――― 26話 夏のソナタ ―――
7月の、日差しが眩しい午後のカフェテラス。
白いサマーセーターに、サラサラとした茶髪、メガネを掛けた
甘いマスクの男の眼差しは涼しげだ。
うつむきながら紅茶に口を付ける女性は、男とは対照的に影が薄い。
いや、薄いどころか無惨にさえ見える。
目には隈ができ、肌はカサつき、顔色は血が通っていないかのように青黒い。
だが、男を見る瞳だけは情熱的に輝いていた。
「残念だが、君とはもう会わない事にしました」
「そう…」
「今でも、君を想う気持ちは変わりません…」
「本当?」
「ええ、でも今日でサヨナラです」
「…分かったわ。でも、最後にもう一度だけ抱いてください」
女の懇願に、一瞥をくれただけで椅子から立ち上がった男は首を振る。
「それは、お断りします。貴女の体は汚(けが)れ過ぎてしまった」
「それは、貴方の生活費を稼ぐ為に…!」
「僕は汚れた女性は嫌いです。特に貴女のように体を売る女性には触りたくも無い」
「そんな!…あ、貴方がしろって…!」
「サヨナラです」
立ち去る男の背中に ぶつかる女の絶叫。
「ヨン様ぁぁああ!!」
叫ぶ女は近い将来自ら命を落とすだろう…
そのように暗示を掛けているからだ。
男は自ら蛇眼と名付けた、人を操る術、『邪眼』の持ち主だった。
蛇眼に魅入られた女は、全てをこの男にささげる。
唇から発する『言霊』を蛇眼に乗せて女を虜にし、
体がボロボロになるまで、自分に尽くさせる。
体を売り、クスリに手を付け、寝る事も惜しみ男の為に働き捨てられる。
この男に食い物にされた女は数え切れない。
そして男は、警視庁から指名手配を受けた。
さすがに裏社会からも目が付けられ、東京に居られなくなり、
逃亡しながら辿り着いたのが魔界街だったのだ。
この街なら、日本の法律もヤクザも手が出せない。
そして、魔界街最初の餌食は、今捨てた女だ。
唇の端だけを吊り上げて笑う、ヨン様と呼ばれた男は
次の獲物を物色する事に決めた。
『スナック梨華』の前に一台の高級リムジンが止まっている。
藤本美貴は何故か毎晩のように通う常連客になっていた。
バーテンダーの吉澤と楽しい一時を過ごすのが目的だが、
ママの石川を からかうのも楽しかった。
「オマエ、変わったな…」
吉澤がグラスを拭きながら藤本に話しかける。
「そうかしら?」
「…ああ」
確かに藤本は変わった。
何が変わったと聞かれれば、雰囲気が変わったとしか言いようがない。
以前のようにトゲトゲしさが無くなり、高笑いもしなくなった。
見た感じはそれだけなのだが、何かが違う。
身にまとうオーラが違っているのか、
それとも、ただ単に大人になっただけなのか…
「ふふ、それは貴方にとって嬉しい事なのかしら?」
「…そうかもしれん」
目を閉じてフッと笑う吉澤に、薄く微笑み返す藤本。
「オマエには白い薔薇が良く似合う」
吉澤が藤本のセーラー服の胸のポケットに挿してある
一輪の白い薔薇を差して、藤本を見詰めた。
「まぁ、お上手ねぇ」
藤本の頬が薄ピンク色に染まる…
そんな雰囲気の2人を歯噛みしながら睨み付け、
テーブルで他の客を接客する石川。
カランカランと音を立ててドアが開き、一人の男が入ってきた。
「いらっしゃいませ」
カウンターに座る男に、吉澤が注文を取る。
「あの女性と同じ物を…」
椅子を2つ空けて座る藤本のカクテルを見て、同じ物を注文する男。
「かしこまりました」
出されたカクテルに口を付け、
「素敵な味です」と吉澤に話しかける男は、
勿論 間接的に藤本に話しかけているつもりだ。
店の前に横付けしてある、リムジンを見て入店したのだが、
その車の持ち主が、お嬢様風の女子高生だと一目で分かった。
店の中で、只一人、違ったオーラを醸し出していたのだ。
それは、高貴な薔薇のオーラだった。
次の獲物を探していた、蛇眼の持ち主は歓喜に震えた。
こういう お高くとまった女を自分の奴隷にするのが唯一の楽しみなのだ。
蛇眼の威力を発揮するには、視線を合わせて言霊を発せばよい。
男が話しかけようとした所に、接客が終わった石川が入ってきた。
藤本と男の間に座り、藤本に向かって
「いつまで居るつもりよ!」と毒づく石川は男に向かって
「いらっしゃいませ〜」と営業スマイルを見せた。
「ほう…」
男は石川の美貌に気付き、ニヤリと微笑む。
「素敵な方だ」
そう言いながら石川の瞳を見詰める。
藤本を落とせなかった場合の保険にと、石川に蛇眼を仕掛けたのだ。
「僕はペィ・ヨンジュンと言う者です」
ポーッと頬を染める石川の肩越し、藤本にも名乗ったつもりだ。
「まぁ、じゃあヨン様とお呼びしてよろしいのかしら。私はママのリカと言います」
天使の微笑みと自賛する、マダムキラーの微笑みは
蛇眼の威力を持って石川を呆気なく落とした。
「で、そちらの方は?」
藤本に話を向けるが、石川はプイッと藤本の事は無視する。
男の下心に気付き、嫉妬したのだ。
「おやおや、どうしたんです?」
「もう、意地悪な人」
石川は男にしなだれ掛かり、二の腕をキュッと捻った。
その光景に、ハァ?と、吉澤が咥えていたタバコをポトリと落とし、
それを拾い上げた藤本が、また吉澤に咥え直させた。
「あちらの邪魔をしてはイケなくてよ…」
藤本が店のマッチを擦って、吉澤のタバコに火を点ける。
「私にタバコの火を点けさせる事が出来るのは、貴方だけなんだから」
フッと甘い吐息でマッチの火を消す藤本は、魅惑的な瞳で吉澤を見詰めた。
「…ハハ」
「ウフフ…」
何故か顔を赤くする吉澤に、カクテルを傾ける藤本…
絵になる大人の関係と言った所か…
藤本のセーラー服を除けば…
「僕達も お仲間に入れてください」
石川に しなだれ掛かられたままの優男は、
カクテルグラスを軽く上げて、藤本と吉澤の間に割り込もうとする。
「……」
無視する藤本。
「お願いします」
男はカウンターに身を乗り出して、藤本に笑いかけた。
こんな高貴な雰囲気を持つ女は出会ったことがない。
男は、どうしても藤本を手中に収めたかった。
だが…
「私に話し掛けないでくださる?無粋ですわ、見て分からないの?」
吉澤との雰囲気を壊されたくない藤本は、視線も合わさず見下すような物言いだ。
「そのような悲しい事を言わないでください。薔薇のごとく美しき人よ」
余りにも臭い台詞に吉澤が下を向いてプッと噴き出し、藤本が目を閉じて軽く首を振る。
「お願いします、せめてお名前だけでも…」
内心ムッとしながらも、微笑みを絶やさない男は
立ち上がり、藤本のもとに歩もうとする。
その後頭部に銃が突きつけられた。
「下衆め、お嬢様に近付くな」
リムジンの運転手が何時の間にか現れ、近付き、男に銃口を当てていたのだ。
「岡村、お止めなさい」
岡村と呼ばれた、猿みたいな顔の小柄な運転手兼ボディガードは、
藤本に一礼をして引き下がる。
「今日は帰ったらどうだい?」
ヤレヤレと溜め息を付く吉澤が、男に帰るように促した。
「分かりました、今日のところは退散します。
でも、僕は諦めませんよ。貴女みたいに美しい人は初めてだから」
肩を竦(すく)めながらも自信有り気な笑みを絶やさない優男(やさおとこ)は
ペコリとお辞儀をして、店を出た。
「何だったんだ?…変な男だったな」
いくらなんでも あの男は自分に酔いすぎだろ、と、少し呆れ気味の吉澤。
「変?それどころじゃないわよ。見てみなさい、石川さんを」
冷ややかに石川を見る藤本。
石川は頬を染めながら、男が出て行ったドアを見詰めている。
その表情はどこか悲しげだ。
「あぁ、ヨン様…」
「ハァ?」
妙に艶かしく体を捻る石川に、唖然とする吉澤。
「おい、大丈夫か?」
カウンター越しに肩を揺する吉澤の言葉にハッとした石川は、
キョトンとしながら、夢から醒めたように少しの間 呆けていた。
「おいおい、しっかりしろよ」
「あ〜ん、もう、よっすぃ」
吉澤にペチペチとホッペを叩かれた石川が、その手を取って頬擦りをする。
どうやら元に戻ったようだ。
吉澤が、長い溜め息をついた。
「岡村、いますか?」
少し考えてから、藤本は岡村を呼ぶ。
「ハッ、ここに」
外に出た筈の岡村は、藤本の言葉に何時の間にか姿を現し、頭を垂れた。
「今の男、着けなさい」
「かしこまりました」
一礼をして、踵を返す岡村。
心臓を抜かれた事件以来、藤本に付けられた岡村は
元々藤本の父親のボディガードの中で一番優秀な男だ。
もう、二度と娘を危険な目に遭わせたくない藤本専務が
親バカ振りを発揮したのだが、岡村というボディガードに
守られた藤本は、親の気持ちも知らずに危険に飛び込む。
「オマエの運転手も変わってるな」
「ふふふ、優秀な運転手よ」
携帯で代わりの運転手を呼ぶ藤本は、吉澤にウィンクして見せた。
「あっちぃ!」
元朝娘市駅のバスターミナル跡に造られた、
噴水公園のベンチに腰を下ろした矢口真里は、夏の太陽によって
熱を持った腰掛け部分の熱さに驚き腰を上げた。
「ハハハ、そんなに熱いの?」
ソフトクリームを買ってきた安倍なつみが、笑いながら矢口の分を渡した。
「サンキュ」
今日の学校は午前中に終わり、MAHO堂に直行するのも
詰まらない2人は、今は公園となっている元朝娘市駅で
時間を潰していたのだ。
ペチャクチャと、取りとめもない話しをしていると、
2人の前にサマーセーターを着た男が立って、
優しそうに微笑んでいる。
「地元の高校生ですか?」
「…はい」
訝しげな矢口と安倍。
「いや、旅行で来たんだけど、やっぱり魔界街は不安で…」
「一人で旅行ですか?」
「はい、できれば案内してくれたらなと思いまして。
あ、勿論 お礼はしますよ」
どうしようか、と、顔を見合わせる矢口と安倍。
「僕はペィ・ヨンジュンといいます」
「外国の人ですか?」
「はい、朝鮮半島から来ました」
『スナック梨華』が開店するまでの暇つぶしにブラブラしてたら、
藤本と同じ制服の女子高生が目に付いた。
時間は、まだ有る。
日本の女は全て、穴の開いてる糞袋だ。
陵辱しまくって何が悪い。
この男の信念だ。
優しく微笑む男の蛇眼は矢口を見詰めた…
男が魔界街の危険な所も見てみたいと言う事で、
連れて来たビルの廃墟で事件は起きた。
危険と言っても、矢口、安倍のレベルだから、
そんなに危険な所ではない。
せいぜい、夜に人影が歩き出すとか、妖物の類が徘徊するといった
低レベルの危険建物だ。
男は「危険だからダメだよ」と注意する矢口と安倍を無視して
廃墟の中に入っていった。
「君達も来なさい」
男の言霊が矢口の脳に響き、蛇眼が体を束縛する。
男は奇異に思った。
矢口は蛇眼で呪縛できたが、安倍は掛かってはいないようだ。
だが、術に掛かりにくい女も今までに何人かは居た。
安倍もその類だろうと思った。
現に矢口と共に建物の中に入ってきたからだ。
「何故、君達をココに案内させたか分かりますか?」
微笑を絶やさない男は、机等が散乱するコンクリートに囲まれた
部屋ともいえない部屋に2人を連れ込み、振り向いた。
メガネの奥から覘く涼しげな瞳は、よく見ると不気味だ。
と言うより、粘っこくて嫌らしい、邪淫が透けて見える。
唇の両端を吊り上げると益々、淫らな笑みが鼻につく。
「僕は君達のような、女の子を食い物にする お化けなんだよ」
「ハァ?ど、どういう事だべ?」
嫌悪感を剥き出しにした安倍が、矢口の袖を取って後ずさりをする。
「僕のために、君達の全てを捧げて欲しいって言ってるんだよ」
「な、何言ってるべさ!矢口、帰ろう!」
矢口の腕を取る安倍の手を振り払う矢口。
「…ごめん、なっち」
「矢口…?」
「おいら、この人、好きになったかも…」
そう言いいながら、矢口は男にトコトコと近付いていく。
「それで、いいんだよ真里」
男が矢口をそっと抱きしめる…
甘い匂いが辺りに充満しだす…
男の武器は蛇眼と言霊だけでは無かった。
体から発する、女性を淫らに狂わす淫靡フェロモンが最終武器なのだ。
この『ヨン様フェロモン』を嗅げば、蛇眼が効き辛い安倍も落ちるだろう。
男は取り合えず、矢口の淫らな恥態を安倍に見せ付けて、
安倍を落とす事にした。
「わぁぁあああ!」
ギュッと抱きしめると、矢口が叫んだ。
今まで感じた事も無い快感が、股間と脳髄を痺れさせたのだ。
「その机に両手をつきなさい」
男の言葉に従う矢口は、自分でも訳が分からず、
机に手をついて尻を突き出した。
「君は、まだ処女かい?」
言いながらセーラーのスカートを捲り上げ、白い下着を足首まで下ろした。
「や、矢口…」
愕然と矢口を見る、安倍の膝はガクガクと震えている。
「ほう、もう濡れてるのかい?」
ニヤつく男は、矢口の尻に右手を持っていき、股間を中指で撫でた。
「わ!わぁぁあ!!」
ビクンと体を振るわせた矢口の内股は、自分の体液で濡れ光っている。
濡れた中指をベロリと舐める男は、安倍に向かいイヤらしく笑いかけた。
「真里が終わったら、君の番だよ。それまでに自分で慰めていなさい」
男が再び矢口の尻の割れ目に指を持っていく。
「わぁ!わぁあ!わわわぁぁあああ!!」
安倍に喘ぎ声を聞かれたくない矢口は、必死にビックリしたような叫びをあげた。
「や、矢口!」
「わぁあ!なっちぃ!見るな!おいらを見るなぁあ!!」
必死になって頭(かぶり)を振る矢口の体がブルブルと振るえ、
股間からは湯気が立ち上り、ピチャピチャと聞きたくない水音が室内に響く。
「も、もう止めてぇええ!!」
安倍は、膝が震えて立っているのがやっとで、
矢口を助け出そうにも、歩ける状態ではなかった。
安倍自信も、男の淫靡フェロモンによって、濡れていたのだ。
「では、一回目のフィニッシュとまいりましょうか…」
充血した目をギラつかせる男は、股間から指を抜き、
改めて突き入れようと五指を淫らに動かした。
そこに…
「いいかげんに止めたらいかが?」
3人目の女性の声が室内に響く。
凛として美しい声は、誰のものかを 男に直ぐに分からせた。
「ほう、貴女は…」
室内の入り口に立つ藤本美貴は、男を蔑むように見詰める。
男は、本性剥き出しの下卑た笑いに顔が歪む。
この部屋には自分の淫靡フェロモンが充満し、自分を直視する藤本に
蛇眼を仕掛けるには充分だ。
と言うより、もう蛇眼は送っていた。
「貴方には、その薄汚い笑いがお似合いよ」
蛇眼を送り続ける男の視線を真っ直ぐに受け止める藤本の瞳は、
冷徹でいて、限りなく透明な光を放っている。
「高貴な貴女の微笑みには敵いませんが…」
矢口を離し、藤本に向き直る男は、自慢の天使の笑顔を作る。
「や、矢口!」
「…な、なっちぃ」
バタバタと這いながら矢口に近付く安倍は、ハァハァと息を付く矢口を抱きしめた。
抱き合いながら泣きじゃくる安倍と矢口を冷ややかに見下し、
藤本は静かに男に近付いていった。
「藤本…気を付けるべさ。アイツは…」
「アイツは…何?」
「あぅ…」
言いよどむ安倍は、何故こんな事になったのか分からないし、
自分の体を襲った恥感が恥ずかしくて言葉に詰まった。
「もう少し、遅れてくれば良かったかしら?」
その言葉の意味を知り、顔が真っ赤になる安倍と矢口。
冷たい視線でクスッと笑う藤本は、矢口の痴態を
呆れながら黙って見ていたのだ。
「ほう、君達は知り合いでしたか…」
藤本と安倍の会話を黙って聞いていた男は、
藤本の肩に手を掛けようとして、スッと体を避けられ 空かされた。
「つれない人だ、こんなにも美しいのに…」
すでに淫靡フェロモンと蛇眼と言霊を使っている。
男には余裕があった。
藤本は確実に術に掛かっている筈なのだ。
男は藤本と同様に安倍と矢口を見下す。
こんなションベン臭い貧乏娘とは明らかに違う
藤本から漂う高貴な佇まいは、男の欲を掻き立てる。
藤本を性奴隷にして、財産を食い尽くす。
下衆な欲望は、男を饒舌にする。
「この娘達が、草むらに佇む名も無き花なら、
ただ風に そよいでいればいいだけの事…
だが、貴女は違う」
「どういう事?」
「貴女は白き薔薇の定めに生まれた…
華やかに、そして、激しく生きる為に生まれたのです…
僕という存在を得て」
藤本の胸ポケットに差してある一輪の白い薔薇…
藤本は そっとその薔薇を取り、男のサマーセーターの胸に挿した。
「光栄です。貴女のような気高き薔薇は美しく咲くために存在している…」
男は、ここぞとばかりに超天使の微笑みだ。
「私…白い薔薇が赤く染まる瞬間が好きですの…」
藤本が初めて男に微笑み返す…
「そして、その薔薇が美しく散る瞬間も…」
微笑み返した理由は、死出の はなむけ…
「素敵な言葉です…」
藤本の言葉の意味を知らない男は、藤本に口付けしようとして
足を踏み出そうとするが、自分の意思が無いように体が動かなかった。
「貴方の事ですのよ」
薄く笑う藤本は、男の胸に咲いた薔薇を見詰めていた。
「…?」
自分の胸に咲いた薔薇を見る、男の顔が愕然と固まる。
白い薔薇は赤く染まっていた…
体内に根を張り、全ての血を吸い尽くす藤本の白い薔薇…
吸い尽くした血で赤く染まった薔薇は、文字通り美しく散った…
「…俺の術…効かないのか…?」
うつ伏せに倒れ、白蝋のような顔になった男の最後の言葉…
「術?…なんの事ですの?」
男を見下ろす藤本の顔はピンクに染まり上気している…
だが、その火照った顔を見る事は出来ない…
男は顔を上げる事も無く、絶命したのだ…
「岡村」
藤本の呼びに影のように現れる、猿(ましら)のような従者。
「体が、火照ってます…家でプールの用意を…」
「ハッ」
「その前に…」
藤本は、泣きじゃくる同級生をチラリと見る。
「この二人を家に送って差し上げなさい」
藤本は今日初めて同情の念を持って、優しく微笑んだ…
今日はココまでです。ちょっぴりエロですまん。
次回更新も未定って事で・・・ では。