もろたーー!!

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7.エンダァァァァー
 石川、辻と3人でいつものように昼飯を食べていると、チャイムが鳴った。俺は慌てて残っていた飯を口に入れ、
 辻の渋い表情を横目に玄関へと走った。
 ガチャッ。
 「こんにちは、ちょっといいですかぁ〜?」ドアを開けた途端、松浦が顔を出した。少しびっくりして一歩ひく。
すると松浦はすかさず部屋の中へと入ってきた。
 「お邪魔しまーす。」
一応挨拶は忘れない。松浦は奥へ入ると、昼食の匂いをすぐその鼻で察知した。
 「おぉ!すごーい。」
石川と辻が食べる本格インド風カレー(あくまで”風”)を見て、松浦は声をあげた。
 「石川さんが作ったんですかぁ?」
 「うん、すごいでしょぉ〜。」
今回珍しく石川が調理。出来もなかなかのものだった。松浦が石川に少しカレーを分けてもらう中、
俺は聞いた。
 「今日は何?」
  松浦は口の中の物を飲み込むと、答えた。
 「ボディーガードをしてもらいたいんです。」
125よろしく留年:04/02/20 18:58 ID:nLy1pjrY
「ボディーガード?俺に?」
この細身の俺にボディーガードを頼むのは、かなり筋違いな話ではないだろうか?
別に高校時代運動していたからある程度体力には自信があるが、                        
「ボディーガードなんて、とてもじゃないけど俺の出来る仕事じゃなくない?」
思ったまま口にした。
「いえ、基本は仕事の時怪しい人がいないかどうかの監視をしてくれればいいんです。」
松浦の話によると、最近ストーカー?と思われる人影を仕事から帰る途中見ていて、
それが近寄れないように監視してほしいとのことだった。それなら大丈夫だな、と思い、
「分かった。」
とだけ答えた。
「じゃあ明日お願いしますね。」
明日?!あの・・・。
「明日・・・・試験・・・。」
「お願いしますね!!」
満面の営業スマイル。・・・。
126兵器投入:04/02/20 19:00 ID:nLy1pjrY
「俺はなぜここにいるんだろう?」
 泣きながら車を運転する。助手席には松浦。俺単位微妙なのに・・・。
「頑張ってくださいね〜。」
ニコニコ笑う松浦が、余計に寂しさを誘う。俺は悲しさを紛らわそうと、適当にMDを車に入れた。
曲が流れる。洋楽だったためか、松浦は?な顔をした。俺はそれに気がつき、
「洋楽やめとく?」
と聞くと、少し申し訳なさそうにはい、と答え、自分でMDを取り出し、松浦自身が持ってきたMDを入れた。
曲が流れてくる。・・・・?聞いたことあるような・・・でも思い出せない。なんだ?しかし歌い手の声ですぐに分かった。
「あや・・・や・・・・。」
俺は少し呆れてつぶやいた。どうやら自分のアルバムを投入して来たようだ。松浦は曲に合わせて楽しそうに口ずさんでいた。
「どないやねん・・・。」
俺は松浦が聞こえないようにつぶやいた。
127ハルイチによる業界情報:04/02/20 19:01 ID:nLy1pjrY
  まず最初はTBS。赤坂だ。ちょうど新曲のプロモーションと言う忙しい時期に当たってしまったようだ。
ミニマラソンで見覚えのある心臓破りの坂を進み、車庫へ。
 「えっと、うたばん?」
 「そうです!一応、スタジオで見学していってください。」
俺は言われるがまま見学へ行った。
 とりあえず驚いたのが、予想以上にリハーサルが多かった事だ。軽く流れを説明してそれで終わりかと思いきや、
さすが歌番組らしくないだけのことはあって、緻密だ。念密な打ち合わせが行われ、カメリハなどたくさんのリハを経て、
ようやく本番が始まった。
 「にしても豪華だ・・・。」
司会の二人を見てしみじみした。面白いし、いや、面白いのは当たり前か。二人とも立派な芸人だし(何か間違っている)
 にしても、こんなに早いうちから撮影するとは・・・。トークが終わると次は歌録りだった。曲は一度も聞いたことのない曲だったので、
少し驚いてしまった。早いうちから色々聞けるなんて、羨ましい。たまにはデモテープくらいくれたっていいじゃないか。
128豚バラブロック:04/02/20 19:02 ID:nLy1pjrY
  松浦の歌を見て(聞いて)いると、凄いオーラを感じ、そっちの方を見た。狂乱の貴公子、ガッくんことGackt。
どうやら二本撮りらしい。Gacktは俺の存在に気がつくと、俺の方に近寄ってきた。カラーコンタクトが雰囲気を一層引き立てる。
Gacktはやはりボソッと言った。
 「君は?」
 「松浦の、ボディーガードを頼まれまして・・・。」
俺は柄にもなく緊張しながら答えた。普段散々芸能人と接してるのに・・・。やっぱ彼女らはそう言う感覚じゃないからかなぁ。
 「そう。よろしく。」
Gacktは俺に手を差し出した。え?なんで?握手ですか?俺はとりあえず手を出し、握手した。
  グシャッ。
 「はぅ!!!」
 「じゃ。」
Gacktは相変わらず呟く様に言うと、俺の背中を一回軽く叩き、去っていった。
ちょうど松浦がそのとき戻って来た。松浦は俺の手を見て、言った。
 「どうしたんですか?手、腫れあがって真っ赤っ赤じゃないですか!!」
 「・・・・なんでもないです。」
129機能停止:04/02/20 19:03 ID:nLy1pjrY
うたばんの撮影が終わると、俺達はすぐにTBSを飛び出さなければいけなかった。流石売れっ子。忙しい。俺が片手で運転をする中、
松浦がうたばんで貰った弁当にがっついていた。そういえば朝も食べてたなぁ。てかまだ10時とかですよ?
 「あやや1日何回食べてる?」
 「えっと・・・7回?」
多!!エネルギーの源は食べる事なのか?!一瞬辻の姿が揺らいで消えた。
 「次は講談社か。」
「うん、グラビア。」
スピーカーから流れる音楽が止まった。松浦がMDを取り出すと、次のMDを探し始めた。
「あやや以外で。」
それだけ言うと俺はもてあましていた右手に軽く息を吹きかけると、左手一本での運転を再開した。
130生活習慣狂ってる:04/02/20 19:04 ID:nLy1pjrY
飯あんなに食べたあとにグラビア・・・。水着じゃなくてよかったネ。新曲が春頃発売らしく春系の衣装に身をまとった松浦を見ながらそう思った。
あんだけ食べて、へそ出せるなんてある意味脅威だな・・・。
「お疲れ様でした〜。」
撮影はあっさり終わった。松浦が着替え終わると、俺は言った。
「よくカメラに向かってあんなに笑えるよね。」
プロに対して言う発言ではなかったが、俺にはよく理解出来ない感覚だった。昔から写真を撮られるのは好きじゃなく、撮る方が全然好きだった。
そんな俺からしてみれば、カメラに向かって色々な表情を浮かべる松浦は不思議で仕方がなかった。
「お仕事だしぃ〜、可愛く撮りたいから。」
あ、そっか。ナルっ気があるの忘れてた。俺は納得した。全然話が飛ぶが、俺は不意に思い出したので、聞いた。
「そういえば学校ってどうしてるの?あんまり皆話さないけど。」
「今からですよ。」
「今――?!」
131学校での風景:04/02/20 19:05 ID:nLy1pjrY
  車が学校に到着したのは12時ぐらい、松浦の教室に到着するともう昼休みが始まっていた。松浦はクラスの友達に混じりすかさず弁当を食べだす。
 「また食べてるー!!!」
俺は教室の外で見張り中。明らかに不審な目で見られて警備員に逆に監視されそうになったので事情を説明した。廊下でパンを食べながら、周りを見る。
・・・だめだ、生徒ばっかりでこの中に混じられたら全然分からない。俺意味無いじゃん。自分の無力さに悲しさを覚えた瞬間だった。
132はしょったラジオ:04/02/20 19:06 ID:nLy1pjrY
  俺は結局5,6時間目は車の中から学校へ侵入しそうな怪しい人物がいないかをずっとチェックしていた。放課後になると、
松浦は急ぎ足で車に乗り込み、次の仕事場へと向かう。
 「えっと次は・・・。」
スケジュール表をぱらぱら捲る松浦。松浦は指を止めると言った。
 「ラジオ、ですね。ゲスト出演します。」
というわけで出演する番組がOAされているラジオ局まで車で行く事になった。そうか、労働法で遅い時間は生だとまずいんだっけな。
  ラジオ番組の裏側は、少しドタバタしているらしい。横で生放送で行っている番組があり、凄い騒ぎ様だった。
スタッフがあっちへこっちへ走り回り、CMのたびにディレクターがダメだし。こっちはなんていうか、平和だ〜。
和やかな雰囲気のままラジオも終了した。
133バナナはおやつに入りますか?:04/02/20 19:08 ID:nLy1pjrY
  ラジオ収録が終わると、もう夜になっていた。今日の仕事はこれで終わり、と言う事で俺は松浦と一緒に家へと車でそのまま帰ることに。
 「ボディーガードは最後家に着くまでがボディーガードですよ?」
松浦がよくあるんだかないんだか分からないような台詞を発した。
 「はいはい。」
俺はこのとき、完全に油断していたような気がする。相変わらず片手運転は続いていたが、別に誰もいないじゃん、
と正直余裕ぶっこいていた。しかし家に近づくと、妙な事に気がついた。
 「・・・さっきからあの車、つけてきてない?」
俺は呟いた。松浦は後ろを見るとすぐに表情を変えた。
 「あれです!」
俺はスピードを少し上げた。一応確認のためだ。後ろを走る車との差は全く縮まらない。
左へ曲がっても、右へ曲がっても、車は着いてきた。俺は叫んだ。
「ペーパードライバーをなめるな!!」
「え?!」
「嘘だよ。」
俺が笑うと、松浦はホッとした顔をした。
134蛍原流:04/02/20 19:09 ID:nLy1pjrY
なんとか車を撒き、マンションの駐車場に到着すると、あたりは完全に真っ暗だった。
「あ〜あ、もうこんな時間だ。」
俺が嘆くと、エンジン音が聞こえてきた。後ろを振り返る。俺はすぐに声をあげた。
「やばい!撒き損ねた!!」
車は到着し、男が出てきた。なんていうか、オタクっぽい風貌?ただ太ったタイプじゃなくてよかった、
がりがりタイプならなんとか・・・。と思っていたら男はナイフを手に取った。
「邪魔する奴は逝け!」
 ブン!!
俺は奇跡的にナイフを避けた。すると松浦が俺に一瞬だけ近づき、渡してきた。
「これ!!」テニスラケット?
「そそそそ。よし、岡。エースを、
ねらえねーよ!!てか2話続けてこのネタかよ!!」
  何こんなときノリツッコミさせるんだこいつは。そんなことをしている間に男は突っ込んできた。
135NG:04/02/20 19:11 ID:nLy1pjrY
 ブーン!!
 男は腕を上から振り下ろしてきた。俺はそれをラケットで迎え撃つ。
 カン!!!
 鈍い音とともに、ナイフが空中で回転した。
 「キャッチ!!」
松浦の言葉に、俺は反応してナイフをそのまま感覚のない右手で受け止めた。
  グチャッ。
 「あ。」
なんて間抜けな・・・。
  ピューッ。
血がそこらじゅうに吹き出た。
 「うわ!!」
運良く血が男の目に入り、男は目を擦り始めた。しめた。俺はこれをチャンスとばかりにすかさずキックを繰り出した。
う・・・力が入らない。
  ボンッ。
 「あ。」
なんとか当たっても、威力は微々たるものだった。俺はそのまま出血多量で貧血を起こし、立てなくなってしまった。
男はまだ目を擦ってる?・・・視界がおかしくなってきた。
136:04/02/20 19:12 ID:nLy1pjrY
  うすれゆく視界の中で俺が見たのは、誰かが男を投げ飛ばす風景。男が地面に叩きつけられると
  “誰か”は男の上に馬乗り、マウントポジションに入った。ああなんてむごい。男はボコボコに顔を殴られ続けた。
  男は未だに視界が遮られているままで誰にやられているのか全然分からないようだった。男が気を失ったところで、
  “誰か”は俺に近づいた。
  ・・・松浦?ボディーガードなんていらないじゃん・・・。俺の意識はそれ以上続かなかった。
137”俺”が必要だった本当の理由:04/02/20 19:15 ID:nLy1pjrY
次の日、昼頃のニュース。
  次々とフラッシュを浴びながら、松浦が珍しくカメラとは違う方向を見て言った。
 「ホント、恐かったです。助けていただいて、どうもありがとうございました。」
表情はその恐怖を物語っている。横にはお礼を言われて納得の行かない表情の男1名。何?いつの間に事実摩り替えたの?
目がちかちかして来た頃、報道陣が更に質問を続けた。
 「お二人は、お知り合いですか?」
 「はい、同じマンションに住んでいて。最近夜道に気配を感じてたんでボディーガードを頼んだんです。」
報道陣の質問は続く。
 「男がナイフで切りかかってきたとき、どう思われました?」
 「怖かったですよぉ〜。でもこの人、ナイフを素手で受け止めて、男を投げ飛ばしたんですよ!!ちょっと興奮しちゃいました。」
少し笑みをこぼす松浦。
 「男は顔面にかなりの傷を負ってましたが。」
松浦は少し興奮気味に答える。
 「ああそれはそのあとまた松浦に遅いかかってきたときに右ストレートでズバッと!!」
 「では・・・・・・。」
フェイドアウト。
続く