63 :
トミー・ボンバー:
この後、彼女は自分の意識が一瞬飛んだことを理解することになる。
気付くと、快晴とも言えるような青空が自分の視界に映し出されていて、
何故か地を背にしているということからだ。
それと同時に、何故自分がそのようなことになっているのかを導き出すのに
それ程時間はかからなかった。後藤は、すぐに上体を起こした。
「いっ…痛っ!」
左頬に激痛が走る。咄嗟に左手がそこに運ばれてゆく。
そこは、まるで後藤の整った輪郭を崩すかのように大きく腫れあがっていた。
「…まだ痛いんだけど。」
痛みに気をとられていた後藤の耳に、それは飛び込んできた。
正面を向くと、魔獣へと変貌してしまった亀井が、後頭部を優しく撫でている。
その魔獣は、にたにたと笑みを零してはいるが、
あの眼差しは一向に変わってはいなかった。
『後藤さん!!』「絵里!」
その異常な光景に耐えきれなかったのか、
訓練生達の中の数名が、その声と共に輪から飛び出した。
徐々に輪の規律が乱れ出す。
「ストーップ!!」
その一声により、全ての足音が一斉に鳴り止んだ。
場が落ち着くと同時に、後藤はすっくと立ち上がり、魔獣を睨み付けた。
そして意を決したかのように、胸ポケットから漆黒のデッキを取り出す。
「変身!」
後藤が光に包まれる。
その様子を見るやいなや、魔獣も動き出した。