397 :
3話:
第3話「Masked・・・」
「何ここ?」
開けた土地。崖までついている。でもすぐそばに作り物の海。
まるで映画のセットのような風景(と、紺野なら例えて中澤に
怒られるだろう)に、安倍達はただ呆然とした。
「なんか滅茶苦茶な場所。」
藤本がきょろきょろと辺りを見回す。
「ここ、本当に城内れすか?」
辻の疑問を、小川が解消する。
「実際の城はもっと奥。その周りを、所謂『鬼神』達の好きなように
いじられてる。」
『鬼神』とは国営軍の主戦力達の略称。一部以外名前しか知らないため、
一体どんな能力を持っているのか分からない。ここには一体誰がいるのか・・・。
「お前ら!!待て!!ていうかずっと待ってた!」
4人は声をかけられて、振り返った。そこには、二人の男、40代くらいの男と、
20くらい?の青年が立っていた。
「ワカゾー、なんか言ってやれ。」
片方の男に言われ、ワカゾーと呼ばれた男は言った。
「お、お前達の墓場はここだ!!」
「芸人には用はないべ。」
安倍を先頭にスタスタと歩き出す4人。
「おい!なんだよそれ!俺ら『鬼神』だぞ?!一応!!」
「え?」
4人はそう聞くと表情を変えて振り返った。
398 :
3話:04/03/27 18:06 ID:WqxOvZiA
この、100%芸人の空気を出している二人が、『鬼神』?もしかして、
国営軍ってたいした事ないんじゃないの?と思わざるをえないオーラを、
二人は発していた。
「俺は木梨憲武。」
「ハロプロ関係ないじゃん。」
「美貴ちゃん!そう言うこと言ってるとあさ美ちゃんになる!!」
小川が慌ててツッコむ。でも木梨は構わず乗ってきた。
「今回はハロプロっていうより、『う○ばん』だから。」
「えぇ?!」
「驚いちゃダメだべさ!!驚いたら負けだべ!『うた○ん』って言葉に
反応しちゃだめだべさ!!」
安倍の説得に3人はなんとか持ち直した。
「あ、でもそれだとしても『月の子』の片割れは関係ないのれす。」
「リンク飛び飛びみたいなもんでしょ。」
「あ〜もう小川まで!!もうどうでもいいから戦うべさ!!」
「よし、じゃあワカゾー!変身だ!」
399 :
3話:04/03/27 18:07 ID:WqxOvZiA
「僕当時の記憶ほとんどないんですけど・・・。」
ワカゾーは困った顔をして呟いた。
「何?!そう言うこと言ってる場合か?!行くぞ!!」
「あの・・・大体俺ノリダーがカプセル投げて初めて出てくるから・・・
それに服小さすぎて着れません。」
「う〜ん、それも逆にピンポンだな。じゃあ俺が一人でやる!」
憲武の腰に変身ベルトが現れる。
「カ〜イワレ巻き巻きぃ♪」
変なポーズを取り出す憲武。
バキッ!ドゴ!!グシャッ!!
変身中容赦なく殴り続ける辻と小川の格闘系召喚獣イノキング。
「ネーギトロ巻き巻き〜♪」
尚も続く攻撃。戦う前にして既にボロボロの憲武。
「巻いて巻いて〜♪手巻き寿司〜♪」
「だからどうしたのれす!!!」
斧を思い切り横に振る。
「あとう!!」
斧が当たる前に憲武は空高く飛び上がった。ベルトの中心の赤い円が
高速回転する。憲武の姿は見る見るうちに変化していった。
「!!」
400 :
3話:04/03/27 18:08 ID:WqxOvZiA
憲武、いや仮面ノリダーが崖の上に着地すると、4人は爆笑した。
「笑うなそこ!!!ノリダー・・・フェスティボー!!」
ノリダーは左右二本ずつの指を額に合わせると、そこからビームが飛び出した。
「うそぉぉぉ?!」
安倍と藤本はなんとか攻撃をかわした。それとは対照的に辻と小川、
並びにイノキングは見事餌食になった。
「うわ!!!」
「ノリダーカーニボー!!」
今度は手をスペシウム光線の構えでスペシウム光線のようなビームを放って
きた。今度は安倍と藤本が食らった。
「攻撃する暇ないよ!!!」
藤本が剣を取り出すも近づけない。安倍は槍を構えるとダッシュで
ノリダーの眼前まで飛んだ。
「ノリダー・・・投げ。」ノリダーは安倍をキャッチすると言った。
「え?!あ!!うそだべ〜!!!!!」
名前の通り、安倍は崖の下へと投げられた。
ドン!!!
401 :
3話:04/03/27 18:10 ID:WqxOvZiA
「安倍さん大丈夫ですか〜?!」
小川が下へと召喚獣に乗って降りた。藤本と辻は飛び降りて着地する。
「痛たたたた・・・。めちゃめちゃだべさ!あいつ。」
「そりゃどうも。」
ノリダーは既に下へ来ていた。物騒な武器の後ろに立って。
「ノリダーキャノン砲!!」
ドン!!!
またしてもそのまんま、キャノン砲を至近距離でぶっ放した。全員4方向に
散らばる。砲弾は崖の根元と激突し、激しく弾けた。
「なんなんだよあれ!!」
藤本がキレかかる。
「なんでもありだね。」
小川が呆れたような顔をしてつぶやく。ノリダーは今度はどこからか
はしごを取り出した。
「ノリダーはしご!!」
スポッ。
「え?」
4人は見事にはしごの隙間にすっぽりと入れられた。
「とりゃ。」
こける4人。
「え?それだけ?」
安倍が言うと、
「悪いか!!」
ノリダー逆上。ノリダーは構えると、叫んだ。
「ノリダー西武警察!!!」
ノリダーがそう叫ぶと、辺りはいきなり大爆発を起こした。
「うわ!!!!」
全員バラバラに吹き飛んだ。
402 :
3話:04/03/27 18:11 ID:WqxOvZiA
「痛―い・・・。」
藤本は作り物の海の近くまで吹き飛ばされていた。剣を使い、なんとか
立ち上がる。本当に目茶目茶だ。あんなふざけてて、強い。最悪にタチが
悪かった。
「ノリダー・・・・。」
気づくとノリダーは既に藤本の目の前にいた。
「え?!」
藤本はノリダーにひょいっと、お姫様抱っこされた。
「海に落ちなさい!!」
「いや〜!!!!」
ザップーン!!!
藤本は無残にも海へと落とされた。さっきの爆発での傷が凄く滲みる。
なんとか浮き上がると、砂浜めがけて泳ぎ出した。・・・寒い。
何やってんだろう、と自らに疑問を投げかけたくなったが、とりあえず
今は這い上がって目の前の敵を倒す事のほうが先決だった。
「絶対倒す!!」
海から出ると、藤本は走り出した。しかし体が重く、すぐに一回倒れた。
403 :
3話:04/03/27 18:15 ID:WqxOvZiA
「む・・・どこへ行った?」
ノリダーは辺りを見回したが、4人の姿は見当たらなかった。ここに来て
広すぎるエリアが仇となったようだ。
「なら、ノリダー・・・・・地震!!!」
ノリダーが技を発すると、辺りは突然強い地震に襲われた。
「うわ!!!」
木から辻が落下する。
「そこか!!」
ノリダーは辻に向かって駆け出した。しかしすぐに転倒する。
「うわ!!地震でフラフラする!!」
ノリダー自滅。倒れているノリダーを横目に、小川は飛行用の召喚獣に
乗って辻を回収した。既に安倍と藤本も乗せてある。4人はそのまま
崖の上に再び上がった。
「どうするべか?何もかも滅茶苦茶だべ、あいつ。」
「とりあえず、ありったけの技ぶち込みましょう。」
藤本が言うと、3人は同意した。
「でも効果的にやらないと、あんだけ技があると簡単に防がれそうですよ。」
「じゃあ、まこっちゃんがまず・・・・・・・でどうれすか?」
「分かった、行って来ます!」
小川はすぐに行動に出た。
404 :
3話:04/03/27 18:16 ID:WqxOvZiA
「バカ!」
小川に言われてノリダーはすぐに振り返った。
「なんだと?!ノリダー・・・・。」
ノリダーが技に入る前に、小川の召喚獣達は攻撃に出ていた。ヘビの召喚獣が
体に巻きつく。
「何?!」
ノリダーは成す術なくあっさりと巻きつかれてしまった。辻が斧に気を
溜めながら、ノリダーの元へとダッシュしてゆく。
「はぁぁぁ・・・・・!!」
辻は斧を振り上げた。斧が光る。辻の得意技が発動される瞬間であった。
「NON STOP!!」
斧が振り下ろされる。その瞬間ヘビは姿を消した。ノリダーは自由の身と
なったが、逃げる時間はもうない。
「あ゛あ゛!!!!」
斧はノリダーの胸部に直撃した。着弾点から鮮やかな光が辺りを包む。
ノリダーは空中へと浮き上がった。
「くそぉ!!ノリダー・・・ああ!!!」
ノリダーが次の技を出す前に、魔弾がノリダーの背中を捉えた。ノリダーの
背中は見事に凍りつく。藤本が浴びせたものだ。
「さよならだべ。」
そういわれてノリダーはそっちの方を向く。そして気がついた。今自分は
確実にその声の方へと吹っ飛んでいる事に。安倍は槍のとがってない方を
地面に突き刺し、置いた。
405 :
3話:04/03/27 18:17 ID:WqxOvZiA
「ちょっとむごい倒し方でしたね。」
小川は手で目を隠しながらも確実にその姿を見ていた。見事に槍の上に
突き刺さった遺体は、グロテスクでありながら芸術的でもある、と安倍は
言うのだが・・・。どうも3人には惨殺死体にしか見えなかった。
ガラ・・・・ッ。
「あ!!」
ワカゾーが怯えながらこっちを見ていた。その姿には戦意のカケラもない。
「どうする?」
安倍が3人に聞く。
「別に殺す必要はないのれす。」
「でもここで見逃したら後ろから攻撃、なんてことされるかも。」
小川の意見を鵜呑みにした安倍は槍を回収して構えた。
「ご、ごめんなさいぃ!!!」
こいつも『鬼神』なら何かあるはず・・・。なら早いうちに手を打つべし。
鉄は熱いうちに打て、だっけ?あれ?なんか違うべ?まあいいか。安倍は
一気に突っ込んだ。
「!!」
ワカゾーはポケットから棒状の携帯食品を取り出すと、食べた。途端に
ワカゾーの動きが変わる。安倍の槍による3連打を、鮮やかにかわし、
3打目が終わった所でワカゾーは槍の上に乗っかった。
406 :
3話:04/03/27 18:18 ID:WqxOvZiA
「はぁ・・・はぁ・・。」
ワカゾーは息苦しそうに呼吸を繰り返すと、槍の上から降りた。やはり
こんなでも、鬼神は鬼神だ。にしてもこのポパイのような変身っぷりは
いかがなものか。安倍はそんなことを思いながら槍を構え直した。
「行くべ!!!」
安倍は槍で「斬る」から「突き」へ攻撃を転換した。
「うわ!!!」
かわし続けるワカゾー。後ろから辻も斧で加勢した。
「やめてください!!!」
全てことごとくかわすワカゾー。それにしても何故攻撃はしないのだろう?
藤本は傍観しながら考えていた。
「美貴ちゃんも見てばっかりじゃないで加勢してくらはい!!」
「はいはい。」
剣を構える。剣はすぐさま炎に包まれた。藤本は剣を上段に構え、思い切り
振り下ろすと、火の玉がワカゾーへ向かって一直線に伸びていった。
「ひぃ!!」
ワカゾーは安倍と辻の連続攻撃を避けつつ、火の玉を蹴りで上へ弾き飛ばして
しまった。その動きはまさに人知を超えた動きであった。それなのに未だに
攻撃らしい攻撃は全くしないワカゾー。
「なるほど・・・。」
藤本はよーく理解すると、1対2の肉弾戦に加勢した。
「わ?!うそ!!」
ワカゾーは更に焦る。しかし、それでも攻撃する気は全くないようだ。
来る攻撃来る攻撃をかわし続ける。藤本はそんな中、ワカゾーの体ではなく
別のものに狙いを定めた。
407 :
3話:04/03/27 18:19 ID:WqxOvZiA
「え?」
ワカゾーに今日初めて攻撃が当たった。ただし、ポケット。中から携帯食品が
飛び出した。辻がすぐに手に取り、開封する。
「あ!やめて!!」
ワカゾーの言葉なんて、食べ物を前にした辻には聞こえない。辻はあっという間に
全て平らげてしまった。と同時に、ワカゾーのスピードが弱まり始めた。
そして遂に、
ザク!!
安倍の槍がワカゾーの腕をキャッチ。
「う!!!」
ワカゾーはその場で倒れこみ、転がった。腕を必死に抑え、こっちをチワワの
ような目で見ている。
「ようはあの食べ物を食べると一時的に素早くなれるんだけど、攻撃力は
フツウのまんまで、ノリダーを逃がす専門の鬼神だった、ってこと?」
小川の読みはズバリ正しかったらしく、ワカゾーはそれまで以上に怯えだした。
「さあどうするべ?」
安倍がひょいっと槍を持ち上げると、そのままワカゾーも宙に浮いた。
「ゆ、許してください!!」
目は本気で許しを求めている。戦意ゼロ。
「じゃあ・・・、こうしよっか。」
小川が召喚獣を出す。魔術師タイプの召喚獣。
「何がいい?」
小川の問いに全員思い思いの回答をした。
「ケーキ!」
「カエル。」
「犬!」
408 :
3話:04/03/27 18:21 ID:WqxOvZiA
結局可愛い犬で可決となり、ワカゾーは犬にされそのまま放たれた。
「ばいばーい。」
辻が少しだけ残念そうな顔をして手を振る。ケーキにしてどうするつもり
だったんだ?!と誰もが思ったが口にはしなかった。
「裕ちゃん?鬼神撃破。」
『鬼神?なんでおんねん。誰や?』
「ノリダーと、ワカゾーだべ。」
『もしかして、うちらが今日ここに来る事バレてたっちゅうことはないよな?』
「え?」
4人は固まった。そしてノリダーの台詞を思い出していた。
「お前ら!!待て!!ていうかずっと待ってた!」
「鬼神は出兵してるはずなのに・・・あたし達を待ち伏せしていた?」
藤本が呟くと、中澤は声を上げた。
『なんでバレてんねん?!もしかして・・・いや、考えたあないことなんやけど、
ええわ。全員に回線を繋ぐで。皆?』
[はーい!!]
全員の返事が聞こえる。
『うちらの中にスパイがおる可能性がある。』
[え?!]
全員驚きの声を上げる。しかし中澤の推測が正しければ、一人はバレたことに
声を上げている。中澤がここで全員に言ったのは、スパイへの牽制だった。
誰だか分からない以上、お互いに注意を引いてほしかったのだ。
『せやかて、お互い信頼しないんは頂けへん。あくまで可能性の話やから。』
中澤は一応そう付け加えた。
スパイの存在の可能性をここで匂わせた事が、後の悲劇を生む事になるとは、
中澤は当然知る由もなかった。
To be continued…