618 :
17話:
17.「秘められし・・・」
Gacktの質問に対して、高橋は焦るだけで、全く答える事はなかった。
「もう一度聞く。どうしてお前は残ったんだ!!」
Gacktは強い語調で叫ぶと、地面を思い切り踏む。地面はすぐに陥没し、
軽い地割れが起こり、全員その周りから一歩退く。
Gacktは軽く息を切らすと、整えるまで月の光を浴びていた。
落ち着いた所で、Gacktはもう一度高橋の方を見た。
「『鶺鴒』はその空間内から一定レベルの闘気、魔力、邪気を持ち合わせて
いない者を排除する呪文だ。つまりここに残ったという事は、強い、ということだ。
だが・・・。」
チラッと高橋を見ながら、Gacktは鼻で笑う。
619 :
17話:04/05/26 00:08 ID:kb64SQiB
「一人浮き足立っている。」
「そ、そそそんなこと全然ないです!!!」
「敵相手に敬語だし。」
「ないよ!!!」
「訛ってるし。」
「な、訛ってません!!」
「また噛んだ。しかも敬語。」
「うっ。」
高橋はそれっきり黙りこんでしまった。Gacktはまた笑うと、すぐに表情が沈む。
「分からない・・・。」
頭を抱えて悩みだしてしまった。それを見た矢口はゲラゲラ笑っている。
Gacktは思い出していた。
スパイ・高橋愛について。最初から・・・。
620 :
17話:04/05/26 00:09 ID:kb64SQiB
621 :
17話:04/05/26 00:10 ID:kb64SQiB
「スパイ?」
「ああ。」
hydeに聞いて初めてその事を知ったが、最初は正直、寝耳に水。
裏切りに続いてスパイとは、裕ちゃんも大変だな、なんて敵ながら少しだけ
同情していた。でもそれは新垣の働きによるものだと聞いたとき、同情は
高橋本人へと移動する。
新垣の目は完全に出世に眩んでいて、そのためならどんな手も惜しげもなく使う。
個人としては大した力があるわけではないが、そういう奴に弱みを見せると
怖い目に合ってしまう。高橋はそんな良い例だった。新垣をより一層警戒する
きっかけをくれた事に感謝すると共に、同情し、なるべく酷な注文は、
個人的にはしないようにしよう、そう思って初めて会った。
そしてGacktは自分の考えの間違えに気づく。
酷な注文はしないようにしよう、ではなく、出来なそうだ・・・。
622 :
17話:04/05/26 00:11 ID:kb64SQiB
「は、は、初めまして!高橋愛です。」
「いや、そんな改まった自己紹介されても・・・・。この間戦わなかった?」
hydeに指摘されあわわと焦り出す高橋。
「昨日の敵は今日の友、って言うじゃないですか。そんなわけでよろしく
お願いします。」
「え?今なんて言った?」
Gacktは早口の訛りについていけず、最初のうちはかなり手こずった。
「いやだから、aqawwretfgryjui;/.olk,mutjynrhtbgevrf。」
「もうちょっとゆっくり、訛りなしで言ってくれない?」
「いや訛ってないですって。」
全然ゆっくりになってくれない上、全く自覚症状がない。
こいつは果たしてスパイとして機能するのか?答えはイエス。
最初の頃は紙に言葉を書いてつんくに報告させられ、不思議そうな顔をしていた。
だんだんと慣れてくるとようやく聞き取れるようになったが、
次に新たな問題が発生する。
623 :
17話:04/05/26 00:12 ID:kb64SQiB
「なるほど、よう分かった。」
つんくがなんとか聞き取ると、報告は終わりを告げた・・・はずだったが、
「中澤さん言ってましたよ。つんく殺すのは簡単だから鬼神をどうするかだって。」
ピクッ。
それを聞いた瞬間つんくの表情が目に見えて歪む。
一言多い。
これは情報を漏洩する役職の人間としてはかなり致命的。
この勢いで口を滑らせ、向こうにスパイだということを察せられてしまっては
元も子もない。つんくはそれによって、hydeに教育係を押し付けた。
「今更教育なんていりませんよ。」
高橋の主張はあっさりと却下され、hydeはいやいや仕事をする破目になる。
しかし、高橋は土壇場でとんでもないミスを犯してしまった。
624 :
17話:04/05/26 00:13 ID:kb64SQiB
「ということは・・・。」
つんくはちょっといやそうな顔をして、呟いた。
「明日攻め込んでくるんか。」
「はい。8時から詳しい作戦についての話し合いが軽く行われます。」
「ほう、8時に・・・・。8時?」
「はい。8時です。」
「お前、大丈夫か?今8時5分前やぞ?」
「え。」
高橋は王の間にかけられた時計に眼をやる。
「あーーーーーーー!!!!」
「急げ!!!何があってもあと5分でつけ!!
変に遅刻してバレたら最悪やぞ!!!」
「失礼します!!!」
高橋は窓から飛び降り、そのまま中澤家へ向かって飛び立っていった。
625 :
17話:04/05/26 00:14 ID:kb64SQiB
626 :
17話:04/05/26 00:15 ID:kb64SQiB
結局どんな理由でかは分からないが、高橋はもうスパイであることがバレ、
完全に革命軍側の人間に戻っていた。
「昨日の敵は今日の友、なんて自己紹介のとき言ってたっけな・・・。」
Gacktの呟きに高橋は頬を赤く染める。
「結局今日の敵、になったみたいだけど・・・。僕の中にお前が強かった
イメージはない。」
高橋はちょっと悔しそうな顔をして、拳を思い切り握り締めた。
だが藤本以外の残り全員は、納得していた。この結果について。
「だが残念ながら、お前は強くないと色々矛盾が生じる。ということは・・・。」
Gacktはかなり考えながら言葉を発した。
「レベル制限ギリギリなのか?いや、それでも後藤の言っていた事と矛盾する・・・。」
Gacktがそう呟いた瞬間、全員過剰に反応した。
後藤の言っていた事。
一体後藤は、何を言っていたというのだろうか。
全員の視線に気がついたのか、Gacktは周りを見ると、
「そういえばマネキンはどうやって倒した?」
ガクッ!
上手く交わされ全員すべる。
627 :
17話:04/05/26 00:16 ID:kb64SQiB
「おい、聞いてるのか。誰が倒した?この中でマネキンと戦ってるのは、
吉澤、飯田、高橋、矢口・・・。藤本以外全員か。まあとりあえず、
誰が倒したのか、見させてもらおうか。」
Gacktが手を宙に浮かべると、巨大なモニターのような物体が現れた。
そしてそのモニターには、先程のマネキン戦の様子が映し出されている。
「!!」
一番驚いたのは藤本。
高橋が、『HEAVEN’S DRIVE』を放っている!
そしてもう一つ驚いたのが『シャボン玉』の数。
ありえない数のシャボンが、マネキンに襲い掛かってゆく。藤本はなんだか
訳が分からず、高橋の方をチラ見していた。一方Gacktは、
「hyde・・・余計な事を。」
そう呟き、後藤の一言を思い出していた。
628 :
17話:04/05/26 00:17 ID:kb64SQiB
「今の、ごとー達の、中で、ごとー以外.、あんたとまともに、
・・・戦う力、あるのは、もう、よっすぃと、高橋しか、いない・・・。」
629 :
17話:04/05/26 00:18 ID:kb64SQiB
もしかしたら後藤は、高橋をスパイだと知った上で、一戦交えた事が
あるのかもしれない。そうでないと説明がつかないほどに、藤本は
ありえない、と言った表情を浮かべていた。
しかし一つ気になったのが、常にその力を発揮しているわけではなく、
弾みで突然目覚める事だった。Gacktは少し考え、
「なるほど・・・。自覚はあまりないみたいだが、覚醒すると危険だ。
やはり、全員殺さないといけないみたいだね。」
Gacktがそう呟くと、全員身構えた。
「今夜、君達の希望は泡となって消える。」
To be continued...