58 :
トミー・ボンバー:
−仮面ライダー戦記「ERI」−
第一章「新兵」
ここは、次世代特殊部隊「Morning。」の新兵養成所。
粗雑なフェンスに囲まれ、整地もされていない運動場に
けたたましい金属音だけが鳴り響いている。
いつもなら、訓練生達の声で賑わっているはずなのだが…
その訓練生達が一つの輪になって、二人をとり囲んでいる。その中心に後藤はいた。
「どうした?亀井?こんなものなのか?」
亀井と呼ばれた訓練生の放つ刃を、ことごとく受け流している。
こうした時間が一体どれくらい経っていたのだろうか。
すでに、亀井の振り回している手は痺れ、感覚がない。
しかも、彼女の心中は焦りと苛立ちで埋め尽くされていた。
もう肉体的だけでなく、精神的にも疲れ切っていたのである。
そんな中、その後藤の一言で怒りを剥き出しにして言い放った。
「そんなことありません!」
その言葉と同時に、後藤へ渾身の力を込めた一撃を放つ。
しかし、彼女にあっさりとそれも受けられた。
剣を受けたまま、後藤は前に出た。負けじと亀井も出る。
すぐに、鍔迫り合いの状態になった。
59 :
トミー・ボンバー:04/01/29 17:29 ID:LT8RpF+1
「ふ〜ん。そうは思えないんだけど。」
後藤は、普段と変わらない表情で言葉を返した。
そして、そのまま一気に亀井を押す。
先程までの力とは比べものにならない。
「ぅわっ!」
それによってバランスを崩した亀井は、頭から地面に叩きつけられた。
「…」
仰向けになったまま動かない。
その様を見て、後藤は続行不能と判断し、
亀井に向けていた視線をゆっくりと起こし、そのまま辺りを見回した。
そしてある所でその動きを止め、呟くように言った。
「じゃあ、次。田中。」
訓練生達の視線が、一斉にそこへ集まる。
田中と名指しされた少女は、すっとんきょうな表情をしている。
どうやら自分の置かれた立場を理解していないようだ。
「おーい。田中ぁー。」
今度はちゃんと耳に届くよう呼びかけた。
そこでようやく、彼女は自分が指名されたことに気付く。
「えっ?何?私?!えっ?えっ?」
その少女は、とても落ち着かない様子で、
自分の周囲を左右に見渡し続けている。
「ちょ・ちょ・ちょっと待って!ちょっと待って〜!!」
ひどく動揺しているようだ。まぁ、彼女は元々そういったキャラなのだが…
「はは…」
その光景が、後藤の口元を微かに引き攣らせた。
「…痛いんだけど。」
突然、足元からドスのきいた声がした。
「んあ?」