。諸君の奮闘を期待するぞ」

白覆面の科学者達が戸惑いと焦りの表情を浮かべるのもお構いなしに、元帥は
マントを翻して司令室を後にする。自動ドアがゆっくりと開き、去り際に元帥は
科学者達にこう言い残した。

 「完了次第速やかに報告せよ。発射の指揮は俺が執る」

閉まるドアが元帥の姿を隠し、司令室がさらに慌ただしさを増すのを尻目に
ヨロイ元帥は自室へと帰っていく。と、その道すがら彼は外から帰ってきた
ザリガーナと出くわした。
336ナナシマン:04/05/01 15:26 ID:07HxbfH0
「ザリガーナ、貴様の作戦のおかげでロケットは無事に蠍谷に到着、発射まで
3時間を待つのみとなった。ご苦労だったな」

 部下である改造人間の労をねぎらうヨロイ元帥。しかし彼はその一方で、味方
や部下の命すら何とも思わない冷酷非情な一面を併せ持っている男である。彼に
してみればこの怪人でさえも手駒にしか過ぎない。と、その時怪人が口走った
言葉は元帥にしてみれば予想外の事態であった。

 「関東圏に送り込んだヨロイ軍団が壊滅した。ライダー共がこの場所に
気づいて乗り込んでくるかも知れん。奴らを釘付けにしてロケットを東京に
打ち込む腹づもりだったが、面倒なことになった」

 「何だと?!科学者共の尻を叩いて3時間以内で準備するよう命じたが、
間に合わぬではないか!どうする」

先ほどの余裕とは一転、怪人の言葉に動揺するヨロイ元帥。一方のザリガーナに
とっても軍団の敗戦が予想よりも早かったことは計算外だったようだ。

 「ライダー共の行動が思いの外早かった・・・もしかしたら奴らは、何かの
ネットワークを構築して作戦行動を察知し、伝達していたやも知れん」

ザリガーナの推理するネットワークの存在。それはまさしくあの少女達の事
だった。しかし、ヨロイ元帥はまだその存在を知らなかった。
337ナナシマン:04/05/01 15:27 ID:07HxbfH0
 「ネットワークだと?!」

元帥の言葉に黙って頷くザリガーナ。そして怪人はさらに言葉を続けた。

 「『少年仮面ライダー隊』というジャリ共がいると聞く。FBIの稲葉とか
いう女の手助けでそいつらが作戦を察知して、ライダーに知らせたのだろう」

 「ならば急げザリガーナ、皆殺しだ!」

腕の鉄球を突きつけてザリガーナに抹殺指令を命じるヨロイ元帥。怪人もそれ
はすでに承知していたようだ。

 「判っている。カメレオン・・・いや、『吸血カメレオン』に命じてジャリ
共は任せているが、俺もこれから東京に出向く」

そう言うとザリガーナは元帥の前から姿を消した。元帥も怪人の言葉にようやく
落ち着きを取り戻したか、再び自室へと向かって歩き出した。ザリガーナの命を
受け、生まれ変わった吸血カメレオンの魔手が今度は雅達へと延びようとしていた。
338ナナシマン:04/05/01 15:28 ID:07HxbfH0
 今日の分は以上です。当初の予定だった明日には終わりそうになく来週一杯まで
かかりそうですが、よろしくおつきあい下さい。
339名無し海士長:04/05/01 16:32 ID:I9mQDS/O
ナナシマンさん
Zです
>デルタgetおめです
言われるまで気がつきませんでした(笑)
>来週一杯までかかりそうですが、よろしくおつきあい下さい。
どうぞ納得のいくまで推敲してください
340保全:04/05/02 12:05 ID:D5+6Dk8V
*スカイライダー役者繋がりで…

川o・-・)ノ<(神田)明神下の平次でぃ、神妙にお縄を頂戴しろぃ!

川o・-・)ノ===◎シュッ!

「銭形平次」(主演・村上弘明)
毎週月曜夜7時・テレビ朝日系で放送中!
341ナナシマン:04/05/03 22:29 ID:B4DtkjMy
 吸血カメレオン。それは黒部ダムでの作戦においてライダー達の前から姿を
消したあのヨロイ軍団の一員、カメレオンが強化手術によって新たな力を得た
姿である。
 奇怪な大きな目玉が印象的な外観こそ以前と変わらないが、吸血の名が示す
とおり彼は新たに人間の血を吸う力を手に入れた。長く延びる舌で相手をとらえ、
その舌先で相手の血をすする悪魔の怪人となって生まれ変わったのだ。しかし
単に血を吸うだけが能の怪人ではない。すでに東京入りを果たしていた彼はその
恐るべき力を使い、雅達少年ライダー隊をその毒牙にかけんと忍び寄っていた
のである。
342ナナシマン:04/05/03 22:30 ID:B4DtkjMy
場所は夢が丘の商店街。折しも商店街では春の大売り出しが行われていたこと
もあって多くの人でごった返していた。老若男女が行き交い、久々に活気を
取り戻した通りに、ちょっと変わったデザインの帽子を被った少女達の姿が
あった。真っ赤な帽子のセンターには白いライン、そのセンターラインを挟む
ようにして配置された緑色の円が2つ。それはまるで2つの目のようにも見え、
それが印象的な意匠を形作っていた。その帽子のデザインは、仮面ライダーの
マスクを象ったものだ。そして、少女達の胸元に輝くのはやはり仮面ライダー
のマスクを象ったペンダント。このペンダントは無線通信や発信器に仕える
優れものなのだ。そう、彼女たちこそ「少年仮面ライダー隊」なのである。
343ナナシマン:04/05/03 22:31 ID:B4DtkjMy
 彼女たちは、自らライダー達の手助けをするためにこうしてパトロール〜少なく
とも彼女たち自身はそう思っているようだ〜活動を行っている。しかし、敵は
そんな「何とか探偵団ごっこ」気分で立ち向かえるような相手ではない。世界を
股に掛けた悪の秘密結社。少女達の身を危険にさらす事にもなりかねない恐ろしい
敵なのだ。そう、少女達を狙って敵が差し向けた先兵こそが、あの吸血カメレオン
なのである。人混みに紛れて、少女達の後をつける一人の男。黒いスーツに身を
包み、サングラスと黒いハットを被った男の姿は誰が見ても警戒心を抱かせるに
十分であった。しかしながら、日々の営みに追われる人々の目には意外なほど
この怪人物の姿は映っていなかった。この怪人物にしても、目標はあくまで
視線の先を行く数人の少女だけであった。
344ナナシマン:04/05/03 22:33 ID:B4DtkjMy
ちょっと少ないんですが今日の分は以上です。

>>340
 ちょうどファミ劇ではスカイライダー始まりました。と、銭形平次はアレですか、
「八丁堀の七人」「子連れ狼」の枠なんですか?
345保全:04/05/04 12:18 ID:gDVnGnmS
>344
ですね。
346名無し募集中。。。:04/05/04 18:51 ID:8PC1VzQa
黒竜丸(竜のほう)がオルフェノク化したら
街中大パニック間違いなし(笑)
347ナナシマン:04/05/04 23:49 ID:QJhfU52e
 「ヒヒョヒョヒョヒョヒョ・・・あのガキ共がそうか」

 サングラスの奥に光る不気味な目。人間の姿でありながらもその口元を右に左に
と長い舌が這いずる。人間の姿で少女を追うカメレオンはじわじわとその距離を
縮めていた。そして彼が路地の一角に視線を送ると、まるでそれに呼応するかの
ようにその場所に一人、また一人と姿を現す黒ずくめの男達。吸血カメレオンに
率いられた工作員達だ。吸血カメレオンはそのうちの一人を呼びつけて命令を下す。

 「お前達、あのガキ共が見えるか」

 「確認できました」

 「ならば何をすればいいかはもう判っているな?」

そう言ってにやりと笑う吸血カメレオン。工作員もそれに答えて怪しげな笑みを
浮かべて頷く。工作員達は人混みに紛れながら、少女達の後をつける。そして
さらにその後をカメレオンがつけ、工作員達の活動を見守る算段だ。
348ナナシマン:04/05/04 23:49 ID:QJhfU52e
 そんなこととは露知らず、雅と仲間の少女たちは連れだって徘徊・・・いや、
パトロールを続けていた。アイスクリームやクレープを片手に動き回るその姿には
やはり戦士として戦う少女達と比べれば緊張感に欠ける感がある。

 「もう少し先まで行ったら帰ろっか?」

長い髪をなびかせて少女〜夏焼 雅が声を弾ませて仲間達に言う。決められた警邏
コースと言うべきものがあるわけではないが、少女達にしてみれば悪と戦う行為の
一環として強い使命感に支えられて行っている・・・ようであった。雅の言葉に
後をついてくる少女達もそれぞれに頷き、ひとまず本日のパトロールは200メートル
程先にあるピザ屋の辺りまでとすることになった。

 何の異常も見つからないまま少女達は通りを歩き、程なくして目標に定めたピザ屋
までやってきた。と、少女達が店先にたどり着いたその時、路上で腕を組んだまま
立ちつくしていた一人の男がいた。真っ白な調理服に身を包んだ彼はピザ屋の店長を
している男だった。

 「おじさん、どうかしましたか?」

苦虫を噛み潰したような渋い顔をして立っているピザ屋の亭主に雅達は声を掛ける。
すると男は少女達の言葉に一瞬顔を緩め、こう答えた。

 「いやね、アルバイトの女の子がまだ帰ってこないんだよねぇ・・・。出前がはけ
きれなくて困ってるんだが」
349ナナシマン:04/05/04 23:52 ID:QJhfU52e
 そう言って亭主は笑顔で雅の頭を軽く撫でると、さらにこう言葉を続けて店の中へ
戻っていく。

 「まぁ、お嬢ちゃん達に愚痴る事じゃなかったね。ごめんね」

ピザ屋の亭主はそう言って小さく手を振ると店の奥へと消え、雅達もそれに答えて
手を振り、声をそろえて「さようなら」と答えるときびすを返してもと来た道を
戻っていく。今日のパトロールは終了。後は稲葉貴子に報告するだけだ。

 「こちら少年仮面ライダー隊、稲葉さん応答願います」

胸のペンダントを手に、雅が貴子に対して交信を試みる。ほどなくして貴子が通信を
受信したか、ペンダントが彼女の声を伝える。

 『こちら稲葉・・・そっちはどう?異常なし?』

 「夢が丘商店街異常なし!少年仮面ライダー隊パトロール終了します!」

ペンダントに向かって明るい声で交信する雅。一方の貴子もまた、彼女の笑顔が
伝わったかのような、明るい声で答えた。

 『ご苦労さん!気ぃつけて帰ってな?隊長からは以上!』

 「了解!」

二人のこのやりとりをもって、少年ライダー隊と隊長の連絡交信は終了した。しかし、
そんなやりとりの合間にも、怪人達の魔の手はすぐそばまで忍び寄っていたのである。
350ナナシマン:04/05/04 23:58 ID:QJhfU52e
今日の分は以上です。続きはまた。

>>345
 なるほど。こっちでは時間が多分違うと思うのでちょっと調べないと(w。

>>346
 その話をどの作者さんが手がけてくださるかでまた話も変わるでしょうが、
楽しみです。
351ナナシマン:04/05/06 22:09 ID:f9YcvVZ8
 「やれ!」

 吸血カメレオンの命令が飛ぶと黒ずくめの男達が少女達の背後に一気に忍び寄り、
誰彼構わずその小さな手をひっつかみ、無理矢理にその身体を押さえ込んで抱え上げる。
また一方では武器を持った戦闘員が人混みを追い散らす。白昼堂々の大胆な行動に、
周囲はパニック状態に陥った。

 「きゃーっ!」

 「ちび共大人しくしろっ!」

一人を抱え上げたらまた一人。そこはさすがに悪の組織の手際よさと言うべきだろうか。
次々と少女達の身柄を取り押さえたまま路地の奥へと逃げ去っていく。

 「みんなっ!!」

異変を察した雅が単身工作員達に挑みかかるが、敵は下っぱとはいえ改造人間である。
片手で軽くあしらわれ、勢い余って尻餅をついてしまう。

 「お前も少年ライダー隊・・・一緒に来て貰おうか!!」

工作員の手が無造作に雅の腕に伸び、そのまま力任せに引き上げる。あっさりと引き
起こされた雅の腹に当て身を入れると、工作員は肩に担ぎ上げてそのまま立ち去ろう
としていた。と、その時先ほど少女達が立ち寄ったピザ屋の自動ドアが不意に開くと、
中から先ほどの亭主が山高帽を投げ捨てて工作員達を追って走り出した。少女の悲鳴
が耳に届いたか、彼は一目散に走り出す。
352ナナシマン:04/05/06 22:11 ID:f9YcvVZ8
 「お前ら、待てぇっ!!」

 ただごとではないと直感した戦闘員と工作員達は少女を連れたまま路地へと走り、
ピザ屋の亭主もその後を必死で追いかける。しかし、さすがに改造人間と中年男では
勝負にならないか距離はだんだんと引き離されていく。しかし、少女達をみすみす彼ら
に連れ去らせる訳にはいかない。
 亭主は何かを決意したか、大きく両眼を見開いた。すると彼の顔面に不気味な文様の
ごとき筋が走り、次の瞬間光に包まれた男は高烏帽子を被ったような異形の怪人へと
姿を変えた。

 「なんだアイツはっ!」

目の前で突如姿を変えたピザ屋の亭主に驚き戸惑うゼティマの一味。実は亭主は人間世界
に紛れて生きるオルフェノクの一人であった。ドルフィンオルフェノク、それが彼の名前
だ。やがて前を走るゼティマ軍団とオルフェノクは児童公園にやってきた。この突然の
乱入者を始末しようと、戦闘員達が散開してドルフィンオルフェノクを取り囲む。
353ナナシマン:04/05/06 22:14 ID:f9YcvVZ8
 「貴様・・・ゼティマの所属ではないな?!」

 『知るかそんなもん!そのお嬢ちゃん達を放すんだ!!』

 武器を構えた戦闘員達、先ほど人混みを蹴散らしていたあの彼らがドルフィンオルフェノク
の行く手を阻む。数名の工作員達が気を失ったままの少年仮面ライダー隊の少女達をいったん
下ろし服を脱ぎ捨てその正体を現すや、一斉にオルフェノクに対して襲いかかった。殺到
するゼティマ戦闘員達に対してドルフィンオルフェノクは孤軍奮闘、次々と敵をなぎ倒して
いくが相手もなかなかしぶとい。
 何より、彼は人に危害を加えることを放棄したオルフェノクである。戦い慣れしていないせい
もあってか徐々に劣勢に追い込まれ、ついに戦闘員達に袋だたきにされ始めた。本来の力を
発揮できればゼティマ戦闘員に遅れをとることは無かったのだろうが、人でありたいと願う心
は戦いを遠ざけ、力を奪ったのかもしれない。
 とうとうドルフィンオルフェノクは地面に倒れふし、戦闘員達は思う様攻撃を加えると足早に
その場から立ち去った。あろうことか少年仮面ライダー隊の少女達が、敵の手に落ちて
しまったのだ。
354ナナシマン:04/05/06 22:15 ID:f9YcvVZ8
 今日の分は以上です。明日は仕事の都合でお休みを戴きます。土曜の午後
お目にかかりましょう。
355ねぇ、名乗って:04/05/06 22:23 ID:iONJQOYh
更新乙です。
お仕事の方も頑張って下さい。
次回も楽しみにしております。
356名無し募集中。。。:04/05/08 17:52 ID:TCTKKX1I
357ナナシマン:04/05/08 18:42 ID:n5/Nk0C5
 異形の者と不審者がぶつかり合った公園に、れいなが駆けつけた頃にはすでに勝負は
決し、倒れ伏した一体のオルフェノクがいただけであった。やがて閃光に包まれた異形の
者は光の収束と共に人間の姿へと戻る。タイミングの悪いことに、れいなはドルフィンが
ピザ屋の亭主に戻る瞬間を目撃してしまうことになってしまったのだ。

 「お、おっちゃん!」

 れいなは亭主の元に駆け寄ると、彼の上半身をできるだけ優しく抱きかかえて起こす。
亭主はれいなが戻ってきたことに気づくと、傷ついた口元にかろうじて笑みを浮かべて
れいなに言った。

 「遅かったじゃないか・・・配達ちゃんと済んだのかい」

 「も・・もちろんだよ。それよりおっちゃん、あんた・・・」

亭主はれいながなにを見たのかをこの一言で瞬時に察することが出来たような気がした。
人として生きていきたいと願ったものの、それがかなわぬところがオルフェノクのさだめ
というものなのだろうか。れいなと目をそらして亭主は少し後ろめたそうに言った。

 「女の子達が攫われて、助けなきゃと思ったらあの姿になってたんだよ・・・本当は
人間として生きたいって、思ってたのになぁ」

れいなにとって、オルフェノクは敵以外のなにものでもなかった。ベルトを狙い、仲間を
狙う異形の者達にかけてやる情けなど一片も持ち合わせていない、自分ではそう思って
いた。しかし、目の前にいるこのオルフェノクは人として生きることを願っていた。
一介のピザ職人として、人と異形の狭間に悩みながらも生きてきたのである。そして、
何者かに攫われた少女のために、異形の身を晒して助けようとしたのである。
358ナナシマン:04/05/08 18:43 ID:n5/Nk0C5
「女の子が攫われたって・・・?!」

 「あぁ。ゼティマとかなんとか言ってた」

 聞き覚えのある名前。それは中澤家の少女達が戦っている悪の組織の名である。
この時れいなは、オルフェノクとならんでこのゼティマという組織の名が、避けられない
存在であると認識出来た気がした。
 やがて亭主はれいなの肩を借りてゆっくりと立ち上がるが、近いとはいえ一人では
とうてい店まで戻れないだろう。れいなは亭主に肩を貸したまま店まで二人で歩いて戻った。
その間、れいなは亭主に対して一言も発することはなかった。それは自分のオルフェノク
観とでも言おうか、彼らに対する概念が揺らぐ瞬間に出くわしたからかも知れない。

 店にある休憩用のソファにひとまず亭主の身体を預けると、れいなは何も言わずに店を
後にしようとする。と、亭主が痛む身体をおして身を起こして言った。

 「すまないね・・・ありがとう」

 亭主の言葉を聞いてなおれいなは黙ったままだったが、去り際に一言だけ彼にこう
告げて、店を後にした。

 「おっちゃん・・・あんたは人間だよ」

と。
359ナナシマン:04/05/08 18:45 ID:n5/Nk0C5
 店を出たれいなはすぐさま中澤家に直行する。少女達が何者であるかは判らなかった
が、ゼティマの悪行を耳にしたからには放っておくことは出来なかった。本来ならば
関わる必要のない戦いだったのであろうが、今の彼女には看過できない問題だった。


 ちょうど同じ頃、蠍谷では盤石と思われていたヨロイ元帥の計画に再び狂いが生じ
始めていた。
 なんと、ロケットの発射機関に故障が見つかり、緊急修理が必要になったというのだ。
当然元帥は烈火の如く怒り、科学者達に当たり散らして怒りをぶちまける。その勢いは
まさに彼ら一人一人を血祭りに上げんばかりであった。

 「貴様ら雁首そろえて何をしておるか!この俺がそのドタマ叩き割ってくれようぞ!!」

 「ひいいっ!!」

近くにいた白装束の科学者の襟首をつかみ、血走る眼でにらみつけ元帥は怒鳴りつける。
恐れおののき声も出ない科学者の首をおらんばかりにその手に力を込める元帥の背中越しに
赤いランプの輝きと共にあの声が聞こえてきた。

 『ヨロイ元帥。何をそんなに荒れているのだ』

 「ゼティマ首領様、プルトンロケットの機構にトラブルが発見されました。修理を
命じているのですが時間が・・・」
360ナナシマン:04/05/08 18:46 ID:n5/Nk0C5
 『なるほど・・・まぁよい。で、どれくらいかかるのか』

 「お前達、どれだけかかるのだ?!」

修理完了の見込み時間を求めてきた首領に対し、科学者達にまくし立てて答えを得ようと
するヨロイ元帥。ヒステリックなこの男らしい光景であるが、科学者達はこの男に対する
要求に素早く応じて見せた。実のところ、元帥よりも計画そのものを把握しているのは
まさに現場で事に携わる彼らなのである。

 「概ね4時間を予定しております」

 『やむを得ん。まずは修理に全力をつくすのだ。成功を祈っているぞ』

元帥にとっては予想外のトラブル。それは我が国にとっては猶予時間が延長されたことを
意味する。ロケットの発射準備が完了すれば、悪魔のZ計画が発動するのである。作業は
元帥の指揮の下急ピッチで進められることとなった。
361ナナシマン:04/05/08 18:48 ID:n5/Nk0C5
今日の分は以上です。明日から一週間ほど出張が入りまして、出張先からの更新と
なりますのでもしかしたら二日に一回くらいのペースになるかも知れません。来週末
までには終了の運びとなることと思います。
362名無し海士長:04/05/09 10:06 ID:ZBY9BR/Z
ナナシマンさん
乙です
>明日から一週間ほど出張(略)二日に一回くらいのペースになるかも知れません
ご苦労様ですお仕事がんばってください
363名無し募集中。。。:04/05/10 06:56 ID:bamxFRQn
お疲れ様です。

そして保全sage。
364名無し募集中。。。:04/05/13 01:57 ID:o24OLdel
保全
365ナナシマン :04/05/14 23:59 ID:NoUmrVvi
 長らくの中断、誠に申し訳ありませんでした。実は今日まで派遣関連の
事前訓練だったのですが、予想に反して続きを書く時間がまったくといって
良いほどありませんでした。また接続できる環境もなかったため今カフェ
から書き込んでいるのですが、お話の続きは明日の夜ということでお願い
いたします。
366ナナシマン:04/05/16 02:32 ID:gz08+Avy
 同じ頃、城南大学から移送されていた古代の遺物を積んだトラックを先導し、アヤカと
貴子を乗せたクーペが初夏の峠道を走っていた。彼女たちが走っている道は本来ならば
科警研のある東京都内某所へは遠回りになるルートだが、すべてはこの遺物をゼティマの
目から隠すためのZ対からの指示である。

 「稲葉さん・・・あとどれくらいで着くんですか?」

 「せやなぁ、この道使って科警研まで言うたらあと30分はかかるかもね」

 貴子の言葉にため息一つつくと、アヤカはトラックの様子が気にかかったのかふとミラー
で後方の様子を見る。しかし、その時トラックのコンテナの中で起きていた異変はついに
顕在的な状況へと発展していた。その兆候となる振動にトラックの運転手が気づいた頃
には、すでにコンテナは少しずつひずみ始めていた。まるで中から空気を抜かれていく
ペットボトルのように、コンテナは内部から少しずつひしゃげていく。猛烈な振動と激しい
異音に運転手のハンドル操作が乱され、車体は右に左にと蛇行し始める。やがてアヤカ
がその異変に気づき、助手席の貴子にうわずった声で告げる。
367ナナシマン:04/05/16 02:33 ID:gz08+Avy
「稲葉さん、後ろ!あれ見て!!」

アヤカが貴子にトラックの異変を知らせたときには、コンテナの周囲は激しくひしゃげて
しまっていた。二人は内側から壁が引きはがされていくその有様を見せつけられることと
なった。トラックはかろうじてコントロールを保ちながら自走していたが、スピードは
徐々に落ちていく。その間にもコンテナ内の遺物はせわしなく微動し、元々小片でしか
なかったそれが寄り集まって形を成して金属という金属を吸収してそのあるべき姿を
取り戻しつつあった。

 「あかん、トラックがヤバい!アヤカっ!!」

 「はいっ!」

徐々に速度を落としていくトラックはかろうじて近くの駐車場に入ることが出来たものの
遂に自走能力を失い完全に停車してしまった。その一部始終を目撃した貴子の声にアヤカ
はあわててブレーキを踏み、すぐさま方向転換してトラックが停車した駐車場へと走る。

 しかし、そこで二人が見たものは驚くべき光景であった。這々の体でトラックから
逃げ出す運転手の背後で、遺物はまばゆい光を放ちながら金属部品を吸収していく。
それはまさにトラックの鉄という鉄を喰うと言う表現がふさわしいほどの壮絶な光景で
あった。そして完全にそのあるべき姿を取り戻した古代の遺物が遂に二人の前に姿を
表す。光の中から現れたそれは、金色の輝きを放つ巨大な甲虫のような姿をしている。
もっと詳しく言うならば、クワガタムシを模したような姿と言うべきだろうか。まるで
自らの意志を持つかのようにボロボロになったトラックの残骸から姿を現したその巨大な
クワガタムシのような遺物は、不意に強烈な光を放つと二人の前から飛び去っていった。
368ナナシマン:04/05/16 02:33 ID:gz08+Avy
 一方、ドルフィンオルフェノク〜ピザ屋の亭主を店まで送り届けたれいなは、攫われた
少年ライダー隊の少女達の姿を追ってオートバジンを駆る。敵の去っていった方向までは
かろうじて最後に走り去っていった戦闘員らしき人影を目撃したこともあって把握すること
はできたものの、それだけでは敵を追うことは出来ない。と、その時彼女の前に姿を現した
一人の少女がいた。赤い帽子と胸に輝くペンダント、それはまさに少年ライダー隊の
出で立ちである。

 「もしかして、アンタ攫われたコじゃないの?」

いぶかしがるような視線で少女を見るれいな。彼女の前に立つ少女・・・夏焼雅は確かに
吸血カメレオンによって攫われたはずだった。

 「私と愛理だけは何とか逃げることができたんです。愛理、出ておいで?」

呼ばれて姿を現した愛理と呼ばれた少女は、雅よりもさらに幼かった。そんな二人の様子に
れいなは思わず、子供の遊びじゃないんだからなどと一言小言も言いたくなったが、まず
は二人の身柄を保護することが先決だ。雅がしばらく歩いたところにバイクを隠していると
いうのでとりあえず三人は「ベリーズ」というファミリーレストランの裏手にある駐車場
へと向かう。程なくしてバイクを見つけ出すと、雅は自分のバイクに、そしてれいなは
愛理を後に乗せて走り出した。
369ナナシマン:04/05/16 02:34 ID:gz08+Avy
 一週間のご無沙汰申し訳ありませんでした。今晩より再開です。続きはまた。
370ナナシマン:04/05/17 02:52 ID:Z1G3T7tM
「みんなは一体何処にいるの?」

 「埠頭の第4倉庫・・・そこでカメレオンに捕まってるはずです」

 並んで走る二台のマシン。れいなの問いに答える雅の言葉に従って目的地は決まった。
埠頭で待ち受ける者が何であれ、今更後には引けない。れいなはマシンを走らせる。
一刻も早く少年仮面ライダー隊の少女達を救いださなければならない。二人の言葉を
耳にしたせいか、後でれいなにしがみつく愛理の手に力がこもる。仲間達の身を案じて
不安に駆られる小さな心を落ち着かせるように、れいなは愛理に言う。

 「大丈夫、絶対助けるから」

 「はい・・・」

少女達を絶対助け出さなければならない。先輩達もおそらくは少年仮面ライダー隊の
危機を察知して駆けつけてはくれるだろう。しかし、それを待っている暇はない。
今少女達を救えるのは自分しかいないのだ。
371ナナシマン:04/05/17 02:53 ID:Z1G3T7tM
 吸血カメレオンが待ち受ける埠頭にたどり着いた2台のマシン。3人はマシンを
降りると、倉庫の壁を伝いながら少女達が囚われているという第4倉庫へと近づいて
行く。周囲の倉庫には敵の姿はない。壁やコンテナに身を隠しながら、とうとう3人
は第4倉庫の前へとやってきた。ここに至ってもなお、ゼティマの姿はない。

 (どうして敵の姿がないんだろう・・・もう他に移ったのかな。それとも)

れいなは周囲を伺いながらも、この状況に不可解なものを感じ始めていた。

 「二人とも、ここで間違ってないの?」

そう言ってれいなは雅と愛理の方を見やる。と、その時。

 『確かに間違いないよ・・・』

 『死に場所はここで間違ってないよ・・・』

ゆっくりと顔を上げた二人の目はうつろな光を宿し、顔色は先ほどとうってかわり
不気味で青白く変わる。
372ナナシマン:04/05/17 02:55 ID:Z1G3T7tM
 「なっ・・・あんた達!」

身構えるれいなに迫る雅と愛理。そしてその直後、突如として他の少年仮面ライダー隊
の少女達が第4倉庫から次々と姿を現した。しかし、明らかに様子がおかしい。雅と
愛理と同様、うつろな目をしている。

 『ゼーティマー・・・ゼーティマー・・・』

焦点の定まらない瞳から放たれる不気味な視線と、まるでうわごとのように敵の名を
口走りながら少女達はれいなへとゆっくり歩み寄ってくる。

 「まさか、嵌められた?!」

吐き捨てるように呟くれいな、その言葉に答えるように最後に姿を現したのは、ゼティマ
の改造人間吸血カメレオンだった。

 「ヒュヒュヒュ〜。撒いた餌の割には獲物は小物だったが、まぁ仕方あるまい・・・
お前もライダーの一人ならば、ここで死ぬが良いわ」

吸血カメレオンは捕らえた少女達の生き血をすすると同時に、少女達を自分の操り人形に
してしまったのだ。迫り来る少女達に手が出せないまま、れいなは怪人の毒牙にかかって
しまうのだろうか?
373ナナシマン:04/05/17 02:55 ID:Z1G3T7tM
今日の分は以上です。続きはまた。
374ナナシマン:04/05/17 23:36 ID:I9ZJ1CeV
「ヒュヒュヒュヒュ〜。小娘め、俺の舌を喰らえ!」

 不気味に裂けた口から長い舌が延び、あっという間にれいなの首に巻き付く。少女達
に突然襲われたこともあってか、れいなの手元にはファイズギアはない。怪人の舌の力
は強烈で、締め上げるばかりかその巻き取りの力も相当なものだ。絡め取られたれいなは
なすすべもなく、自らの意志とは無関係に吸血カメレオンの方へと歩まされてしまう。

 「くっ・・・」

 「さぞや苦しかろう・・・だが俺の舌に絡め取られたが最後、ただでは済まん。
完全に自由を奪ったところで、死ぬまで生き血をすすり上げてやるわい」

徐々に迫る怪人の不気味な顔。両者の距離は吸血カメレオンの舌が不気味に蠢く毎に
狭まっていき、れいなの身体は怪人のそばへとたぐり寄せられていく。

 「ちくしょう、離せっ!」

 「バカめが、放せと言われて放すヤツがあるか」

あがくれいなの力も生身の故か怪人には及ばず、とうとうその身体はまさにカメレオン
のすぐそばまでたぐり寄せられた。手を伸ばせば容易にその身体をつかむ事が出来る
くらいの至近距離だ。遂に万事休すか。
375ナナシマン:04/05/17 23:37 ID:I9ZJ1CeV
「ヒュヒュヒュヒュ〜。小娘め、俺の舌を喰らえ!」

 不気味に裂けた口から長い舌が延び、あっという間にれいなの首に巻き付く。少女達
に突然襲われたこともあってか、れいなの手元にはファイズギアはない。怪人の舌の力
は強烈で、締め上げるばかりかその巻き取りの力も相当なものだ。絡め取られたれいなは
なすすべもなく、自らの意志とは無関係に吸血カメレオンの方へと歩まされてしまう。

 「くっ・・・」

 「さぞや苦しかろう・・・だが俺の舌に絡め取られたが最後、ただでは済まん。
完全に自由を奪ったところで、死ぬまで生き血をすすり上げてやるわい」

徐々に迫る怪人の不気味な顔。両者の距離は吸血カメレオンの舌が不気味に蠢く毎に
狭まっていき、れいなの身体は怪人のそばへとたぐり寄せられていく。

 「ちくしょう、離せっ!」

 「バカめが、放せと言われて放すヤツがあるか」

あがくれいなの力も生身の故か怪人には及ばず、とうとうその身体はまさにカメレオン
のすぐそばまでたぐり寄せられた。手を伸ばせば容易にその身体をつかむ事が出来る
くらいの至近距離だ。遂に万事休すか。
376ナナシマン:04/05/17 23:38 ID:I9ZJ1CeV
「ヒュヒュヒュヒュ〜。小娘め、俺の舌を喰らえ!」

 不気味に裂けた口から長い舌が延び、あっという間にれいなの首に巻き付く。少女達
に突然襲われたこともあってか、れいなの手元にはファイズギアはない。怪人の舌の力
は強烈で、締め上げるばかりかその巻き取りの力も相当なものだ。絡め取られたれいなは
なすすべもなく、自らの意志とは無関係に吸血カメレオンの方へと歩まされてしまう。

 「くっ・・・」

 「さぞや苦しかろう・・・だが俺の舌に絡め取られたが最後、ただでは済まん。
完全に自由を奪ったところで、死ぬまで生き血をすすり上げてやるわい」

徐々に迫る怪人の不気味な顔。両者の距離は吸血カメレオンの舌が不気味に蠢く毎に
狭まっていき、れいなの身体は怪人のそばへとたぐり寄せられていく。

 「ちくしょう、離せっ!」

 「バカめが、放せと言われて放すヤツがあるか」

あがくれいなの力も生身の故か怪人には及ばず、とうとうその身体はまさにカメレオン
のすぐそばまでたぐり寄せられた。手を伸ばせば容易にその身体をつかむ事が出来る
くらいの至近距離だ。遂に万事休すか。
377ナナシマン:04/05/17 23:40 ID:I9ZJ1CeV
 吸血カメレオンの両腕がれいなの肩をガッチリつかむ。ピクピクとまるで別の生き物
のように動く舌先が首筋へと延び、弄ぶようにはい回る。

 「小娘の血、いただくぞ・・・」

吸血カメレオンの不気味な笑みと共に、舌先は動脈を探り当てて肌に強く押しつけられる。
このままさらに力を込めれば皮膚に突き刺さって動脈へと至り、れいなの血は怪人の言葉
どおり彼女が命を落とすまで吸い尽くされてしまうのだ。と、その時だ。

 
 「待てぇっ!!」

どこからともなく響くのは、悪を許さぬ正義の戦士の声。カメレオンの巨大な目が声の
主を捜して不気味にぎょろぎょろと動き回ると、すぐにその姿を倉庫の屋根の上に発見
した。見覚えのある少女の顔に、カメレオンの口元がまがまがしく緩む。

 「ヒュヒュヒュヒュ〜。誰かと思えば貴様か、仮面ライダーV3!」

 「ゼティマ怪人・吸血カメレオン、そのコを放せ!」

危機一髪のところに現れたのは誰あろうライダーV3だった。しかし、駆けつけたのは
彼女だけではない。屋根の上にはさらにもう一人の戦士の姿があった。
378ナナシマン:04/05/17 23:41 ID:I9ZJ1CeV
 「Xライダーもいるやよ!」

そう言うなり仮面ライダーXは手にしたライドルのスイッチを切り替え、スティック
にチェンジすると上空高く跳躍した。

 「とうっ!!」

大跳躍から勢いよく振り下ろされるライドルスティックの一閃が、見事にカメレオンの
不気味な舌を切り裂いてれいなを救った。宙に舞う赤い帯のようなものこそ、切り
落とされた吸血カメレオンの舌だ。

 「グエーッ!貴様ぁ、よくも俺の舌を斬ってくれたな!」

 「自慢の舌が気の毒なことやの。けど、この子達を操ってたお前は許さんよ!」

 吸血カメレオンはかろうじて短く残った舌を素早く口の中にしまい込むと、着地して
身構えるXライダーに襲いかかる。一方V3はれいなとともに、怪人の虜となった少年
仮面ライダー隊を救出するべく行動を開始した。ゼティマの改造人間の企みを防いだ
仮面ライダーと、怒りの怪人が激突する。
379ナナシマン:04/05/17 23:43 ID:I9ZJ1CeV
 思いがけない書き込み失敗で三重カキコというかつて無い大失態で申し訳
ありませんでした。今回のお話としては>>375>>376>>377の順になります。
続きはまた。
380ナナシマン:04/05/17 23:45 ID:I9ZJ1CeV
>>379
>>376>>378>>379の間違いですね。ホントたびたびで申し訳ありません。
381ねぇ、名乗って:04/05/18 07:34 ID:KHaMwZQh
>>380
乙です。
ご本人もお気付きとは思いますが正しくは、
>>376>>377>>378
ですね。ドンマイっす。
次回の更新も楽しみやよー

382ナナシマン:04/05/19 23:06 ID:azAcvsHr
 ちょっと寝冷えしてしまいまして、誠に申し訳ありませんが今日までお休みさせて
頂いてます。続きは明日の夜に。

>>381
 ご指摘申し訳ありません。ひとえにこちらの接続環境が不安定なためなんですよ。
Air”Hも128だと多少早くなるんですが、そのぶん不安定になるんですよね。おかげで
書き込み失敗が頻発>「あれ?」(反映されてないと思って2、3回クリック)>多重カキコ
の悪循環なんですよ。がっくし。
383ナナシマン:04/05/21 01:31 ID:vUgSAUHS
拳を振り上げて襲い来る吸血カメレオン。これに対して受けて立つのはXライダー。
必殺の吸血舌はすでに切り落とし、一番の武器を失った怪人はXライダーにとって
さほど組しがたい敵ではない。怪人のパンチ攻撃をブロックすると、がら空きの
土手っ腹に一撃を加える。

 「とうっ!」

 「ぐうっ!!」

悶絶して動きの止まったカメレオン。Xライダーはこの機を逃すまいとすかさず懐
へと入り込み、怪人とがっぷり組み合うとそのまま自ら背中から倒れ込み、巴投げ
のような体勢のまま猛回転する。必殺の荒技「真空地獄車」の序曲となる連続回転が
吸血カメレオンを痛めつける。 

 「受けてみろっ!真空っ、地獄車!!」

怪人もろとも跳躍し、そこからの急降下でさらにダメージを与えた後、大きく投げ
飛ばした敵にとどめのXキックを食らわせれば技は完成する。だが、Xライダーが
必殺の投げ技で吸血カメレオンを空中へと投げ飛ばしたその直後、Xキックを怪人に
放とうと跳躍したXライダーの眼前に突如として銀色のマントがはためくと、何者
かが跳び蹴りを放ってこの必殺の一撃を撃墜してしまった。
384ナナシマン:04/05/21 01:32 ID:vUgSAUHS
 「うあっ!」

謎の敵のキックが直撃したXライダーは空中で姿勢を崩してしまった。しかし
落下の直前で受け身を取り、素早く回転していったん謎の敵との間合いを開く。
そして、素早く立ち上がったXライダーは敵の正体を知った。銀色のマントを翻し
復讐に燃える赤い仮面の男、彼の名はアポロガイスト。

 「ヨロイ元帥の計画を後押ししてやるつもりはないが、貴様が現れたのなら話は
別だ・・・我らが軍団の怨み、今こそはらす!!」

 かつてXライダーが仲間達と共に壊滅させた、呪博士率いる支部組織。キングダーク
さえも破壊されてしまったことで、一人生き残ったアポロガイストは少女達に対して
激しい怒りの炎を燃やしていた。

 「あのなんとか博士の仲間やったか!」

 「貴様達のおかげで生き残ったのは俺とこの一体の改造人間だけだ、Xライダー!
我らが怨念の化身、出でよ!コウモリフランケン!!」

 アポロガイストがマントを翻し、アポロショットで指し示した先に立つ怪しい影。
影の主たる怪人は翼を不気味にはためかせ、そこから跳躍と共に羽ばたくと背中の
大砲をXライダーめがけてぶっ放す。
385ナナシマン:04/05/21 01:33 ID:vUgSAUHS
 「Xライダー。我が軍団最後の刺客、コウモリフランケンを倒せるか!」

 GOD機関の怨みを一身に背負って生まれた怪人、コウモリフランケン。はためく
翼は蝙蝠の、そしてその顔はまさにフランケンシュタインの怪物そのままの顔立ちを
しており、名は体を表すの例え通りの容貌を持つ怪人である。

 「Xライダー、俺はお前を殺すためだけに生まれたのだ。ここで死んで貰う!」

空中からの砲撃を止めたかと思うと、今度はいきなり急降下してきてキックを放つ。
この一撃をすんでの所でかわしたXライダーに対して、吸血カメレオンもどうにか
復調したか戦列に復帰する。コウモリフランケンと吸血カメレオン、二大怪人との
変則タッグマッチを強いられたXライダーはこの難敵にどう立ち向かうのか。
386ナナシマン:04/05/21 01:33 ID:vUgSAUHS
今日の分は以上です。続きはまた明日。
387ナナシマン:04/05/22 01:30 ID:7uTNr1sj
 一方、カメレオンによって操られた少女達を解放するためにれいなと共に集団の
なかに躍り込んだV3だったが、一種の催眠状態にある少女達に自身の意識などは
なく、カメレオンに命じられるままに牙を剥き、二人に食いつかんと襲ってくる。

 『ゼーティマー、ゼーティマー・・・』

 「ちっくしょー、おいら達のことわかんないのかよ!」

群がる少女達にまとわりつかれ、手出しの出来ないV3とれいな。と、意を決した
れいなが手近な少女のみぞおちに一撃を食らわして昏倒させる。
 
 「仕方ない、痛い目みないと判らんっちゃろうね・・・うりゃ!」

的確な力加減とコントロールで当て身を入れていくれいな。しかし、V3〜真里に
してみればこの突飛すぎる行動はとうてい理解できる物ではない。

 「ちょっと!何やってんだよ!!」

 「しょうがないでしょ、このコ達のためですって・・・てやっ!!」

れいなにみぞおちを強打された少年仮面ライダー隊の少女達はゆっくりと地面に
崩れ落ちていく。生身の人間であるれいなが殴ればさすがに命の危険はあるまい。
やり方が手荒いのはこの際仕方ない、V3はそう己を無理矢理納得させた。そうこう
しているうちに、れいなは妙に慣れた手つきで全員を戦闘不能にすることが出来た。
敵に気を失った相手を操るだけの能力は無いと見たV3とれいなは、Xライダーに
加勢するべく、ゼティマの改造人間達の元へと駆けていく。
388ナナシマン:04/05/22 01:30 ID:7uTNr1sj
 同じ頃、中澤家を訪ねていたミカは玄関先で立ちつくしていた。チャイムを
押す、ただそれだけのことが出来ない。真里に会わなければならない。会って
今の気持ちを伝えなければならない。だが会えばきっと言えなくなる。そんな
葛藤のただ中で、彼女は踏み出すべき一歩を踏み出せないでいたのだ。と、
そんな小さな影を認めた一人の女性の姿があった。彼女は玄関先に立っている
ミカの元に歩み寄ると、思い詰めたような表情でドアの前に立つミカに声を
かけた。

 「誰やろ思たら・・・どうしたの?」

 「あ、中澤サン」

その女性−中澤裕子はドアを開けると、そのままミカを部屋の中へと招き入れた。
そして裕子はミカをリビングへと通すと、自分はキッチンへと向かいコーヒーの
準備を始める。

 「みんなとは合流せえへんかったの?」

 「合流・・・ですか?」

 裕子の言葉に思い当たらないといった表情を浮かべるミカ。彼女の言葉に
戦いのことを知らないと察した裕子は、今現在起きている戦いはもう他の
少女達に任せた方が良いかもしれないと思い、早々に話題を切り上げる。
389ナナシマン:04/05/22 01:36 ID:ydnYVlnH
 「ん?あぁ・・・何でもない」

そう言うと裕子はコーヒーをカップに注ぐ。香ばしい香りを漂わせながら細く
立ち上る湯気。2つのカップをトレイに乗せると裕子はリビングにいるミカの
ちょうど正面に位置する形で座る。

 「ずいぶん思い詰めたような顔してたけど、何かあったん?」

 「実は、矢口サンにどうしても伝えなきゃいけないことがあったんです」

 「そっか。もしあたしで良いなら話聞くけど?」

 裕子に対する敬意は他の少女達と同様にミカも持ち合わせている。今の自分の
気持ちを伝えなくてはならないという意味では真里と同じくらい大事な存在
である。ミカは口を開くと裕子に対して思いの丈を伝える。自分の思いのすべて
を伝えた彼女は唇をかみしめてうつむいていた。この時点で、まだ彼女は自分の
選択に結論を出すことが出来ていなかったのだ。謎のオーパーツの正体を解明
することで、この戦いの終わりが見えるかも知れない。しかし、今まさに日本を
襲う危機を無視して渡米することは出来ない。
390ナナシマン:04/05/22 01:37 ID:ydnYVlnH
今日の分は以上です。続きはまた。
391名無しスター:04/05/24 01:14 ID:vjOsEu2W
今度はスーパー1とビジンダーだそうな。

あはは。
392名無し募集中。。。 :04/05/24 02:01 ID:J6GSTxQ9
ってことは、ハカイダー四人衆とかワルダーの登場か?
393ナナシマン:04/05/24 02:15 ID:KuqkTmfB
 ちょっと今晩の更新はお休みします。
>>391
 それでも愛ある限りヲタりましょう。命燃え尽きるまで。
>>392
 その前に本家ハカイダーもご無沙汰ってことに気が付きました。
394名無し海士長:04/05/25 18:01 ID:5nucEuqC
ナナシマンさんお久しぶり&乙です
しばらく訓練と体調不良で上陸できなかったので久しぶりに覗いたのですが
だいぶ話が進んでいるのですねがんばってください
395ナナシマン:04/05/25 21:46 ID:MDMLE7ZN
 ただいま移動中のため、本日まで更新をお休みさせて頂きます。
続きは明日以降順次更新させて頂きます。
396川o・-・):04/05/25 23:18 ID:PJH7V5tp
川o・-・)<>>395 了解しました
川o-_-)<それにしても、飯田さんとチャーミーの卒業ですか
       今年に入ってなっち、のの、あいぼんの卒業で
       オタとしてのテンションが下がりっぱなしです
397名無しスター:04/05/25 23:31 ID:nPiWYJRo
>>396
お久しぶりですね。
このスレ、読者がいるのかさっぱりわからないんですが、
みなさんチェックしてるんですね。
398名無し募集中。。。:04/05/26 23:14 ID:5rQIBENQ
読んでるよ。
399名無しスター:04/05/28 01:10 ID:zvG9HdKd
ところで、2ちゃん鯖移転の為、一時板が消える怖れがあるようですが、
念のため避難先です

モ板(変身!)
ttp://jbbs.shitaraba.com/music/6849/
400ナナシマン:04/05/28 22:52 ID:8qnQaLaF
 「それでどっちを取るか、迷ってるわけか」

 「実は・・・」

 迷いが滲むミカの言葉に、裕子はひとつ息をついたところでこう答える。

 「あの子達なら、きっと大丈夫やと思うよ。もちろんライダーマンとしての
存在もきっとあの子らには大事やと思うけど、何よりミカちゃん自身の事を
大事に考えてるはず。やりたい事があるんなら、遠慮せんでいいと思うよ?」

 「中澤サン・・・」

少女たちの友情にあえて今は甘えることにしよう、裕子の言葉にミカの心は
決まった。ゼティマ軍団との戦いは仲間の少女たちの力を信じ、ひとまず
彼女たちに任せてみよう。そして自分は己の力をもって、オーパーツの謎を
解明してみせる。決意も新たに立ち上がったミカは裕子の両手を握り締めて
言う。

 「ワタシ、決めました。自分の心の声を信じてみたいと思います」

 「その方がきっとみんなも喜ぶと思うよ。応援してるから」

ミカ、そして裕子。見つめあう二人の間にもまた信頼の絆が強く結ばれていた。
401ナナシマン:04/05/28 22:53 ID:8qnQaLaF
と、その時突然耳慣れない信号音がリビングに響く。しばらくその状態が
続いたところで、音の正体を思い出したか裕子が声を挙げる。そのまま彼女は
電話のそばに駆け寄ると、傍らにおいてあったペンダントを取り上げた。
それはまさしく少年仮面ライダー隊のペンダントだ。


 「少年仮面ライダー隊の信号電波や!」


 「ってことは・・・」

少年仮面ライダー隊の少女たちを襲った事態を瞬時に察知した二人は互いに
顔を見合わせる。

 「あの女の子達が危ない!」

 「ワタシが行きます。きっと矢口サンや他のみんなも追ってるかも。それに、
日本を去る前に・・・決着をつけなきゃいけない相手がいるから」

 彼女の言うその相手について、当然裕子も思い当たる節があった。それは
ミカを罠に陥れ、ゼティマでの地位と彼女の親友達、そして彼女自身の右腕を
奪った卑劣なる男の名前だ。

 「ヨロイ元帥・・・やな?」

裕子の言葉にミカは力強くうなずくと、リビングを後にする。裕子はそれ以上
何も言わず、ただ彼女の小さな後姿を見送っていた。強い決意を胸にミカは
爆音を轟かせ中澤家を飛び出す。怨敵との最後の戦いが近づこうとしていた。
402ナナシマン:04/05/28 22:54 ID:8qnQaLaF
 昨日一昨日と書き込む時間がまったくと言っていいほど取れません
でしたが今日からどうにか再開できました。いよいよ戦いは終局へと
向かいますが、ひとまず続きは明日。
403名無し募集中。。。:04/05/29 21:53 ID:qxMocY5z
>>402
お疲れ様でつ。
404ナナシマン:04/05/30 14:22 ID:+0nnHiMd
 つい今し方沖縄入りしましたが、ちょっと通信環境が不安定っぽいので続きは明日
帰り着いてからと言うことでお願いいたします。
405名無し海士長:04/05/30 22:00 ID:cMQEq6nL
age
406ねぇ、名乗って:04/05/31 19:33 ID:O8tU6NGF
>>405
なんで、ageたの?
407名無し娘。:04/05/31 20:24 ID:nhQu8Hce
士長殿!小説系はsage進行が良いかと思われます!
408ナナシマン:04/05/31 23:55 ID:zpi8E67F
 そして舞台は再び港へと移る。
 GOD機関最後の刺客、コウモリフランケンと勢いを取り戻した吸血カメレオン
は交互に攻撃を繰り出しながらXライダーを責め立てていた。ライドルスティック
を右に左にと振りかざし、攻撃をしのいでいたXライダーだったが二大怪人の圧力
は思いの外強力だ。特に後から加わったコウモリフランケンは全く無傷のままで
戦いに参加していると言うこともあり勢いが違う。

 「ムフハハハハ。どうしたXライダー、さっきから手が出ていないようだが」

 「ヒュヒュヒュヒュ〜。当たり前だ、俺たち二人がかりに対してお前は一人。
しのぐ以外に術はあるまい」

コウモリフランケンの振り下ろす手刀をライドルで受け流したXライダーだったが
続く吸血カメレオンの蹴りを受けるや横っ飛びに吹っ飛ばされてしまった。

 「・・・くっ!」

回転しながら素早く受け身を取ると、すっくと立ち上がるXライダー。彼女に
とっては大したダメージでは無かったが、それでも勢いづいてしまった怪人達を
相手に、戦いの流れを自分の方に引き戻すのはいささか困難な状況だ。しかし、
そこへ少年仮面ライダー隊の少女達を無力化した真里とれいなが戻ってきた。
409ナナシマン:04/05/31 23:56 ID:zpi8E67F
>>408
× 真里とれいなが戻ってきた。
○ V3とれいなが戻ってきた。

でした。訂正してお詫びします。
410ナナシマン:04/05/31 23:57 ID:zpi8E67F
「大丈夫?」

 やってくるなり怪人達と対峙して身構える二人。自らの危機に駆けつけたV3の
言葉にXライダーが応えて言う。

 「すいません・・・敵が思ったより手強くて」

そんな仲間の言葉にV3はただ黙って頷く。しかし、このまま押されっぱなしで
いるはずがない。互いに五分となった今、二人の力を合わせれば敵ではないはずだ。

 と、ここへきて未だファイズドライバーを装着していないれいなは、ひとまず
ファイズフォンを取り出すとキーを入力し始める。

 「ベルトないのに何してんの?」

 「だから呼ぶんです。ベルト・・・てゆうかバイクを」

 ファイズフォンにはオートバジンの自動操縦コードも設定されている。そのコード
は『5821』。キー入力を終えたその直後、はたしてオートバジンは無人のまま
戦いのただ中へと疾走してきた。そして行きがけの駄賃とばかりにコウモリフランケン
と吸血カメレオンを吹っ飛ばすと、れいなのすぐそばに停車した。
411ナナシマン:04/05/31 23:59 ID:zpi8E67F
 「いつもこのくらい使えればいいっちゃけどねぇ・・・」

 一人呟きながられいなはアタッシュケースから素早くベルトを取り出して腰に巻く。
後はファイズフォンで変身コードを入力するだけなのだが、その時だ。

 「そのベルトは我らが頂こう!」

 謎の声と共に姿を見せたのは、不気味な光を放つ巨大な眼球を持つ甲冑ロボット。
北海道でまいを取り逃がしたあのシャドウナイトが軍団を引き連れて現れたのだ。

 「これを狙ってるってことはあいつらの仲間!?」

 「俺の名はシャドウナイト。オルフェノク共に取られる前にベルトを貰い受ける」

身構えるれいなに歩み寄るシャドウナイト。その背後に控えるのは、黒いウエットスーツ
のような体表に覆われた謎のアンドロイド軍団だ。

 「次から次にまたぞろぞろと・・・」

V3の言葉を聞くやシャドウナイトは身体を揺すって大笑し、彼女に応えて言った。

 「此奴らは『アクアラングマン』。海水をエネルギーに活動する破壊ロボットだ。まさに
ここは港、おあつらえ向きの舞台といったところだな」

新たにシャドウの軍団までが戦いに加わり、混戦の様相を呈してきた正義と悪との激突。
はたして、その戦いの場にミカは間に合うのだろうか。
412ナナシマン:04/06/01 00:00 ID:yIIeTqxh
 今日の分は以上です。続きはまた明日。
413名無し募集中。。。:04/06/01 19:35 ID:kK+sSlG0
>>412
更新乙です。
414ナナシマン:04/06/02 00:37 ID:mxT1ti//
 にじり寄るゼティマ怪人、そしてシャドウの破壊ロボット軍団。形勢はまたも逆転し
再び正義の戦士達が不利を負う様相となった。

 「我々としても本意では無いが・・・」

 「手を組んだ方が目的の達成は確実な状況だ」

 「ヒュヒュヒュヒュ〜。その通り」

 互いに言葉を交わすシャドウナイトとコウモリフランケン、そして吸血カメレオン。
改造人間と破壊ロボット、2つの悪が共に手を組み戦士達の前に立ちはだかる。V3
とXライダー、ファイズフォンを手に身構えるれいなの3人を取り囲む悪の軍団は
徐々にその包囲網を縮めてにじり寄る。しかし、戦いをあきらめる3人ではない。

 「数の差が力の差じゃ無いって事を見せてやる!」

 「おう!!」

V3の言葉に二人が応え、れいなは変身コードを入力してファイズフォンをベルトに
装填する。ほとばしる閃光とともにファイズが姿を現し、3人の仮面ライダーが悪と
対峙する。数の上では敵が圧倒的有利と見えるが、不利を背負おうとも戦いから逃げる
訳にはいかない。3人は決意と共に敵をにらみつける。
415ナナシマン:04/06/02 00:40 ID:mxT1ti//
 一方同じ頃、少年仮面ライダー隊の危機を察知したダブルライダーもまた埠頭へと
マシンを走らせていた。赤いマフラーをなびかせ、風を切り疾走する2台のサイクロン
を駆るのはライダーのの、そしてライダーあい。裕子からの連絡を受けた二人は
電波の発信源を突き止めると少女達を救うために行動を開始したのである。

 「間に合うといいれすね・・・」

 「ウチらが行くまで、みんながんばってや」

 はやる気持ちを抑えながらも二人は走る。峠道を縫うように走り、一陣の風の如く
橋を越える。そんな中、一瞬後方が気になったライダーあいはミラー越しに様子を
伺う。と、彼女の視界に映ったのは空中を飛翔する黒い影だった。

 (何や・・・あれは?!)

そして影は徐々に大きくなっていく。それは当然ながら影を成す物体が二人の
そばに近づきつつあるということである。そして影がひときわ大きくミラーに
映り込んだその直後、それは遂に疾風を巻き起こしながら二人を追い越した。

 「うわっ!!」

あわてて急ブレーキを踏む二人。どうにか停車したところで素早くサイクロンから
降りた二人は上空へと視線を向けると、そこにはクワガタムシのような姿をした
謎の飛行物体が漂っている。
416ナナシマン:04/06/02 00:42 ID:mxT1ti//
 「何れすか・・・あれ」

 「敵の新兵器か何かやろうか?」

互いに謎の物体を見上げるダブルライダーはその動向を警戒して身構える。その
間に謎の物体はゆっくりと下降し、二人の前で静止した。

 と、その時ライダーあい〜亜依の心に何者かが語りかけてきた。それは彼女に
宿るもう一つの内なる力の声なのか、それともこの謎の物体が持つ意志なのか。

 『カディル・サキナム・ター』

 「は?」

謎の意志が語った言葉に戸惑う亜依。声の主はさらに続ける。

 『シェンク・ゾ・ター』

聞き慣れない言語で語りかける謎の意志。その正体を、何故か亜依は察する
事が出来た。その声の主こそ、目の前の謎の物体。そしてその言葉。最初の言葉は
自分が駆けつけたという事を告げ、そして続く言葉は亜依を主として共に戦うと
いう意思表明。もちろん、言語自体を知っている訳ではない。しかし、謎の物体の
意志は確かに亜依へと伝わっていた。
417ナナシマン:04/06/02 00:44 ID:mxT1ti//
今日の分は以上です。

>>413
 ありがとうございます。一応量的には3分の2を越えたあたりでしょうか。時間が限られて
来たこともあり、やり残しの無いようにと思ったらやはり量がかつて無い程になってしまい
申し訳ありません。
418名無し募集中。。。:04/06/03 08:09 ID:PeM3xWDm
>>417
乙〜。
419ナナシマン:04/06/04 00:52 ID:QbKfUJU5
 そしてあいの姿が閃光に包まれ、その収束の後に現れたのはあの古代の戦士。
先史時代においてクウガは目の前の古代の遺物を「馬の鎧」として装着し、あの
凶暴な殺人部族「グロンギ族」と戦っていたのである。そして古代の遺物の名は
「ゴウラム」。ゴウラムはすっ、と上昇するやあいのサイクロンの上空へと
近づく。そしてサイクロンに覆い被さるような形で重なると次の瞬間、まばゆい
金色の光と共にその姿は二人の知るサイクロンから劇的に変化していた。倍以上に
大きくなったボディの全面に輝くのは、ゴウラムの黄金の角。まさにゴウラムは
現代におけるクウガの馬・・・サイクロンの鎧となったのである。

 「融合・・・したんかな」

 驚くべき変化を遂げたマシンに手を添えると、クウガ〜亜依の意識は古代の意志
と一つになる。先代のクウガが刻んだ戦いの記憶を伝えるゴウラムの意志を、亜依
は確か受け取った。

 と、その時後方から見えてくるのは一台のクーペの姿。それは貴子を乗せたアヤカ
の車だった。車中の二人もダブルライダーの姿を確認して停車する。二人もまた、
少年仮面ライダー隊の危機を察知して少女達に合流しようとしていたのである。

 「ライダー、少年仮面ライダー隊が!」

 「判ってます、稲葉さん」

貴子の声に頷くライダーののとクウガ。二人の勇姿が貴子にはとても心強く見えた。
と、貴子はふとあの遺物のことを思い出し二人に尋ねる。
420ナナシマン:04/06/04 00:56 ID:QbKfUJU5
 「なぁなぁ二人とも、金色のクワガタみたいなの見ぃひんかった?」

 貴子の言葉に二人の仮面ライダーは互いに顔を見合わせる。そして合点がいったか
二人は笑いながら貴子に答えた。

 「それならほら、あそこに」

そう言ってクウガはゴウラムと融合したサイクロンの方を指さす。黄金に輝くマシン
の姿に貴子は目を丸くする。

 「あのクワガタが・・・」

 「こんな姿に?」

あまりの出来事にアヤカも自分の目を疑う。だが、今は現実に対する詮索をしている
場合ではない。少女達の命がかかっている。

 「電波の発信源は港や、急ごう!」
421ナナシマン:04/06/04 00:58 ID:QbKfUJU5
 亜依〜クウガの言葉に3人が答え、各々のマシンに乗り込む。少女達の危機を救うべく
再びマシンを走らせようとしていた。だが、突如として地響きが起こると、目の前の道路
を覆うアスファルトが、うなりと共に砕けて吹き飛ぶ。

 「うわっ?!」

 「さては・・・新手の改造人間かッ!!」

 つぶてとなって飛んでくる破片を避けようと、あわてて4人はマシンを盾に身を隠す。
そしてもうもうと立ちこめる土煙の彼方から、異形の影が一つ現れた。煙が散り、4人
が再び視界を取り戻した時、その眼前に立つのはとげとげしい赤い甲羅に覆われた
ザリガニの改造人間。ヨロイ軍団のザリガーナだ。

 「あの小娘共のところに行くつもりだろうが、そうはさせんぞ!」

腕のハサミを振り上げて4人を威嚇するザリガーナ。その言葉に呼応したか、隠れ潜んで
いたと思われる戦闘員達も一斉に姿を現した。またもゼティマの軍団が行く手を阻み、
ダブルライダーと怪人達の戦いの火ぶたが切って落とされようとしていた。
422ナナシマン:04/06/04 00:59 ID:QbKfUJU5
今日の分は以上です。続きはまた。
423ナナシマン:04/06/06 01:46 ID:EOX/fDLz
ちょっと今晩は泊まりの仕事ですので、続きは明日の夜にでも。
424名無し募集中。。。:04/06/06 07:42 ID:ubGyknDO
>>423
お疲れ様〜。
425ナナシマン:04/06/07 02:22 ID:OGGWE6HO
 突如地中から姿を現したゼティマの改造人間、そして彼に率いられた戦闘員達。
彼らは本来ならば、ダブルライダーと同様に埠頭へと赴き仮面ライダー達と戦う
ことを主たる任務としていた部隊である。だが、思いがけず彼らは標的である
仮面ライダー、それも名だたるダブルライダーと遭遇したのだ。行きがけの駄賃と
言うには、あまりにも大きな標的である。それを狙うは、ヨロイ元帥の懐刀とも
言うべきザリガーナ。

 「仮面ライダーだけかと思ったら裏切り者とFBIの犬も一緒か。地獄の道づれは
多い方がよかろうて・・・やれ!」

ザリガーナの号令のもと、軍団は一斉にダブルライダーと貴子達に襲いかかる。
敵は己が野望のためならば女子供とて容赦のない地獄の軍団である。だが、4人は
決して怯まない。ダブルライダーが前を固め、そして貴子がアヤカを庇うようにして
身構えると寄せ来る敵を次々と叩きのめしていく。

 「とうっ!」

 「とうっ!!」

岩をも砕く鉄拳が敵の顔面を捉える。ぶちのめされた戦闘員は二回三回と回転して
宙を舞いたたき落とされ、また稲妻のような蹴りは敵を大きく吹き飛ばす。
426ナナシマン:04/06/07 02:24 ID:OGGWE6HO
 例え敵が武器を持っていたとしても、ダブルライダーの敵ではない。敵の
振り下ろした一撃をライダーののがブロックすると、自慢の手槍はまるで飴の
様に折れ曲がる有様だ。また敵が剣を振るえばクウガは華麗に身をかわし、
当て身を入れて投げ飛ばす。一方では貴子も奮戦して襲い来る戦闘員を叩き伏せ、
あっという間に戦闘員達は3人の手によって倒されてしまっていた。

 「ぐぬううう、こうなったら俺が相手だ。来い、ライダー!」

 「いくぞ!」

鋭いハサミを突きつけて見得を切ると、ザリガーナはダブルライダーに向かって
駆けだした。まずはライダーののが受けて立ち、襲い来るザリガーナの一撃を
捌いてパンチを繰り出す。だが、その一撃が怪人のボディを捉えても敵は怯む
様子もない。

 「俺様の身体にその程度のパンチが効くとでも思ったか」

 「しょんな・・・なんて固い身体なんれしょう」

ヨロイ軍団のトレードマークとも言うべき、体表の頑強さもさすがはザリガーナ
他の軍団員を圧倒する強度を誇っているようだ。ライダーのののパンチが通じて
いない。さらにライダーののは攻撃を繰り出すが、やはりその固い身体の前に
歯が立たない状態だ。
427ナナシマン:04/06/07 02:26 ID:OGGWE6HO
 「・・・気が済むまでやってみろ。俺には効かんがな」

 ライダーののの攻撃が通じない。二人の戦いに割り込めないままその様子を
見つめているクウガ〜亜依。と、その時彼女の脳裏によぎったのはまたしても
古代の戦士の姿。それは霊石アマダムの記憶。先史時代を戦い抜いた、
先代クウガの戦いの記憶だった。


 イメージは告げる。クウガの前に現れたのは、鋼のような肉体を誇る異形の者
だった。敵の肉体の前にクウガの攻撃が通じない。と、その時クウガの身体に
異変が起きた。光に包まれたその直後、再び現れたその姿は紛れもなくクウガで
あったが、古代のプロテクターとも言うべき生体鎧の色は彼女の知る金色と赤
ではなく銀色と紫色をしており、そしてその身体には変化が起きる前よりも圧倒的
な力強さが漲っている。そして、その手に握られているのは光り輝く大剣だった。

 『邪悪なる者あらば鋼の鎧を身につけ、地割れの如く邪悪を切り裂く戦士あり』

霊石の告げる古の伝承。超変身の時が来た。
428ナナシマン:04/06/07 02:27 ID:OGGWE6HO
 今日の分は以上です。続きはまた明日。
429ナナシマン:04/06/08 02:58 ID:E1zuz86g
 「超変身!」

 構えと共に天に叫ぶクウガ。その身体を包み込む閃光がほとばしる。その
あまりのまぶしさに怯むザリガーナ。

 「ううっ!」

 無二の親友である亜依のもう一つの姿、仮面ライダークウガ。ライダーのの
こと希美はその光景を固唾をのんで見守っていた。

 (あいぼん・・・)

 光の収束と共に姿を見せたのは、紫色の生体鎧で身を固めた戦士。クウガの
新しい力、「タイタンフォーム」だ。タイタンフォームはスピードこそ通常の
マイティフォームに劣るものの、そのパワーと耐久力は数倍になるのである。

 「・・・何かと思えば、姿が多少変わったくらいで何だというのだ。それ
しきのことで俺に勝てると思うのか」

クウガの変化に一瞬たじろいだザリガーナだったが、彼はまだクウガの身に
起きた変化を感じ取れているはずはなく、その戦意は少しも衰えてはいない。
それどころかこの台詞である。拳を握りしめたライダーののが前に歩み出て
再びザリガーナと一戦交えようとするが、クウガがそれを制する。そして
傍らに落ちていた戦闘員の剣を拾い上げた。すると、それは見る間に光輝く
大剣「タイタンソード」へと姿を変えた。まさにイメージのままの光景だ。
しかし、それだけではない。ZXとの戦いの時のように、刀身にほとばしるのは
あの金色の稲妻、ライジングパワーだ。
430ナナシマン:04/06/08 03:01 ID:E1zuz86g
「なっ?!」

 ハサミをかざして身構えるザリガーナに対して、タイタンフォームのクウガ
はゆっくりと歩み寄る。全くの無防備状態に、この機を逃すまいとザリガーナ
は一気に間合いを詰めて襲いかかる。

 「バカが、死にに来たか!これでも喰らえ!」

巨大なハサミがクウガの頭部を捉えんばかりに振り下ろされるが、この攻撃を
タイタンソードでがっちりと受け止める。これに対してザリガーナはさらに
体重を掛けて圧力を加えていくが、クウガはこの攻撃を真っ正面から受け止めて
微動だにしない。

 「まさか!!あり得ん」

 「どうしたん?もっと押してみ?」

ザリガーナの猛攻にも余裕の表情といった風のクウガ。倍加した防御力とパワー
で、怪人の攻撃をほとんど無効化している。しかしクウガも押されっぱなしと
言うわけにはいかない。漲る力でザリガーナのハサミを押し返すと、そのまま
体をかわしてザリガーナの後ろを取る。

 「何ぃっ!!」

狼狽する怪人の背中を、クウガのタイタンソードが襲う。ザリガーナの背中に
張り付いた巨大な甲羅を一太刀ではぎ取る。さらにそのままなすすべ無く
身を翻すだけのザリガーナを返す刀で一息に刺し貫く必殺の一撃。タイタン
フォームの必殺技「カラミティタイタン」が炸裂したのだ。
431ナナシマン:04/06/08 03:05 ID:E1zuz86g
 「グワァァッ!!」

 敵の土手っ腹を刺し貫く剣からほとばしるライジングパワー。クウガが勢いよく
刀身を引き抜くと、ザリガーナの腹部から火花が飛び散る。ライジングパワーが
怪人のボディを内部から破壊しているのだろう。と、その時ザリガーナの姿がまるで
陽炎のように揺らぐと、一瞬だけ赤銅の鎧に身を包んだ男の姿へと変化した。

 「まさか、あの怪人は・・・!」

その光景を目撃したアヤカが叫ぶ。一瞬だけかいま見えたその姿は、彼女たちが
憎むある男の姿に酷似していた。だが、ザリガーナの姿が変化したのはその一瞬で
再びその姿は元のザリガニの怪人へと戻った。

 「クソッ・・・勝負は預けた!!」

 敵わぬとみたザリガーナは、死力を振り絞ってものすごい勢いでアスファルトを
ハサミで掘り返すとあっという間に地中に姿を消す。基地に逃げ帰って修理を受ける
つもりなのだろう。立ちこめる土煙の中ライダーののの声が聞こえる。
432ナナシマン:04/06/08 03:06 ID:E1zuz86g
「あいぼん、敵が!!」 

 「判ってる!」

ザリガーナが遁走を決めもうとしていたのはクウガにも判っていた。おもむろに
タイタンソードを構えたクウガは、足下に伝わる地響きの方向を超感覚で感知すると
そのまま大上段に振り上げ、渾身の力で振り下ろした。タイタンソードの一降りが
うなりを上げて大地を砕く。その衝撃波は地中を逃走するザリガーナを追うかのように
伝搬し、そして遂に敵の姿を捉え地中で一刀のもとに両断した。

 「グッ・・・グワァァァァ!!」

遙か前方から吹き上がる土煙。ライジングパワーが逃げる怪人を地中で完全に破壊し、
ザリガーナが再び地上にその姿を現すことはなかった。
433ナナシマン:04/06/08 03:08 ID:E1zuz86g
× ザリガーナが遁走を決めもうと
○ ザリガーナが遁走を決め込もうと

です。失礼いたしました。続きはまた。
434ねぇ、名乗って:04/06/10 23:49 ID:2IIS5Zqm
保全
435ナナシマン:04/06/11 11:20 ID:8nPUkqNP
 台風の関係でちょっと続きの方が用意できていません。つきまして、明日まで
お休みさせて頂きたく思います。続きは日曜日から再開いたします。
436ナナシマン:04/06/13 23:22 ID:hlWfWVlG
 そして舞台は再び埠頭へと移る。時あたかも3人ライダーを取り囲む悪の
軍団がその包囲の輪を狭めていこうとしていた。アクアラングマン達を加えて
数の上では圧倒的優位の怪人軍団は、その優位のまま勝負を決するべく身構える。
思いがけず援軍を得る形となったゼティマ怪人にも勢いが戻ってきたかといった
ふうである。

 「ライダー共め、ここがお前達の墓場だ」

 「ベルトは我らシャドウのもの・・・者共かかれ!!」

シャドウナイトの命令と共に、取り囲むアクアラングマン達が一斉に襲いかかる。
その後を吸血カメレオンとコウモリフランケンが続き3人に襲いかかる。そして
シャドウナイトは高見の見物を決め込む。

 「二人とも・・・いくよ?」

V3の言葉にXとファイズが応え、ここに怪人達との戦いが始まった。互いに相手
を見定め、両者正面からぶつかり合う。
437ナナシマン:04/06/13 23:33 ID:hlWfWVlG
 打ちかかる吸血カメレオンを軽くいなし、肩車に担ぎ上げたそのままの勢いで
猛回転。怪人の平衡感覚を奪う飛行機投げを食らわす。普通の人間でもこれだけの
勢いで回転すれば目が回ってしまう程のスピードでぶん回されれば、さしもの
ゼティマの改造人間も形無しだ。

 「うええええっ、目が回るぅ」

 ただでさえ巨大な眼球がせわしく左右非対称に動き回ったかと思うと、今度は
激しくぐるぐると回転する。電子頭脳の平衡感覚を司る部分は致命的なダメージ
を受けたようだ。

 「とうっ!!」

ようやくV3は担いでいた吸血カメレオンを空中高く放り捨てる。手足をばたつかせ
ながら宙を舞う吸血カメレオンは、蓄積したダメージに加え平衡感覚を破壊された
ことで完全に反撃の術を失っていた。なすすべ無く顔面から地面に叩き付けられた
カメレオン、ようやく立ち上がるももはや手向かう術も力もない。とどめの一撃を
加えんと、空中高く跳躍するV3。そのまま華麗に3回転すると、十分に延びきった
両足が必殺のキックを繰り出す。

 「V3ィ、フル回転ッキィーック!!」

ジャンプの高度と回転運動、そして完全なキックのフォームが可能にする必殺の
一撃が怪人を捉えると、埠頭から大きく吹き飛ばされた吸血カメレオンは巨大な
水柱とともに海の藻屑と消えた。
438ナナシマン:04/06/13 23:35 ID:hlWfWVlG
今日の分は以上です。続きはまた明日。
439ナナシマン:04/06/15 02:00 ID:UvOr4oEW
 一方アクアラングマン軍団を一手に引き受ける形となったファイズ。ベルトの
事を知っている以上スマートブレインと何らかの関わりがある軍団である事は
容易に想像する事が出来たが、彼女にとって破壊ロボットは全く未知の相手だ。
パンチやキックを繰り出して次々と叩きのめすが、いかんせん戦い方が大ざっぱ
と言おうか、シャドウナイトの言葉などほとんど頭にない様子で相手を海の中
へと叩き込んでしまうのである。そう、その事でアクアラングマンは再びエネルギー
を取り戻し、フルパワーの状態で復活してくるのだ。

 「チッ、こいつらエネルギー切れとかってないのかよ・・・」

ぶちのめすだけぶちのめしても、エネルギー源である海水中に投じてしまえば何の
意味も成さない。さながら使うだけ使った携帯電話のバッテリーを充電するような
もので、みずから戦いを困難にしている事に気づいていないのである。

 「どうした、いっこうに減らないじゃないか。どうやら我ら破壊ロボットの方が
オルフェノクよりも実力は上手だったかな?ウワッハッハッハ」

巨躯を揺すって高笑いするシャドウナイト。逆にスタミナを消耗しつつあるのは
ファイズ〜れいなの方であった。
440ナナシマン:04/06/15 02:13 ID:UvOr4oEW
 一方、コウモリフランケンとXライダーの因縁の戦いは両者互角の展開となって
いた。怪人の振り下ろす豪腕を素早い身のこなしでかわすと、Xライダーは敵の
胸板にチョップを叩き込む。しかしコウモリフランケンはその一撃にも怯むことなく
再び大振りのパンチを繰り出してきた。腕力は強い怪人なのか、その一撃はなかなか
に重い。受けるXライダーも徐々に膝を屈していかざるを得ないほどだ。

 「どうしたライダー、技を受けるだけでは俺には勝てないぞ」

 (・・・なかなか重い一撃やけど、ここで負けるわけには・・・!)

コウモリフランケンが全体重を乗せて振り下ろした一撃を受け止めたXは、負けて
なるかとばかりにその腕を取り、巴投げの要領で後方へと投げ捨てた。しかし、そこ
はコウモリフランケンの名の通り、空中で翼をはためかせて体勢を整えると、そのまま
宙を舞い始めた。

 「俺の大砲であの世へいけ!」

そういうや、コウモリフランケンの背中の大砲がいきなり火を噴いた。次々とXライダー
めがけて撃ち込まれる砲弾が、岸壁を穿ち爆風を巻き起こす。

 「コウモリフランケン、卑怯やよ!」

 「卑怯なのが我らの信条よ、文句があるか!」

巻き起こる土煙の中、はたしてXライダーには空中の敵をただ見上げるしか術がない
のだろうか。
441ナナシマン:04/06/15 02:20 ID:UvOr4oEW
今日の分は以上です。続きはまた明日。
442ナナシマン:04/06/16 21:41 ID:Xr5vZibP
 「Xライダー、そろそろケリをつけてやる」

そう言うとコウモリフランケンは急降下して地上のXライダーに襲いかかろうと空中に
浮遊する。怪人が空からの体当たりを敢行しようと身構えた、その時だ。

 「うけてみろ、ネットアーム!」

何者かの声と共に空中に放たれるネット。それはたちまちコウモリフランケンの身体を
絡め取ってしまった。

 「ぬおっ、なんだこれは!!」

絡まったネットが次第に怪人の動きを封じ込めていく。羽ばたけるうちはまだ良かった
が、コウモリフランケンが張り巡らされたネットの中でもがけばもがくほどに網が
絡まりついには翼の動きを封じてしまった。コウモリフランケンはたちまち失速して
地面にたたき落とされてしまった。

 「ミカさん・・・いや、ライダーマン!!」

愛〜Xライダーの視線の先に立つのは心強い援軍の姿。機械の右腕を振るう正義の戦士
ライダーマンの姿だ。
443ナナシマン:04/06/16 21:47 ID:Xr5vZibP
 「遅れてゴメン」
 
 「そうでもないよ。来てくれてありがとう」

詫びるライダーマンの言葉にXライダーが応え、戦況は2対1。しかし、先ほどまでの
優位が頼みかコウモリフランケンは動じる様子もなく、ネットをくぐって姿を見せると
高笑いと共に言い放った。

 「ハッハッハ。何人に増えようと同じ事だ。俺だけではない、あそこではシャドウの
奴らが押し気味に戦っているし、アポロガイストも控えているのだからな」

数の上では未だゼティマ軍団有利。コウモリフランケンとアポロガイストは未だ健在、
そしてまだファイズとシャドウ破壊ロボット部隊との戦いは続いているのだ。と、そこに
またしても何者かが姿を現した。突如鳴り響く、あまりにも場違いなトランペットの調べ。
そしてそれに寄り添うようにして聞こえてくるギターの音色。

 「な・・・何者だ?!」

突然の出来事に周囲を見回す悪の軍団。ファイズと交戦していたはずのアクアラングマン
でさえも、突然の乱入者の姿を探し始めた。

 「ひょっとして?!」

聞こえてきた調べにある少女の姿を連想したファイズ〜れいな。V3もXも、ライダーマン
も同じ少女達を連想していた。そして、2つの影が倉庫の屋根の上に立つ。
444ナナシマン:04/06/16 21:48 ID:Xr5vZibP
ちょっとこれから私用ありまして、今日の分は以上です。
445ねぇ、名乗って:04/06/17 15:12 ID:LLXDtHmv
あ〜〜〜〜!!
続きが気になる〜〜〜。
446ナナシマン:04/06/17 21:15 ID:st8ucHyg
誠に申し訳ありません。今後の展開においてちょっと考証したい事がありまして
今日の更新をお休みさせて頂きます。

>>445
 ありがとうごさいます。しかしながら上記の理由で今日の分はお休みさせて
頂く事になりました。申し訳ありません。
447445:04/06/18 09:40 ID:7B08KWx2
>>446
マタ〜リ待ってます。
448ねぇ、名乗って:04/06/22 00:45 ID:IX2efoTG
保全しとく
449ナナシマン:04/06/22 23:41 ID:DWVj4yvy
 「貴様・・・やはり生きていたか!」

 倉庫の上に立つ影を見上げる巨大な目玉。シャドウナイトは二人の少女に覚えが
あった。一人は情報として、そしてもう一人とは実際に遭遇している。少女達は
身を躍らせて敵の輪の中に飛び込むと、手当たり次第に取り囲むアクアラングマン
達を殴り倒す。

 「あっ、あの時の?!」

ファイズ〜れいなの脳裏に蘇る記憶。人造人間の少女、まい。そしてまたの名を
キカイダー01。

 「また会ったね。奇遇じゃん」

二人が一瞬視線を交わしたところで、今度はもう一人の少女、キカイダーこと
ひとみが二人の間に入る。彼女にとっては同族とも言うべきロボットとの戦いは
気の進まぬところがある様子だが、それでもこの戦いを避けて通るわけには
いかない。一瞬だけ浮かべた淋しげな表情が、敵の姿を見るや決意の表情に変わり
振るった拳が敵の身体を打ち抜く。しかしアクアラングマンの数を大きく減らす
までには至らない。二人は互いに視線を交わして頷くと、戦闘モードにチェンジ
するべく身構えた。
450ナナシマン:04/06/22 23:43 ID:DWVj4yvy
「チェインジ、スイッチオン!ワン、ツー、スリー!!」

ひとみのかけ声とともに両肩のスイッチが押され、大きく跳躍した身体が極彩色
の光に包まれる。そして、まいもまた戦闘モードへとチェンジするべく叫ぶ。

 「チェンジキカイダー、ゼロ!ワン!!」

かけ声と共に顔の前で交差した腕を開く。閃光と共に跳躍する2つのボディは
少女を戦う機械の姿に変えた。閃光の収束と共に現れたのは2体の人造人間、
キカイダーとキカイダー01。

 「ええい、ギアとこやつらの首、両方いただきよ!やれ!!」

シャドウナイトの命令と共に襲いかかるアクアラングマン達。二人の人造人間も
正面からこれを迎え撃つ。正邪相打つ熾烈な戦いの中で、やがて両者拮抗していた
戦いのバランスはキカイダー有利の展開になっていた。殴られ、蹴り倒された
アクアラングマンはわずかに微動しただけで動きを停止し爆発、消滅したのだ。

 実はこの時、敵は図らずもその弱点を露呈していた。実はこのアクアラングマン、
海水からエネルギーを得るものの地上においてはその消耗は極端に早く、その都度
海水からエネルギーを得なければならないのである。
 ファイズが片っ端から海に叩き込んでいるうちはエネルギー充填の機会があったが
キカイダー達との戦いにおいては全くその機会が与えられず、ついにエネルギーが
消耗しだしたのだ。

 「海水からエネルギーを得られなければ、私たちの敵じゃない!」

 水平に振るった手刀で敵の腕を吹き飛ばしたキカイダーは、この事態に戸惑う
シャドウナイトに向かって言い放つ。一方の01もアクアラングマンの一体を
飛行機投げに捉え、とどめとばかりに腕の機銃を一斉掃射して敵の群れを打ち抜いた。
451ナナシマン:04/06/22 23:44 ID:DWVj4yvy
 予定よりも遅くなって申し訳ありません。今日の分は以上です。
452ねぇ、名乗って:04/06/25 19:31 ID:UzcZha9O
保全
453ねぇ、名乗って:04/06/26 10:59 ID:wLDVJ4GE
保全
454ナナシマン :04/06/26 16:05 ID:u5OCYw6S
ネット環境の不調で今日まで更新ができませんでしたが、カフェから
更新します。
455ナナシマン :04/06/26 16:09 ID:u5OCYw6S
 この攻撃に続いてキカイダーが空中へと身を躍らせると、高空からの必殺技が
敵を襲う。クロスした両腕が左右に振り下ろされるのと同時にほとばしるエネルギー
が敵の身体を打ち砕く。

 「デン・ジ・エーンド!」

必殺の電磁エンドがアクアラングマンを粉砕したその直後、今度は01の必殺技が
炸裂する。

 「ブラストエンド!」

二人の人造人間の大技がアクアラングマンを一撃の下に葬り去った。バラバラと
砕け散るのは先ほどまで破壊ロボットだった者の残骸。しかしアクアラングマン達
もまた、ひるむことなく次々と二人に襲い掛かる。

 そしてファイズも二人に加勢するべく反撃に出ようとしていた。右手に握られて
いたのは絵里から手渡されたあのファイズアクセル。その時一瞬脳裏をよぎった
のは、あのクレインオルフェノクとの戦いにおける大破壊の光景であった。

 (・・あん時はやりすぎたからなぁ。でも、今これを使わないでいつ使う?)

戸惑いはあったが、今はやるしかない。ファイズアクセルを装着、そしてミッション
メモリを換装すると胸部のフルメタルラングが展開しファイズはアクセルフォームへと
二段変身を遂げた。
456ナナシマン :04/06/26 16:10 ID:u5OCYw6S
 『Start Up』

電子音声とともに銀色の閃光が地を駆ける。目にもとまらぬスピードでアクアラングマン
達に一撃を加えていくファイズ。残り時間のカウントはまだ余裕がある。となれば、
目指す相手はただ一人。必殺の一撃を放つために身構えるファイズ。ファイズポインター
を足に装着するその姿さえ肉眼ではまず捉えられない程の早さだ。


 「何?一体何だアレは?」

 ファイズの標的はシャドウナイト。そのスピードは彼の目をもってしても、かろうじて
捉える事が出来る程度なのだ。高速移動、そして破壊力の倍加。
アクセルフォームと化したファイズの攻撃をまともに食らえばシャドウナイトとてタダ
では済まない。

 「はぁぁぁっ!!」

跳躍するファイズの姿がようやく空中で発見できた時、すでにその蹴り足から放たれた
円錐状の赤い光がシャドウナイトを捉えていた。

 「ぐっ・・・まさか!!」

 もはやシャドウナイトに逃れる術はない、そう思われたその時。突如どこからともなく
延びてきた、まるでムカデの様な鞭がシャドウナイトの身体に巻き付くとそのまま彼を
大きく空中へと放り投げた。そしてアクセルフォームのファイズはその突然の出来事に
よって攻撃目標を見失い、必殺のクリムゾンスマッシュは不発に終った。その蹴り足が
埠頭のコンクリートを穿つ。巻き起こる土煙と衝撃波が周囲に走り、巻き込まれた
アクアラングマンの一団が次々と爆発していく。かくしてひとみとまいの活躍、そして
ファイズの必殺の一撃によってアクアラングマン部隊は壊滅したが、シャドウナイトを
救った者ははたして誰なのか。
457ナナシマン :04/06/26 16:11 ID:u5OCYw6S
 『所詮ロボットはロボット・・・ギアに手を出すのはやめておいた方が身のため
ですよ?』

 巻き起こった土煙が収まった頃、不敵な言葉と共に姿を現したのはムカデの姿を
持つ異形の者。琢磨逸郎が化身するオルフェノク、センチピードオルフェノクだ。
思わぬ形で危機を救われたシャドウナイトだったが、オルフェノクは反目している
相手である。当然ながら恩義など感じるはずはない。

 「貸しを作ったつもりか?!俺の力でもどうにかなったものを!」

 『まぁ、そう言う事にしておいてあげますよ。それより・・・』

そう言いかけてセンチピードオルフェノクはファイズの方を見る。ちょうどその時
アクセルフォームのタイムアウトが訪れ、その姿が元に戻った瞬間だった。

 『ボーっとしている暇はないんじゃないですかねぇ?!』

 言うやいなやセンチピードオルフェノクはまたも鞭を振るい、その一撃は的確に
ファイズのベルトを狙い、これをたたき落とす。
458ナナシマン :04/06/26 16:13 ID:u5OCYw6S
 「うぁっ!!」

 強制的にベルトを脱着された事でその身体は閃光に包まれ、光の収束と共に
倒れ伏した一人の少女だけを残した。
 
 「手間を取らせてくれるお嬢さんだ・・・」

人間の姿に戻った琢磨の手がベルトに伸びようとしたその時、今度はダブルライダー
が駆けつけて立ちはだかる。

 「それをもって何処へ行くつもりや?」

 「悪い事は言わないれす、おいて行きなさい!!」

 身構える二人の戦士を前にしてさしもの琢磨も状況不利と見たか、一言悪態を
ついて踵を返す。

 「そのベルトはもうしばらくあなた達に・・・預けておきます」

 余裕の口ぶり、しかし引きつった口元には悔しさがにじむ。あと一歩のところで
ベルト強奪に成功するところだったのだが、今回は退却せざるを得ないと悟った
琢磨はシャドウナイトと共に戦線を離脱した。
459ナナシマン :04/06/26 16:13 ID:u5OCYw6S
今日の分は以上です。続きは月曜の夜に。
460ねぇ、名乗って:04/06/27 11:40 ID:GskWzB1M
更新乙です。
461ナナシマン:04/06/28 20:14 ID:0xs/qBH2
 センチピードオルフェノクの攻撃から立ち直ったれいなは、気を失って倒れて
いる少年仮面ライダー隊の元へと駆けていく。その一方で、そろい踏みした5人の
仮面ライダーがGOD機関の怨霊、コウモリフランケンと対峙する。

 「おのれ、ライダー共めが!」

圧倒的不利を負う形となったコウモリフランケンは、一目散に逃げ出そうと翼を
はためかせて舞い上がる。だが、そう易々とこれを許す仮面ライダーではない。
まずはダブルライダーが二人そろって空中高くジャンプする。そして繰り出す
一撃は必殺のライダーダブルキックだ。

 「ライダー、ダブルキーック!!」

必殺の一撃がコウモリフランケンの両腕にヒットする。二人の攻撃で翼を
もぎ取られたコウモリフランケンは、翼だけでなくキックによってその両腕までも
使い物にならなくなったか、力無くだらりとぶら下げたまま、なすすべ無く
身もだえるだけだ。

 そしてV3を先頭にその後ろにライダーマン、さらにライダーあい、ののが並び
その最後列にXライダーが付く。5人ライダーの合体技で怪人を倒そうというのだ。

 「Xライダースーパーファイブキックだ!」

 「おう!!」

V3の言葉に4人が応える。5人の力と心をひとつに合わせた合体技が発動する
時がやってきたのだ。
462ナナシマン:04/06/28 20:15 ID:0xs/qBH2
 まずは4人中後列に陣取ったライダーののがXライダーを前方へと投げ上げる。
さらにライダーあいが、続いてライダーマン、そしてV3が勢いよくXライダーを
投げていく。4人のライダーがXを投げることでエネルギーが発生し、そしてさらに
Xライダーが空中で宙返りをすることでそのエネルギーは倍化、必殺のキックと
なって怪人に炸裂するのだ。

 「Xライダー!スーパーファイブ、キーック!!」

空中から矢のように突き刺さるキック。4人のライダーの力を得て破壊力を増した
必殺の一撃が、轟音とともにコウモリフランケンに炸裂する。

 「ぐおおおおおっ!!」

 Xライダーのキックが怪人の胸板に決まるや、コウモリフランケンはそのまま大きく
吹き飛ばされた。そして立ち上がる事さえできぬまま、大爆発とともに消滅した。


 シャドウの一味が早々と退散、そしてGOD機関の怨みを込めた刺客が打ち負かされ
残るはアポロガイストただ一人。真っ赤な仮面で怒りを隠しても、その言葉にまで
にじむ憤怒の感情は抑えられない。だが、今は彼にとっても勝負の時ではない。

 「軍団の怨み、必ず晴らしてやる・・・覚えていろ!!」

銀色のマントを翻し、アポロガイストも無念の退却となった。かくして、埠頭に現れた
すべての悪の勢力はここに姿を消したのである。戦いを終えて一所に集まり、互いに
勝利を喜び合う戦士たち。と、そこに一台のクーペが猛スピードで走ってくるのが
見えた。程なくしてけたたましいブレーキ音とともに停車した車から降りてきた女性が
二人。それはアヤカと貴子の二人だったが、彼女たちは戦士たちに、驚くべき知らせを
携えてやってきたのだ。
463ナナシマン:04/06/28 20:16 ID:0xs/qBH2
今日の分は以上です。今回のお話もいよいよ終わりに近づいてきました。続きは
また今度。
464ねぇ、名乗って:04/06/28 21:16 ID:xhnWx7Al
更新乙です。
ワクワクしますな〜。
465ナナシマン:04/07/02 15:30 ID:Xbigg3m6
 戦いを終えてひとまず変身を解いた少女達の前に、あわただしく車を降りてきた
のは貴子とアヤカの二人だった。

 「みんな大変や!ヨロイ元帥がゼティマ軍団総攻撃を企んでる!」

車を降りるなり発せられたのは、貴子のこの言葉だった。さらに彼女の言葉を補う
かの如くアヤカがそれに続く。

 「蠍谷のプルトンロケット発射基地からの攻撃が成功したのを合図に、東京中で
改造人間達が破壊活動を開始するらしいの」

 古代の遺物ゴウラムがクウガの力を呼び覚ました直後、ダブルライダーの後を追う
二人はその道すがらに驚くべき通信を受信した。それは彼女たちの味方が二人に
知らせた極秘情報だった。

 「蠍谷の基地にいる『ゼティマハンター』のメンバーから連絡があったんや。
発射計画はトラブルで中座しとったらしいけど、故障が直って数時間後にはロケット
発射の準備にかかれるらしいんよ・・・急がな!!」
466ナナシマン:04/07/02 15:37 ID:Xbigg3m6
 ゼティマハンター、それはFBIがゼティマに送り込んだ潜入捜査官達のことである。
その任務は最悪命に関わる危険な内容であり、彼らは命がけの活動によって貴重な
情報をもたらしていたのだ。勇気ある捜査官によって貴子に伝えられた総攻撃計画。
ついにこの恐るべき悪の計画が仮面ライダー達の前に明かされたのである。

 「蠍谷は奴らの拠点の一つです。ワタシ達は組織を脱走する前に一度行った事が
あるから、場所もだいたいなら」

 そう言って少女達を見やるミカ。基地の場所もおよその位置を把握していると
言う。敵は蠍谷にあり。しかしながらこのまま敵と総力戦と言うわけにはいかない。
また、敵の手から救出した少年仮面ライダー隊の少女達をれいな一人に任せる
わけにもいかない。

 そこで真里の提案により、戦いを終えたばかりのひとみとまいをこの場に残し、
後の憂いに備えることにした。貴子達と人造人間の少女達に後を任せると、少女
達〜5人ライダーは爆音をとどろかせて悪の牙城へと走り出すのだった。
467ナナシマン:04/07/02 15:42 ID:Xbigg3m6
 マシンを走らせる5人の少女達。走る車の間を縫うようにすり抜け街から郊外
へ、そして緑の映える曲がりくねった峠道を走る。急がなければプルトンロケット
による東京攻撃が始まってしまう。彼女たちに残された時間はそう多くはない。

 「蠍谷のヨロイ元帥・・・そいつがミカさんの右腕を奪った敵?」

クルーザーを駆る愛が隣を併走するミカに言う。しかし、ミカにとってヨロイ元帥
は単に自分に傷を負わせた相手と言うだけにはとどまらない。

 「右腕だけじゃない・・・仲間の命も奪った男です」

この戦いは、東京を悪の魔手から救うという事にとどまらず、ミカにとっては宿命
の戦いである。憎きヨロイ元帥と決着をつけなければならない。仲間達のため、
そして自らのために。

 (とうとうこの時が来たのね・・・みんなの敵を取る時が)

それは彼女がアメリカに渡るうえで避けては通れない戦いだった。オーパーツの謎
を解明するために自分の力が必要とされている事は承知している。だが、因縁に
決着をつけずして、アメリカに渡る事は出来ない。

 「みんな、がんばろうね?」

真里の言葉に頷く少女達。ミカの決意を知らぬまでも、この戦いが大きな意味を持つ
事は真里自身も理解している。敵の野望を打ち砕かなければ、日本の未来は闇に
閉ざされてしまうのだ。
468ナナシマン:04/07/02 15:44 ID:Xbigg3m6
 マシンは遂に蠍谷付近の登山道へやってきた。道をしばらく進むと、やがて
分かれ道に差し掛かった。少女達は一旦マシンを止めると、2つの道を交互に
見比べている。一方は登山道が続き、そしてもう一方は鎖によって隔絶された、
未舗装の荒れた道。ご丁寧に「危険、立ち入り禁止」などと書かれた立て看板
までが立てかけられている。

 「こっちのが何かあやしいよね・・・」

 「・・・うん」

少女達を見やって呟く亜依の言葉に納得する一同。と、後方から車の近づく
音がする。マシンのミラーに映ったのは怪しげな黒いバン。そこで少女達は
マシン共々身を隠し、そのまま車をやり過ごしてみる事にした。車は少女達に
気づかないのか、速度を落とさずそのままのスピードで道に差し掛かる。そして
一瞬見えた運転席には見覚えのある黒覆面がハンドルを握っていた。

 (あっ!!)

 どういう訳か、車が鎖をすり抜けてそのまま荒れた道の方へと走り抜けていく。
この光景に少女達は鎖が周囲の目を欺くためのカモフラージュ、立体映像の
ようなものだと気づいた。そして、同時に彼女達は車の正体をも察知した。間違い
ない、車に乗っていたのはゼティマの一味だ。そして、その荒れた道こそが、
ヨロイ元帥の待つ蠍谷へと続く唯一の道なのだ。各々黒いバンが走り去っていった
方向を確認すると少女達は再びマシンを駆り、敵の基地へと続く荒れた道を疾走
する。
469ナナシマン:04/07/02 15:46 ID:Xbigg3m6
 しかし、しばらく走ったところで、まるで少女達の行動が敵に露見したかの
ごとく、荒れ地を走るマシンの近くで突如として大爆発が起こる。敵の警備システム
か何かに引っかかってしまったか、大地を揺るがす轟音と共に10メートルにも
達しようかという程の土煙が噴き上がる。

 「まさか、オイラ達もう見つかっちゃった?」

 「どうせ同じれす。乗り込んで行ってやっつけるだけれすよ!」

 敵に見つかろうと見つかるまいと、ここまで来たら大差はない。真里と希美は
互いに言葉を交わすとグリップを握る手に力を込めた。マシンはさらに加速し、
残る少女達も取り残されまいとばかりにスピードを上げて地雷原と化した荒野を
一気に走り抜ける。その間も大爆発は続き、常人ならばマシンのコントロールを
失うほどの衝撃と土煙が少女達を襲った。


 「のこのこ迷い込んで来おって・・・一体何処の馬の骨だ!」

 司令室に映し出された光景を目の当たりにして、苦々しげに吐き捨てるのは
ヨロイ元帥その人である。プルトンロケットのトラブルを解消し、いよいよ作戦
を開始しようとしたその矢先、謎の侵入者によってまたも計画は中座させられた
のだ。元帥は戦闘員に命じ、侵入者の映像を拡大させた。一人一人の顔がハッキリ
と判るに至り、彼は侵入者の正体を確認する事が出来た。

 「誰かと思えばあの小娘どもではないか!ちょうど良い、この蠍谷を奴らの墓場
にしてくれようぞ」

 ライダー抹殺の好機と見たヨロイ元帥は、近くに待機していた戦闘員の一人に
何事かを命じる。基地の外では、少女達が爆煙を抜けて発射基地入り口へと近づき
つつあった。
470ナナシマン:04/07/02 15:48 ID:Xbigg3m6
 今日の分は以上です。ようやくこの話にも終わりが見えてきた様子です。

>>464
 残り時間がわずかとなりまして、やり残しのないようにと思ったら想像
以上の長さになってしまって申し訳ない限りなのですが、お付き合いいただき
ありがとうございます。
471ねぇ、名乗って:04/07/02 17:15 ID:qVd51ZXc
いつも楽しみにしております。
頑張ってください。
472名無しスター:04/07/04 01:15 ID:SY04tFh2
一応保全。

次、誰かあります?
473名無し募集中。。。:04/07/06 23:47 ID:WqBN30jQ
474ねぇ、名乗って:04/07/07 00:36 ID:cn6Oy5Ge
本編とは関係なくパラダイスロストキボン
昔も無かったっけ? アギトかなんかで
475ナナシマン:04/07/07 19:38 ID:fP/zIVRn
しかし、敵もみすみす少女達の侵入を許すはずはない。基地入り口の守りを
固めるのは軍団の戦闘員達。各々が手に武器を構えて侵入者を排除しようと
臨戦態勢だ。そしてその戦闘員達を束ねるのは、かつてライダーに敗れ去った
はずの改造人間達。改造人間はダメージの程度にもよるが、破壊された場所を
修理する事によって復活出来るのだ。大酋長の羽根飾りをまとったサソリの
怪人で、インディアンの勇者ジェロニモの血を引く「サソリジェロニモ」、
大泥棒石川五右衛門の魂を継ぐガマガエルの怪人「ガマゴエモン」、そして
それを束ねるのは悪名高き第三帝国の亡霊。かのアドルフ・ヒトラーの遺伝子を
受け継ぐヒトデの怪人、地獄の独裁者「ヒトデヒットラー」。かつてXライダー
達によって倒された怪人達の怨念はこの蠍谷で蘇った。
 
 「よいか、貴様達は我が輩の指揮下において、命がけでライダー共の前進を
食い止めよ!」

 「イーッ!!」

ステッキを振るい、命令を発するヒトデヒットラー。脇を固めるサソリジェロニモ
とガマゴエモンも槍を振り上げて気勢を上げる。と、その時遠くから響く爆音が
怪人達の耳にも入ってきた。

 「来たぞ!!」

サソリジェロニモが指さす先に見えるのは、5台のライダーマシンを駆る少女達の
姿。戦闘員達を従えて、怪人達が一斉に殺到する。
476ナナシマン:04/07/07 19:39 ID:fP/zIVRn
 「みんな、来たよ!」

 「おう!!」

 対する少女達も怪人達と真っ向勝負だ。真里の言葉に力強く頷くと、マシンの
速度をさらに上げて群がる敵へと全速力で突っ込むと、ライダーマシンが次々と
悪の手先を蹴散らしていく。さらに土煙を上げてスピンターンを決め、舞い散る
砂塵が敵を寄せ付けない。

 「おのれ、怯むな!戦え、戦え!!」

ガマゴエモンが戦闘員達に檄を飛ばし、戦闘員達は再び少女達に殺到する。マシン
から降りた少女達は敵の攻撃に応戦して次々と戦闘員達を叩きのめす。5人を
取り囲むように戦闘員と怪人が円陣を組んで包囲にかかるが、それしきで怯む
彼女たちではない。襲い来る敵をなぎ倒し、相手を見やるなり各々が変身の構えを
取る。

 「変身!」

かけ声も勇ましく、5人が一斉に変身を遂げる。ダブルライダーとV3、そして
ライダーマンとXライダー。5人ライダーは取り囲む戦闘員達を次々と叩きのめして
基地の入り口を目指す。一人また一人と戦闘員達が倒されていく中で、捲土重来を
期して三大怪人も戦いを挑む。

 「ここから先は我が輩達が通さんぞ!」

 「そっちがその気なら、押し通るまでや!!」

ライダーあいのパンチが火を噴くと、ヒトデヒットラーの顔面を直撃。出鼻を
くじかれた怪人はよろよろと後退する。あわてて残りの二大怪人がライダー
に挑みかかるが、手にした槍は振りかざすも空を切るばかりだ。
477ナナシマン:04/07/07 19:40 ID:fP/zIVRn
 「愛ちゃん、いくよ!」

 「はい!」 
 
 ライダーマンがサソリジェロニモを、そしてXがガマゴエモンの腕をガッチリと
捉え、プロレス技のハンマースルーの要領でそのまま勢いよくぶん投げる。勢い
を自力で止められない怪人は、同士討ちを避けられず互いにぶつかり合う。

 「ぐえっ!」

 「ぎゃっ!!」

 鉢合わせになった怪人同士、前後不覚に陥ったかふらふらと足取りもおぼつかない。
そこへ二人のライダーが敵から奪い取った武器を投げつけると、槍は容易く二大怪人
を刺し貫いた。二人まとめて串刺しになったまま、横倒しになったガマゴエモンと
サソリジェロニモはなすすべもなく倒れ伏すと、爆風と共に消滅した。
 こうなると残るはヒトデヒットラーだけ。しかし彼もまたV3とダブルライダー
の3人がかりの猛攻でグロッキーに陥ってしまった。V3がとどめの飛行機投げを
喰らわすと、三大怪人は良いところ無く爆風の彼方に消えた。


 「ええい役立たず共が・・・何をしておるのだ!!」

 戦いの様子をモニターで見ながら、歯がみするヨロイ元帥。その間にも、5人
ライダーは入り口を守る部隊を蹴散らして基地内部に潜入した。
478ナナシマン:04/07/07 19:40 ID:fP/zIVRn
 基地の内部でも5人の戦いは続いていた。行く手を阻むは元帥配下の軍団員。
再生怪人に率いられた戦闘員達が果敢に5人ライダーに戦いを挑むが、もはや
ライダー達の敵ではない。寄せ来る敵を打ち倒す5人ライダーの姿に元帥の
怒りと焦燥感は頂点に達しようとしていた。

 「ええいお前達!何とかしろ、何とかしろぉぉぉ!!」

わめき散らす元帥に右往左往する戦闘員達。こうなると科学者達もロケット発射
準備どころの話ではない。と、その時だ。管制室の赤いランプが点滅し、地の
底から響くかのような支配者の声が響き渡る。

 『何を取り乱しておるか、ヨロイ元帥』

声の主はゼティマ首領その人であった。その声にはじかれたように恭しく跪いて
みせるヨロイ元帥。

 『Z計画の進捗状況をと思ったが、みすみす奴らの侵入を許すとは一体何を
しておるのだ!』

 「もっ・・・申し訳ございません!!」

弁解の余地もなく、ただひれ伏すばかりのヨロイ元帥。
479ナナシマン:04/07/07 19:41 ID:fP/zIVRn
『この失地を回復できなければ、命はないと思うがよい!』

 首領の最後通告。怒気のにじむ声に顔面蒼白のヨロイ元帥。この期に及んで
仮面ライダーの手で作戦が失敗しようものならば、元帥の命はない。赤い
ランプの点滅が収まった時、元帥は決意と共に立ち上がった。

 一方、5人ライダーは管制室を目指していた。プルトンロケットのコントロール
システムを破壊すれば、打ち上げそのものを阻止する事が出来るからだ。守りを
固める敵の軍団は未だにライダー達に対して抵抗を続けていたが、5人を止める
だけの力は無かった。
 戦いのさなか、ライダーマンは窓に映るロケット群を見た。屹立する悪魔の
兵器は発射の時を待っている。仮に5人が管制室にたどり着いたとしても、
ヨロイ元帥がスイッチを押せばロケットは東京に向かって発射されてしまう。
すべてが発射される必要はない。一基でも発射、着弾すれば日本は大パニックに
陥ってしまうだろう。最も近いところにある一基が発射準備を終えた状態だと
察知したライダーマンは、ある決意を胸に戦線を離脱すると、ロケットへ延びる
ブリッジへと駆けだした。

 「ライダーマン・・・ミカちゃん?!」

 「ワタシにはやる事があります!みんなは早くヨロイ元帥のところへ!!」

そう叫ぶと、V3の声にも振り返らずライダーマンはロケットを目指す。一方
4人のライダーも迫り来る敵を退け、遂に管制室へとたどり着いた。
480ナナシマン:04/07/07 19:51 ID:fP/zIVRn
 今日の分は以上です。次回更新で今回のお話は終了です。それと同時に今作
が僕が日本で書く最後のストーリーということになります。

>>471
 欲をかきすぎて話がかつてないほど長くなってしまったのがまことに申し訳
ないところなのですが、いよいよあと一回となりました。もうしばらくお付き合い
いただけましたら幸いです。

>>474
 「パラダイスロスト」は映画の方も好きな作品でしたので、僕も実現すると
いいなと思ってます。
481名無し@携帯:04/07/08 10:22 ID:dKk3YIl5
エエエエェェェエエエエ
『日本で書く最後って』、ホントですか? あっ、でも2chは止めないですよね。
では最後の更新楽しみに待ってます。
482名無し募集中。。。:04/07/10 23:51 ID:KXH2n18X
保全
483ナナシマン:04/07/11 21:48 ID:Lzia3IjR
 管制室の扉が機械の駆動する音とともにゆっくりと開く。4人ライダーは
警戒心と共に扉の向こうへと身を躍らせた。管制システムがランプを明滅させ
ながら不気味に稼働している薄暗い部屋に、銀色のマントをまとった一人の
男が立っている。

 「お前がヨロイ元帥だな!観念しろ!!」

 「ロケットの発射を止めるのれす!!」

V3とライダーののの言葉に、男〜ヨロイ元帥は不気味に笑って答えた。

 「良く来たな仮面ライダー。だが残念ながらもう手遅れだ。プルトンロケット
の発射準備はもう出来ている。『Z計画』はロケット一基でも十分可能だ」

4人のライダーを見やったまま、笑みと共に元帥はロケット発射スイッチに指を
伸ばす。ライダー達の制止にも耳を貸さず元帥は躊躇なくスイッチを押すと
さらにそのそばにある、特殊ガラスによってシールドされたスイッチに視線を移す。

 「まさか?!」

 「自爆スイッチだ・・・ゼティマの栄光と共にこの基地は役目を終えるのだ」

 ライダーあいの言葉に答えた元帥はシールドを叩き割る。そのままスイッチが
作動するや時限爆弾の起動をタイマーが告げ、その直後地鳴りのような音が
鳴り響く。それと同時に基地全体を地震のような揺れが襲う。
484ナナシマン:04/07/11 21:49 ID:Lzia3IjR
 「ロケットのエンジンが点火したようだな。もう誰も止められんぞ」

 ロケット基地を監視していたモニターをスイッチで切り替える元帥。そこに
映し出されていたのは、ジェットの炎を吹き上げながら上昇していくロケットの
様子だった。

 「遅かったか!!」

ゆっくりと上昇するロケットの様子を目の前にして、口惜しさに目をそらす
Xライダー。無念の思いは他のライダーも同じだ。一人ヨロイ元帥だけが狂気の
笑みをたたえてこの様子を見守っている。その間にも基地爆破の時は迫り、戦い
空しく仮面ライダーと東京に最後の時が訪れようとしていた、その時だった。

 『お前の思い通りにはいかないぞ、ヨロイ元帥!!』

突然場面が切り替わり、モニターに映し出されたのは操縦席のような場所だった。
そしてそこにいたのは、誰あろうライダーマンだった。

 「ライダーマン!!」

 「ミカ・トッド・・・貴様ァ、最後まで俺の邪魔をするつもりか!!」

驚きの声を上げる仲間達と、悪罵の言葉を浴びせるヨロイ元帥。その両者へ、
ライダーマンは笑みと共に言う。その手には中で引き抜いたと思われるコネクタが
握られている。

 『ロケットのコントロールはワタシが掌握した。プルトンロケットが東京に
打ち込まれる事はない!』
485ナナシマン:04/07/11 21:49 ID:Lzia3IjR
 今やプルトンロケットは、操縦席にいるライダーマンだけがコントロール
できる状態にあった。

 『東京に着弾する前に蠍谷上空で爆破すれば、計画は阻止できる。これは
ゼティマの一員だったワタシの仕事』

操縦桿を握る手に力を込め、ライダーマンは落ち着いた口調で管制室の仲間
達に語りかけた。

 「そんなことしたらライダーマン、いやミカちゃんはどうなるのさ?!」

モニターに映るライダーマンに向かって叫ぶV3。しかし、その言葉はすでに
仮面ライダーのものではなかった。

 『・・・サヨナラはしなきゃならなかったんです。それが早まっただけ』

ロケットの上昇と共にライダーマンの身体に強大な重力がかかる。それは
元々腕のみを改造しただけに過ぎない生身の身体には耐え難いものだった。
歯を食いしばって重力に耐える姿、その決意と覚悟が仲間達の胸を刺す。
やがて最終ゲートが開くと、いよいよロケットは推力を増して大空へと
飛び出していった。
486ナナシマン:04/07/11 21:52 ID:Lzia3IjR
 今日の分は以上です。実はラストがまだ仕上がっていないので、あと一回だけ
続きます。続きは13日の夜くらいに。

>>481
 三ヶ月ばっかし中東に行って来ます。
487ねぇ、名乗って:04/07/12 00:35 ID:DMrJkGWq
更新お疲れ様です。
中東ですか。無事に帰ってきて下さいね。
488名無し募集中。。。:04/07/13 18:45 ID:bOPEmz2m
いちよう保全
489名無し海士長:04/07/13 23:17 ID:JSj2hc3L
久しぶりにカキコします
ナナシマンさん
>三ヶ月ばかし中東に行って来ます。
中東ですか、ご苦労様ですお気をつけて帰ってきてくださいね
490ナナシマン:04/07/14 00:06 ID:3+RKZera
 (・・・ごめんなさい。これはワタシがどうしてもやらなければならない
事。アメリカの夏先生、レフア、ワタシにもし命があったら、その時は) 

 ゼティマの一員であったことは、常に彼女の心に負い目として存在していた。
自分の研究が多くの人の命をあやめたことに、常に彼女は苛まれていた。自分の
命を捧げたところで、失われた命が帰る事はないだろう。それでも自らの罪を
償おうと、覚悟と共にスロットルを引くライダーマン。ロケットは上昇を続け、
その振動と強い重力は押しつぶさんばかりに狭い操縦室に襲い来る。そのせいか
操縦室はやがて火に包まれ、内部のコントロールパネル付近では小さな爆発が
起こる。操縦桿を握るライダーマンの手元辺りでも爆発は起こり、衝撃と炎が
カセットアームにダメージを与える。だが、ライダーマンは決して操縦桿を
離さない。

 「ライダーマン、ミカ・トッドの最期を見ろっ!!」

ライダーマン、ミカの叫びとともに画面は乱れ始め、そして遂に映像がとぎれて
しまった。目の前の映像を制止できず、無言で目をそらす4人ライダーに対して
一人猛り狂うヨロイ元帥は狂ったように駆けだした。

 「おのれミカ・トッド!許さん、許さんぞ!!」

 「待て!!」

 悪鬼の如き形相で元帥はロケットを追って外へと飛び出していく。4人ライダーも
元帥を追って外へと飛び出した。両者が外へとたどり着いたその直後、地上に轟音が
響き渡る。見上げれば上空に描かれた太い筋雲がその先端ではじけていた。

491ナナシマン:04/07/14 00:07 ID:3+RKZera
 「よくも俺の計画を邪魔してくれたな。生きて帰れると思うなよ」

 怒りのヨロイ元帥は銀色のマントを翻す。と、その下から姿を現したのは、先刻
ダブルライダーによって倒されたあの怪人だった。

 「お前は!!」

身構える4人の仮面ライダーに対し、怪人〜ザリガーナは腕のハサミを打ち振るって
答える。

 「これがヨロイ元帥の正体、そして真のザリガーナよ。かくなる上はお前達の首を
持ち帰らねば引き合わぬ」

 ヨロイ元帥は自らの影武者を用意して作戦の陣頭指揮に当たった。しかし、その
影武者がダブルライダーに敗れた事は彼にとって想定外の出来事であった。Z計画を
阻まれ進退窮まった元帥は、正体をさらけだす事で一か八かの賭けに出たのだ。
しかし、今の4人ライダーには戦いにかける強い意志がある。ライダーマンの最期を
無にするまいと、ザリガーナに敢然と立ち向かう覚悟だ。身構えるライダーのの、
その傍らでベルトに手を掛けるのはライダーあい。再びの超変身で難敵との戦いに
望もうというのだ。

 「超変身!!」

ほとばしる閃光。しかし、それと共に姿を現したのは先ほどとはうって変わり、白い
生体鎧のクウガだった。金色に輝く角も短く弱々しい。その姿は再びの閃光の後、
一瞬にしてライダーあいを通り越し、加護亜依の姿に戻ってしまった。

 「やばっ・・・エネルギー切れ?!」
492ナナシマン:04/07/14 00:09 ID:OE9YBHH0
 「加護さん?!」

 「あいぼんっ」

 突然の出来事に動揺するライダーののとXライダー。ライダーあいからクウガへの
超変身でベルトに蓄えられたエネルギーを消耗しきってしまったのだろうか、亜依の
変身が解除されてしまった。
 その亜依を庇うようにライダーののとXライダーが怪人の前に立ちはだかって
身構えるが、そんな二人を制するように進み出た戦士がいる。4人の中でもひときわ
強い闘志とともに怪人に戦いを挑むのは、仮面ライダーV3だ。

 「ミカちゃんのためにも、コイツだけはおいらの手で倒す!」

 「何をあまっちょろい事を!お前一人で倒せると思ってか!!」

ザリガーナとV3、最終決戦の火ぶたが切って落とされた。腕のハサミの切っ先で
二度三度と空を切りV3を威嚇してみせるザリガーナだが、V3がそれしきの事で
怯むわけがない。敵の攻撃をかいくぐって素早く懐に潜り込み、怪人の腹にパンチを
喰らわせる。
493ナナシマン:04/07/14 00:15 ID:OE9YBHH0
 「バカが。俺は仮にもヨロイ軍団のザリガーナよ。貴様のパンチなど効くものか」

固い装甲は軍団の自慢とばかりに、ザリガーナは外骨格の強度を頼みにV3に対して
プレッシャーを掛けると、腕のハサミをV3の肩口に、背中にと落としていく。

 「どうだV3、俺のハサミの威力を思い知ったか!」

 「V3!!」

不敵な台詞を吐きながら攻撃を繰り出す怪人に対して、打たれ放題のV3を案じる
言葉が口をつくXライダー達。だが次の瞬間、ひときわ大きく振り上げられた一撃
をV3は見逃さなかった。
494ナナシマン:04/07/14 00:17 ID:OE9YBHH0
 愚にも付かない技を数回繰り返したその時、投げつけた破片の一つがV3の
眉間へと飛んだ。しかしV3は容易くそれをキャッチすると、お返しとばかりに
ザリガーナめがけて投げ返す。

 「お前の甲羅だ、返してやる!」

言うが早いか投げ返された甲羅は風を切って飛ぶと怪人の胸板に突き刺さり、
またもザリガーナはうめき声と共によろめく。その直後、両者の戦いに決着を
つけるべくV3が空中へと身を躍らせた。

 「V3ィィッ!反転、キィィィック!」

空中からのキックが怪人の胸板を捉え、突き刺さった甲羅の破片を深く押し込む。
さらに2度目のキックを繰り出すために空中へと跳躍。身を翻したあとにまたも
胸板めがけて必殺のキックを叩き込んだ。

 「グワハァァァーッ!!」

勢いよく吹き飛ばされたザリガーナは地表に叩き付けられる。そしてのたうち回る
その姿が揺らぎ始めると、程なくして元のヨロイ元帥の姿に戻った。そして元帥は
よろめきながらも立ち上がると、おぼつかぬ足取りでゆっくりとV3に向かって
歩み寄る。

 「おのれライダー、よくも・・・よくも」

腕の棘つき鉄球を振り上げて最期の悪あがきを見せるヨロイ元帥。だが、次の瞬間
彼の背中に鋭い痛みが走ると、それはそのまま腹までも突き抜けた。苦悶の表情と
共に目をぎょろりと見開く元帥の視線の下に延びているのは、自らの胴体を刺し貫く
鋭い円月状の刃だった。
495ナナシマン:04/07/14 00:19 ID:OE9YBHH0
 「ガハッ・・・これは・・・」

元帥の胸を刺し貫いていたのは、復讐の右腕カセットアーム。直後元帥の背後から
聞き覚えのある声が聞こえた。

 「ヨロイ元帥。みんなの仇、取らせて貰う!」

 「貴様はぁ・・・生きていたのか?!」

元帥の背後に立っていたのは、コクピットの爆発で千切れたカセットアームを左腕に
縛り付け、血と埃にまみれボロボロになった仮面もそのままに現れたライダーマン
だった。ライダーマン、ミカ・トッドは生きていたのだ。信じられない光景に、
仲間達も己の目を疑った。だが、それは紛れもなく彼女だった。ライダーマンは左腕
にさらに力を込めて言葉を続けた。

 「生きていたんじゃない・・・生かされたの。お前達と戦う事が、ワタシの贖罪
だとみんなが教えてくれたの」
 
 「おっ・・・おのれぇぇぇ」

腹を貫くカセットアームを引き抜こうと足掻くヨロイ元帥。と、その時蠍谷の大地が
大きく揺らぐと、その直後巨大な地割れが発生した。基地の地下で爆発が始まったのだ。

 「報いを受けるときが来たのよ。地獄へ堕ちろ!」

 「何をする!やっ、やめろ!うっ・・・うわぁぁぁぁぁ!!」

ライダーマンは渾身の力でヨロイ元帥を抱え上げると、もがく元帥をそのまま足下の
地割れへと投げ落とす。断末魔の叫び声と共にカセットアームで刺し貫かれたままの
元帥は奈落の底に転落し、やがて爆発のためと思われる巨大な火柱が地割れから
迸った。この瞬間、ついにライダーマン・ミカは怨敵ヨロイ元帥を倒したのだ。
496ナナシマン:04/07/14 00:25 ID:3+RKZera
 夕べ出国の壮行会で酔いつぶれてしまって、最後の最後が書けませんでした。
申し訳ありません。明日の夜、もしくはあさっての午前中でホントに完結です。
497ナナシマン:04/07/15 12:12 ID:2twWKWPj
 憎き敵を討ち果たし、仲間たちの元に戻ってきたライダーマンを駆け寄ってきた仲間
たちが囲む。目の前で見た光景に一度はたたれた一縷の望みが、思いもよらぬ形で
つながっていた。そして、恐るべき悪の野望を打ち砕いただけにとどまらず、その野望の
前に命を落とした仲間たちの仇をとることができたのだ。

 「無事だったんだ!」

 「ぜったい助からへんって思ってたのに」

 死闘を制したV3、そしてその後に亜依が続き、ライダーののとXライダーとも無事を
喜び合う。ボロボロになってほとんど機能しなくなったヘルメットを外し、ミカは大きく
一つ二つ息をつくと、微笑とともに言った。

 「まだ生きてやるべき事があるって事を・・・みんなが教えてくれたから」


と、変身を解いた真里がミカの前に立つ。不思議そうな顔をするミカに、真里は問いかける。

 「ところで、ミカちゃんは自分のことをまだゼティマの一員だって思ってる?」

 「えっ・・・それは・・・」

それは彼女の心に消えずに残っている重い十字架。悪の野望のためとは知らず、自分の理想
を信じて追いかけた果てに待っていた、あまりに大きすぎる罪。そのことが彼女の頭から
離れたことは一度もなかった。
498ナナシマン:04/07/15 12:13 ID:2twWKWPj
 「確かに最初はそうだったかも知れないけど、おいら達仲間じゃん。おいら達みんなこう
思ってるんだよ」

 「何ですか?」

 仲間たちが今、自分のことをどう思っているのか。ミカは真里の言葉を待つ。一方の真里
も一つ息をつくと、笑みとともに言った。


 「おいら達の仲間、『仮面ライダー4号』。ライダーマンにこの名前を贈るよ!」

 「矢口サン・・・」

 互いに抱擁を交わす二人。そしてその様子を見つめる亜依と希美。少女たちの友情が、
いっそう強さを増した瞬間だった。が、一人愛だけは、喜びの中に小さな疑問を感じて
いた。

 「・・・あれ?ねぇ、あっしは?あっしは何号になるの?」

しかし、愛の言葉が目の前の光景が作り出す空気にかき消されてしまっていたのが、
何となく不憫なことではあった。
499ねぇ、名乗って:04/07/15 18:02 ID:jf/DkhvW
更新お疲れ様です。
500ナナシマン:04/07/15 21:01 ID:lvdgOcHP
 もろもろの用事が終わったので再開です。お恥ずかしい話ながらFDを
カフェに置き忘れたっぽいので、しばらくお待ちください。
501ナナシマン:04/07/15 22:00 ID:lvdgOcHP
 数日後。国際線ロビーの一角に少女達の一団がいた。笑顔で言葉を交わす彼女達が
日本の平和を脅かす悪の陰謀を、熾烈な戦いの末に阻止したと誰が気づくだろうか。
小さな体に秘められた、無限の力を誰が知るだろうか。しかし、それは彼女たちが
知っていればいい事なのかもしれない。例え離れていても心は一つ。正義の心と
友との確かな絆を胸に秘め、少女達は旅立つ仲間を見送るために集まったのだ。

 別れの時までのわずかな時間を惜しむように語らう少女達。それは出発案内の
アナウンスが聞こえてきてもなお続いていた。しかし、最終出発を知らせるアナウンス
が別れの時を告げる。

 出発ロビーのガラス窓越しに映る仲間へと、しきりに手を振る少女達。そして誰から
ともなくこんな言葉が聞こえてきた。

 「上に行こうよ!ミカちゃんの乗る飛行機が見えるかもしれない」

 その言葉にはじかれるように少女達は階段を駆け上がり、展望ロビーを目指す。一方
仲間達の声に送られて一人機中の人となった少女もまた、ターミナルの建物が見える
窓側の席に座る。展望ロビーには仲間の少女だけではなく、旅立つ人を見送る人々や
飛行機を見学する人がフェンス際に集まっていた。それでも機中の少女は目を凝らし、
仲間の姿を求めた。するとロビーの一角に、小さな体に見合わず大きなしぐさで手を振る
小さな人影が見える。
502ナナシマン:04/07/15 22:04 ID:lvdgOcHP
すると、せっかく目に付いた仲間達らしき人影が不意にぼやけた。それと同時に、
頬のあたりに緩やかに伝うものに気づいた彼女は、人差し指で拭うと唇をかみ締めた。

 (・・・みんな、本当にありがとう。ワタシは自分のするべきことを終えたら、必ず
帰ってきます。だってワタシは、仮面ライダー4号なんですもの)

一人の少女の決意を乗せて、鋼の翼が徐々にその速度を上げていく。そして機体は彼女に
まるで何かを諭すかのように、騒音とともにゆっくりとした浮揚感を与えた。一方、
展望ロビーでもいよいよ日本を離れていく飛行機を目で追いながら、別れの涙で崩れて
しまいそうな笑顔を支えながら、友の姿を見送る少女達の姿があった。


 ミカ・トッド、またの名をライダーマン。そして、栄光の仮面ライダー4号の名を
贈られた彼女は今、新たな戦いの場へと旅立っていった。自らの前に立ちはだかる謎を
解き明かしたその時、彼女は再びライダーマンとして戻ってくるだろう。日本は未だ、
悪の秘密結社ゼティマによって狙われている。仮面ライダー4号として、彼女が再び敵と
対峙する時はそう遠いことではないだろう。



第57話 「仮面ライダー4号は君だ!」 終
503ナナシマン:04/07/15 22:08 ID:lvdgOcHP
相当な長丁場になってしまった今回の話ですが、ようやく完結させることが
できました。それと同時に、僕の出国もいよいよ迫ってまいりました。
3ヶ月間お目にかかることができないのは申し訳ない限りなのですが、秋に
またお会いできることを願って、今日はこれにて。

504名無し海士長:04/07/15 22:22 ID:zPpvq/W4
ナナシマンさん
>503
>ようやく完結させることができました
お疲れ様です
中東の方に行かれるそうで
なにかと危ない所なのでお気をつけて
無事に戻ってきてください
505川o・-・):04/07/15 23:46 ID:XBNIs6sh
川oTдT)ノ~~<ナナシマンさん、更新お疲れ様です
          気をつけて行ってきてくだい
          そして、無事に帰ってきて下さい
506ナナシマンさん壮行・PL嘘予告:04/07/16 00:54 ID:aTHvlTC/
遠くない未来。どこかの国・・・・
世界は人類の進化形、オルフェノクによって支配されていた。
均衡を崩され、オルフェノクを除く異形の者たちは全て死に絶え、
その中にはあの、仮面ライダー達の姿もあった・・・・・。


さゆみ「私達に必要なのは、新しい武器でも無ければ、帝王のベルトでもないわ!!」

圭織 「・・・・道重、現実を見なさい。
    ファイズは・・・・死んだのよ。あのスマートブレインの総攻撃で!!
    私の変身能力も奪われ、他のライダーや皆も死んだ、あの時に・・・・・」

絵里 「スープのおかわり、もらえるかしら・・・・・
    私はあなた達の何人分も働いてるのよ。食事くらいいいじゃない」

『救世主は・・・・・・この私』


平家 「よし決めた! あたしは今度こそオルフェノクになって、人間を襲いまくるんや!」

麻美 「ごめんなさい。平家さん・・・本気じゃないんです。
    ・・・・・何を・・・・・考えているんですか・・・・・・?」
明日香「私達と同じ夢を持っていた娘、田中れいな。
    彼女が生きていてくれれば、もっと夢に近づけるんだけど・・・・」

『こんな時代だし・・・人間の嫌な面も一杯見たわ・・・・・』
「さゆ・・・・・・ねぇ、さゆ!!!
 何やったっけ? 仮面ライダーは・・・・・闇を切り裂き・・・・」
「光と・・・・平和を・・・・」
「聞こえないったいっ!!!」

「・・・・仮面ライダーは! 闇を切り裂き!! 人間に、光と希望をもたらすのよ!!!」

「きっついわ・・・・さゆの言うことは。大体、救世主とか正義の仮面ライダーとか、
 ガラじゃないったい・・・・」
「できるよれいな! れいななら!!
 だって・・・・れいなは・・・・・れいなだもん。」
本編シリーズとは違う新たなる世界。
そして、新たなるライダー。

仮面ライダーののファイズ パラダイス・ロスト

『絶望は目の前にある。でも、希望もまた、目の前にある。
 
 光を、見失うな』
509名無しスター:04/07/19 22:31 ID:h6JoV6XT
ぼちぼち行きます
510名無しスター:04/07/20 00:35 ID:CBu/7vsH
番外編 首都特別守備隊戦記

「岐路」

511名無しスター:04/07/20 00:36 ID:CBu/7vsH

首相はカメラの前で知らせを待っていた。
顔面には疲れがにじみ、手にした2種類の原稿は汗でじっとりと濡れていた。

ここは首相官邸内の放送室。
連絡1つでNHK、在京キー局はもちろん日本中のTV・ラジオの放送を中断し、緊急放送を行うことができる。

その放送室内には重苦しい空気が流れていた。
時折首相が秘書に目配せをすると、秘書が別室の通信室へと走る。
そして帰ってくると黙って首を横に振る。

こんなやり取りが朝から何十回も、既に6時間以上続いていた。
512名無しスター:04/07/20 00:38 ID:CBu/7vsH
バンッ!

放送室のドアが勢いよく開き、別の秘書が飛び込んできた。
放送室を見渡し、首相の姿を見つけると震えた声で報告した。

「・・・発射されました!」


「・・・だめか!」

首相は下を向き、一瞬苦渋の表情を見せる。
しかしすぐに顔を上げ、落ち着いた声で言った。

「放送の準備だ!」
首相は「A案」の原稿を手にし、緊急放送の準備にとりかかった。

「30秒前です!」


「・・・15秒前!」


「待って下さい!」

今度は官邸の職員と自衛隊の通信員が飛び込んできた。
513名無しスター:04/07/20 00:39 ID:CBu/7vsH
「どうした!」

「・・・プルトンロケット、蠍谷上空で爆発・墜落しました!」

放送室内にわっと歓声が上がった。

「待て、間違いないのか?」
興奮する室内で秘書室長だけは冷静に情報の確認を求める。

「はい、空自・海自のイージス艦のレーダー。現場の守備隊からの連絡で確認済みです。間違いありません!」

再び放送室内が歓声に包まれた。

「・・・3秒前です!」
タイムキーパーが慌ててカウントを再開する。
もう放送は止められない。
全員が持ち場に戻る。
首相は「B案」の原稿を手にし、緊急放送が始まった。


「内閣総理大臣の古泉です。先ほど行われました『判定会』の結果をお知らせします。
 ・・地震発生の恐れはありません。注意情報は解除しました。繰り返します・・・・」


首相の「都内の避難勧告解除」についての説明はしばらく続いた。
514名無しスター:04/07/20 00:42 ID:CBu/7vsH

同時刻、蠍谷のプルトンロケット発射地点には無数の砲弾が降り注いでいた。
守備隊の面々はそれを無言で眺めている。
敵の怪人や戦闘員の姿はもう無い。

「・・・ちょっとやり過ぎじゃないの?」

副隊長にソニンから無線が入った。

「あ、隊長!ご無事でしたか?・・」

「2人ともなんとか無事よ。・・でも大丈夫なの?こんなことして。」

「まあ、自衛隊が勝手にやってることですから・・」

「そうね・・・でもこれで首相も私達も後戻りできなくなったわね。」

「・・・そうですね」

自衛隊による砲撃はその後もしばらく続いた。



・・・話は3ヶ月ほど前にさかのぼる。
515名無しスター:04/07/22 00:25 ID:VqS5kXHS
「お呼びでしょうか?」

「うん。まあ座りなさい。」

ソニンは首相・・いや「Z対策委員長」そう言われて応接セットのソファーに腰掛けた。
ここは首相公邸の地下にいくつかある応接室のひとつ。
ソニンはソファーに浅く座り、背筋をピンと伸ばしていた。

「いいから楽にしなさい。」

「はい!」

首相と会うのは初めてではないがやはり緊張する。
首相はそんなソニンを見て少し頬を緩ませて本題に入った。
516名無しスター:04/07/22 00:27 ID:VqS5kXHS

「潜入した情報員からの情報だが・・・」
手元の薄いファイルをペラペラとめくる。

「『探していたものがついに見つかったらしい』・・・とのことだが。」

首相が顔を上げるとソニンは首を傾げたまま黙り込んでいた。

「かなり重要な情報らしいのだが。何か心当たりは?・・・」

「いえ・・・」

一部門の責任者だったとはいえ、幹部でもないソニンが世紀王だの三神官だのトップシークレットを知るわけが無い。
その情報員の手腕は大したものだった。
片方が逃げ出したことまではさすがに掴めていないようだが。

「お役に立てなくて申し訳ありません。」
517名無しスター:04/07/22 00:28 ID:VqS5kXHS

「・・・いや。忙しいところを悪かった。」

首相はそう言ってファイルを机の上に置いた。

「敵も最近派手に動いている。今の情報といい、何かの前兆でなければいいんだがな。」

確かにここのところゼティマの動きは急だ。
富山の山中で大爆発を起こしたり、首都高上空から車輌を「爆撃」したり・・・
(ライダーが原因であることはZ対ではソニンしか知らない)
段々とゼティマの存在を隠し続けることが難しくなってきている。

「・・・もう全てを国民の前に晒して、国全体で対抗するべきだと思うのですが。」

ソニンが少し抑えた口調で進言した。

「私もそう思うが、色々難しい問題があってな・・・」

首相の言葉が急に歯切れが悪くなって来た
518名無しスター:04/07/22 00:34 ID:VqS5kXHS

「・・・ところで新設の第3中隊はどうだ?」

「まだまだ実戦は無理です。警備ぐらいなら出来ると思いますが。」

守備隊の人数は80人を超えていた。
頭数だけは揃ったが、実際の戦力は大して変化は無い。第3中隊は「ヒヨコ部隊」である。
第2中隊発足時の大敗北を教訓に、これからは新人をじっくりと育てることになった。

「・・・あと3年、いや2年あれば奴らと互角に戦えると思います。」

ソニンは胸を張ってそう言い放った。

「おいおい、ずいぶん大きく出たな。」

首相はちょっと驚いた顔を見せた。

「・・・敵の戦力が2年後も今と同じままだったら、の話ですけど。」

ソニンが笑ってそう言うと、首相もうっすらと苦笑いを浮かべた。


その日はそのまま和やかな雰囲気でしばらく会話が続いた。
この3ヶ月後にZ対策委員会、いや国家そのものに大きな危機が迫っていようとは、この時は夢にも思わなかった。
519名無しスター:04/07/25 22:14 ID:A7y4sIlH
少し時間を下さい・・
520名無しスター:04/07/26 23:41 ID:RZu7q6Gs

そして運命の日・・・


ソニンを乗せたリムジンは、防災放送や緊急車輌のサイレンがけたたましく鳴る町の中を官邸へと急いでいた。

数日前に小笠原諸島で大規模な火山の噴火があり、さらに数十分ほど前に「関東に大地震が起こる可能性あり」
との注意情報が発表され、都内はパニック状態になっていた。

「こちらへ・・」
ソニンは官邸の地下・・普段案内される部屋のさらに奥深くの「危機管理センター」に案内された。
着替える時間すら無く、研究所の白衣のままである。

部屋に通されると、首相のほか、自衛隊統幕僚長、警察庁長官、各省の次官クラス・・・
「Z対策委員会」の主要メンバーが揃っていた。

四角く並べられたテーブルの正面中央で、首相が疲れきった表情でうつむいている。
他のメンバーも同様に、まるで何かにすがるような目でこちらを見ている。
521名無しスター:04/07/26 23:45 ID:RZu7q6Gs

「・・・ソニンくん。」

重い沈黙の中、首相が口を開いた。

「この騒ぎは地震・・・ではないんですね?」

ソニンの言葉に首相が重く頷く。

「先ほど、我々とゼティマの交渉が決裂した。」

「交渉?・・・・」
意外な言葉にソニンは驚く。

「驚いたと思うが、我々はゼティマとの正式な交渉チャンネルを持っている。
 ・・・そして、政府の中にゼティマの協力者がいることは君も知っていると思うが。」

ソニンは動揺を隠せないでいる。首相はその様子を見ながら吐き捨てるようにつぶやいた。

「・・・我々が・・その親玉だ!」
522名無し募集中。。。:04/07/28 06:38 ID:clRKn1jg
いきなりえらい衝撃的展開ですな。続きに期待。
523ねぇ、名乗って:04/07/29 01:36 ID:vTIqlWL1

524名無し募集中。。。:04/07/29 07:10 ID:Dq7dLCU5
525名無しスター:04/07/30 00:04 ID:1Lwkk/Lh

ドガッ!

ソニンは反射的に目の前の机を蹴り上げた。
重く頑丈な机は天井に勢い良くぶつかり、音を立てて首相の目の前に落ちた。
その間にソニンは白衣を脱ぎ捨て、TシャツとGパン姿で構えをとった。

「どういうこと?」

大声で叫びながら周りを警戒する。

「・・・さすが守備隊の隊長だな。反応が速い。」

首相はこの騒ぎの中微動だにせず、座ったままでつぶやいた。

「本物の首相はどこ?・・・正体を現しなさい!」

ソニンはそう言ってジリジリと前に進みだした。

「落ち着け!」
「話を聞け!」

周りの委員から叫び声が上がった。
526名無しスター:04/07/30 00:07 ID:1Lwkk/Lh

首相は苦悩の表情のまま話し続ける。

「・・・ここにいるのは全員『本物』だ。だが今ここで君に殺されても、誰も文句は言えないだろう。」

首相が何を言いたいのかわからない。ソニンは構えをとったままその場に立ち止まった。

「・・・説明してください!」

「首相、時間がありません!」
委員の1人が声を上げた。

「わかった・・・ソニン君少し手短になるが、君にこの国の真実を教えよう。」

首相はそう言って説明を始めた。
527名無しスター:04/07/30 00:11 ID:1Lwkk/Lh
政府がゼティマの存在に気付いたのは5年ほど前。
その以前から研究者の行方不明や怪事件は数多く報告されていた。
それが組織的なものだとわかってくると警察も本格的に動き出した。

しかし警察はゼティマの本拠地どころかアジトすら発見できなかった。
大規模な強制捜査は何度も空振りに終わった。

しかもその間に捜査員が1人、また1人と行方不明になっていく。
そして同じ頃、何故か自衛隊の隊員も何人か行方不明になっていた。

警察の必死の捜査も空しく、1年以上何の成果も得られなかった。
528名無しスター:04/07/30 00:18 ID:1Lwkk/Lh
そして4年前のある日、政府の対応を決定付けるある事件が起きた。

発端は、郊外の山中で行方不明になっていた捜査員と自衛隊員が同時に発見されたことだった。

ゼティマに拉致されていたと思われるが、2人ともその間の記憶が無い。
結局記憶はもどらず、しばらくの入院のあと2人とも職場に復帰した。

その数ヵ月後の同日、同時刻。
警視庁庁舎内で、陸自市ヶ谷駐屯地内で、それぞれ2人は突如として怪人に変身した。

2人の怪人は徹底的に暴れまわった。
警察も自衛隊も持てる力の全てを使って抵抗したが全く効果が無く、この日だけで数十人の死者と
数百人の負傷者を出してしまった
529名無しスター:04/07/30 00:31 ID:1Lwkk/Lh

政府は国民の動揺を防ぐためこの事件を隠匿した。
そして極秘裏に自衛隊による総攻撃の準備を始めた。

その直後に再び政府に衝撃が走った。演習中の戦車部隊が襲われ、74式戦車2輌が破壊されたのだ。

「戦車でも勝てない・・」

ゼティマの策略は見事に成功し、この事件で政府はゼティマと対決する意欲を完全に失ってしまった。

実はこの時の戦車部隊は逃げ回っていただけで何の攻撃もしていない。なにしろ発砲許可も交戦許可も出ていない。

もしかしたら勝てたかも知れなかったのだが・・・とにかく自衛隊による攻撃は中止され、
政府はゼティマの交渉のテーブルにつくことになった。
530名無しスター:04/07/30 00:36 ID:1Lwkk/Lh

その後は徐々に力をつけていくゼティマの前に政府は何も打つ手が無い。
ゼティマの要求は徐々にエスカレートしていく。
いつの間にかゼティマの「要求」は「命令」となり、その命令をのらりくらりと引き伸ばすことが政府の最大の使命となっていた・・・



「これで分かっただろう。我々こそがゼティマの最大の協力者なのだ。」

首相は説明を終えると大きく溜め息をついた。
ソニンはその様子をただ呆然と見つめていた。
531名無し募集中。。。:04/08/01 01:11 ID:fO3ufXzU
532名無しスター:04/08/02 01:20 ID:EwUZUtbG

「・・・ではこの委員会は、守備隊は・・・私のやってきたことは何なんですか?」

政府がゼティマの支配下にあるというなら、自分の立場は一体何なのか。
まさか茶番に付き合わされていたとでも言うのだろうか?

「いや、今政府は本気でゼティマと戦うつもりだ。君たち守備隊は我々の最後の希望だよ。」

「でも・・・」

「最初に委員会が組織されたのは4年前だ。そして僅か1年足らずで奴らに潰された。今の委員会は2代目になる・・・」

「初代」の委員会は例の事件の直後に極秘裏に組織された。
しかし1年足らずで特殊部隊と研究所もろとも襲撃を受け消滅した。
内部にスパイがいたのだ。


その後は何の対策も打ち出せないまま時が過ぎ、日本がゼティマに征服されるのは時間の問題と思われた。
533名無しスター:04/08/02 01:24 ID:EwUZUtbG

しかしゼティマ側にも問題が起きた。ハカイダーの反乱だ。
この隙をつき政府は再び委員会を組織した。
そしてライダーの出現・ソニンの加入・・・奇跡のような偶然が重なり、
政府はゼティマと交渉できるだけの力を付けた。

特にソニンがいなければ委員会も守備隊もどうなっていたか・・・

「その間の2年間は何もしなかったんですか?」

「・・・そうだ。」

ソニンは政府のあまりの無対応ぶりに少し腹を立てていた。
その態度を見て委員の1人が口をはさんだ。
534名無しスター:04/08/02 01:26 ID:EwUZUtbG

「・・・君は最初の委員会のメンバーがどうなったか知っているのか?」

「いいえ?」

「全員死んだよ。」

「・・・・・」

「何年か前、時の首相が脳梗塞で倒れただろう。実はあれも奴らの仕業だ。」

ソニンの顔色が変わった。

「研究所の所長だけは改造手術を受けていて助かったんだが・・・君は彼のことは知っているな?」

「はい・・・」


忘れもしない、カゲスターことユウキと同じ日に同じ場所で死んだ、あの老人のことだ。
535名無しスター:04/08/02 01:35 ID:EwUZUtbG

「首相、時間が・・・」

秘書が間に入った。さっきからしきりに時計を気にしている。

「そうだな。本題に入ろう。」

秘書からソニンに数枚のコピーが渡された。

「さっきも言ったように、ここ1年ぐらいは互角に交渉ができた。だが2ヶ月ほど前から態度が急変した。
 ・・・それが奴らの要求だ。」

ソニンは渡されたコピーに目を通し、数行を読んだだけで顔を上げた。


「これは・・・」
536名無しスター:04/08/04 01:38 ID:H7PUh0V9

国会・裁判所の廃止。自衛隊の解散・・・

要求は数十項目に及ぶが、受け入れられるものは1つも無い。
まして全てとなると国を全部よこせと言っているようなものだ。

「全て受け入れないと東京を火の海にすると言って来ている。」

「脅しじゃないんですか?」

「2ヶ月に渡って交渉してきたが、相手は何一つ譲歩しようとしない。」

「それではまるで・・・」

首相はソニンの言葉にうなずく。


「そうだ・・・宣戦布告だ。」
537名無しスター:04/08/04 01:41 ID:H7PUh0V9

「どうしてそんな強気なんでしょうか。奴らの戦力は前よりむしろ落ちてるはずですが・・・」

ソニンはそこまで言ったところで3ヶ月前の情報を思い出した。

「『探していたものがついに見つかった』・・・」

「そうだ。」

首相がそう言うと背後の壁面の大型モニターに写真が映しされた。
小さな島に爆発と思われるクレーターがあり、その周囲の樹木が焼け焦げている。

「昨日撮影した小笠原諸島の写真だ」

「小笠原って、火山噴火の?・・・」

「火山ではない、奴らの新兵器だ。これで東京を攻撃する気らしい・・・奴らの探していたものというのはおそらくこれだ。」
538名無しスター:04/08/07 01:50 ID:EBcITx1r

539名無しスター:04/08/07 14:00 ID:SDnVW6Nn

ソニンはモニターの写真をじっと眺めた。
巨大なクレーターはその威力の凄まじさを物語っている。
しかしソニンは何か違和感のようなものを感じた。

「いえ、奴らが探していたものはこれではありません。」

プロトンロケットの威力は確かに強力だ。
しかし技術レベルはそれほど高くない。北朝鮮の弾道ミサイルと同レベル、いや誘導装置が「人力」という点ではむしろこちらの方がレベルが低い。
しかも完成したのは運び込まれた資材の量から考えて10機足らず。奴らがあれだけ強気に出る根拠とは考えにくい。

「では、奴らは一体何を手に入れたと言うのかね?」

「あの情報を聞いてからいろいろ考えてみたのですが・・・」
540名無しスター:04/08/07 14:01 ID:SDnVW6Nn

ソニンはゼティマで研究をしていた頃にある幹部から聞いた言葉を思い出した。


『我々の最終目標は、神に等しい能力を持った完全な改造人間を作り上げることだ。
 彼が世界の王として我々の前に現れた時、世界征服の野望はいよいよ最終段階に入る・・・・』


「・・・では奴らは『神』を手に入れた、とでも言うのか?」
「わかりません。しかしこのロケットが最後の切り札だとは思えません。」

「うむ・・・」


「首相・・・」
考え込む首相に秘書が声をかけた。

「・・・とにかく、目の前の脅威はこのロケットだ。6時間後が最終期限だ。それまでに要求を
 全て飲まなければこれを東京に撃ち込み、混乱に乗じて政府を転覆させるつもりだ。」

「それで私は何をすれば・・」


「小笠原の時に発射地点は特定できた。ここを攻撃し、発射を阻止してもらいたい。」
541名無し募集中。。。:04/08/10 23:36 ID:nUOQiBgF
ho
542ねぇ、名乗って:04/08/11 06:05 ID:4OQfON+/
お疲れ様でした。
戦いはまだ始まったばかり、次も期待してます
543名無しスター:04/08/12 01:20 ID:Y6TDMkB1

「敵のアジトに乗り込むんですか?戦力が足りません、無茶です!自衛隊を出してください。」

「自衛隊か・・・」

首相は視線を落として考え込んだ。

「全てを国民に明らかにして、自衛隊の総攻撃を行うべきです!」

「・・・実は先ほど空自のRF-4偵察機が落とされた。空からの攻撃はできない。。
 山が険しくて戦車も近寄れん。歩いたら並の人間では2日はかかる。自衛隊の攻撃は無理だ・・・」

「自衛隊が無理なら米軍の力を借りて・・・」


「アメリカ軍はだめだ!」

外務次官が立ち上がった。
544名無しスター:04/08/12 01:20 ID:Y6TDMkB1

「これは内政問題だ。外国の軍隊を介入させるわけにはいかん。」

「住民に危険が迫ってるんですよ。」

「地震の注意情報と偽って避難勧告をした。8割以上の住民は避難できるはずだ。」

「しかし・・・」

「ここでアメリカ軍の介入を許せば日本は独立を保てない。60年前に逆戻りだ。」

「・・・だからって数十万以上の国民を見殺しにする気ですか?」

「アメリカの再占領後、再び独立を取り戻すのにどれだけの時間と血が流れると思う?
 国家として絶対に譲れないものがある。多少の犠牲は・・・仕方ないのだ!」

次官が話し終えると場が静まり返った。
首相を含めて全員が苦渋の表情だ。顔を両手で覆っている者もいる。
相当苦しい選択だったのだろう。

黙り込むソニンに対し、首相がさらに驚くべき言葉を告げる。
545名無しスター:04/08/12 01:31 ID:Y6TDMkB1

「・・・そもそも、アメリカが我々の味方とは限らんのだよ。」

「まさか!」

「これだけの騒ぎにも関わらずアメリカ軍からは衛星写真の1つも送って来ない。
 FBIは協力的なのだが・・・アメリカ政府からは情報が来ない。」

「日本と同じように、アメリカも奴らに支配されているのですか?」

「・・・わからん。むしろ奴らのバックがアメリカ、という可能性もある。」

「日本を占領するためにアメリカがゼティマを作った、と言うんですか?」

「あくまでその可能性もある、と言う話だ。もはや何が起きても不思議ではない。」
546名無しスター:04/08/13 19:16 ID:y/xq99kv
更新遅くてスミマセンが、ちょっと帰省してきます。
月曜に帰ってくる予定です。
547名無しスター:04/08/18 23:56 ID:HMRBwnr+
もはや何を信じていいのか分からない。ではZ対は、自分はZ対を信じてもいいのか・・・と言いかけてソニンは言葉を飲み込んだ。
そんなソニンの気持ちを知ってか知らずか首相の話は続く。

「国民に何も明かさず、極秘で計画を進めてきたのはそういう理由もある。我々はアメリカにも
 周辺国にも気付かれることなく、極秘に戦力を整える必要がある。
 ・・・君はあと2年で奴らと互角の戦力を持ちたいと言ったが、私は1年でそうするつもりだった。」

ソニンはそれを聞いて少し驚いた。

確かに研究所の設備・人員は急速に整いつつあった。
特にゼティマ北信越支部から脱走した研究員が大量に加入したのが大きい。
このおかげで守備隊の第三中隊も予定よりかなり早く発足した。

相当な予算を使っているはずだが、どこから出ているのか・・・首相もかなり無茶をしているはずだ。

「・・・だが間に合わなかった。奴らの動きの方が早かった。このロケットが発射されたら計画が全て水の泡だ。なんとかして君たちの力で・・・頼む。」
548名無しスター:04/08/18 23:57 ID:HMRBwnr+

「しかし我々の戦力では・・・」

「銃器の使用を許可する。自衛隊の物でも研究所の試作品でも好きな物を好きなだけ使いたまえ。それと・・・」

自衛隊の統幕僚長が合図を送ると奥の扉が開き、自衛隊の制服を着た女性が入って来た。

「彼女を連れて行きたまえ、きっと役に立つ。」

女性の体格は華奢で背も高くない。だが体全体からただ者ではない凄みが伝わってくる。

女性はソニンの前に進み、片手を差し出しながら言った。


「前田です。ソニンさん、お噂はかねがね・・・」

「あなたが?」
549名無しスター:04/08/19 00:00 ID:IHeo5fJ1

前田有紀

コードネーム 「シン」

影で『守備隊第二大隊』とも呼ばれる正体不明の刺客。第一研究所の秘蔵っ子である。
ソニンも噂でしかその存在を知らず、本人に会うのはこれが初めてだった。

前田の手を取り握手をするソニンだったが、まだ迷いがあった。
確かに彼女一人で中隊1つ以上の戦力がある。しかし・・

その様子を見て首相が立ち上がった。

「任務が危険な事は承知の上だ。だから君に全ての真相を話した。虫のいい話だが、こんなことは君にしか頼めない。これは命令ではない、『お願い』だ・・・」

首相はそう言って机に額を擦りつけんばかりに頭を下げた。
550名無しスター:04/08/19 00:01 ID:IHeo5fJ1
「ソニン君!」
「頼む!」

それを見て他のメンバーも立ち上がり、全員深々と頭を下げた。

前田がソニンの側に歩み寄り、小声で話しかけた。

「ソニンさん、私からもお願いします。・・・あなたの『お友達』もすでに各地で闘っています。」


黒部ダム、みなとみらい、港湾地区・・・
ライダー達の奮闘が断片的にここにも伝わっていた。
551名無しスター:04/08/19 00:02 ID:IHeo5fJ1

ソニンの脳裏に中澤家の少女たちの顔が頭に浮かぶ。

(そうだ、闘っているのは自分だけではない。)

昔の自分なら頼まれなくても、たとえ一人でも攻撃に向かったはずだ。いつから自分はこんなに守りに入ってしまったのか。
組織の長となり、いつの間にか部下のことを考えるようになった。

「中澤さんだったら・・・」

ソニンは無性に中澤と話がしたくなった。
ライダーたちのリーダー、中澤裕子はどんな気持ちで彼女達を送り出しているのだろうか・・

ソニンが正面を向くと、頭を下げたままのZ対メンバーたちの姿が目に入った。
552名無しスター:04/08/19 00:04 ID:IHeo5fJ1

「・・・首相、さっき言ったことは本気ですよね。」

首相がソニンの言葉を聞いて顔を上げた。

「さっき?・・・」

「1年で奴らと戦える戦力を整える、という話です。」

「もちろんだ。ただし今回の作戦が成功したらの話だが・・・」

「それを聞いて安心しました。私にお任せください。」

ソニンはそう言って敬礼し、振り返って出口に向かった。

「待ちたまえ!」

首相があわてて呼び止めた。
553名無しスター:04/08/19 00:11 ID:IHeo5fJ1

「何ですか?」

「・・・その、こんな作戦をお願いしておいて言うことではないのだが・・・必ず生きて帰って来てくれ。」

「・・・・・・」

「我々はこれからも君を必要としている。この先君抜きで奴らと戦うことなど考えられん・・・それに・・・」

首相はそこまで言うとそのまま黙り込んでしまった。
まるで娘を一人暮らしの都会に出す父親のような顔をしている。

ソニンはそれを見て思わず吹き出しそうになった。
首相も自分や中澤と同じ気持ちなのだ。

「・・・行ってきます。」

ソニンはそう言って再び敬礼し、部屋を出て行った。

首相たちZ対のメンバーは無言でソニンと前田の背中を見つめ続けた。
554名無し募集中。。。:04/08/22 00:37 ID:Klqt7jq9
がんがってください保全
555名無し募集中。。。:04/08/23 01:31 ID:r1AsYDoX
二人は無言で廊下を進む。
途中で付き添いの警備を外し、二人きりでエレベーターに乗った。
しばし沈黙が流れる。

「あの・・・」

先に口を開いたのはソニンだった。

「あなたも、その・・・するの?」

「・・・何をですか?」

「だから、その・・・『変身』を・・」

「・・・できます。」

「じゃあやっぱり・・・」


「はい、改造人間です。」
556名無しスター:04/08/23 01:32 ID:r1AsYDoX
それを聞くとソニンは黙り込んでしまった。

資料を目にしたり五木から直接聞いたことはあったが、やはり目の前で見ると・・・
見た目は普通のこの女性が、あの写真の怪物に変身するのだ。
ましてゼティマが作り上げたものではない。五木が、政府が行ったことだ。
いくらゼティマに対抗するためとはいえ、こんなことが許されるのか・・・

「・・・後悔はしていませんよ。」

そんなソニンの気持ちを察したのか、前田が小さくつぶやいた。
557名無しスター:04/08/23 01:33 ID:r1AsYDoX

「むしろ感謝しています。奴らを倒すチャンスを与えてくれたのですから・・」

ソニンは何も言えない。
資料を読んで、何故前田がこの戦いに身を投じたのかは知っている。

ゼティマに家族を殺された。

よくある話だ。守備隊の隊員もほとんどがそうだ。
そして自分は守備隊の隊員達を改造した。
正確には「強化人間」であるが、ソニンの方法ではかなり寿命が縮む。

自分がやっていることもゼティマや五木と同じ、悪魔の所業である。
558名無しスター:04/08/23 01:52 ID:r1AsYDoX
「・・・ソニンさんはどうして戦っているんですか?」

今度は前田がソニンに聞いた。
ソニンは即答できない。
いわゆる正義のため、国のため、初代研究所長の遺言・・・表向きの理由はいろいろある。

しかし本当の理由はユウキのためだ。そのためにZ対を利用してると言えなくもない

「資料に何も書いてなかったもので、やはり行方不明の家族と何か関係が・・・」

家族のことは誰にも話していない。もちろんユウキのことも、そして仮面ライダーのことも。


「言いたくなければいいんですが・・・・」


前田がそう言ったところでエレベーターが1階に到着した。
559名無しスター:04/08/25 00:55 ID:iK0CVatf

官邸の裏口からリムジンを断り、守備隊の車に乗った。
首相を信用していないわけではないが、さっきの話を聞いた直後に政府の車に乗る気にはならなかった。

ソニンが窓から外を見ると避難に向かう家族の姿が目に入る。
母親が不安そうな顔で赤ん坊を背負い、父親が大きな荷物を持ちもう一人の子供の手を引っ張っている。
父親に連れられた子供は状況を理解できないのか無邪気に笑っていた。
ソニンは視線を車内に戻し、前を向いたまま前田に語りかけた。

「闘う理由とか、事情とか、お互い色々あると思うけど・・・とりあえず今やるべきことは一つよね。」

再び外に目をやると避難に向かう人の列はまだ続いていた。


「守らなくちゃ・・・・」

ソニンは自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
前田もそれを聞いて黙ってうなずいた。
560名無しスター:04/08/25 00:58 ID:iK0CVatf

「隊長、もう全員揃ってますよ。」

守備隊の駐屯地に到着すると副隊長が出迎えた。

「全員?志願者だけって言ったでしょ。ちゃんと作戦内容を説明したの?」

「それがケガ人も含めて全員行くって聞かないんですよ。それと第三中隊も・・・」

「第三中隊はダメよ。今回は置いていくから。」

力不足の彼らを連れていっても足手まといになる。
それに全員出撃して、もし全滅してしまったらその首相を守る者がいなくなる。

「中隊長あたりは泣いて頼んでるんですが・・・」

「ダメなものはダメよ。じゃあ詳しく説明するから・・・」

ソニンはそう言って会議室へ向った。

副隊長はソニンの後ろの女性に気が付いた。

「隊長・・この人が例の・・・」

「・・・そう、この人が真・仮面ライダーさんよ。」
561名無しさん@非公式ガイド:04/08/26 21:00 ID:y9QM40yT
日ハロと絵里ザバスの対決か
562名無しスター:04/08/27 01:19 ID:04gqIMfs

会議室で作戦のブリーフィングが始まった。
前田は驚いていたが、ソニンは官邸での出来事を隠さずすべて隊員達に話した。

作戦は単純である。蠍谷の地形、情報活動衛星の写真、工作員からの情報、
そして中澤からもらったデータでいくつか侵入口を見つけていた。

正面と思われる入口に守備隊が陽動攻撃を仕掛け、その隙にソニンと前田が通風口から侵入し、ロケットを破壊する。
しかし敵の数、戦力、トラップの有無などすべて不明。基地内部の詳細もわからずロケット発射場の位置もわからない。
苦戦は必至、いやむしろ博打ともいえる無謀な作戦だ。

しかし隊員たちの士気は落ちないどころかむしろ高まった。
皆この時を待っていたのだ。

しかも政府に軽んじられていると思われていた自分たちがここまで信頼されていると聞かされたら奮い立たないわけがない。

会議室全体が熱気に包まれる中、ソニンは最後に全員に遺書を書くよう指示して隊長室に戻った
563名無しスター:04/08/27 01:26 ID:04gqIMfs

「出撃準備、整いました。」

十数分後、副隊長が隊長室に入ってきた。

「ご苦労様。こっちもすぐに出るわ。あなたも遺書は書いたの?」

「・・・いいえ。」

「書かないとダメよ。今回は今までの戦闘とは違うんだから。」

「書く相手もいませんし・・・」

副隊長を含め、隊員は全員ゼティマに家族を殺され天涯孤独の身である。

「まあそうだけど、誰宛てでもいいからなにか残さないと・・・」

「いえ、こういうことはやはり直接伝えないと・・・」

副隊長はそう言って黙り込んだ。
体はガッシリしているが背は低く、小太りに見える。
顔も端正とは言いがたく、視力も強化されたのに昔の癖で伊達メガネをかけている。
とても「鬼」と呼ばれる守備隊の副隊長とは思えない。むしろ愛嬌がある。
564名無しスター:04/08/27 01:28 ID:04gqIMfs

「伝える・・・って何を?」

ソニンが聞くが、副隊長は下を向いて黙ったままだ。

「・・・・誰に?」

相変わらず黙ったままチラッとソニンのほうを見た。



1分ほど黙り込んでいたが、結局副隊長は隊長室から叩き出された。
仕方がないので遺書を書いて残すことにした。


ずっと様子を見ていた前田は堪らずクスクスと笑い出した。

「素敵な仲間たちですね。」

「うん・・・時々鬱陶しいけどね。」
565名無しスター:04/08/27 01:35 ID:04gqIMfs
30分後、守備隊の本体は蠍谷から山を4つほど越えたあたりに集結していた。
ヘリで近づけるのはここが限度だ。
狭い空き地に大型輸送ヘリ10機ほどが激しく入れ替わり、次々と隊員と荷物を降ろしていた。

「本当にこれは必要ないんですか?」

陸上自衛隊の隊員が大砲を指差しながら言った。

「はい、大丈夫です。」

第2中隊長が明るく答えた。
副隊長はなぜか少し元気がない。

自衛隊員が周りを見渡すと、守備隊のほぼ全員が身長の倍以上もある荷物を背負っている。
中には対戦車ヘリの30mm機銃を背負っているものもいる。
566名無しスター:04/08/27 01:38 ID:04gqIMfs

「我々でもここから歩いて2日はかかるんですが。しかもそんな荷物を背負って・・・大丈夫ですか?」

作戦発動まであと1時間弱だ。ソニンと前田は別ルートで向かっている。

「ご心配なく。・・・・よし、出発!」

号令とともに全員が動き出した。

次第にスピードを増し、あっという間に自衛隊の隊員の視界から消えた。
そして数分で1つ目の山の頂上を越えていくのが見えた。


「化け物め・・・」

隊員は呆れて小さくつぶやいた。
567名無しスター:04/08/30 00:40 ID:1QkRQpyd
「配置完了しました。」

山中の司令所に来た第一中隊の伝令はそう伝え、自分の隊に帰っていった。

「いよいよだな・・・」

副隊長は眼下の目標を眺める。
ゼティマのミサイル基地があると思われる蠍谷の中心部。
守備隊はその向かいの山中に扇形に陣を張っていた。

向かいの入口までは距離約800メートル。
こちらの山のふもとには、幅数百メートルの草原が広がっている。
そこから先は草一本も生えない不気味な岩山がそびえていた。

作戦発動時刻、つまり政府の回答期限の1時間前まであと少し・・・

「副隊長!」

隊員の一人が上空を指差した。

赤い信号弾が上空に上がった。ソニンからの合図だ。
568名無しスター:04/08/30 00:45 ID:1QkRQpyd

「・・・よし。『状況開始』!」

「了解。・・・状況開始!」

副隊長の一言で次々と伝令が走る。いよいよ作戦発動だ。

「予定通り、状況開始です!」

陣形の端の部隊にも命令が伝わった。

「わかった。」

分隊長がそう言いながら時計を見る。
隣では別の隊員が戦車砲の砲弾を持って待機している。
大型の消火器ほどの大きさで50kg以上はあるその砲弾を、まるでラグビーボールのようにポンポンと掌で跳ねさせていた。

「・・・よし、いけ!」

分隊長の合図と同時に大きく振りかぶり、向かいの岩山に向けて砲弾を投げつけた
569名無しスター:04/08/30 00:47 ID:1QkRQpyd

ドーン!

砲弾は岩肌に命中し、轟音とともに岩が飛び散った。岩の下から金属製の扉が覗く。

「よし情報通りだ。やれ!」

分隊長の声で、他の隊員も一斉に砲弾を投げつけた。
数発の砲弾が立て続けに命中し、頑丈な扉が大きく歪んだ。

「撃ち方止め!・・・来たぞ。」

歪んだ扉の他に3つ、計4つの扉が開き戦闘員が飛び出してきた。


「・・・今だ、行け!」

今度は反対側の分隊で、号令とともに巨大な榴弾砲の砲弾が投げつけられた。
戦闘員の足元で、頭上で、砲弾が音を立てて爆発する。

遠距離攻撃。まずはこれで敵の戦力を削る。
570名無しスター:04/08/30 00:50 ID:1QkRQpyd

「来たぞ。撃て!」

続いて陣形の中央から30mm機銃2機が火を吹く。
中距離攻撃。先ほどの爆発をかいくぐった戦闘員が次々と倒れていく。

「・・・前へ!」

そして近距離攻撃。討ち漏らした戦闘員に直接攻撃をかけた。

被害ゼロ。
最初の戦闘は守備隊の圧勝に終わった。

司令所では歓声が上がった。

「やりましたね。火器が使えればこっちのものですよ。」

「馬鹿!喜ぶのはまだ早いぞ。勝負はこれからだ!」

副隊長の怒号が飛んだ。
プロトンロケットの破壊以外に作戦の成功はありえない。

そして副隊長の言う通り、ここからが地獄の始まりだった。
571名無しスター:04/08/31 00:13 ID:vXRl+bfu

「なにが『取るに足らん連中』だ!」

怪人「ガルマジロン」が部下を怒鳴りつけた。

「申し訳ありません、まさか奴らが銃や爆弾を使うとは・・・」

「言い訳はいい。次だ、攻撃準備をしろ!」

「それが・・・。」

先ほどの戦いで配下の戦闘員は全滅していた。

「誰もいないのか?」

「はい、侵攻作戦に駆り出されまして・・・」


「・・・何をモタモタしている!」

突如背後のモニターにヨロイ元帥の姿が映し出された。
572名無しスター:04/08/31 00:17 ID:vXRl+bfu

「まさかあんな奴らに侵入を許したりはせぬだろうな。」

「は・・はい。お任せを!」

ガルマジロンはモニターに向かい直立不動で返事をした。


「ふん、人間ごときが忌々しい・・・」

そう言いがならヨロイ元帥はモニターのスイッチを切った。
ロケットの発射準備は遅々として進まなかった。
573名無しスター:04/08/31 00:20 ID:vXRl+bfu

ガルマジロンは通信が終わるとモニタ−に背を向け歩き出した。

「くそ、あんな奴ら俺一人で十分だ・・・」


「お待ち下さい。」
ドアの前に数人の怪人が立ちはだかった。

「我々もお連れ下さイ!」

アルセイデス、キャッティウス、オカルトス・・・
GOD機関の生き残りの怪奇トリオだった。

「・・・ついて来い。」

ガルマジロンがドアをくぐるところで部下が背後から声をかけた。

「あの、こちらの侵入者はいかがしましょう?」

部下が指差したモニターにはソニンと真ライダーが映っていた。
二人は迷路のような通路で迷い、しかも警備システムの罠に こ と ご と く
引っ掛かり、未だプルトンロケットに辿り着けないでいた
574名無しスター:04/08/31 00:22 ID:vXRl+bfu
「しばらく放っておけ・・・」

そう言いながら後ろの怪人を振り返る。


「それにしてもこんな奴らしか残ってないのか・・・」

ガルマジロンはぶつぶつ文句を言いながら階段を上がっていった。
575名無しスター:04/08/31 00:26 ID:vXRl+bfu

「・・・来たぞ!」

岩山の入口に怪人4人が現れた。
再び砲弾による攻撃が始まる。
しかし戦闘員と違い素早く直撃を避ける。あるいは手で払い落とす。
至近距離で着弾してもビクともしない。ずんずんと前に進む。

「撃て!」

30mm機銃が火を吹く。
ガルマジロンに命中。後方に倒れた。

「命中!撃ち方止め!・・・効果確認!」


「・・・効果無し!」
576名無しスター:04/08/31 00:28 ID:vXRl+bfu
ガルマジロンはムクリと起き上がり、何事も無かった様に歩き出す。

「弾頭を替えろ!」

徹甲弾、炸裂弾、試作品の強酸弾・・・次々とまるで実験場のように弾頭を交換する。


「・・・効果無し!」

いずれも大きなダメージは与えられない。しかも命中率も下がってきた。

「上空に改造人間!」

下の4人に気を取られている内に上空に巨大な蛾のような改造人間が現れた。
あわてて機銃を上空に向けるが間に合わない。

ドガッ!

蛾の改造人間が機銃に体当たりを食らわす。
機銃は大きく曲がり、支えていた隊員数人が吹っ飛んだ。
577名無しスター:04/08/31 00:33 ID:vXRl+bfu

「くそ!」

苦し紛れに別の隊員が5.6mm軽機関銃「MINIMI」をぶっ放す。

「キィィ!・・・」

蛾の改造人間が大きくバランスを崩した。どうやら耐久性は無いらしい。

「食らえ!」

「ギィィィィィィィ・・・」

30mm機銃が数発命中するとヨロヨロと林の中に落ちていった。

「チッ・・・」

その様子を見て舌打ちをしながらも4人の前進は止まらない。
578名無しスター:04/08/31 00:41 ID:vXRl+bfu
隊員が残った砲弾を投げつけた。

「フン!・・」

ガルマジロンは片手で砲弾を受け止め、こちらに向けて投げ返す。

「うわっ!」
「逃げろ!」

砲弾は残った機銃に命中した。

「砲撃を止めろ!」

副隊長が叫ぶ。

どのみち弾切れだった。
579名無しスター:04/08/31 00:43 ID:vXRl+bfu

100メートル手前で4人の怪人が立ち止まった。
かかって来いとでも言わんばかりだ。
予想通り、このクラスでは通常兵器は歯が立たない。

「副隊長・・・」

「わかってる、我々の任務は陽動だ。1人でも多くの改造人間をおびき出す・・・」

50人近い隊員と4人の改造人間の睨み合いが続く。


「突撃!」

号令と共に行動可能な隊員が全員一斉に山を下り、改造人間めがけて走り出した。
580名無しスター:04/09/02 01:01 ID:5RqH4O1H

アルセイデスとオカルトスにそれぞれ10人近い隊員が殺到する。

「うおおおおお・・」
「うわっ、わわわわ・・・」

先頭の数人をなぎ倒すが、あっという間にまるで蟻が群がるように隊員に取りつかれた。

「死ねぇぇぇ!」

たまらず倒れたところに小隊長と中隊長がそれぞれ超硬ナイフを構えて突進する。

「うわあああ!」
「や、やめろ!」

体ごとぶつかるとナイフが体を貫き、アルセイデスとオカルトスは爆発を起こして絶命した。
581名無しスター:04/09/02 01:03 ID:5RqH4O1H

一方、化け猫改造人間・キャッティウスは素早い動きで隊員を翻弄する。
周囲を取り囲むが頭上を飛び越え、足元をすり抜け、なかなか捉えきれない。
その間にも1人2人と隊員が倒されていく。

「くそっ!」

隊員の1人が苦し紛れに残っていた砲弾を投げつけた。
これをキャッティウスは両手でキャッチした。

「しまった!・・・」

「気を付けろ、こっちに来るぞ!」

隊員たちが身構える。
582名無しスター:04/09/02 01:06 ID:5RqH4O1H

キャッティウスはバケツほどの大きさの砲弾を抱えてじっと隊員たちの様子をうかがう。

「?」


突然キャッティウスがゴムボールにじゃれつく子猫のように砲弾と遊び始めた。
あっけにとられる隊員たちの前で砲弾が爆発した。
そのままキャッティウスは動かなくなった。

猫並の反射神経と俊敏さを持つ改造人間キャッティウス。


頭の中身も猫並だった。
583名無しスター:04/09/02 01:09 ID:5RqH4O1H

「役立たずどもめ・・・」

ガルマジロンは横目で3人の惨状を見ながら数10人の隊員を相手にしていた。
次々に群がる隊員を両手でポンポンと払いのける。
そして目の前の隊員を強力な腕力でなぎ倒す。

怪人並の強化を受けたはずの隊員たちがまるで相手にならない。
まるでライダーを相手にする戦闘員のごとく倒されていく。
それでも隊員たちは何度も立ち上がり、ガルマジロンに向かって行く。

「しつこい奴らだ!」


「ぐわああああああ!」


突然1人の隊員が悲鳴を上げた。
ガルマジロンの光る鱗によって、隊員の右腕の肘から先が溶かされていた。
584ねぇ、名乗って :04/09/07 00:29 ID:q+k60iXy
川o・-・)<ほ μ ’ヮ ’)<ぜん
585名無しスター:04/09/08 00:47 ID:qOfE/9+W
>>584
保全スミマセン。
やっぱり書き溜めないとダメだね。
586名無しスター:04/09/11 16:46:05 ID:pM3MobdQ

「ぐうぅ・・・」

片腕を押さえながら後ずさりする隊員にガルマジロンが襲い掛かる。

「!!!」

鋭い爪が肩口から食い込み、一気に引き裂いた。
隊員は力を失い、ドサリと音を立てて倒れた。
周りから大声でその隊員の名前を叫ぶが、倒れたまま動かない。

「気を付けろ!」

別の隊員が助けに入ろうとするが、ガルマジロンの爪が襲い掛かる。
なにより人間を溶かす鱗が脅威だ。
さっきの隊員が片腕で済んだのは人間離れした反射神経のおかげだ。
並の人間なら瞬時に溶かされていた。
587名無しスター:04/09/11 16:49:42 ID:pM3MobdQ

「ぐあっ!」

強引に助けに入った隊員の背中にガルマジロンの爪が食い込み、そのまま倒れ込んだ。

「くそっ・・・」

隊員たちはジリジリと後退する。
ガルマジロンを包囲する隊員の輪が少しずつ広くなっていった。


「お前ら、下がれ!」

輪の後方から、よく通る特徴のある声が響いた。

「副隊長!」


「俺が相手だ!」
588名無しスター:04/09/11 16:51:42 ID:pM3MobdQ

その頃、無数の罠を突破したソニンと真ライダーは、ようやく基地の中心部に到達していた。

「ちょっと様子がおかしいよね・・」

潜入直後にあれだけあった罠が途中からパタリとなくなっていた。
おまけにかなり重要と思われる施設が多いのに警備員どころか人っ子一人居ない。

「どうしたんだろう・・・まさか罠・・」

しかし悩んでいる暇はない、片っ端からドアを開け、ロケットの発射施設を探した。
589名無しスター:04/09/11 16:55:16 ID:pM3MobdQ
10分程前>>469

ヨロイ元帥の元に新たな侵入者の情報が入った。

「バカな!三面攻撃だと?・・・奴らにそんな戦力があるのか?」

「いえ、4人です・・・」

それを聞いてヨロイ元帥は安心した。
Z対最大の戦力である隊長と副隊長の所在はわかっている。ほかに守備隊にろくな戦力は無いはずだ。

「ふん、また陽動か。のこのこ迷い込んで来おって・・・一体何処の馬の骨だ!」
そう言いながらモニター画面を覗いた・・・



ライダーの出現、そしてロケットのトラブルにほとんどの戦闘員、作業員、研究員が駆り出され、
この辺りは既に無人となっていた。
590名無しスター:04/09/11 16:58:17 ID:pM3MobdQ

いくつかの部屋を経て、ソニンと真ライダーは司令室のような部屋に入った。
モニターとスイッチが数多く並んでいる。

「あ、あれ!」

真ライダーがモニターの1つを指差した。
プルトンロケットの発射準備作業の様子が映し出されていた。

「場所はどこ?」

画面をあれこれ切り替えるがよく分からない。
手元のスイッチをあれこれいじり回してみるとどこかの屋根が開きだした。

モニターで屋根が開く様子は確認できるが、場所がどこだかわからない。

ソニンは無線を取り出しスイッチを入れた
591名無しスター:04/09/13 00:26:59 ID:+0d53lUZ

副隊長とガルマジロンの戦いは一進一退の攻防が続いていた。
格闘だけなら互角に見えるが、鱗を警戒するあまり副隊長は中に入り込めない。

若干優位に戦いを進めながらもガルマジロンは違和感を感じていた。
他の隊員たちはその場を動こうとせず、周りを包囲したままこの戦いを眺めている。
基地が目的なら、副隊長が戦ってる隙に他の隊員が入口に殺到するはずだ。

「(基地破壊が目的ではないのか?)」


その時、突如背後で大きな物音がした。
山の中腹が大きく物音を立てながら開き始めたのだ。

時計を見ると既に最終回答期限を15分も越えている。
副隊長はプロトンロケットが今にも発射されるものと思った。

「しまった、間に合わなかったか!」
592名無しスター:04/09/13 00:28:39 ID:+0d53lUZ

「副隊長!」

そこへソニンからの無線が入った。

「隊長!」

「・・・そっちから扉の開いたのが見える?」

「はい、見えます!」

「そこが多分ロケットの発射口よ、破壊して!」

無線は他の隊員たちも受信した。周りの隊員が一斉に山の中腹に向け走り出した。

「くそっ!!こっちが囮だったのか!」

ガルマジロンは基地内に侵入していたさっきの二人を思い出した。
人数だけを見てこちらが本隊だと勘違いした。
ガルマジロンは激高し、隊員たちを背後から攻撃した。

「ぐあっ!」

爪で2人ほどなぎ払うと隊員たちを追い抜き、前に立ちはだかった。
何人かが前に出ようとするが、ガルマジロンは光る鱗を投げつけ威嚇する。

再び膠着状態になってしまった。
593名無しスター:04/09/13 00:33:21 ID:+0d53lUZ

「くそ、時間が無い!」

副隊長が走り出したところで、再び無線が入った。

「?」

チャンネルは隊長のものではない。不審に思いながら受信した。


「守備隊副隊長どのですか?」

聞いたことのあるような男性の声だ。誰だか思い出せないが・・・

「・・・誰だ!」

「陸上自衛隊中部方面隊10師10特連2中隊の鈴木2尉です。」

中部方面隊第10師団、第10特科連隊・・・豊川の「野砲部隊」だ。


「自衛隊?・・・」

「・・・俺だよ!アマノくん!」

「・・・まさか『ウド』か?」
594名無しスター:04/09/13 00:36:55 ID:+0d53lUZ

うざったいダミ声で思い出した。防衛大の同期の鈴木だ。
体がデカイうえに鈍臭いので、ウドの大木から「ウド」と呼ばれていた。

「やっぱり生きてたんだ〜!本当に死んじゃったのかと思ってたよ!」

相変わらず馴れ馴れしいダミ声で話し掛けてくる。防大時代と何も変わっていない・・・

「・・・何の用だ!それに、なんでお前がこの周波数を知ってるんだ?」

「冷たいなあ・・・統幕僚本部から直々の命令で、ここに部隊を配置しろって言われたんだよ。それでそっちの指揮官に、つまりアマノくんに指示を仰げってさ。」

「本当か?・・・・」

事態を表沙汰にしないために守備隊に出動させたはずだ。
それに民家の上空を越えて国立公園の蠍谷に着弾させるなど通常では考えられない。
政府も腹を括ったらしい。

前を向くと、相変わらず隊員たちはガルマジロンとにらみ合っている。

迷っている暇はない。

「わかった。鈴木2尉、砲撃要請だ。座標は・・・」
595名無しスター:04/09/13 00:41:00 ID:+0d53lUZ

「・・・FH-70、目標、『蠍谷演習場』、試射弾・発射っ!」

ズドン!

無線の向こうで発射音が響いた。

「・・・あ、アマノ君。言い忘れたけど有効射程ギリギリだから、最大数百メートルの誤差が出るからね。」

「・・・おい、ちょっと待て!」

30秒ほどして、上空から空気を切り裂く笛のような音が聞こえてきた。

通常の人間には無理だが、副隊長と隊員たちの目にはこちらに向かってくる砲弾がはっきり見えた。

「・・・全員ショックに備えろ!」

隊員たちは一斉に着弾予想地点から離れ、地面に伏せた。

「何事だ・・・ぐわっ!」

取り残されたガルマジロンの後方10数メートルに着弾し、派手に吹っ飛んだ。


隊員たちが残っていたら直撃だった・・・
596名無しスター:04/09/13 00:46:01 ID:+0d53lUZ

「・・・・あ〜『観測所』、着弾状況を知らせ。」

「・・・誤差5時35分の方向、85メートル!」

「お〜スゲエ、大当たりだあ!」

無線からのん気な声が聞こえてきた。

「何が大当たりだ!殺す気か!」

「・・・え?もう撃たない方がいいかなあ?」

危険だが他に方法は無い。

「・・・・是非頼む。全力で叩き潰してくれ!」

「わかったよ。まかしといて!・・・・よし、試射成功!修正射すっ飛ばして本番行くぞ!」

無線の向こうで一斉射撃の砲撃音が聞こえた。


「全員負傷者を救護しつつ、向かいの山に退避!」
597名無しスター:04/09/13 00:48:53 ID:+0d53lUZ
副隊長の声と同時に、動ける者は全員負傷者を抱えて反対の山へ駆け出した。

「しっかりしろ!」

「大丈夫か?」

肩に、背中に、小脇に、抱えられるだけの隊員を抱える。

「・・・そいつは後回しだ!」

小隊長が一人の隊員を怒鳴りつけた。

「し、しかし小隊長、自分はこいつと同期で・・・」

「それは分かってる・・・だが生きてる奴が先だ!」


「・・はい!」

隊員は別の負傷した隊員のところへ向かって行った。



「待て、貴様ら逃げる気か!」

「お前の相手は俺だ!」

ガルマジロンの前に副隊長が立ちはだかった。
598名無しスター:04/09/13 00:49:45 ID:+0d53lUZ

「こしゃくな・・・うおっ!」

先程の一斉射撃が着弾・爆発した。
次々と砲弾が着弾し爆発を起こす。
それを避けながらガルマジロンと副隊長が闘いを繰り広げていた。

1発着弾するごとに隊員の一人が誤差を無線で報告する。
徐々に砲撃の精度は高まり、着弾が山の中腹に集中し始めた。

「当たれ!」
「惜しい!もう少しだ!」

そしてついに一発が扉の中に吸い込まれ、基地内で爆発した。
立て続けに2発3発と命中する。

「やったぞ!」

向かいの山に集まった隊員たちの間に歓声が上がった。
599名無しスター:04/09/13 01:45:58 ID:+0d53lUZ
「おかしい・・・」
副隊長は闘いながらその様子に違和感を感じていた。

「ここじゃないの?」

「・・・違うみたいね。」

確かに1つの画面には爆発で崩れ落ちるロケットの様子が映し出されている。
しかし別の画面では相変わらず発射準備作業が進んでいる。

第一、ロケットに砲弾が命中すれば燃料や弾頭が大爆発を起こすはずだ。
破壊されたロケットには燃料すら注入されていない。空っぽだ。

「ここは、ただの格納庫?・・・」

「しまった!」

ソニンと真ライダーは制御盤を叩いて悔しがる。

「時間が無いわ!」


ズドドドドドド・・・

急いで立ち上がり、部屋を出ようとしたところで建物全体に轟音が響いた。
600名無しスター:04/09/13 01:47:07 ID:+0d53lUZ

今までの爆発音とは明らかに違う、大きな音と振動が続く。

「まさか・・・」

振り返って画面を見ると、二人の顔面から血の気が引いた。
画面にはロケットに火が入り、ちょうど離床するところが映し出されていた。
ソニンは無線を取り出した。


副隊長はまだガルマジロンと戦闘中だった。
轟音に二人同時に振り向くと、山の反対側からロケットがゆっくりと上昇を始めたところだった。

「・・・なんてことだ!」

思わず叫ぶ副隊長にガルマジロンはニヤリと笑う。

「そうか、あれが狙いだったのか・・・残念だったな。これで東京は火の海だ!」
601名無しスター:04/09/13 01:48:02 ID:+0d53lUZ

「貴様ぁ!」

ドガッ!

「ぐおぉぉ・・・」

副隊長の渾身のパンチがガルマジロンの頑丈な皮膚を貫いた。

「・・・き、貴様今まで手加減して・・・」

腰のホルスターから銃を取り出し、破れた皮膚に突っ込む。

「死ねぇ!」

「グァァァァ・・・」

開発中の強酸弾が数発撃ちこまれ、ガルマジロンはその場に悶絶して倒れた。

「くそ・・くそぉ!」

苦し紛れに数発ミサイルに向けて発射すると、拳銃を地面に叩きつけた。

「・・・副隊長!」

ここでソニンから無線が入った。
602名無しスター:04/09/13 01:49:30 ID:+0d53lUZ

「隊長・・・はい。こちらからも見えます。」

「すぐに本部に連絡して!」

まだ陸海空の総力で迎撃できる可能性がある。
副隊長は近くの隊員に指示を出した。

「それで・・・隊長は?」

「まだ2発目、3発目があるかも・・・発射場を破壊するわ!」

「ちょっと待って下さい、自衛隊に砲撃要請をしま・・・」

突然、頭上でものすごい爆発音が響いた。
驚いて見上げると、上空数百メートルのところでプロトンロケットが大爆発と共に消滅していた。
603名無しスター:04/09/15 01:28:26 ID:li4Y57Yo
上空には飛行機雲と、その先に入道雲のような煙が広がっていた。
ロケットのパーツがバラバラと落下している。
その場にいた全員が一瞬何が起きたか分からなかった。
しかし副隊長はすぐに我に返り指示を出す。


「本部に連絡。ロケット、上空で爆発・墜落っ!」

「は、はいっ!」


「・・・何があったの?」

「あ、隊長!ロケットが空中で爆発しました!」

「そう・・・念のため発射地点に砲撃を要請しておいて。」

「はい。・・隊長は?」

「発射地点に向かうわ。」

「でも砲撃が・・・」

「わたしと前田さんなら大丈夫だから。」

「それもそうですね・・・」
604名無しスター:04/09/15 01:38:36 ID:li4Y57Yo

前田とソニンは部屋を出て発射場へ向かった。
さっきの発射音と振動でだいたいの場所はわかる。
2人は迷路のような通路を抜け、基地の中枢部へ近づいて行った。

「様子がおかしい・・・」

けたたましく警報音が鳴り響く。
所々壁が崩れ、大きな穴が開いているところがあり、ひどい所は地割れまで起こしている。

突然地響きと共に爆発音が響いた。>>495

「何?今の?」

「自衛隊の砲撃じゃないみたいだし、まさか2発目?」

途中で逃げ出した研究員や生き残った戦闘員にぶつかった。
それらを掻き分け、まっすぐ音の方向に向かった。
605名無しスター:04/09/15 01:43:33 ID:li4Y57Yo

通路の先に不気味なデザインの大きな扉があった。
中で人の気配がする。

「ここね?」

「多分・・・」

2人が扉に手をかけようとすると勝手に開きだした。
扉の隙間から煙が漏れ出し、中から人の声がした。

「誰?!」

ソニンと真ライダーは思わず身構える。


「今の声は・・・ソニンさん?」

「・・・加護さん?」


約1年ぶりの再会だった。
606名無しスター:04/09/17 01:28:46 ID:iLFs+OBs

加護が煙の中から飛び出してきた。

「どうしてここに?」

「そっちこそ。一体中で何が・・・」

「ここの親玉をやっつけたのれす。」

ライダーののがミカを抱きかかえながら出てきた。

「辻さん!矢口さんも・・・そちらの方は?」

「ミカさんや。さっきヨロイ元帥を倒したんやけど、ダメージが大きいてなあ・・」

「ミカ・・・ひょっとしてミカ・トッドさん?」

「知ってるのれすか?」

607名無しスター:04/09/17 01:29:53 ID:iLFs+OBs

優秀すぎるが故に幹部に疎まれ、片腕を失い追放された悲劇の女性。
研究者の間では有名な話だ。
幹部の名前については諸説あったが、彼女がヨロイ元帥を倒したとなれば・・・

「じゃあ、ついに復讐を果たしたんですね!」

それを聞いて、疲れきったミカの表情にわずかに笑みが浮んだ。

「お話中悪いんやけど、時間が・・・」

唯一会話に加われなかったXライダーが割り込んだ。


「あ、そうだ・・」

自爆装置が起動した今、一刻も早くここを脱出しなければならない。


「そうですか。じゃあこの話はまた今度に・・」

「今度、今度って、なかなか顔出してくれないじゃんか。」

「そうれすよ。」

ソニンの言葉にV3とライダーののが絡んできた。
608名無しスター:04/09/17 01:31:13 ID:iLFs+OBs

「ご、ごめんなさい。いろいろ忙しくて。それに自由に出歩ける立場じゃないし・・」

「裕ちゃんが会いたがってたよ。」

「本当ですか?」

1年以上会ってないが手紙で連絡は取っている。

FBIの稲葉を経由したり、秘密のルートを使うため届くのに1ヶ月以上かかってしまうのだが。



「・・・あの、時間が。」

「あ、ごめんね・・・」
609名無しスター:04/09/17 01:35:50 ID:iLFs+OBs
走り出そうとしたところで、ライダーののが真・ライダーの姿に気が付いた。

「あ、いつかのバッタのお姉さんなのれす。」

「・・・覚えてて頂けたんですね。あの時はお世話になりました。」

「もちろんなのれす。」

「え?2人とも知り合いなの?」

「前に一度助けていただきまして・・・」



「・・・それで加護さん。手紙でもお知らせしたんですけど、例の実験結果ですが。」

「あ、あれなあ。面白い結果やけど、試薬を変えて試してみたらどうやろ?」

「なるほど〜。試薬ですか、それは気が付きませんでした。」

「何の話デスカ?」

「あ、ミカちゃん。ソニンさんの実験でなあ・・・」





「  さ  っ  さ  と  逃  げ  れ  や  ぁ  !  」


Xライダーの大声に、全員驚いて走り出した。
610名無しスター:04/09/21 01:19:29 ID:8si2nQzS
セルフ保全。
もう少しで終わる予定です。
611ねぇ、名乗って:04/09/22 01:11:10 ID:wXbY0UmE
紺野写真集スレから誘導されてこちらへ来ました。
一気に読んでしまいました。作者の皆様頑張ってください。
ところで、555以降のスレが読めないのですが、どうしたらいいのでしょうか?
612名無しスター:04/09/23 03:11:00 ID:1dHwmj36

次々と激しい爆発が起こる中、なんとか7人とも無事に脱出した。
爆発は山全体に広がり、発射口や通風口などから激しい火柱が上がっていた。

「この基地もおしまいね・・・」

「ロケットもね・・・」

これでゼティマは北新越支部に続き、またしても重要な拠点を失ったことになる。
ちなみに両方の破壊に関わったXライダーは、完全に「エース格」と勘違いされ後々大変な目に遭うのだが・・・

7人はしばらく無言で燃えさかる山を眺めていた。


「じゃあ私はこれで・・・」
613名無しスター:04/09/23 03:12:58 ID:1dHwmj36

「あ、ちょっと!」

そそくさとその場を離れようとするソニンをV3たちが引きとめた。

「裕ちゃんが会いたがってるってば。せっかくの機会だからうちに寄ってってよ。」

「ごめんなさい。これから大事な用があって・・またいつか遊びに行くから。」

「またそんなこと言ってぇ・・・」

加護やライダーののまで出てきてソニンの腕を引っ張った。

「いや、でも・・・・」

ソニンが困っていると、突然上空から空気を切り裂く音がした。
614名無しスター:04/09/23 03:14:52 ID:1dHwmj36

「?」

次の瞬間、7人の周りで立て続けに爆発が起こった。

「・・・何これ?」

「まさか、まだ敵が?」

「これは自衛隊の砲撃です。気を付けて下さいね。・・・じゃ!」

「・・・あっ!」

この隙にソニンと真ライダーはさっさと山の反対側に走り去って行った。

「ちょっと待っ・・・うわあっ!」

砲弾は次々と降り注ぎ、V3たちはあっと言う間にソニン達の姿を見失ってしまった。


ソニンは走りながら無線のスイッチを入れ、隊と連絡を取った。

「副隊長・・・ちょっとやりすぎじゃないの?・・・・」

615名無しスター:04/09/23 03:21:39 ID:1dHwmj36
>>611
誘導した覚えはありませんが?
それにそんなスレに出入りしてませんよ、私は。
そこに誤爆した覚えもないですしねぇ・・・orz


>ところで、555以降のスレが読めないのですが、どうしたらいいのでしょうか?

それは俺も困ってます。
616名無し募集中。。:04/09/23 10:25:29 ID:q+SDjzdm
適当なあぷロダがあればupしますよ。
といいつつ、いつも見つからなくてupできないんだよね。
617名無し募集中。。:04/09/23 10:32:59 ID:q+SDjzdm
と思ったら総合スレにログ張ってくれた人がいらっしゃいました。
そちらの方を見てください。
618名無しスター:04/09/23 14:18:20 ID:20+xo7eA
4時間後。

ソニンたち守備隊の面々は撤収を終え、都内某所の駐屯地に戻っていた。
駐屯地の建物の中は静まり返っていた。
怪我をした者は治療を受けながら、無傷のものは座ったまま・・・誰も口を開こうとしなかった。
会議室ではソニンと副隊長、第一、第二中隊長、そして前田の5人が集まっていた。

「それで、こちらの損害は?」

「軽傷8人、重傷15人、うち2人がそれぞれ片腕、片足を切断、おそらく再起不能です。
それと戦死・・・いや殉職者が4人・・・です。」

「うん。思ったより健闘したわね・・・」

第一中隊長の報告に、ソニンは顔色1つ変えずに答えた。

そして詳しい戦闘の報告と検証が始まる。

「・・・・武器を使った戦闘方法を練り直さないとダメね。いくら時間が無かったとはいえ
 今回はあまりにお粗末だったし。」

「わかりました。」

中隊長たちは黙ってメモを取った。
619名無しスター:04/09/23 14:19:51 ID:20+xo7eA

「・・・通常戦闘もこの程度の改造人間に苦戦するようじゃこれから苦しいね。何か対策を考えないと・・・」

あくまで冷静に受け答えをするソニン。
前田は横で聞きながら少しずつ腹が立ってきた。

「明日までに文書にして報告してちょうだい。それと片足と片腕を失くした2人は第一研究所の施設に移して。五木教授に話は通してあるから。あと、念のため豊川の駐屯地の護衛に3中隊から分隊を1つ派遣しておいて。」

それだけ言ってソニンは立ち上がり、出口へ向かった。

「・・・どこへ行くの?」

後ろから前田が声をかけた。

「死体安置所よ。検死と解剖の準備があるから・・・」

「・・・ちょっと冷たいんじゃないの?」

前田の声が少し大きくなった。

620ねぇ、名乗って:04/09/23 21:20:49 ID:5Z4LOtUS
更新おつです。
>>611 >名無しスター様
総合スレで555以降の保存左記を質問して教えていただいたものなのですが、
教えていただいたリンク一応張っておきますね。
仮面ライダーのの555(ファイズ)
http://ime.nu/3.csx.jp/sheep2ch/1047519023.html
仮面ライダーののアギト
http://ime.nu/3.csx.jp/sheep2ch/1059481473.html
仮面ライダーののBLACK
http://ime.nu/3.csx.jp/sheep2ch/1066924108.html
621名無し募集中。。。:04/09/24 01:23:12 ID:KrnX04fh

从*・∀.・从<…アーヒャヒャアヒャヒャアーヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ
      アーヒャッヒャッヒャッヒャッヒャヒヒヒヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ
      アーヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャアヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ…。

仮面ライダーのの555(ファイズ)

HTML版 http://3.csx.jp/sheep2ch/1047519023.html
かちゅ〜しゃdat(LHA圧縮) http://3.csx.jp/sheep2ch/1047519023.lzh
かちゅ〜しゃdat(ZIP圧縮) http://3.csx.jp/sheep2ch/1047519023.zip
Janedat(LHA圧縮) http://3.csx.jp/sheep2ch/1047519023-jane.lzh
Janedat(ZIP圧縮) http://3.csx.jp/sheep2ch/1047519023-jane.zip
ホットゾヌ2dat(LHA圧縮) http://3.csx.jp/sheep2ch/1047519023-zonu.lzh
ホットゾヌ2dat(ZIP圧縮) http://3.csx.jp/sheep2ch/1047519023-zonu.zip
ABonedat(LHA圧縮) http://3.csx.jp/sheep2ch/1047519023-abone.lzh
ABonedat(ZIP圧縮) http://3.csx.jp/sheep2ch/1047519023-abone.zip

仮面ライダーののアギト

HTML版 http://3.csx.jp/sheep2ch/1059481473.html
かちゅ〜しゃdat(LHA圧縮) http://3.csx.jp/sheep2ch/1059481473.lzh
かちゅ〜しゃdat(ZIP圧縮) http://3.csx.jp/sheep2ch/1059481473.zip
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622名無し募集中。。。:04/09/24 01:23:48 ID:KrnX04fh

仮面ライダーののBLACK

HTML版 http://3.csx.jp/sheep2ch/1066924108.html
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ABonedat(ZIP圧縮) http://3.csx.jp/sheep2ch/1066924108-abone.zip

3スレまとめてダウンロード用ログパック

かちゅ〜しゃdat(LHA圧縮) http://3.csx.jp/sheep2ch/ridernono_ex.lzh
かちゅ〜しゃdat(ZIP圧縮) http://3.csx.jp/sheep2ch/ridernono_ex.zip
Janedat(LHA圧縮) http://3.csx.jp/sheep2ch/ridernono_ex-jane.lzh
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ABonedat(ZIP圧縮) http://3.csx.jp/sheep2ch/ridernono_ex-abone.zip
623名無し募集中。。。:04/09/24 01:24:45 ID:KrnX04fh

ログを入れる場所:説明中***は555・アギトについては"ex2"、BLACKについては"ex4"

かちゅ〜しゃ:(インストールフォルダ)\log\***.2ch.net\ainotane
(C:\Program Files\katjushaにインストールの場合[標準]→
 C:\Program Files\katjusha\log\***.2ch.net\ainotane)

Jane:使っているjane2ch.brdにより異なります。
(インストールフォルダ)\Logs\2ch\芸能\愛の種[モ娘(羊)]
 ←ttp://hima2908.hp.infoseek.co.jp/で配布の拡充版jane2ch.brdを使っている場合
(インストールフォルダ)\Logs\2ch\芸能\モ娘(羊)
 ←デフォルト、あるいは上記以外のサイトで配布のjane2ch.brdを使っている場合
(JaneをC:\Program Files\openjaneにインストール、拡充版jane2ch.brdを使っている場合→
 C:\Program Files\openjane\Logs\2ch\芸能\愛の種[モ娘(羊)])

ホットゾヌ2:(インストールフォルダ)\users\[ユーザー名]\log\2ch\ainotane
(C:\Program Files\hotzonuにインストール、ユーザー名defuserの場合→
 C:\Program Files\hotzonu\users\defuser\log\2ch\ainotane)

ABone:(インストールフォルダ)\log\***.2ch.net\ainotane
(C:\Program Files\Aboneにインストールの場合[標準]→
 C:\Program Files\Abone\log\***.2ch.net\ainotane)
624名無しスター:04/09/25 22:03:46 ID:1l/XhN0d
>>620-623
多謝!
いやあ、ファイズ読みたかったんですよ、ずっと。
開いたらいきなり自分の下手な文章が出てきて閉口しましたが。

では続きです↓
625名無しスター:04/09/25 22:06:00 ID:1l/XhN0d

「『冷たい』?・・・」

「少しぐらいねぎらいの言葉があってもいいんじゃないの?」

「私達は今回『負けた』のよ。ねぎらいの言葉もなにもないでしょ。」

「そんな言い方!・・・」

2人の中隊長が間に入った。

「止めてください!・・・」
「いいんですよ、我々のことは・・・」

その様子を見てソニンは軽く目を伏せ、会議室を出て行った。
副隊長が立ち上がり、ソニンの後を追っていった。
626名無しスター:04/09/25 22:08:25 ID:1l/XhN0d

第1中隊長はそれを見届けると前田に向き直り、つぶやくように話しかけた。

「前田さん・・・でしたっけ?さっき隊長のことを『冷たい』とおっしゃいましたけど。
 私はあの人ほど部下想いな上司を知りませんよ。」

「でも・・・」

「隊長が我々の前でメソメソ泣くわけにはいかないんです。彼女はあくまでも冷徹な指揮官を演じているんです。
 ・・・隊員が死んで一番辛いのは隊長なんです!」

前田は黙り込み、さっき言ったことを後悔した。
前田はいつも一人で闘っていた。孤独だった。仲間に囲まれているソニンを羨ましいと思ったこともあった。
しかしそれは間違っていた。自分にはこれだけのものを背負う覚悟は、ない。

「本当なら・・・・」

第1中隊長がうつむいたままつぶやいた。
627名無しスター:04/09/25 22:09:48 ID:1l/XhN0d

「・・本当なら、俺達が隊長を守ってやらなきゃいけないんだ。でもいつも逆に助けてもらってばかりで・・・
 あんな若い女性に何もかも背負わせて、押し付けて・・・」

第1中隊長は途中から涙声になり、そのまま黙り込んだ。


「・・・畜生!」

突然第2中隊長が大声をあげて机を叩いた。

「俺達にもっと力があれば隊長を・・・それに今日死んだ奴らだって・・・」

二人の中隊長はそのまま顔を伏せ、無言で握り拳を震わせていた。

前田はもう何も言えなくなっていた。
628名無しスター:04/09/25 22:11:53 ID:1l/XhN0d

「隊長・・・」

廊下で副隊長がソニンに後ろから声をかけた。

「・・・私なら大丈夫だから。」

「いえ、これを・・・」

振り返ったソニンに副隊長が4人分の遺書を手渡した。

「これは、私が読むわけには・・・」

「でも、4通とも隊長あてになってますから・・・」

「・・・そう。」

ソニンは受け取った遺書を無造作にポケットに押し込んだ。


「・・・30分後に迎えに行きます。それまではあそこに誰も近づけませんから。」

副隊長がそう言うとソニンは黙ってうなずき、死体が安置されている地下室へ歩いて行った。
629名無しスター:04/09/25 22:18:47 ID:1l/XhN0d

会議室に戻るとまだ3人とも黙ったままだった。

副隊長は無言で椅子に座った。

・・・・・・

副隊長が沈黙に耐え切れず何か言おうとした時、突如室内に振動が響いた。
前田が驚いて回りを見渡すと、2人の中隊長はさらに握り拳を強く震わせ、ついには声をあげて泣き始めた。
副隊長は腕を組み、眉間に皺を寄せて目を閉じていた。

「あれは一体・・・」

前田が恐る恐る尋ねると第1中隊長が答えた。

「・・・隊長です。」
630名無しスター:04/09/25 22:19:30 ID:1l/XhN0d

「多分、地下室の床か壁でも叩いてるんでしょう・・・」

続いて重い物を引きずるような、ギシギシといった音が響いてきた。

「・・・あれは隊長の歯軋りです。」

聞かれる前に今度は副隊長が言った。

ソニンは声を殺して隠れて泣いているつもりだろうが、基地中にモロバレだった。
その音につられるように、建物のあちこちからすすり泣きや大声でわめく声が聞こえてきた。

前田はいたたまれなくなり、副隊長たちに非礼を詫び、会議室を出て行った。
631名無しスター:04/09/25 22:20:56 ID:1l/XhN0d

30分後、死体安置からソニンが出て来た。
隊員の遺体を抱きしめたのだろうか、服や顔が血で汚れている。
顔を上げると目の前に前田が立っていた。

「(誰も近づけないって言ってたのに・・・)」

そう思いながら慌ててキッと顔を作り、前田に話しかけた。

「まだ何か用?」

前田はその様子を見て目を伏せ、申し訳無さそうにうつむいていた。

「・・・用が無いならこれで。」

何も言わない前田を見て、ソニンはさっさと歩き出す。

「・・・待って!」

慌てて前田がソニンの腕を掴んで引き止めた。
632名無しスター:04/09/25 22:25:06 ID:1l/XhN0d

「何?」

その毅然とした態度に、前田の気持ちが益々辛くなる。

「さっきはごめん。・・・」

前田の言葉が詰まった。

「その、私でよかったら話し相手になるからさ・・・そんなに・・・」

驚いて前田の顔を見るとポロポロと涙を流していた。

「・・・そんなに一人で無理しなくていいから・・・」

前田はそれだけ言うと声をあげて泣き始めた。

ソニンはその様子を見て一気に体中の緊張が解けた。
吊り上げていた眉毛は下がり、顔をくしゃくしゃにして前田に抱きついた。

「前田さんこそ・・・」

二人は死体安置所に入り、久しぶりに普通の女性に戻ったように大声で泣いた。
その声は幸いにも基地内の他の誰にも聞こえなかった。
633名無しスター:04/09/25 22:28:34 ID:1l/XhN0d

半月後。
副隊長が2人の隊員を連れて隊長室に入って来た。

「あれ、2人共もう大丈夫なの?」

「はい、この通りです。」
「前より調子がいいぐらいですよ。」

蠍谷の戦闘で手足を失った隊員たちだった。
再起不能と思われていたが、第一研究所で義肢を付けてもらい、今日ようやく復帰したのだった。

「五木先生には聞いてたけど半信半疑だったから・・・大したもんねえ。」

ソニンは隊員に近づき、義肢をペタペタと触った。

「じゃあこれからも頑張ってね。」

「は・・はいっ!」

2人は少し戸惑いながら隊長室を出て行った
634名無しスター:04/09/25 22:29:40 ID:1l/XhN0d

副隊長は2人を見送った後隊長室に戻り、ソニンに話しかけた。

「隊長、ここのところ随分明るくなりましたね。」

「そう?」

あの一件の後、公私ともに前田と合う機会が多くなった。
それにつれてトゲトゲした印象が無くなった。「女性らしくなった」と言うべきか。
もちろん副隊長もそれは知っていた。

「・・・私じゃ話し相手になんないんですかねえ。」

「あなたはただの部下だからね。ほら、さっさと仕事に戻りなさい。」

副隊長はそう言われると、とっても悲しそうな顔で隊長室を出て行った。

「ああいうところが無ければいい奴なのになあ・・・」
635名無しスター:04/09/25 22:30:54 ID:1l/XhN0d

ソニンが明るくなったのは他にも理由がある。
本棚の裏に隠してある電話機だ。

蠍谷の戦闘の10日後ぐらいに、突然地下から巨大なモグラが現れてケーブルを置いていった。
モグラには驚いてひどい怪我を負わせてしまい、悪いことをしたが。

ともかくこの直通ケーブルで中澤家と直接話ができるようになった。毎日とはいかないが、
3日に1度は連絡を取っている。
636名無しスター:04/09/25 22:31:49 ID:1l/XhN0d
まだ他にも理由がある。

ソニンは椅子に腰掛け、手元のパソコンを操作してお気に入りの動画ファイルを再生した。
もう何十回も見ている首相の緊急記者会見のVTRだ。

前半部分は地震の警戒宣言についての説明や言い訳ばかりだが、最後に原稿に書いてないことをアドリブで話していた。

「・・・なお、今回の警戒宣言に乗じて社会を混乱させようと企む不法な組織がいくつか確認されており、
今後このような組織に対し厳正なる処置を取っていく所存であります。」

一般の国民はその後「蠍谷の大噴火」があったこともあり、地震や噴火の方にばかり目が向き、この発言はほとんど注目されなかった。
なにしろ、国立公園のいくつかが突如「実弾演習場」に指定されたことさえ話題にならなかったくらいだ。
637名無しスター:04/09/25 22:32:55 ID:1l/XhN0d

ソニンはパソコンを閉じ、ふぅっと息をついた。

「もう一人じゃないんだ・・・」

あれ以来自衛隊関係者も頻繁にここを訪れている。
研究所の人員や設備も急速に増強された。
Z対策委員会、いや政府は着々と戦力を整えつつある。
ゼティマを超えるのは無理でも、奴らがこちらに簡単に手を出せないぐらいの勢力にはなるだろうか。
いや、これでライダーと共同戦線を取ることが出来ればあるいは・・・

「ああ、ごめんごめん。あんたのことを忘れたわけじゃないんだけどね。」

ソニンは胸のロケットを開き、ユウキの写真を眺めた。
638名無しスター:04/09/25 22:48:34 ID:1l/XhN0d

「・・・ごめん、あんたの姉さんのことは、ちょっと後回しになるかも。」

そう言って申し訳無さそうにロケットを閉じた。


そうこうしているうちに副隊長が元気の無い声でソニンを呼びに来た。
これからZ対策委員会の会議がある。
委員ではないが、あれ以来ほとんど毎回会議に呼ばれて意見を求められている。
最近では正式な委員に任命されるのも時間の問題、と言われている。

あの日以来、全てが変わった。

「はいはい、今行くから。」


ソニンは制服の上着を掴み、袖を通しながら部屋を出て行った。



番外編 首都特別守備隊戦記

「岐路」  完
639名無し募集中。。。:04/09/26 21:29:22 ID:c+TfFURb
>名無しスターさん

乙でした!
シリアスな展開でたまにはこういうのも良いです。
640燃えろ!兄弟拳:04/09/26 22:41:26 ID:KLZ3yyFk
川σ_σ||<いんたーみっしょん。三つ目のお話です。


             いんたーみっしょん
              【第三の視点】

蠍谷の死闘・・・
ライダー達の戦い、そして守備隊の戦い・・・
全てが終わった頃に蠍谷の入り口付近で佇む4人の姿があった・・・・

「今回出番はなしか・・・・」
「これだけでも充分でしょ?」

そう言った雅恵とめぐみの足元にはガラクタと化したロボットのパーツが転がっている。
それは数十分前にはヘラクレス1・2と名乗る2体のロボットと
ブラックマンと言うアンドロイドの形を成していたのだ。
641燃えろ!兄弟拳:04/09/26 22:42:31 ID:KLZ3yyFk
「大地震だってさ・・・・・」

ここはハローワーク商会。
TVを見ていた瞳があゆみに言った。
バイクロッサーこと大谷雅恵・村田めぐみ、そして2人の姉妹とも言うべき
斉藤瞳と柴田あゆみの4人が蠍谷に行くきっかけになったのは
このニュースを聞いたからだ。

「小笠原の火山活動で関東に大地震?へぇー・・・」

瞳の言葉にTVの画面を見たあゆみは特に気にも留めないと言った感じで呟く。

「情報操作?」

あゆみの質問に瞳は頷いた。すると事務所のドアが勢い良く開いた。
642燃えろ!兄弟拳:04/09/26 22:43:27 ID:KLZ3yyFk
「大変大変!!大地震だってさ!どうする?」

そう言ってやって来たのは雅恵であった。
雅恵も自分のお店ペガサスでこのニュースを見ていたのだ。
慌てた様子の雅恵を見て思わず吹き出す瞳。
そんな瞳を雅恵はキョトンと見つめていた。

「ニュース・・・・見てなかったの?」
「見てたよ」
「だったらなんでそんなに落ち着いてるんだよ!」

興奮気味の雅恵に瞳は座るように言うと話を始めた。
643燃えろ!兄弟拳:04/09/26 22:44:07 ID:KLZ3yyFk
「火山活動のニュースってそんなに騒いでた?
 それに大きな地震が起こるならもっと早くからわかりそうなもんだけど・・・」
「はぁ?」
「だから・・・地震なんて嘘なんだよ。たぶん政府の情報操作でしょ」
「どうして?」
「どうしてって・・・・あんたねぇ・・・ゼティマしか考えられないでしょう。
 ほら・・昨日アヤカちゃんの話したでしょう?どうやら政府も
 秘密裏にゼティマに対する動きがあるって、そこが何か嗅ぎつけたんじゃない?」

瞳の言葉に雅恵は驚きの表情を浮かべる。

「マジで?中澤さんから連絡があったの?」
「推理だよ推理。私は探偵の娘だよ」
「けど・・・もし本当だったら?」
「今更どうにかなる?」
「・・・・無理だね」

雅恵はそう言うとやっと落ち着きを取り戻した。

「とにかく中澤さんに連絡取ってみよう・・・」

瞳はそう言うと携帯を手にした。
644燃えろ!兄弟拳:04/09/26 22:45:40 ID:KLZ3yyFk
川σ_σ||<つづけ!
645燃えろ!兄弟拳:04/09/27 21:12:03 ID:6eqNdqzt
「駄目だ・・・出ない」

中澤と連絡を取ろうとしたが応答がない。
やはり何か事件が起こっているのだと確信した瞳は
雅恵にめぐみを呼んで来るように言うと、自らも出かける準備を始めた。

「そんじゃ出発!」

インテリアショップペガサスと書かれたバンに乗り込んだ4人。
めぐみは車を中澤家と向かわせた。

「どうも最近こんなんばっかだね」

あゆみがそう言うと瞳も頷く。しかし

「なにが?」

雅恵は2人に聞いた。
646燃えろ!兄弟拳:04/09/27 21:14:00 ID:6eqNdqzt
「何がって・・・私たちに連絡がないって事だよ。
 何か事件があっても終わってから知らされる事が多いでしょ?」

瞳は不満そうに言う。

「そりゃ・・・あの子達はみんな何かあると突っ走っちゃうからじゃないの?
 作戦とか・・・・そんなの一切お構いなし!思った通りに行動しちゃうの」

めぐみが言った。
確かにその通りかも知れない・・・瞳はそう思った。
自分達に連絡した所で戦力は増えるがそれよりも先に
行動に移ってしまうのは中澤家の面々の癖であるとも言えるのだ。

「まあ、そうかも知れないけど・・・まさかあてにされてないなんて事は・・・」
「どうだろうね・・・実際・・・・・」

瞳の言葉に雅恵はそっけなく答えた。
どうやら瞳と同じ事を雅恵やめぐみも一度は考えた事がある様だ。

「そうなると・・・でもどうなんだろう?」
「なにが?」
「私達の戦力・・・中澤さん達と比べると・・・」

あゆみは不安そうに言う。
自分達は弱い・・・あゆみが一番認めたくない事である。
647燃えろ!兄弟拳:04/09/27 21:14:41 ID:6eqNdqzt
「あのさぁ・・・そんな心配してたらキリがないよ・・・少なくとも役には立ってるんだし
 確かにガチンコで勝負したら負けるかもしれないけどそれで良いんじゃないの?」

雅恵が言った。確かにその通りである。
少なくとも自分達はゼティマと戦える力を持っているのである。
たとえそれが中澤家の面々より劣っていたとしてもそんな事は問題ではない。
自分達にできる事をやる・・・それで良い。雅恵もめぐみもそう思っているのである。
そんな会話をしている4人の車の前から一台のバイクが走って来た。

「あれ!」
「ミカちゃん!」

4人がそれがミカだと気がついた時には既にミカは目の前に迫っていた。

「とっ・・・・」

めぐみは慌てて車を止めたがミカは気がついていないようである。
目の前の交差点を勢い良く曲がって行った。

「追うよ!」

瞳の言葉にめぐみはアクセルを踏み込んだ。
648燃えろ!兄弟拳:04/09/27 21:15:29 ID:6eqNdqzt
「駄目だ・・・追いつけないよ・・・」

特別仕様のミカのバイクと配達用の車・・・その性能の差は歴然である。
二台の差はどんどん開いて行く一方であった。

「ああ・・・・見えなくなちゃった・・・・」

雅恵が悔しそうに言う。
とりあえずそのまま車を走らせるめぐみは瞳に言った。

「お得意の推理でミカちゃん達がいそうな場所の特定できないの?」
「うーん・・・・今現在この場所で・・・・そうか!めぐみ!とりあえず港だ!」
「港?」
「そう、港!悪人が悪さをする場所は港って相場が決まってるの!」
「本当かよ・・・・」
「とにかく急げ!!」

ある程度の見当をつけ港に向かった4人。
とは言え埠頭もそれなりの広さがある。あちこち探しまわっている所に
猛スピードで走る一台のクーペを見つけた。
649燃えろ!兄弟拳:04/09/27 21:17:16 ID:PkxGrl4u
( `_´)<つづけ!
650燃えろ!兄弟拳:04/09/29 23:10:12 ID:uthPOjoq
「あれ!アヤカちゃんの車!」

瞳が叫んだ。

「今度こそ・・・」

そう言うとめぐみはその車の後を追う。
それでもやはり車の性能の差があった。
やっと追いついた頃にはライダー達が蠍谷に向かって出発した所であった。

「ああ・・行っちゃうよ・・・」

走り去るバイクを悲しそうに見つめるあゆみであったが
そこにはまだ稲葉とアヤカ、それにひとみとまいの姿があった。
651燃えろ!兄弟拳:04/09/29 23:11:08 ID:uthPOjoq
「稲葉さん!」

車を降りた瞳が稲葉に駆け寄る。

「おう!あんたらも来てたんかい」
「それよりみんな何処行ったんですか?」
「何処て・・・・あんたらも行くん?」
「はい」

瞳がそう言うと稲葉は一瞬躊躇したようなそぶりを見せたが言った。

「蠍谷や・・・」
「蠍谷?」
「ああ・・・ヨロイ元帥の計画を阻止するんや」
「場所は?」
「それが・・・うちはわからんねん・・・」

稲葉の言葉に4人は愕然とする。しかし

「じゃあみんなはどうやって・・・」
「なんやミカが場所知っとるらしいからそれで」

その言葉を聞いた瞳はアヤカを見た。
652燃えろ!兄弟拳:04/09/29 23:12:05 ID:uthPOjoq
「・・・・行くの?」
「勿論!」
「そう・・・・」

アヤカはそう言うと4人が乗ってきた車のナビを操作し始めた。
少ししてアヤカが言う。

「ここ・・・・私もだいたいの場所しかわからないからここまでだけど・・・」
「大丈夫!そこまで行けばもう騒ぎが始まってるでしょうから何とかなるよ」

そう言うと4人は稲葉達と別れ蠍谷へ向かう為、車を発進させた。

「蠍谷か・・・聞いた事もないね・・・」
「まあでもいかにもって感じ」

敵がいると思われる場所を聞いて瞳は笑っている。
こんな状況でも余裕を持とうと言う瞳ならではの行動とも言えるだろう。

「ヨロイ元帥ってどんなやつ?」
「さぁ?戦った事あったっけ?」

瞳の行動により張り詰めていた車内の空気が一転し
他の3人にも心の余裕が出来てきた様だ。
653燃えろ!兄弟拳:04/09/29 23:12:52 ID:uthPOjoq
( ‐ Δ‐)<つづけ!
654燃えろ!兄弟拳:04/10/03 13:50:04 ID:UB6iPa8a
車は蠍谷入り口へと到着した。
明らかに新しいバイクのタイヤ痕がある。
ミカ達がここを通ったのは間違いなさそうである。

「さてそれじゃあ乗り込むとしますか・・・」

瞳がそう言うと4人はなるだけ敵に気がつかれないように
慎重にタイヤの後を追う。
しばらく移動するとどこかで銃声が聞こえて来た。
既に戦いは始まっている様だ。
そんな中4人は明らかにゼティマとは違う一団が山の中を
物凄い勢いで移動しているのを見つけた。

「なんだあいつら・・・・?」
「・・・自衛隊?」
「いや・・・・違うよ。あんな動き・・・・普通の人間じゃない!」

普通の人間ではない集団はゼティマの怪人と戦っている。
その集団とは・・・そう、ソニン率いる守備隊である。
4人がそれを遠目に見つめていると
その後方から新たな敵が姿を現すのが見えた。
ゼティマ・・・いやこの集団はライダー軍団にあって
4人が一番良く知る敵である。
655燃えろ!兄弟拳:04/10/03 13:51:48 ID:UB6iPa8a
「あいつら・・・・デスター!!」
「デスターめ・・・あの人達の裏をかくつもりだな・・・」

蠍谷のゼティマと戦っている守備隊は後方より迫る敵、デスターに気がついていない。

「裏の裏を・・・・」

瞳がそう言いかけると

「だったら表だね・・・」

あゆみはそう言うと走り出した。


「予想通りだな・・・ヨロイ元帥がしくじるのも時間の問題だ」
「両者が消耗した所で我々がライダーどもにとどめをさすのだ・・」

そう言ったのはヘラクレス1とヘラクレス2・・・デスターの兄弟ロボットである。
2体のロボットは配下のブラックマンに守備隊への攻撃の指示を出した。

「どうやら余計なおまけがいるようだ・・・まずはあいつらからやれ!!」

ヘラクレス1がそう言った時である。

「させるかぁ!!」

そう声が響いたかと思うと2体のブラックマンが破壊された。
656燃えろ!兄弟拳:04/10/03 13:52:44 ID:UB6iPa8a
「貴様は・・・・いまいましいバイクロッサーとかの仲間だな!」

そう言ったヘラクレス2が見つめる先にはあゆみが少林拳の構えを取って立っていた。

「あの人達の邪魔はさせないよ」

そう言って姿を現したのは瞳である。
瞳の両手には弁慶から貰った武器「サイ」が握られている。

「かかって来い!」

あゆみと瞳がそう言うとブラックマン達が2人に一斉に襲い掛かった。

「雑魚はやつらに任せて・・・行くぞ!」

ヘラクレス1・2は2人の相手をブラックマンにさせると
守備隊に向かって歩き出す。そこに・・・

「残念だがお前達の相手は私達だ!」

そこには変身を終えた2人の姿があった。

「バイクロッサーメグミ!」
「バイクロッサーマサエ!」

2人はそう叫ぶと2体のロボットの前に立ちはだかった。
657燃えろ!兄弟拳:04/10/03 13:53:47 ID:UB6iPa8a
ノノ “ З.“)<つづけ!
658川o・-・):04/10/06 23:35:59 ID:wu5OsI0f
川o・-・)<おでん
μ’ヮ’)つ<ちがうだろ
659燃えろ!兄弟拳:04/10/08 21:32:53 ID:IOQirToL
「やはりお前達もいたか・・・だが仲間を助けもせずにいたとは随分と余裕だな」
「仲間?」
「あの連中だ!どうせお前達の仲間であろう」

ヘラクレス2はそう言って守備隊を指差した。

「ああ・・・・だからこれから援護するんじゃない。あんたらをぶっ潰してね」
「そうそう、だいたい私達だって今来たとこだし・・あの人達事知らないし・・・
 あんた達あの人達が何者かしってる?」

マサエがそう言うと

「知るか!まあ良い。お前達も含めて全員地獄に送ってやる!」

ヘラクレス2はそう言うと胸のミサイルを放った。

「げっ!ミサイルは反則だぞ!このやろう!!」

マサエは素早くミサイルをかわすとスリングクラッシャーを放つ。
660燃えろ!兄弟拳:04/10/08 21:34:00 ID:IOQirToL
「こっちもだ喰らえ!」

同時にメグミもバスタークロスを放った。

「この程度でやられるものか!!」

ヘラクレス1・2共に左手に盾を持ちバイクロッサーの攻撃を
それで防ぐと、右手に握る剣で斬りかかってくる。
メグミはクロスブレードで応戦するとマサエはクロスシューターを構えた。

「こっちだってそう簡単にやられる訳にはいかないよ!」

メグミはヘラクレス1をマサエはヘラクレス2を
それぞれ相手に戦いしばらく攻防が続いていた。
ヘラクレス2が放つミサイルを避け、ヘラクレス1の剣を巧みにかわす2人。
じっと敵の攻撃に耐え遂にその隙を捕らえた!

「今だ!」

メグミはそう叫ぶとクロスブレードに太陽の光を反射させる。
661燃えろ!兄弟拳:04/10/08 21:34:34 ID:IOQirToL
【光射眩】(こうしゃげん)

メグミのクロスブレードに光を反射させ敵の視界を奪い
マサエが必殺の一撃を放つ必殺技である。

「喰らえ!」

マサエはそう叫ぶと強力な一撃をヘラクレス2に放つ!

【ドカーン!!】

見事マサエの攻撃はヘラクレス2を粉砕!
残るはヘラクレス1である。

「残るはお前だけ!」

メグミはバスタークロスを手にすると次々に敵に向けて放つ。

「トドメだぁ!!」

マサエはそう叫ぶと愛車のマサエクロンに飛び乗り
勢いをつけ飛び上がる。
飛び上がったマサエクロンをメグミは肩に担いだ!
662燃えろ!兄弟拳:04/10/08 21:35:42 ID:IOQirToL
川σ_σ||<つづけ!
663名無し募集中。。。:04/10/12 00:39:49 ID:6/ju3NNW
(●´ー`)´ Д `)‘ 。‘)<保全戦隊 シツレンジャー!
664燃えろ!兄弟拳:04/10/13 22:50:57 ID:D8aUjYLq
【ブレーザーカノン!!】

マサエが乗ったバイクマサエクロンを
メグミが担ぎ、敵にとどめを刺す必殺技
強大なエネルギーはヘラクレス1の盾を破壊しその体もろとも吹き飛ばした。

「グォォォ・・・!!」

必殺のブレーザーカノンを喰らったヘラクレス1も耐え切れずに大爆発を起こす。
2体のロボットはバイクロッサーの前に完全に破壊された。

「こっちもこれで終わりだ!」

あゆみ声が聞こえる。
2人が振り返ると丁度あゆみが最後のブラックマンにトドメを刺す所であった。

「この程度の力で私達に勝てるとでも思ってたのかねぇ」
「まったく・・・って、瞳あんた一番仕事してないでしょ!」
「まあそれはほら・・・・社長だし・・・」
「うちらは関係ない!」

瞳とマサエが言い合いをしている時であった。
665燃えろ!兄弟拳:04/10/13 22:52:09 ID:D8aUjYLq
【ドカーン!!】

上空で何かが爆発を起こす!

「何?・・・何が起こったの?」
「ロケット・・・?え?ちょっと!人が・・・・誰か落ちてくるよ!」

爆発が起こった空中を見上げていた4人の視線に一人の落下する人間の姿が映った。

「ん・・・・?ちょっと、あれ・・・・ミカちゃんだよ!」

メグミがそう叫ぶと4人は慌ててミカの姿を追いながら走り出した。

「間に合うか?」
「マサエ!お願い!」

メグミがそう叫ぶとマサエはメグミを担ぎ上げ投げ飛ばした。

「そりゃぁ!」

マサエに投げ飛ばされたメグミは空中に舞い上がる。
両腕で落下するミカの身体を受け止めると何とか着地に成功した。
666燃えろ!兄弟拳:04/10/13 22:52:49 ID:D8aUjYLq
「ミカちゃん!生きてる?」

瞳は素早く駆け寄ると声をかけた。

「う・・・・ん・・・」

「うわぁ・・・ボロボロじゃない・・・・」
「でも生きてるみたい」

後から駆けつけたマサエとあゆみが驚きの声をあげた。

「・・・・あれ?・・・・私・・・助かったの?・・・・ん、斉藤さん!」

気がついたミカが瞳の姿を見て言う。

「どうしたの?何があったの?」
「・・・みなさんが助けてくれたんですか?」
「うん。そんな事より早く病院に行かないと・・・」
「平気です・・・・みんなの所に戻らないと・・・」
「バカ!何言ってるのよ!後は私達が引き受けるから心配しないで」
「いいえ・・・私がやらないと駄目なんです。私が・・・・」

ミカはそう言うと事の詳細を簡単に4人に話して聞かせた。
プルトンロケットの事、自分の過去の事。
そしてヨロイ元帥と決着をつけなければいけない事・・・・
667燃えろ!兄弟拳:04/10/13 22:53:49 ID:D8aUjYLq
「なるほどね・・・・でも本当に大丈夫なの?右手なんか・・・・」
「大丈夫です。この右手は元々改造アームですから・・・」
「でも・・・」

あゆみがそう言って引きとめようとすると

「あゆみ、行かせてあげよう。ここは私達の出る幕じゃないよ」

瞳が言った。

「ミカちゃんが・・・ずっと苦しんできた過去の過ちを清算するんでしょ?」
「はい・・・すべての罪滅ぼしの・・・・これが・・・ヨロイ元帥を倒すのが始まりです」
「そう・・・だったら行ってらっしゃい。でも1つ約束して」
「何でしょう?」
「死なないでね」
「勿論です」

ミカはそう言うと重傷の身体を引きずりながら戦場へと戻って行った。
4人はそれをただ見守るだけである。

それからしばらくしての事だ。今度は地上で爆発音が聞こえて来た。

「山が・・・・燃えてる・・・」

この付近にあった施設が次々に爆発を起こし山全体が炎に包まれている。
668燃えろ!兄弟拳:04/10/13 22:54:30 ID:D8aUjYLq
「あ、あそこ!」

そう言ってあゆみが指差した先には数人の人影が同じ様に燃えさかる山を見つめていた。

「あの子達・・・それにミカちゃんも無事みたいだね・・・」

加護や矢口達の姿を確認した瞳は安心した様に呟いた。

「あの2人は・・・?」

変身を解いた雅恵がソニンと前田を指差す。

「さあね・・・でも見た感じ敵じゃないみたいだね」

同じく変身を解いためぐみが言った。
669燃えろ!兄弟拳:04/10/13 22:55:52 ID:D8aUjYLq
「今回出番はなしか・・・・」

雅恵が言うと

「これだけでも充分でしょ?」

めぐみは言う。そばいる瞳もあゆみも満足そうに頷く。
その瞬間、またしても爆発が起こった。

「何だ!」

驚いた4人であったがそれが自衛隊の砲撃である事に
気がつくのにはそれほど時間がかからなかった。

「自衛隊の砲撃らしいよ」
「え?そうなの?」
「やぐっちゃんの叫び声が聞こえたよ」

雅恵が言う。

「流石!子供の叫びには敏感だねぇ」
「子供て・・・・」
「ほら、そんな事よりこっちも逃げないと巻き込まれるよ!」

瞳はそう言うと走り出した。


             いんたーみっしょん
              【第三の視点】おわり
670燃えろ!兄弟拳:04/10/13 22:57:45 ID:D8aUjYLq
川σ_σ|| ( `_´) ノノ “ З.“) ( ‐ Δ‐)<おわる!!
671名無し募集中。。。:04/10/15 17:13:45 ID:FW3FRAZJ
>>670
乙!
672ねぇ、名乗って:04/10/17 04:14:10 ID:bWWeKDYN
>>670
乙れした。
瞳姉さん、ええなあw
673ねぇ、名乗って:04/10/17 22:44:17 ID:3LmNfE6X
最近読み始めてやっと追いついた。
>>670 お疲れ様でした。

ところでナナシマンさん、そろそろお帰りになるころでしょうか?
無事にお帰りになることをお祈り申し上げます。
674名無しスター:04/10/18 00:39:23 ID:cs2WxGyv
>>670
お疲れ様でした。

じゃあ次行かさせていただきます。
これ書き始めたのGW前だったりするw
675名無しスター:04/10/18 00:43:39 ID:cs2WxGyv

第58話  「選ばれし者たち」

676名無しスター:04/10/18 00:44:19 ID:cs2WxGyv

ガツッ!

敵のパンチがガードをかいくぐり、スカイライダーの頭部にヒットした。

「ぐっ・・・このっ!」

必死にパンチで反撃するが、間一髪でかわされた。
再び敵の攻撃が来る。全部はかわしきれない、何発か食らう。
圧倒的、とまではいかないが実力の差は明らかだ。じりじりと追い詰められていく。

「くっ・・・」

スカイライダーは後ろに下がり、距離を置こうとする。
少しでも体に蓄積したダメージを回復しようとするためだ。

しかし敵はそのわずかな時間さえ与えようとしない。間を置かずに攻撃を加えてきた。
677名無しスター:04/10/18 00:45:14 ID:cs2WxGyv

敵の激しい連打が襲う。

「わっ!」

スカイライダーはたまらずバランスを崩し、尻餅をついた。
それを見て敵はジャンプし、さらに追い討ちをかける。

ドガッ!

敵の足が地面に深く突き刺さっていた。
スカイライダーは間一髪で横に逃れ、後方にジャンプしようやく距離をとった。

スカイライダーの息が荒い。大きく肩で息をする。
一方の敵は息一つ乱れる様子も無く、悠然と構えている。

「何者?・・・」

これまでに見たことも無いような強敵だ。
マントのような布を頭からスッポリと被っていて、正体はわからない。

・・・だが何故かその動きには見覚えがある。
678名無しスター:04/10/18 00:46:39 ID:cs2WxGyv

力の差はそれほど大きくはないようだが、スピード・パワーとも向こうが上だ。
まともにぶつかって勝てる相手ではない。

スカイライダーの最も得意とするのはX、ZX、イナズマンとの連携攻撃だ。
2人以上で戦えば2の力が3にも4にもなる。
4人全員揃えば相手が誰だろうと負ける気はしない。

だが今日は1人きりだ。

1人で戦う羽目になったのはこちらのミスだった。
新垣とパトロール中、ゼティマの怪人を見つけた。
二人で追跡したが、いつの間にか敵の罠に落ち、戦力を分断された。

スカイライダーが1人では弱いというわけではない。
事実パワーアップした後は、デズラー軍団に苦戦した以外は負け知らずである。

ただ今回は相手が悪かった・・・
679名無しスター:04/10/18 00:49:10 ID:cs2WxGyv

大きく距離を取ったが、敵は無造作にずかずかと距離を詰めてくる。
スカイライダーもそれに合わせて後退する。
後ろは崖だ。逃げ場は無い。

「セイリングジャンプ!」

スカイライダーは重力低減装置を作動させ、上空高く舞い上がった。
得意な空中戦に持ち込むつもりだ。

あっという間に100mほど上昇。上空で敵を迎え撃つ体勢を取った。
しかし敵の姿が見えない。

「・・・見失った?」

下をキョロキョロ見回していると、突如上空から轟音が響いてきた。

「・・・上?」

音の方向を見上げると、敵が踵のジェットエンジンでさらに上空を飛行している。

「まさか・・・」

呆気にとられるスカイライダーに容赦なく攻撃が加えられる。
680名無しスター:04/10/18 00:50:02 ID:cs2WxGyv

ジャリィィン!

敵の手の甲から鎖が発射された。

「くうっ!」

先端の鎌はかわしたが、鎖が左足に絡みつく。

「この技は?・・・」

敵は鎖を引っ張りスカイライダーを引き寄せる。

「くそっ!」

逆に鎖を両手で掴み、思い切り引っ張り返した。
敵が空中でバランスを崩す。

「チャンス!」

鎖が一瞬緩んだ隙に左足を外し、空中戦を挑む。

空中で2人のパンチ、キックが交錯する。
681名無しスター:04/10/18 00:51:54 ID:cs2WxGyv

敵はスピードは速いが動きが直線的だ。
これに対しスカイライダーは自由自在に空中を駆け回る。
あっという間に敵の後ろに回り込む。さすがに空中戦ではスカイライダーに分があった。

「スカイバックドロップ!」

敵を抱えたまま一気に急降下した。


「ウオオオオオ!!」

「・・・まずい!」

地面に激突する直前、どういうわけか、スカイライダーが空中で大きく体をひねった。


そして大轟音と共に地面に激突した。
682名無しスター:04/10/18 00:57:31 ID:cs2WxGyv

「うううっ・・・」

大きく窪んだ地面の中央で、スカイライダー1人だけが倒れていた。
手には敵のマントだけが残されている。

スカイライダーは地面に激突する直前に「悪い予感」がした。
それで敵のダメージを減らすため、激突する角度を変えようとした。
その隙を突かれ、敵に逃げられてしまったのだった。

顔を上げると、前方にマントを脱いだ敵の姿が目に入った。

どうやら悪い予感が的中した・・・

「いったいどうして?・・・」

ようやくスカイライダーは体を起こしかけ、前方の人影に向かって叫んだ。

「・・・どうしてなの?まこっちゃん!」


スカイライダーの視線の先にはZXが立っていた。
683名無しスター:04/10/18 00:58:33 ID:cs2WxGyv



                   つづく
684ナナシマン:04/10/18 20:21:07 ID:E43+evLK
帰国しますた。
685ナナシマン:04/10/18 20:22:51 ID:E43+evLK
 うっかり途中で送信・・・燃えろ!兄弟拳さんと名無しスターさんの
話、これからじっくりと読ませていただきます。
686名無し海士長:04/10/18 21:46:08 ID:rIsN/xXN
ナナシマンさん
/(・・)イラク派遣お疲れ様でした
687名無しスター:04/10/19 00:36:12 ID:z0508cmP

よろよろと立ち上がるスカイライダーにZXが猛然と攻撃を加える。
先ほどまでの冷静な戦い振りとは人が変わったようだ。

スカイライダーは混乱しながらも何とか防御しようとする。
小川は今日「ビデオ係」のはずだ。
ほんの1時間前、パトロールに行く自分を玄関まで見送ってくれた。

小川が自分を狙う理由が分からない。

「やめて、まこっちゃん!一体どうしたの?」

スカイライダーが叫ぶのにも構わず、ZXは攻撃を続ける。

「キサマ!オレニ恐怖ヲアジアワセルナド!・・・許サン!」


「まこっちゃん・・・じゃないの?」
688名無しスター:04/10/19 00:38:06 ID:z0508cmP

ZXの攻撃を受けながらスカイライダーは違和感を感じていた。

紺野と小川は2人でよくスパーリングをする。
そのせいで2人はお互いの癖をよく知っている。
だから分かる、小川とは闘い方が違う。

いや、中澤家に来たばかりのころの小川に少し似ているかも知れない。

「まさか、捕まってまた洗脳されて・・・・」

ガシッ!

スカイライダーはZXの蹴り足を右手で掴んだ。

「・・・違う!」

ZXの足からわずかに聞こえる機械の作動音で確信した。

これは小川ではない。
689名無しスター:04/10/19 00:38:58 ID:z0508cmP

「このおっ!」

ドガッ!

スカイライダーは残った力を振り絞り、ZXにパンチを浴びせた。
ZXは不意を突かれ、よろよろと後ろに下がる。

相手が小川でないことは分かった。
しかし攻撃を受けすぎた。
特にスカイバックドロップの「自爆」によるダメージが大きい。

もう反撃する力は残っていなかった。
690名無しスター:04/10/19 00:40:14 ID:z0508cmP

そんなスカイライダーにZXは容赦なく追撃する。

「・・・負ける?・・」

スカイライダーの脳裏に「敗北」の文字が浮かぶ。
負けるということはどういうことか・・・・

改造する前に、キャンプ場でガメレオンジンに敗北した記憶が生々しく蘇る。
背中にぞくりと寒気が走る。

体が思うように動かない。
完全に恐怖に体が支配されてしまった。
その途端に体が重くなる。激痛に体が耐え切れなくなる。


「・・・いやだ、負けたくない!」
691名無しスター:04/10/19 00:41:27 ID:z0508cmP

「セイリングジャンプ!」

焦ったスカイライダーは再び空中に逃げようとした。

ジャキイ!

そこへZXのマイクロチェーンが襲う。
チェーンが左膝に絡みつき高圧電流が流れる。

「うわあっ!」

そしてそのまま地面に叩きつけられた。

「ぐうっ・・・くそっ・・・」


バカン!


必死に立ち上がろうとしたところへ、顔面に強烈なパンチが襲った。

ZXパンチだった。
692名無しスター:04/10/19 00:42:50 ID:z0508cmP



                   つづく
693名無しスター:04/10/20 00:25:46 ID:7hi/JiBQ
スカイライダーはまるで糸の切れた操り人形のように前のめりに倒れ、そのままピクリとも動かなくなった。

「フウ・・・手コズラセヤガッテ・・・」

ZXはスカイライダーに歩み寄り、止めを刺そうと振りかぶった。

「グウッ!・・・」

突如ZXの体に異変が起きた。
オーバーヒートだった。

『・・すぐに戻れ!』

ZXに無線で指示が入った。

「・・・シカシ、コイツダケデモ・・・」

『・・・危険な状態だ、今すぐ戻れ!』

「アト一撃ダケ、トドメヲ・・・」

そう言って前を向き直ったZXの目に、信じられない光景が映った。
694名無しスター:04/10/20 00:27:26 ID:7hi/JiBQ

「・・・バカナ!」

完全に倒したはずのスカイライダーがゆらりと立ち上がってきたのだ。

「・・・アレヲ食ラッテ立チアガレルハズガ・・」

「・・・負けたく・・ない・・・」

紺野の強い思いと、スカイライダーの本能が再び立ち上がらせたのだ。
どれだけ力が残っているかわからない。意識もほとんど無い。
しかし今のZXには脅威だ。

「あさ美ちゃーん!・・・」

おまけに、どこからかイナズマンの声まで聞こえてきた。


「チッ・・・」

ZXはようやく諦め、一目散に走り去った。

イナズマンがスカイライダーに駆け寄る。

「今のは?・・あっ!」

ZXが走り去るのを見届けたように、スカイライダーが再び倒れ込んだ。
695名無しスター:04/10/20 00:28:07 ID:7hi/JiBQ



                   つづく
696ねぇ、名乗って:04/10/20 17:35:26 ID:xB5FwFct
更新乙。なんだか今回スリリングな話だね。
697名無しスター:04/10/20 23:54:12 ID:EjofMSZw

「まこっちゃん、いる!?」

新垣は中澤家に到着するなり大声で怒鳴り散らした。
肩には紺野を抱えている。

「小川なら、居間でひとみとテレビをチェックしてるけど・・・紺ちゃん、どうしたの?」

玄関で出迎えた梨華はあっけに取られながら、紺野の様子を気にしていた。

「あさ美ちゃんをお願い。」

「ちょっと!何があったの?」

新垣は紺野を梨華に預け、居間に走って行った。


「あはは・・・相変わらず草野仁は笑わせよんなあ。」

「・・・ひとみさん、本気でそう思ってます?」

居間でひとみと小川がTV番組をチェックしているところへ、新垣が飛び込んできた。
698名無しスター:04/10/20 23:55:07 ID:EjofMSZw

「まこっちゃん!!何があったか知らないけど、いくらなんでもやり過ぎだよ!!!」

居間に入るなり物凄い剣幕で小川を怒鳴りつけた。
ひとみと小川はキョトンとしている。

「里沙ちゃん・・・何のこと?」

「とぼけないでよ!さっきあさ美ちゃんに・・・」

「小川なら今日ずっとここにいたよ?」

ひとみが言った。

「え?・・・だって・・・」

「あさ美ちゃんがどうかしたの?」

「いや・・さっき2人が大ゲンカをして、あさ美ちゃんがボコボコに・・・」


「里沙ちゃん・・・それは違うの・・・」

梨華に抱えられ、紺野が入って来た。

「あさ美ちゃん!」

紺野の様子を見て小川が叫び声を上げた。

「・・・一体何があったの?」
699名無しスター:04/10/20 23:56:38 ID:EjofMSZw

夕食時、パトロール係と紺野を除いた全員が居間に集まっていた。

「それで、結局紺野ちゃんを襲ったのは偽者だったのれすか?」

「偽者ゆーか、あっちも本物や。いや、小川が『試作機』という意味ではむしろあっちが本物で、
 小川が偽者と言うべきかも知れんな。」

辻に中澤が説明する。
小川はうつむいたまま黙っている。

「まだZX計画は生きとったんやな・・・」

「ZX計画って、そもそもどういう計画なの?」

安倍が中澤に聞く。

「うちらもあんまり詳しくは知らんのやけどな・・・」

「中澤さんが持ち出した資料と、私がゼティマにいたころに聞いた噂。そして北信越支部のデータから推定するしかないけど・・・」

中澤と石黒はそう前置きして説明を始めた。
700名無しスター:04/10/20 23:58:02 ID:EjofMSZw

「・・・『ライダーキラー』って、つまり私達を倒すためだけに作られたってこと?」

「いや、もともとは少数精鋭の特殊部隊を作るつもりだったみたいだけど。」

「ライダーが現れて名前が変わっただけみたいや。当面の標的がライダー、ってことらしいな。」


「今更出てきたってことは、いよいよ量産が始まったってことなの?」

安倍が心配そうな顔をした。

「うーん・・・費用が並の改造人間の50人分とも100人分とも言われてるしな。」

中澤は腕を組んで考え込んだ。

「まこっちゃんの体を調べたけど、あんな手間のかかるもんそうそう数は揃わへんで。」

加護も量産化には否定的だった。
701名無しスター:04/10/20 23:59:58 ID:EjofMSZw

「・・・よかったあ。あんなのが何十人も来たらさすがにヤバイよね。」

安倍がホッとした様子で言った。
矢口と飯田、ケイまでも黙ってうなずいていた。

「・・・ところで紺野の様子は?」

飯田が新垣と高橋に聞いた。

「思ったより軽症でした、もう1人で歩けます。」

「1週間もすれば元通り闘えるようになります。」

「じゃあなんで夕食に来ないの?あの食いしんぼが・・・」

新垣と高橋はそれを聞くと黙ってうつむいてしまった。


「まさか、また・・・」

「はい・・・落ち込んでます。」
702名無しスター:04/10/21 00:01:43 ID:6D4QerR0

「なーによ、1回負けたぐらいで。相手を考えろってのよ!」

「そうだよ、辻加護2人でもあれだけ苦戦したんだから。ねえ?・・・」

「ちょっと!・・・」

騒ぐ飯田と矢口を安倍が止めた。

テーブルを見ると小川が肩をすぼめてショボーンとうつむいていた。


「あっ、ごめん小川。そういう意味じゃなくてさ・・・」

「・・・と、とにかく紺野を呼んでくるよ」

飯田はそう言って慌てて席を立った。

「待って。落ち込んでる時に無理に連れてこない方がいいよ。」

安倍が飯田を止めた。


「どうするの?」
703名無しスター:04/10/21 00:02:31 ID:6D4QerR0

「こういう時はね、体を動かすとスッキリするから・・・紺野と二人で地下に行って来るね。」

「ええけど、もうすぐ食事やし、ケガ人やから無理させたらあかんで。」

中澤が後ろから声をかけた。



「・・・まあ紺野も悩んでもいつもそれなりに答えを出すから大丈夫でしょ。」

「別にまこっちゃんの責任じゃないんだから元気出しなよ・・・」

皆があれこれ話しているところへ安倍が戻って来た。


「・・・みんなごめん、手伝って〜!」

背中にはぐったりした紺野がおぶさっていた。


「だから無理するなって言ったやろ・・・」
704名無しスター:04/10/21 00:03:21 ID:6D4QerR0



                   つづく
705名無しスター:04/10/21 00:30:01 ID:6D4QerR0
>>696
感想サンクス。
今回は肩の凝らないアクション中心です。
706ねぇ、名乗って:04/10/21 01:43:20 ID:XEvFUtDc
>>705
 今回みたいなメンバー間の友情、みたいな話は今後も楽しみ。
707名無し募集中。。。:04/10/21 01:46:05 ID:sYPkThY2
 兄弟拳タソの話とスタータソの話も含めると、蠍谷の戦いはやたらと
多角的な様相を呈してたんだな
708名無しスター:04/10/22 00:02:00 ID:URJJu53j
一方そのころ

某地某所のゼティマ本部・中央研究所
研究室の1室で、ZXが手術台に乗せられていた。
機能は停止され、横に研究員の男が立っていた。

「基本性能はライダーを上回っているはずだ・・・・」

男はブツブツ独り言を言いながらメンテナンスを続けていた。
ZXは2機目となり、あらゆる所に改良が加えられた。
細かいパーツ1つ1つまで磨き上げられ、機械としての性能は20%以上向上している。
まさに「芸術品」と言っても良い。

しかしそれはあくまで計算上の理論値であり、いざ戦いとなると経験などに左右される。
事実、スピード・パワーで勝りながらスカイライダー相手にあそこまで苦戦した・・・

「やはりココの問題か・・・・」

男はそう言いながらZXの頭部を指でコンコンと叩いた。
そして手を止めると、ぼんやりと考え出した。
709名無しスター:04/10/22 00:02:56 ID:URJJu53j

「たいしたザマだな・・・」

突然背後から女性の声が聞こえた。
声の主は遠慮なく研究室の中に入って来るとZXをはさんで研究員の正面に立った。
男はその様子を畏れと嫌悪感の混じった視線で眺めていた。

「・・・あれだけの予算を使ってあの程度なのか?」

声の主、信田美帆はそう言って男とZXを睨みつけた。
710名無しスター:04/10/22 00:05:19 ID:URJJu53j

男は怖気づきながらも反論しようとする。

「し、しかし、トップクラスの実力のライダーをあと一歩まで・・・」

「おい!・・・」

信田の目が鋭く光る。

「ぐうっ・・・」

「まさか本気で言っているわけじゃないよね・・・」

片手で研究員の首を締め上げながら無表情で語りかける。

「も・・申し訳ありません。」

手を離すと男は首を押さえながら激しく咳き込んだ。

「奴が手加減しなければ倒されたいたのはこっちの方だ。それを忘れるな!」

「はい・・・・しかしなぜ手加減を?」

「たぶん味方と間違えたのだろう。・・・相変わらず甘い奴らだ」
711名無しスター:04/10/22 00:06:30 ID:URJJu53j

「機械自体の性能は上がっているのですが・・・」

男はZXの方をチラと見て恐る恐る説明する。

「頭脳の問題か・・・やはりこれはまゆみでないとダメか・・・」

信田はそれだけ言うと黙り込み、そのまま研究室から出て行った。


「クソッ!」

信田が出て行ったのを確認した後で、男は手に持っていた工具を床に叩きつけた。

「・・・どいつもこいつも『まゆみまゆみ』と・・」

この男も研究員としては夏まゆみに負けず劣らず優秀である。
ZXの2号機をここまで磨き上げたのも彼の功績だ。
しかし脳改造に関してだけは夏に遠く及ばない。

2号機の「シンクロ率」は現在40%そこそこ。
つまり全性能の4割しか力を発揮していないことになる。
712名無しスター:04/10/22 00:07:27 ID:URJJu53j
これまでに何十人もの脳を改造したが、ほとんど使い物にならなかった。
どうにかまともに使える脳が見つかったが、それでもたった40%である。

夏と、その夏が直接教えを受けたつんく博士、加護博士・・・
彼らが直接手にかけた改造人間は揃ってバケモノ並みの性能を持つ。
しかしその脳改造技術は誰にも真似できない・・・

そもそも夏が脱走した原因は信田自身ではないか。
その本人がのこのこ舞い戻って来て偉そうに指示を出している。
男はそこも気に入らなかった。

男は小さくため息をつき、顔を上げた。
誇らしげに、壁の一番目立つところに貼ってあるグラフが目に入った。

「99%」

小川が脱走直前に叩き出した最高記録だ。


「・・・くそ、今に見てろ!」

男はZXの脳の再改造に着手した。
713名無しスター:04/10/22 00:08:15 ID:URJJu53j



                   つづく
714名無しスター:04/10/23 02:21:15 ID:3TpeBoRj

深夜の中澤家。

「眠れへんのか?」

ベランダで1人外を眺めていた小川は中澤の声に振り向いた。

「・・・はい。」

「あんたが責任感じることやないやろ?」

中澤はそう言いながら小川の横に立ち、手すりに体をもたれかけた。

「いえ、違うんです。あさ美ちゃんのことも心配ですけど・・」

「ん?じゃあ、あれか?また怖い夢でも見たんか?」

小川はよく怖い夢にうなされる。
そのためここに来たばかりの頃はしばらく中澤と一緒の部屋で寝ていた。
最近はようやく怖い夢を見る回数が減ってきたようだが・・・

「・・・なんなら久し振りに添い寝してやろか?
715名無しスター:04/10/23 02:22:14 ID:3TpeBoRj

「あ、それは結構です。」

小川は大げさに手を振ってその申し出を断った。

「じゃあ、なんやの?」

中澤はちょっと不機嫌になった。

「今日の改造人間・・・」

「ゼクロスのことか・・・」

「・・・はい。あれがもし私と同じ体を持っているなら、改造された人は私と同じような脳改造をされていると思うんです。」

「そやな。」

「そして・・・私と同じ目に遭ってる思うんです。」

「・・・・・・」

「私と同じ苦しみを受けているはずです。だから・・・」


「・・・助けてやりたいんやろ?」

小川は黙って頷いた。
716名無しスター:04/10/23 02:22:49 ID:3TpeBoRj

「もし、またあいつが現れたら私に闘わせて下さい。きっと助けられると思うんです。」

「うん。・・・でも無理はあかんで。」

「はい・・・」

そのまま二人はしばらく無言でベランダから外を眺めていた。


中澤に頼むまでもなく、小川はZXの2号機と闘うことになる。
ゼティマが2号機の総仕上げの相手に選んだのは、「1号機」の小川だった。
717名無しスター:04/10/23 02:23:54 ID:3TpeBoRj



                   つづく
718名無しスター:04/10/25 00:54:52 ID:vhlYwFE+
2日後の昼過ぎ。

小川とパトロール中の飯田から、焦った様子で連絡が入った。
怪しい人影を追跡中に、小川とはぐれたというのだ。

おそらくこの間のZXの2号機であることは間違いない。
中澤の指示で、ビデオ当番の矢口が「充電中」の里田を無理矢理連れて出動した。
これで残っているのはもう一人のビデオ当番の梨華だけだった。
本当は梨華も出動させたいところだが、ここを空にするわけにもいかない。

「私も行きます!」

紺野がパジャマ姿のままリビングに飛び込んできた。
719名無しスター:04/10/25 00:55:27 ID:vhlYwFE+

「あんたはダメや。まだ闘える状態やないやろ。」

「もう大丈夫です。それに、相手があいつだとしたらまこっちゃんが危ないです!」

先日のベランダでの小川との会話を思い出し、中澤は黙り込んだ。
小川はZXの2号機を相手に本気で闘えないかも知れない・・・


「それに・・・」

「なんや?」

「私、負けた自分が許せないんです。」

紺野は下を向いた。声が震えていた。

「仕方がないやろ、紺野は精一杯頑張ったんやし、勝負は時の運や。」

「違うんです。驕りがありました。自分が強くなったと勘違いしてたんです。」

「いや、実際強くなったやんか・・・」

中澤は慰めのつもりではなく、本気でそう言った。
720名無しスター:04/10/25 00:57:34 ID:vhlYwFE+

「意地を張り過ぎたんです。中澤さんや里沙ちゃんの言うことをちゃんと聞いていれば・・・」

紺野は帰ってきた後で、中澤と新垣にこっぴどく説教をされた。
負けたことを責められた訳ではない。
闘いに熱くなり過ぎて無茶をし、危うく命を落としかけたからだ。

自分達の目的はゼティマを倒すことだ。
改造人間1人と刺し違えたのでは割に合わない。

命にも「懸け時」がある。
今回の敵は命を懸けてまで倒すべき相手ではない。逃げることも戦略の1つだ。
スカイバックドロップ失敗の後でも逃げ出すチャンスはいくらでもあった。
しかし紺野は意地を張りすぎて逃げることが出来なかった。

おとなしい顔をしているが、紺野もかなりの負けず嫌いの強情っ張りだった。
721名無しスター:04/10/25 00:58:26 ID:vhlYwFE+

「・・・それで、どうしたいんや?」

「・・・このままで終わるのは嫌です。最後まで見届けるだけでもいいんです。」

紺野は顔を上げ、力の入った目で中澤の顔を見据えた。

「それに、まこっちゃんが心配なのも本当のことなんです。」

「・・・わかった。」

紺野の表情がふっと緩んだ。

「でも無茶したらあかんで、無事に帰って来いや。もし・・・」

「わかってます。 『死んだらぶっ殺す』 ですよね?」

「・・・わかればよろしい。」

紺野は笑顔で頭を下げ、着替えもそこそこに中澤邸を飛び出していった。
中澤はそんな紺野を頼もしく思いながら見送った。


「・・・あの娘も戦士らしくなって来たやんか。」
722名無しスター:04/10/25 01:01:30 ID:vhlYwFE+



                   つづく
723名無しスター:04/10/27 00:33:56 ID:IAfJEPao

ZX(小川)は山奥の廃車置場で敵と対峙していた。
敵は今回もマントのような布を頭からスッポリと被っている。
またしても巧妙な罠だった。

いつのまにか飯田と分断され、一人でここに誘い込まれていた。
しかし、半分わざと罠に乗ってやった面もある。
もしも相手が「2号機」ならば望むところだ。

「さっさとマントを脱いだらどう?あんたの正体は分かってるんだからね。」

ZXがそう言うと、敵は体に巻きつけた布を引きちぎり、正体をあらわした。
やはり「2号機」だった。

ZXとほとんど同じ姿形。よく見ると細かい部品に改良の後が見られる程度だ。

「何が目的か知らないけど、私があんたの目を覚まさせてあげる。」


「・・・オマエヲ倒セバ、オレガ本物ノゼクロスダ!」

そう言うと「2号機」は一直線にZXに向かって行った。
724名無しスター:04/10/27 00:38:53 ID:IAfJEPao

廃車置場から1kmほど離れた山中に、ワンボックスの車が停まっていた。
車にはアンテナが数本立ち、中には多数のモニターと機械が並べられていた。

「ひょっとして『1号機』は手加減してるんですかね?」

2人の闘いをモニターで見ながら、研究員の男が恐る恐る信田に尋ねた。

「少し遠慮しているようにも見えるが・・・ほぼ全力だろうな」

闘いは徐々に「2号機」のペースになりつつある。
今回の脳の再改造により、「2号機」のシンクロ率が7%向上した。

わずか7%でもかなり効果がある。「2号機」はスピード、パワーとも見違えるほど上がっていた。
725名無しスター:04/10/27 00:40:04 ID:IAfJEPao

生身の人間の目では闘いの様子は追い切れないが、送られてくるデータは「2号機」の優勢を物語っていた。

「『1号機』のシンクロ率は30%程度ですかね。いや、脳改造をしていない人間としては驚異的ですが・・・
 しかしいずれにしろ今の2号機の敵ではありませんよ。」

男は上機嫌で信田に話し掛けた。
しかし信田は男とは正反対に、不機嫌な様子で闘いを見ていた。

男はその様子を見て、それ以上は話し掛けなかった。
726名無しスター:04/10/27 00:42:36 ID:IAfJEPao

ZXは必死で「2号機」の攻撃に耐え続けていた。

最初は敵の攻撃をかわしつつ、なんとか2号機を脳改造から解放させる方法を考えようと思っていた。
しかしそんな余裕は無い。本気で闘わざるを得ない。
それでも敵のペースにはまっていく。

「こいつ、強い・・・」

「2号機」の攻撃は単調だが、スピードが速すぎる。
いつまでも逃げ続けられるものでもない。
ZXはムキになって攻撃を繰り出すがほとんど通用しない。
ZXは焦り出し、いつのまにか後退を始めていた。

そして、焦りと同時に心の中にモヤモヤしたものが湧いて来た。
727名無しスター:04/10/27 00:44:31 ID:IAfJEPao
自分の体は、目的はどうあれ信田、まゆみと3人で苦労して作り上げたものだ。
しかし2号機は何の苦労もせずそれは手に入れ、しかも自分以上に使いこなしている。


所詮自分はこいつの「試作品」でしかなかったのか?・・・


「うわあああ!」

ZXは渾身の力を込めてパンチを放った。
しかし力が入りすぎ、逆にスピードが落ちた。腕を掴まれパンチの勢いのまま投げ飛ばされた。
地面に叩きつけられたところへ追い討ちの蹴りが飛んでくる。
ZXは体をひねってこれを避け、後方に下がって距離を取った。

ZXは肩で大きく息をしている。
これに対し、2号機は汗ひとつかいていなかった。
728名無しスター:04/10/27 00:45:58 ID:IAfJEPao

このままでは紺野と同じくジリ貧だ。
はっきり言って勝てる気がしない。

「くそ・・・」

「2号機」がじりじりと距離を詰め始めた。
ZXはそれに合わせてじりじりと後方に退がる。

「くそ・・・」

「2号機」が前に出る。同じだけZXが退がる。

「くそ・・・・」

ドン、と背中が廃車の山にぶつかった。
いつのまにか追い詰められていた。

「2号機」はそれにかまわず、じりじりと距離を詰めてくる。


「・・・ちくしょぉー!」

ZXは大声で叫び、天を仰いだ。
729名無しスター:04/10/27 00:47:23 ID:IAfJEPao



                   つづく
730名無しスター:04/10/28 01:01:56 ID:VUBhusLJ

闘いの様子をモニターで見ながら、信田は失望した様子だった。

「麻琴・・お前の力はこんなものなのか?」

「・・・え?なんです?」

男が信田の方を向く。

「いや何でもない。・・・どうやら勝負あったようだな。」

「そうですね」

男が嬉しそうに言った。
それを聞くと、信田は黙って立ち上った。

「・・・どちらへ?」

「『1号機』の回収に行ってくる。」

そう言って林の中に歩き出した。
731名無しスター:04/10/28 01:07:56 ID:VUBhusLJ

ZXは迷っていた。
いったんこの場から逃げて立て直すか、相討ち覚悟で闘いを挑むか・・

ZXの脳裏に紺野の姿が浮かんだ。

・・・これ以上仲間の被害を増やすわけにはいかない。
こいつは自分が責任を持って・・・

「まこっちゃん!」

上空から声が聞こえた。
スカイライダーだった。
732名無しスター:04/10/28 01:09:11 ID:VUBhusLJ

「まこっちゃん、ひょっとして苦戦してるの?」

上空から声を掛ける。
ZXはチラと「2号機」を見る。

「大丈夫だよ、こんな奴の一人や二人」

「ナンダト!」

ドガッ!

「2号機」のパンチが廃車にめり込んだ。
その隙にZXはスルッと廃車の隙間から脱出する。
明らかにさっきより動きが良い。

「頭を使わなきゃダメだよ。」

スカイライダーが人差し指で頭を突付く仕草をした。

「うん・・」

ZXはいったん距離を取った後、一気に反撃に転じた。
733名無しスター:04/10/28 01:13:03 ID:VUBhusLJ

ZXは2号機に向かってまっすぐに突っ込む。

「フン、ナンドヤッテモ、オナジダ」

さっきと同じように2号機が高速でパンチを繰り出す。
しかし突如ZXが2号機の視界から消える。

「・・ドコダ?」

「・・・ここだよ。」

2号機が下を向くと、真下にZXがいた。
ZXは体を沈ませてパンチをかわし、一気に懐に飛び込んでいた。

ガツッ!

そのままZXは体を伸ばし、頭突きをお見舞いする。

「ウッ・・」

2号機がひるんだところで、両手で肩を掴み、2発、3発と連続して頭突きをお見舞いする。

・・・スカイライダーは上空でその様子を見ながら困惑していた。


「いや・・・・『頭を使う』って、そういう意味じゃ・・・」
734名無しスター:04/10/28 01:14:13 ID:VUBhusLJ

「・・わかってるってば。」

「コノ・・・」

ZXは2号機の苦し紛れのパンチを再び体を沈めてかわし、至近距離からドロップキックの体勢に入った。
ちょうどプロレス技の「カンガルーキック」のような形になる。
ペタン、とZXの両足が2号機の胴体に当たった。

「ソンナモノガ・・・ウオオオオ!!」

キックが当たると同時に踵のジェットエンジンが噴射した。
2号機が大きく後方に吹っ飛んだ。
735名無しスター:04/10/28 01:15:04 ID:VUBhusLJ

「マイクロチェーン!」

ZXの放ったマイクロチェーンが2号機を襲う。
2号機は立ち上がって横に避け、チェーンは後ろの廃車に突き刺さった。

「コンナ ノロマナ チェーンナド アタルモノカ」

「そーれ!」

ZXがチェーンを思い切り引っぱった。


「ウアアアアアア・・・」

チェーンに引っぱられた廃車が2号機の後頭部を直撃し、崩れてきた廃車の山の下敷きになった。

「どう?」

ZXは上空のスカイライダーに親指を立ててアピールした。
736名無しスター:04/10/28 01:19:04 ID:VUBhusLJ



                   つづく
737名無しスター:04/10/28 23:28:10 ID:x5MRlhTZ

「すごーい・・・」

スカイライダーは感心しながらその様子を見ていた。

「・・・でも油断しないで!」

廃車の山をかき分け、切り裂きながら2号機が現れた。

「ナメルナァ!」

「まかせて!」

ZX、2号機ともに一直線に相手に向かって走り出す。

再び格闘戦が始まった。

ZXの動きが軽い。
スピード・パワー共にさっきまでとは段違いだ。
小川の気分がノッて来た。

こうなった時のZXは強い。恐ろしく強い。
完全に攻守が逆転した。
738名無しスター:04/10/28 23:28:49 ID:x5MRlhTZ

「一体これは・・・何がどうなってるんだ?」

研究員の男は、モニターの数字を見て目を疑った。
「1号機」の推定シンクロ率がぐんぐんと上昇し、あっという間に90%を突破した。
逆に2号機のシンクロ率はじわじわと低下していく。

「馬鹿な!有り得ない!・・・」

男はモニターの前で頭を抱えた。

ZXのシンクロ率は、110%から90%の辺りを行ったり来たりしている。
もし正確に計測することが出来たならば、きっとこう表示されただろう。



                  「99%」


739名無しスター:04/10/28 23:30:22 ID:x5MRlhTZ

2号機はやられ放題だった。
圧倒的な戦力差に攻撃を出すことすら出来ない。

しかしZXの攻撃もどこか不自然だった。
必殺技を出せば・・・いや通常の攻撃でも簡単に2号機を闘不能に追い込めるはずだが、それをしようとしない。
パワーをセーブして、ひたすら頭部にダメージを与え続けている。

「そうか、まこっちゃん・・・」

最初は戸惑っていたスカイライダーも、ようやくZXの目的に気が付き始めた。

その時。

ズドン!

砲弾がスカイライダーの脇をかすめた。


「貴様、何をしている!」

タイガーロイドに変身した信田からの攻撃だった。
740名無しスター:04/10/28 23:32:05 ID:x5MRlhTZ



                   つづく
741名無し募集中。。。:04/10/30 21:33:32 ID:U5E+84QG
更新乙。なんだか楽しみな展開。
742名無しスター:04/10/31 00:45:02 ID:4gSPqB2V

タイガーロイドは連続して背中の大砲を発射する。
スカイライダーはそれをかわしながら地面に着地した。
そこへタイガーロイドのパンチが襲う。

ドガッ!

スカイライダーは顔面の前で腕を交差させてガードしたが、そのままボールのように後方に弾き飛ばされた。

「あさ美ちゃん!」

「・・大丈夫だから!」

スカイライダーはそう叫びながらも防戦一方だった。
タイガーロイドがチラリと見ると、ZXが2号機を追い詰めている姿が目に入った。

「フン・・・」

そしてかすかに笑い、スカイライダーを追って行った。

スカイライダーは一方的に追い込まれ、2人の姿はあっという間に見えなくなった。
743名無しスター:04/10/31 00:45:38 ID:4gSPqB2V

「今のは、信田さん?・・・どうして・・・」

ZXは2人が走り去った方向を眺めていた。

「・・・コロス!」

「おっと!」

ZXは背後からの攻撃を軽くかわした。
そして足を引っ掛けて転ばせるとそのまま馬乗りになり、マウントパンチの体勢で頭部に細かいパンチを浴びせ続けた。

「・・・キサマ・・・コロス・・・」

「このっ!目を覚ませ!」
744名無しスター:04/10/31 00:46:44 ID:4gSPqB2V

ZXは2号機の頭部にダメージを与え続けることで、脳改造から目覚めさせようとしていた。
しかし、脳改造は複雑なプロセスで行われている。本来単純な物理的ショックで解けるものではない。

「ザザ・・・コロス・・・ザ・・・コロス・・・殺・・・」

「ノイズ?・・・・」

しかし徐々に脳波に狂いが出てきた。
無理を重ねた脳改造が原因かもしれないが、まさに奇跡だった。


「ザザ・・・殺・・・殺して・・・・・・・お願い!私を殺して!」

2号機の口から若い女性の声がした。
745名無しスター:04/10/31 00:47:46 ID:4gSPqB2V

「・・・記憶が戻ったの?」

ZXは2号機の上から飛び退き、起き上がらせようと手を差し出した。

ガツッ!

2号機はその手を払いのけ、ZXにパンチを食らわせた。

「どうして?記憶が戻ったんじゃ・・」

戸惑うZXに、2号機はさっきまでと同じように攻撃してくる。
違うのは台詞だけだ。

「お願い、私を殺して!・・・」

「落ち着いて!」
746名無しスター:04/10/31 00:49:33 ID:4gSPqB2V

どうやら言語以外の部分は自分で制御できないようだ。
ZXは攻撃を止め、防御に徹した。

「もう人を殺すのは嫌!・・・・殺して!」

2号機は狂ったように叫び続けていた。
「やっぱり」とZXは思った。

自分と同じだ。

自分も脳改造中に、たくさんの罪のない人を殺めた。
脱走当初は忘れていたが、何度か夢に見るうちに徐々に思い出してきた。
中澤に添い寝をしてもらう原因になった「怖い夢」とは、これのことだ。

ゼティマに協力しない科学者を、子供の目の前で無残に殺したこともある。
逆に子供を人質に取り、目の前で・・・・

洗脳されていたことは理由にならない。
手を汚したのは確かに「自分」だ。はっきりその感触まで残っている。
今でも思い出すだけで気が狂いそうになる。辛い記憶だ。

だから・・・助けてあげたい。
747名無しスター:04/10/31 00:51:16 ID:4gSPqB2V

「集中して!うまくいけば体全体も制御できるようになるから!」

2号機の攻撃は続く。
ZXは必死で声を掛ける。

「もうこんなの嫌!殺して!」

「諦めちゃ駄目だよ!」
748名無しスター:04/10/31 00:57:17 ID:4gSPqB2V

しばらくして、2号機が何かに気付いた様子でZXに話しかけた。

「・・・・ひょっとして、その声は小川さん?」

「私を知ってるの?」

「・・・はい。」

「どこかで合ったことが?・・・あなたは誰?」


「西田・・・西田奈津美です」

「・・・奈津美ちゃん!?」

意外な名前だった。

ZXは驚きの声を上げた。
749名無しスター:04/10/31 00:57:53 ID:4gSPqB2V



                   つづく
750名無しスター:04/10/31 01:01:50 ID:4gSPqB2V
西田奈津美さんをご存知ない方はこちらまで

ttp://erinuic.hp.infoseek.co.jp/faq/audition.html
751名無しスター:04/11/01 00:35:19 ID:5/U4NJff

そのころ、スカイライダーは林の中を逃げ回っていた。

「おのれ・・・」

ただ逃げるだけならタイガーロイドも追跡を諦める。
ところがスカイライダーは時折反撃しながら、微妙な距離を保ちつつ後退していた。
何かおかしいとは思いながらも、ようやく崖の前にスカイライダーを追い詰めた。

「・・・ふん、どうやらここまでのようだな。」

勝ち誇るタイガーロイドだが、スカイライダーには少しも慌てた様子がない。

「何を企んでいる?・・」

警戒して足を止めたところに、背後で人の気配がした。


「・・・まったく、先輩を使うなんていい度胸してるじゃない?」

「誰だ!」
752名無しスター:04/11/01 00:36:49 ID:5/U4NJff

振り返ると同時に「超高温火炎」がタイガーロイドを襲った。

「飯田さん!」

スカイライダーがその人影、スーパー1に声を掛けた。

「あんたがこんな罠を仕掛けるなんて珍しいよね。ま、とにかく後は私に任せて小川のところに戻ってあげて。」

「わかりました!」

「・・・待て!」


「おっと、あんたの相手は私よ。」

スカイライダーを追おうとするタイガーロイドに、スーパー1が立ちはだかる。

「そういえばあんたには『貸し』があったよね・・・」

スーパー1はそう言いながら攻撃を開始した。
753名無しスター:04/11/01 00:51:50 ID:5/U4NJff


                   つづく
754名無し募集中。。。:04/11/02 02:26:20 ID:lkc3mKjc
755名無し募集中。。。:04/11/02 23:24:28 ID:lkc3mKjc
756名無しスター:04/11/03 23:25:57 ID:RbNjqLsP

廃車置場では、2号機の一方的な攻撃が続いていた。
しかし、ZXはこれをすべてかわす。

「・・・奈津美ちゃん、もっと集中して!」

「だめ!出来ない!」

ZXは2号機を励まし続けるが、一向に制御できる気配がない。

「小川さんみたいにはできない・・・」

西田と小川はゼティマ本部の研究所で知り合った。他にも何人か少女がいた。
監獄のような所に入れられ、検査や試験のようなものを1週間ほど毎日受けさせられていた。
検査の目的は何も分からなかった。
少女たちは不安の中お互いに励まし合い、次第に親しくなっていった。

結局選ばれたのは小川だった
757名無しスター:04/11/03 23:27:11 ID:RbNjqLsP

もちろんその結果西田たちに知らされたわけではない。
「試験」の後に工場のようなところに移され強制労働をさせられたが、小川だけが見つからなかった。
おそらく小川が選ばれたのだろう、と皆で噂していた。

西田は小川のことを気の毒に思いながらも、実は少しだけ嫉妬を感じていた。
まさかこんな目に遭っているとは夢にも思わなかったのだ・・・

「奈津美ちゃんなら出来るよ!」

小川は西田の力を信じて叫びつづけた。
「試験」では身体能力、反射神経など、目に見える項目はすべて西田の方が成績が良かったからだ。
当然西田が選ばれる、と小川を含めた全員が思っていた。
どうして自分が選ばれたのか、それは今でも分からない。

「・・・やっぱりだめ、出来ない!」

2号機は相変わらず攻撃を続ける。
洗脳の解けない西田と、自力で解いた自分・・・

2人の明暗を分けた原因はここにあるのかも知れなかった。
758名無しスター:04/11/03 23:28:17 ID:RbNjqLsP
ゴツッ!

2号機のパンチがZXに当たった。
明らかに今のはZXが避けようとしなかった。

「・・・どうして?」

西田の意識とは無関係に、2号機のパンチが次々とZXを捉える。

「・・・私を殺したくなかったら、自力で洗脳を解いてみせて!」

ZXは無抵抗で2号機の攻撃を受け続ける。

「いやぁ!やめてぇぇ!」

2号機は半狂乱になり、叫び声を上げながら攻撃を続けた。
759名無しスター:04/11/03 23:39:16 ID:RbNjqLsP


                   つづく
760名無しスター:04/11/05 00:32:34 ID:jJFHBzF4

「お願い、逃げて・・・そうじゃなかったら・・・殺して・・・」

洗脳の解けないまま2号機の攻撃は延々と続く。
ZXはダメージが最小限になるように攻撃を受けていた。
それでも徐々にダメージが溜まり、動きが鈍くなってくる。
次第に攻撃をまともに受け始めた。

「大丈夫・・・大丈夫だよ奈津美ちゃん・・」

ZXの声も段々と小さくなっていく。

ついにはよろよろと両膝を地面に着いてしまった。
761名無し募集中。。。:04/11/05 00:32:58 ID:WWPlbp5d
乙。続きが楽しみな展開。
762名無しスター:04/11/05 00:33:52 ID:jJFHBzF4

「もうやめて・・・」

2号機は片手でZXの頭を掴んで少し持ち上げ、止めを刺すべく右腕を振り上げた。
「ZXパンチ」の体勢・・・いや、右手は拳を握らず「手刀」の形になっている。
2号機の視線はZXの首を狙っていた。

これをまともに食らえば、危ない。

「お願い!逃げて!」

西田の必死に叫びにもZXは動こうとしない。

「私を・・殺したくなかったら・・・自分の力で・・・」

2号機は躊躇せず、一気に右手を振り下ろした。

「やめてぇぇぇ!」

西田の絶叫が響く。
ZXは思わず両目を閉じた。
763名無しスター:04/11/05 00:35:30 ID:jJFHBzF4

ZXが目をつぶっていたのは、ほんの1秒か2秒・・・

攻撃が来ない・・・

そっと目を開けると手刀はZXの首の数センチ手前で止まっていた。
2号機の顔を見ると「怒り」の色が消えている・・・


「奈津美ちゃん・・・・」

「ありがとう・・・」

ZXが声を掛けると、西田は小さくつぶやいた。
764名無しスター:04/11/05 00:53:22 ID:jJFHBzF4

「やったね・・」

ZXの声に反応したように、2号機は振り下ろした右手を手前に引いた。

「奈津美ちゃんならきっと出来るって信じて・・・」

2号機はZXが話すのを無視して、再度右手を振り上げた。


「奈津美ちゃん?・・・・」

右手が振り下ろされた。

ZXは反射的にガードした。
コツン、という軽い音とともに手刀がZXの腕に当たる。

「・・・どうしたの?」

困惑するZXにかまわず、また右手を振り上げる。
そこで動きが止まった。
765名無しスター:04/11/05 00:54:55 ID:jJFHBzF4

2号機はそのままの姿勢でゆっくりと横に倒れていった。
ドサリ、と音がして2号機が地面に転がる。

よく見ると背中に穴が開き、人工脊髄が損傷していた。

「奈津美ちゃん!」

「ありがとう・・・もう人殺しは・・・したくなかった・・・」

西田の声はさらに小さくなっていた。


「まこっちゃん、ごめんね・・・・」

いつの間にかZXの目の前にスカイライダーが立っていた。
766名無しスター:04/11/05 00:56:16 ID:jJFHBzF4


                   つづく
767名無しスター:04/11/05 00:57:21 ID:jJFHBzF4
>>761
ドンマイ

と先に言っておくw
768名無しスター:04/11/08 01:22:39 ID:+q9/54AQ

2号機は動力を失い、ぐったりと横たわっていた。

「・・・・奈津美ちゃん!」

ZXが駆け寄る。

「あさ美ちゃん・・・ひどいよ・・・」

ZXはそう言いながらスカイライダーの方を振り返った。

「ごめん・・・こうしなかったら、まこっちゃんが・・・」

「・・・・・」

ZXも実は分かっていた。

スカイライダーは数分前から2人の様子を見ていた。
止めに入ろうとしたのを何度も我慢した。ギリギリまで我慢した。
しかしあそこが限界だった。
769名無しスター:04/11/08 01:24:35 ID:+q9/54AQ

結果としてZXの命と引き換えでも、2号機は目覚めなかった。
無理もない。ゼティマの改造人間の中で、自力で洗脳を解いたのは小川ただ一人なのだ。

小川が特異体質なのか、あるいは特殊な能力を持っているのか。
他には信田が逆に洗脳が一切効かない、といった例があるぐらいだ。


「・・・小川さん、これでよかったんです。」

2号機の口から、か細い西田の声が聞こえてきた。

「奈津美ちゃん・・・大丈夫なの?」


「急所は外したから・・・」

スカイライダーは意図して人工脊髄を狙った。
2号機の脳を破壊することなくその活動を止めるには、荒っぽいがこれが最善の方法だった。
770名無しスター:04/11/08 01:27:04 ID:+q9/54AQ

「まこっちゃんの想いは通じなかったけど・・・でも、連れて帰ればきっと助けられるよ。」

「・・・そうか!」

中澤家に連れて帰り、加護、ソニン、ミカ、そして亡命した夏まゆみの力を借りられれば
西田の洗脳は解ける可能性は大きい。

「奈津美ちゃん、時間はかかるかも知れないけど、きっと助けてあげるから・・・」

ZXは明るい声で2号機に話しかけた。
しかし、西田からは意外な答えが帰ってきた。
771名無しスター:04/11/08 01:28:20 ID:+q9/54AQ

「大丈夫だよ。加護さんもミカさんもみんな優秀だから。」

「そういうことじゃないんです。私はここから逃げられないんです。」

「いったいどういうこと?・・・」
「まさか・・・」

スカイライダーにはその理由がわかったらしい。


「はい、私には『自爆装置』が付いているんです・・・」

「・・・そんな!」
772名無しスター:04/11/08 01:29:19 ID:+q9/54AQ

改造人間の体内には強力な小型爆弾が埋め込まれている場合が多い。

改造人間の脱走防止のため、秘密保持ため、証拠隠滅のため、あるいは「最後の武器」として・・・
ほとんどは脳や人工心臓などが機能を停止したとき爆発する仕組みだが、
幹部や重要人物などは脱走したり反抗した場合に起爆することもある。

2号機もおそらくこのタイプだ。
無理にアジトから引き離すと爆発する恐れがある。
中澤家に連れて帰るのは無理だった。

「くそ!・・・」

ZXは地面を叩いて悔しがった。
773名無しスター:04/11/08 01:30:07 ID:+q9/54AQ

残る手段は加護を直接ここに呼んで処置を施すことだが、おそらくゼティマは全力で2号機の回収に来るかだろう。
2号機はここに置いていくしかない。

「ごめん、奈津美ちゃん。いつか必ず助けに来るから・・・」

2号機にそう語りかけ、ZXとスカイライダーは無念そうに立ち去ろうとした。
そこへ背後から西田が声をかけた。。

「・・・待って下さい、お願いがあります。」
774名無しスター:04/11/08 01:32:17 ID:+q9/54AQ

「何?・・・」

「私を・・殺して欲しいんです。」

「バカなことを言わないで!必ず助けに来るよ!」
「そうだよ、諦めちゃダメだよ!」

西田の思いがけない言葉にZXとスカイライダーが声を上げた。

「でも・・・小川さんが助けに来るまで、私は何人の罪の無い人を殺さなければならないんですか?」

「それは・・・・」

「戻ったらまた洗脳されるんです。」

「・・・・・」

ZXもスカイライダーも言葉を失った。
775名無しスター:04/11/08 01:36:06 ID:+q9/54AQ

「・・・お願いです。私がここで死ねば多くの人が死なずに済むんです。」

「でも、別の改造人間が代わりに同じ事をするだけだよ!」

スカイライダーは必死に反論する。

「そうだよ、奈津美ちゃんが悪いわけじゃない・・・」

ZXも反論するが、そこで言葉を詰まらせた。
ZXの脳裏に「悪い夢」の記憶が蘇る。
自分だったら・・・やはり同じ事を頼んだはずだ。

「小川さん、お願いです・・・」

西田のすがるような声がZXの頭に響いた。
776名無しスター:04/11/08 01:37:26 ID:+q9/54AQ


                   つづく
777名無し募集中。。。:04/11/08 23:38:36 ID:M2wDa5Fc
結構長くこのスレ読んでるけど、こんな重い話は今まであったかな・・・。
とはいえ続きが楽しみなのも確かで。
778名無しスター:04/11/10 00:40:08 ID:OVW+McG3

「くそっ!いない?」

スーパー1は林の中で倒れた樹木をかき分けていた。
樹木の下敷きになっているはずのタイガーロイドがいない。

「・・・逃がしたか。」

周りを見渡すがそれらしい人影は見当たらなかった。
闘いはほぼ互角だった。

山肌は半分以上が焼け落ち、闘いの激しさを物語っていた。
779名無しスター:04/11/10 00:40:48 ID:OVW+McG3

「ふん、麻琴のことが無ければ決着を付けてやったところだ・・」

タイガーロイドは少し強がりを言いながらZXたちのいる廃車置場を目指していた。

「ん?・・・」

突然正面に人の気配がして立ち止まった。

「・・・麻琴か。」

「信田さん?」


「その様子だと無事勝ったようだな。さすが麻琴だ・・・」

タイガーロイドとZX、そしてスカイライダーは少し距離をとって向かい合った。
780名無しスター:04/11/10 00:42:08 ID:OVW+McG3

「・・・麻琴。私と一緒に戻らないか?」

「何をバカなことを!」

タイガーロイドの言葉にZXは大声で反発した。

「ゼティマを倒したいのだろ?そのためには組織に戻った方が早道なんだよ。」

「一体何を・・・」

困惑するZXにタイガーロイドは話を続ける。

「お前の力はまだまだそんなものではない。私と力を合わせればゼティマどころか、何もかも、全てが手に入るんだぞ。」

「・・・・・・・信田さん。」

ZXはタイガーロイドの言葉を聞いて前に進みだした。


「まこっちゃん?・・・」

スカイライダーは不安そうに見守る。
781名無しスター:04/11/10 00:43:11 ID:OVW+McG3

ZXはタイガーロイドの目の前に立ち、千切れた「マイクロチェーン」の先端を掲げた。

「・・・これを見てください。」

「何だそれは?」

「奈津美ちゃんの形見です・・・」

「・・・・・」

「信田さんが何をしようとしているのかは知りません。でも、あなたのやったことは絶対に許しませんから・・・」

ZXはそれだけ言うとマイクロチェーンを大事に抱え、タイガーロイドの横をすり抜け、歩き出した。
スカイライダーもその後に続く。


「待て・・・許さないのなら、ここで私を倒してみたらどうだ?」

タイガーロイドはそう言ってZXを挑発した。
782名無しスター:04/11/10 00:44:41 ID:OVW+McG3

それを聞いてZXは振り向こうともせずに答える。

「信田さんには随分とお世話になりましたから、今回は見逃してあげます。・・・次に会ったら容赦しませんから。」

「何だと!・・・・ぐっ・・・」

カッとなり前に出たところで、タイガーロイドの脇腹に激痛が走った。
スーパー1との激闘で受けたダメージだ。
ZXはこのダメージを一瞬で見抜いていた。

「・・・ふん。その甘さがお前の最大の弱点だ。次に会った時は、逆に力づくで連れて帰るからな・・・」

タイガーロイドは脇腹を押さえ、負け惜しみを言いながらZXとスカイライダーを見送った。
783名無しスター:04/11/10 00:56:24 ID:OVW+McG3


                   つづく
784名無し募集中。。。:04/11/10 23:05:38 ID:VrWU12By
   
785名無しスター:04/11/11 01:24:11 ID:2/fSzOC4

「しかし、どうして奈津美の名前を・・・」

しばらくして浮かんだタイガーロイドの疑問は、研究員からの詳しい説明で解けた。

「そうか、甘さはもう捨てられたのだな・・・次に会った時に倒されるのはこちらかも知れん・・・」

タイガーロイドは2号機の惨状を眺めながらそうつぶやいた。
口元には微かに笑みが浮かんでいた。



その日の夜、研究員にZX計画の中止が伝えられた。

「量産化は中止・・・しかし予備の機体を1体だけ用意しろだなんて・・・」

研究員は上部からの命令に戸惑った。
そもそもZXは量産に向く設計ではなかった。
しかも並の人間の脳ではまともに動かせない。
本当に量産するつもりだったのか。そうでなければ、計画の本当の目的は何だったのか・・・

それは最後まで研究員に知らされることは無かった。
786名無しスター:04/11/11 01:25:02 ID:2/fSzOC4

「伝えて参りました。」

信田は研究所の最深部の部屋に入り、暗い部屋の奥に座る最高幹部の一人にそう報告した。

「これでZX計画も終了か・・・」

その最高幹部、悪魔元帥は表情を変えずにそうつぶやいた。

「しかしZXを奪い返すことができれば・・・」

「・・・無駄だ。キングストーンはもう存在しない。既に世紀王は誕生したのだぞ。」

「そうでしょうか?あれが本当に世紀王だと・・・」

「控えよ、タイガーロイド!貴様であろうと世紀王を侮辱することは許さんぞ!」


悪魔元帥は大声を出し、信田を睨みつけた。
787名無しスター

「・・・失礼しました。」

信田は表情を変えず謝罪した。

「そもそもZX計画はあれの『保険』に過ぎん。今となっては無用の長物だ。
 ・・・滑稽だとは思わんか?『神』を創造しようなどと本気で考えていたとは・・・」

悪魔元帥はそう言うと不敵に笑い出した。
信田はその様子を黙って見ていた。


「しかし・・貴様と、あの小川とかいう娘ならあるいは・・・」

悪魔元帥はそう言いかけ、慌てて言葉を飲み込んだ。


「・・・ところでタイガーロイド。貴様なぜ戻ってきた?」

「・・・所詮改造人間は人間社会では生きられません。それが外に出て身に染みてわかっただけです。」

「ふん・・・一体何を考えている?」