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124名無し募集中。。。
能面の集団が藤本と少女を追い、次々に闇へと姿を消していく。
「待て!」
飯田は叫び、能面の消えた方向を追った。
しかし能面の気配は既に、完全に闇に消え去っていた。

「足取りを追え」
「はっ」
飯田がそう言うと、浅葱色の羽織を纏った平隊士たちが、能面を追って次々と走り出した。

「……ちっ」
隊士たちの背中を見送って、
飯田は舌打ちをする。現場に残されたのは、累々と横たわる死体の群れだった。
刀を鞘に収め、軽くため息をついた。
死体の中には武士、能面、そして読瓜藩の武家が混じっている。
(あの訓練された動き……)

あの能面の集団は一体何者なのか。何の理由でこの一団を襲ったのか。
恐らく、強盗や辻斬りの類ではあるまい。
全ての検分には、相当の時間が掛かるだろうと思った。
最近、世が乱れているとは言え、不可解な事件が特に多い。
125名無し募集中。。。:03/12/28 21:40 ID:i/C6qMQd
(そして……)
飯田は一人の、あの能面の集団とは明らかに違う浪士風の娘のことを思った。
(奴一人だけは仮面をしていなかった。警護の者でもあるまい。……何者だ)

「局長」
隊士の一人が、飯田の前に一人の男を連れて来た。
男は異国のような、全身に金粉をまぶしたような奇妙な格好をしていた。
異国から呼び寄せた藩付の大道芸人かなにかだろうか。しかし顔は日本人と変わらない。

「姫が! 姫が!」
男が動揺しながら叫んでいる。
しかしその仕種は、男の見た目のせいか、どこかふざけているようにも見える。
126名無し募集中。。。:03/12/28 21:44 ID:i/C6qMQd
男に詳しく事情を問いただすと、この一団にはさる国元の姫君も加わっていて、
その姫が連れ去られたという。
(さっきの奴か)
飯田は藤本の顔を思い浮かべた。
娘の顔に似合わぬ、並々ならぬ殺気の持ち主だった。

通りに横たわる死体の数々を見る。
(読瓜藩……。一体何があるというのだ)

そして飯田は検分を進める隊士たちのほうに向かって言った。
「矢口! あたりを捜索する。後のことは任せた」
「あいよー」
飯田は威勢のいい返事を確認すると、近くの隊士たちに言った。
「辻! 紺野! 吉澤! 高橋! 奴らを追う。ついてこい!」
獣たちはふたたび、暗闇に向かって駆け出した。