88 :
名無し:
「探偵事務所つくったんだ」
と圭ちゃんがカッコいいべスパに乗って訪ねてきた。私たちはちょうど家でうどんを食べ
ているところだった。圭ちゃんはカッコいい帽子を被っていた。圭ちゃんはカッコいいサン
グラスをかけていた。圭ちゃんはカッコいいスーツを着ていた。圭ちゃんは…
「もういいから」
と市井ちゃんに言われ、私は半泣きでカマボコを口に放り込む。
89 :
名無し:04/01/07 20:40 ID:AeNwxvlK
「なんかいい仕事ないかな」
と圭ちゃんは腕組みをして言う。それはこっちの台詞だったが言わない。言ったら負けの
ような気がしたからだ。プライドだけは捨てちゃいけない、そうだよね市井ちゃん。
「そりゃこっちのセリフだよ・・・ああ、なんかいい仕事ないかな」
ため息交じりに市井ちゃんは言う。私は半泣きでずずっとウドンを啜り上げる。
90 :
名無し:04/01/07 20:46 ID:AeNwxvlK
「でも二人は殺し屋になったんでしょ?仕事しちゃったらつかまんじゃん」
と圭ちゃんはさらっと、言ってはいけないことを言う。
「大丈夫だよアイドルなんだから」
市井ちゃんもさらっと返す。
こんなんでいいのだろうか。私たちはハードボイルドなヒットマンになるはずじゃなかった
のだろうか。そんな思いが私の胸に宿る。
「ねえ市井ちゃんあたしたちってハードボイルドなヒットマンじゃなかったの」
と私はついに口を挟む。
市井ちゃんは笑う。
「うどん食いながら何言ってんだお前」
圭ちゃんも笑う。私は半泣きで最後に残しておいた卵をつるつると飲み込む。
91 :
名無し:04/01/07 20:51 ID:AeNwxvlK
「やっぱ世の中甘くないよねえ」
と圭ちゃんが険しい顔でぼやく。
「ほんとだよ圭ちゃん」
と市井ちゃんもしみじみ呟く。
そしてわけのわからない衝動に突き上げられた私は、一気にうどんを汁まで飲み干す。
それから丼を放り投げる。それは壁にあたってがしゃん、と音をたてる。私はあふれでる
感情そのままにわめきちらす。
「そんなんでいいの二人とも。夢に向かって走りつづけてこそ青春でしょ!それを何、魚の
死んだような目でぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃさぁ!そんなんでいいの?昔の二人は違った
じゃん、もっとこうあつくて!」
私はぜいぜい言いながら口を閉じる。なんとなく満足したのを感じる。
92 :
名無し:04/01/07 20:54 ID:AeNwxvlK
そして二人は魚の死んだような目で割れた丼を見ている。
やがて、だるそうに圭ちゃんがため息をつく。
「あーあ」
「何やってんだお前、ちゃんと片付けとけよ・・・」
「何も割ることなかったのに。」
「でも後藤の言うことももっともだ、確かに最近うちらはアツイものを忘れてる・・・」
「そうだサヤカ、ピンポンダッシュしに行こうよ」
「それだ圭ちゃん!やるか久しぶりに」
「負けないわよ!」
「ゆ・・・め・・・がある限り・・・♪」
割れた丼のかけらを、拾い集めながら私は、ふとそんな歌をくちずさむ。
二人はドアも閉めずに出ていった。
一人きりの居間で私はゆっくりと泣く。今度こそ全泣きだ。
93 :
名無し:04/01/08 18:06 ID:QIQx3RnJ
早朝、いきなりよしこが怒鳴り込んできた。
「こないだの件はどうなってるんですか。」
手には新聞を持っている。ぐしゃぐしゃになったそれを開くとどうやら広告のようだ。市井
ちゃんがいかにもダルそうにそれを読み上げる。
「あ・・・ハッピー♪教・・・初集会・・・本日開催?」
「
>>76-77で言ってた話ですよ。梨華ちゃんがとつぜん宗教つくるとか言い出してその件で。」
「
>>76-77ってなんだよ。ワケわかんねえよお前」
「梨華ちゃんをとめてくれって言ったじゃないですか。それなのに全然。」
94 :
名無し:04/01/08 18:12 ID:QIQx3RnJ
そんな話を背中に、私は台所に移動する。コポコポといい音をたてながらお茶を入れる。
「しょうがないだろ
>>78-79で盛り上がっちゃったんだから」
「
>>78-79ってなんですかワケわかんない」
「つまり・・・ええと、言わせんなよバカ、撃つぞ」
市井ちゃんは顔を真っ赤にしてピストルを出す。
「そうやってなんでも暴力で解決できると思ったら大間違いですよ」
よしこも切れ気味でメンチを切る。
私は台所でお茶をずずっとすする。
それにしてもいい天気だ。
95 :
名無し:04/01/08 18:17 ID:QIQx3RnJ
題名は「おきざりハート'04」で
もっとも今思いついただけなんで苦情がきたら変えます