川o・-・)紺野もモー娘。卒業へ川o・-・)

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ご は ん  2

ある日矢口さんが言った。
「よっすぃ〜、このお肉かたくない?」
「…そうですか?自分はこんくらいがちょうどいいですねぇ。」
私は返した。
この返し方が気にくわなかったらしい。
そんなこんなで元々食通気取りの私たちのバトルは始まった。

55 :04/01/31 12:40 ID:Y370Pzx+
今日配られたお弁当は中華だ、酢豚が入っている。そしてお決まり、パイナップルも入っている。
辻ちゃんが、遠くで叫んだ、「ぱいなぽー!」
カンカンカーン!
私たちの間で見えないゴングが鳴り響いた。

「よっすぃ、酢豚にパイナップルは邪道だよね。」
「そうですか?矢口さん、甘辛くてすっぱいとことかやっぱパインは欠かせないでしょう。」
「駄目だなぁ、通じゃないよね〜。舌が痩せちゃってるよ。」
「いやぁ、てゆうかもともと、酢豚があんまり好きじゃないんですよ。」
「話になんないな。」
「いや、何かくどいじゃないですか、中華。」
もちろん、中華、の続きには( )して矢口さんもね、と入れたつもりである。

何かを察知したのか、矢口さんは舌打ちをした。
見ると、部屋の隅から飯田さんが大きな瞳で睨んでいた。
カンカンカーン!一時休戦。私達は箸を置いた。
56 :04/01/31 12:40 ID:Y370Pzx+
それはハロモニの収録の時に起こった。
こんなバトルの最中に、よりによって『クイズの勝者にはご馳走が!』。
そしてまたまたよりによって私の次に矢口さんがクイズに勝利した。

「すし〜♪トロくださいな、トロトロ。」
逆隣では加護ちゃんが歌う。
出てきたトロはきらきらと、ピンク色に光っている。
カンカンカーン!ゴングはココロで鳴り響いた。

「やっぱさぁ、食べ始めは、ギョク。」
「いや、カッパですよ、カッパ。」
矢口さんは聞こえないフリをして卵を頼む、もちろん私はカッパを。
さすが廻らないお寿司屋さんだけある、旨い。
けれどバトルは始まっている。
「うまぁい♪」と、もぐもぐと隣でタマゴをほおばる矢口さんが、しょうゆを1口ごとにつけているのを見逃さない。
「しょうゆは1回だけつければ充分ですよ。」
「いや、だってオイラよっすぃみたく、1口で全部くえねぇもん。」
嫌な空気を感じとったのか、隣で加護ちゃんはしょうゆに2度付けしたトロを慌てて1口で飲み込んだ。
遠くでピンポンピンポン鳴り響く。誰か正解したらしい、でもそんなこと気にしちゃいられない、私と矢口さんは互いにケチをつけあう。
すると急に矢口さんの動きがとまった。
向かい合って言い合いをしていたので気付かなかった、
矢口さんの視線の先、私の背後には大きな瞳で睨みつける飯田さんがいた。

57 :04/01/31 12:45 ID:Y370Pzx+
ここは楽屋の外、喫煙所である。
もちろん、たばこを吸うわけではない。私たちは飯田さんに説教をくらっていた。
「楽屋で言い合ってるぶんにはいいよ、でもさ、収録中って。」
「すいまへん。」
矢口さんがおどける。飯田さんのこめかみがピクッと動いた。
「あのさぁ、食通とか食通じゃないとかさ!言い合ってご飯食べるのはいいけど、
それでおいしいわけ!?」
「「…。」」
確かにそうだ、矢口さんにケチをつけようとしてあらを探す私は、ここ最近、
お弁当を味わってない気がする。そういえば昨日は何を食べたっけ??
横を見ると、矢口さんも同じ気持ちなのか小さなからだをもっと小さくしてしょげている。
「みんながご飯食べづらそうなの気付いた?そんなくだらないことが、他の子にも影響すんの。
一応二人はお姉さん組なんだから…ちょっとは考えなきゃ。」
飯田さんはそう言って楽屋に戻った。
私と矢口さんはお互いに顔を見合せた。
58 :04/01/31 12:46 ID:Y370Pzx+
楽屋に戻るとみんなは何かを食べていた。
飯田さんはいつもの低位置でみんなと私たちの顔を見た。

「「みんなごめんっ。」」
みんながキョトンとした顔で見る。
私と矢口さんは2人して頭をさげた。

「二人とも顔あげて。」
飯田さんの隣に座っていた安倍さんが、紙袋を持ってこっちへ来た。
「そだよー。気にすんなぁぁーよっすぃ♪。」
「一緒に食べよぉ〜やぐちしゃん!」
辻ちゃん、加護ちゃんが私たちの背中をばしばし叩く。
ホッとする、思わず矢口さんの顔を見て、2人で笑った。

「ところで、それなんなの??」
「あ、あんぱんだべさ。うまぁ。」

カンカンカーン!
私たちはまた、顔を見合わせた。
「こしあんだよねぇ。」
「つぶあんだよねぇ。」

私たちの見えないゴングはもうちょっとだけ、消えそうもない。