72 :
名無し:
よく晴れた日の午後私は原宿あたりのオシャレな喫茶店でメロンソーダを飲んでいた。
梨華ちゃんに呼び出されたからだ。
「ハッピー教っていうの。」
梨華ちゃんは席につくなりそう言った。
「いきなりなんの話。」
と私はメロンソーダを吐き出しそうになりながら答えた。真っ白なメロンソーダを。
73 :
名無し:04/01/02 00:39 ID:23sHtRzw
「宗教を作ることにしたの。全世界がみんなハッピー♪になれる宗教なの。教祖はもちろん
この、あ・た・し」
梨華ちゃんはいかにも嬉しそうに喋り始めた。きもちわるいよ梨華ちゃん。と思いながら
私はじっとそれを聞いていた。もちろんただ聞いているだけじゃつまらないし、絵になら
ないから、時々拳をつよく握って膝の上に揃えて置いたり、飲みかけのメロンソーダと
梨華ちゃんとの間で視線を揺らしたり・・・などとドラマっぽく振る舞ったりもした。なんせ
私はアイドルなのだ。
「そんでね簡単に言うとおはようのかわりにハッピー♪でさよならのかわりがグッチャー♪
なの。お布施は一日一万円を予定しているの。フロムエー見たら大体そんな感じだった
から。」
74 :
名無し:04/01/02 00:40 ID:23sHtRzw
「へえ挨拶とかあるんだ。そう言えば最高ですかー。とかあったよね。あとしょーこーしょー
こー♪って。アハハ・・・」
と言って私は相槌のつもりで笑う。
するとそれを合図に梨華ちゃんの体が小刻みに震え出す。
「何よゴッチン・・・あたしいっしょけんめい考えたのに・・・ゴッチンに手伝ってもらおうと
思っていっしょうけんめい説明したのに・・・この世界がハッピーになればいいな、って
いっしょうけんめい考えたんだよ・・・?それなにのさそんなあざ笑うようなさ」
「えっ、あざ笑ってなんかないよ」
「笑ってるじゃない!」
梨華ちゃんのアニメ声が響き渡ってもさすが原宿あたりのオシャレな喫茶店。それくらいじゃ
ビクとも雰囲気は揺らがない。
75 :
名無し:04/01/02 00:43 ID:23sHtRzw
「ごめん梨華ちゃん・・・でも私宗教って言ったらそれくらいしか思いつかなくて」
「宗教なんてコトバ使わないでよゴッチンのばかっ!」
大声でそう叫び、梨華ちゃんは泣きながら席を立って駆け出した。
ウェイトレスとかウェイターとか他の客とかが全員ほんのりと見守る中、すさまじいスピードで
梨華ちゃんはレジの横を走りぬけて表の電柱に激突した。
私は伝票を手にとってゆっくりと立ちあがる。
76 :
名無し:04/01/02 22:55 ID:EoNvgo+N
「まさかほんとに作るとはな」
市井ちゃんはテーブルの上に足を乗せ新聞を読んでいる。行儀が悪いからやめろという
とぶたれる。ぶたれるのがわかっていても私は時々「行儀が悪いからやめろ」という。
「ハッピー♪教、日本武道館で初集会!だってよ。新聞に広告まで打ちやがってまるで
コンサートじゃねえか」
「でも結構ひとが集まるみたいよ。」
と私はあいづちをうつ。
「それで困ってるんですよぅ」
というのはよしこだ。
77 :
名無し:04/01/02 23:03 ID:EoNvgo+N
「梨華ちゃんの暴走を止められるのは二人しかいないと思って。」
よしこは封筒を取り出して、哀願するような目つきになった。
「財産かき集めてきたんで、これでどうか奴をころしてください」
「奴って誰だよ」
市井ちゃんは封筒を受け取りながら言う。
「正体はわからないんですけど、梨華ちゃんをあやつってる奴がいるんです」
「あやつってるってお前」
「じゃなきゃ梨華ちゃんがあんなになるはずはないんだ」
ハムレットばりに頭をかきむしるとよしこは叫んだ。
「お願いしますどうにかして梨華ちゃんを元の梨華ちゃんに戻してあげてください!」
そしてよしこは駆け出す。市井ちゃんはその背中に言葉をかける。
「ってお前これ三百円しか入ってないじゃねえか。おい待て。待てって」
78 :
名無し:04/01/02 23:10 ID:EoNvgo+N
「ありゃダメだ、完全にノイローゼだな」
よしこが出て行ったドアを見つめながら、市井ちゃんは呆れたようにため息をつく。
「で、どうするの、受けるの?」
と私はビスケットを食べながら言う。
「受けるも糞もこんなんどーしようもないだろ、大体300円じゃ交通費にだってならない」
市井ちゃんは封筒を投げ出す。テーブルにあたってチャリンと音がする。私はそれを
拾い上げながら言う。
「でもよしこは友達だから。」
79 :
名無し:04/01/02 23:15 ID:EoNvgo+N
「友達だからってこんなもん、どうにも・・・待てよ。お前さてはあいつと」
妙な目つきで市井ちゃんは立ちあがる。
「何よ。市井ちゃんには関係ないじゃない。」
と私は目を伏せる。
「そうか・・・いつからだ、いつからなんだこの女(アマ)?」
「いつからだっていいでしょう。なに、市井ちゃん妬いてんの?」
「うるせーあいつとアタシどっちが良かったんだ、ほら言ってみろ、ア?」
市井ちゃんは真顔で私に迫る。
もちろんこれもプレイの一環だ。