もろたーー!!

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61817話
17.「秘められし・・・」

 Gacktの質問に対して、高橋は焦るだけで、全く答える事はなかった。

 「もう一度聞く。どうしてお前は残ったんだ!!」

 Gacktは強い語調で叫ぶと、地面を思い切り踏む。地面はすぐに陥没し、
 軽い地割れが起こり、全員その周りから一歩退く。
 Gacktは軽く息を切らすと、整えるまで月の光を浴びていた。
 
 落ち着いた所で、Gacktはもう一度高橋の方を見た。
 
 「『鶺鴒』はその空間内から一定レベルの闘気、魔力、邪気を持ち合わせて
 いない者を排除する呪文だ。つまりここに残ったという事は、強い、ということだ。
 だが・・・。」

 チラッと高橋を見ながら、Gacktは鼻で笑う。
61917話:04/05/26 00:08 ID:kb64SQiB
 
 「一人浮き足立っている。」
 「そ、そそそんなこと全然ないです!!!」
 「敵相手に敬語だし。」
 「ないよ!!!」
 「訛ってるし。」
 「な、訛ってません!!」
 「また噛んだ。しかも敬語。」
 「うっ。」
 
 高橋はそれっきり黙りこんでしまった。Gacktはまた笑うと、すぐに表情が沈む。
 
 「分からない・・・。」
 
 頭を抱えて悩みだしてしまった。それを見た矢口はゲラゲラ笑っている。
 Gacktは思い出していた。
 スパイ・高橋愛について。最初から・・・。

62017話:04/05/26 00:09 ID:kb64SQiB






62117話:04/05/26 00:10 ID:kb64SQiB


 「スパイ?」
 「ああ。」

 hydeに聞いて初めてその事を知ったが、最初は正直、寝耳に水。
 裏切りに続いてスパイとは、裕ちゃんも大変だな、なんて敵ながら少しだけ
 同情していた。でもそれは新垣の働きによるものだと聞いたとき、同情は
 高橋本人へと移動する。
 新垣の目は完全に出世に眩んでいて、そのためならどんな手も惜しげもなく使う。
 個人としては大した力があるわけではないが、そういう奴に弱みを見せると
 怖い目に合ってしまう。高橋はそんな良い例だった。新垣をより一層警戒する
 きっかけをくれた事に感謝すると共に、同情し、なるべく酷な注文は、
 個人的にはしないようにしよう、そう思って初めて会った。
 そしてGacktは自分の考えの間違えに気づく。
 酷な注文はしないようにしよう、ではなく、出来なそうだ・・・。

62217話:04/05/26 00:11 ID:kb64SQiB

 「は、は、初めまして!高橋愛です。」
 「いや、そんな改まった自己紹介されても・・・・。この間戦わなかった?」

 hydeに指摘されあわわと焦り出す高橋。
 
 「昨日の敵は今日の友、って言うじゃないですか。そんなわけでよろしく
 お願いします。」
 「え?今なんて言った?」

 Gacktは早口の訛りについていけず、最初のうちはかなり手こずった。
 
 「いやだから、aqawwretfgryjui;/.olk,mutjynrhtbgevrf。」
 「もうちょっとゆっくり、訛りなしで言ってくれない?」
 「いや訛ってないですって。」

 全然ゆっくりになってくれない上、全く自覚症状がない。
 こいつは果たしてスパイとして機能するのか?答えはイエス。
 最初の頃は紙に言葉を書いてつんくに報告させられ、不思議そうな顔をしていた。
 だんだんと慣れてくるとようやく聞き取れるようになったが、
 次に新たな問題が発生する。
62317話:04/05/26 00:12 ID:kb64SQiB

 「なるほど、よう分かった。」

 つんくがなんとか聞き取ると、報告は終わりを告げた・・・はずだったが、

 「中澤さん言ってましたよ。つんく殺すのは簡単だから鬼神をどうするかだって。」
 
 ピクッ。
 
 それを聞いた瞬間つんくの表情が目に見えて歪む。
 
 一言多い。
 
 これは情報を漏洩する役職の人間としてはかなり致命的。
 この勢いで口を滑らせ、向こうにスパイだということを察せられてしまっては
 元も子もない。つんくはそれによって、hydeに教育係を押し付けた。
 
 「今更教育なんていりませんよ。」

 高橋の主張はあっさりと却下され、hydeはいやいや仕事をする破目になる。
 しかし、高橋は土壇場でとんでもないミスを犯してしまった。

62417話:04/05/26 00:13 ID:kb64SQiB

 「ということは・・・。」

 つんくはちょっといやそうな顔をして、呟いた。
 
 「明日攻め込んでくるんか。」
 「はい。8時から詳しい作戦についての話し合いが軽く行われます。」
 「ほう、8時に・・・・。8時?」
 「はい。8時です。」
 「お前、大丈夫か?今8時5分前やぞ?」
 
 「え。」

 高橋は王の間にかけられた時計に眼をやる。
 
 「あーーーーーーー!!!!」
 「急げ!!!何があってもあと5分でつけ!!
 変に遅刻してバレたら最悪やぞ!!!」
 「失礼します!!!」

 高橋は窓から飛び降り、そのまま中澤家へ向かって飛び立っていった。

62517話:04/05/26 00:14 ID:kb64SQiB






 
62617話:04/05/26 00:15 ID:kb64SQiB

 結局どんな理由でかは分からないが、高橋はもうスパイであることがバレ、
 完全に革命軍側の人間に戻っていた。
 
 「昨日の敵は今日の友、なんて自己紹介のとき言ってたっけな・・・。」

 Gacktの呟きに高橋は頬を赤く染める。
 
 「結局今日の敵、になったみたいだけど・・・。僕の中にお前が強かった
 イメージはない。」

 高橋はちょっと悔しそうな顔をして、拳を思い切り握り締めた。
 だが藤本以外の残り全員は、納得していた。この結果について。
 
 「だが残念ながら、お前は強くないと色々矛盾が生じる。ということは・・・。」

 Gacktはかなり考えながら言葉を発した。

 「レベル制限ギリギリなのか?いや、それでも後藤の言っていた事と矛盾する・・・。」

 Gacktがそう呟いた瞬間、全員過剰に反応した。
 後藤の言っていた事。
 一体後藤は、何を言っていたというのだろうか。
 全員の視線に気がついたのか、Gacktは周りを見ると、
 
 「そういえばマネキンはどうやって倒した?」

 ガクッ!

 上手く交わされ全員すべる。 
62717話:04/05/26 00:16 ID:kb64SQiB

 「おい、聞いてるのか。誰が倒した?この中でマネキンと戦ってるのは、
 吉澤、飯田、高橋、矢口・・・。藤本以外全員か。まあとりあえず、
 誰が倒したのか、見させてもらおうか。」

 Gacktが手を宙に浮かべると、巨大なモニターのような物体が現れた。
 そしてそのモニターには、先程のマネキン戦の様子が映し出されている。
 

 「!!」

 一番驚いたのは藤本。
 高橋が、『HEAVEN’S DRIVE』を放っている!
 そしてもう一つ驚いたのが『シャボン玉』の数。
 ありえない数のシャボンが、マネキンに襲い掛かってゆく。藤本はなんだか
 訳が分からず、高橋の方をチラ見していた。一方Gacktは、
 
 「hyde・・・余計な事を。」

 そう呟き、後藤の一言を思い出していた。

62817話:04/05/26 00:17 ID:kb64SQiB



 「今の、ごとー達の、中で、ごとー以外.、あんたとまともに、
 ・・・戦う力、あるのは、もう、よっすぃと、高橋しか、いない・・・。」


62917話:04/05/26 00:18 ID:kb64SQiB

  もしかしたら後藤は、高橋をスパイだと知った上で、一戦交えた事が
 あるのかもしれない。そうでないと説明がつかないほどに、藤本は
 ありえない、と言った表情を浮かべていた。
  しかし一つ気になったのが、常にその力を発揮しているわけではなく、
 弾みで突然目覚める事だった。Gacktは少し考え、

 「なるほど・・・。自覚はあまりないみたいだが、覚醒すると危険だ。
 やはり、全員殺さないといけないみたいだね。」

 Gacktがそう呟くと、全員身構えた。

 「今夜、君達の希望は泡となって消える。」

  To be continued...