狼から来ました

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758ハナゲ ◆hANagEBvfs

加藤は道頓堀商店街の ど真ん中の道を、辺りを睨み付けながら
ふて腐れたようにノシノシと歩く。
それにオズオズと続く有野。

勿論、地元の不良に絡まれる。

路地裏に連れて行かれても、ニヤリと笑う加藤は
あっさりと返り討ちにする。
だてに魔界街の不良をやってる訳ではないのだ。

「バ〜カ!おととい来やがれってんだ!」
逃げる不良達に石を投げつけて、パンパンと手の埃を払う加藤。


「なに弱い者イジメやってんの」
その加藤の襟首を掴んでポイと放り投げるのは飯田圭織だ。

「い、飯田さん!着いて来たんですか?」
尻餅を付いた加藤は、ビックリすると同時に顔を綻(ほころ)ばせる。

「偶然、見かけただけだよ」
「喧嘩したバツとして何か驕るのです。これは班長命令なのです」
飯田の後ろから 辻がヒョコッと顔を出して、ニッと笑う。

「は、はい!はい!なんでも驕りますよ!班長殿!」
イヤッホウと喜ぶ加藤。

「オマエも喜べ!ばか!」
何故か浮かない顔の有野の頭をバチンと叩く。

有野は、加護に振られたショックを未だ引きずっていたのだ。
759ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:24 ID:sOdwaT93


「呆れた男子だねぇ」

駄々っ子のような加藤に呆れつつ、
飯田は「じゃあ、蟹道楽ね」と、加藤と有野の肩をポンと叩く。

「はい!行きましょう!蟹道楽…って…えぇぇぇえええ!?蟹道楽!!」

急に財布の心配をしだす加藤。

飯田と辻は顔を見合わせてプッと吹き出した…







760ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:25 ID:sOdwaT93

土産物屋を覘く、武田と小川が、不良に絡まれた。

先程、加藤にやられた、不良達だ。
武田の学生服の校章が、加藤と同じ事に気付いた不良達は、
仕返しとばかりに、このカップルに因縁を付けたが、如何せん相手が悪すぎる。

加藤同様、あっさりと返り討ちにあった連中は逃げ出した。


「オマエのその格好が、悪いんじゃねえの?」
武田は、小川の巫女姿が、因縁を付けられた原因じゃないかと疑る。

「じゃあ、武田君と同じ制服になる…」

「…うん?」

「飯田さんがね…来週から武田君達の中学に転校させてくれるって…」
少し はみ噛みながら、頬を染める小川麻琴。

「そ、そうか…」

「嬉しい?」

「あ、あほ言え…」

真っ赤になりながら鼻の頭をポリポリと掻く武田。

それを見ながら小川がクスクス笑った。


761ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:26 ID:sOdwaT93

ブラブラと一人で探索する高橋愛は、ある光景を見つけて物陰に隠れた。

それは、加藤と武田に返り討ちにあった3人の不良達が
浜口と紺野に因縁を付けている所だった。
勿論、浜口の学生服の校章を確認しての恫喝だ。

紺野を背中に庇う浜口は、胸倉を掴まれ、凄まれているが、
紺野の手前、引くに引けないでいる。
その浜口の態度が、不良達の逆鱗に触れた。

そうっと顔を出して、事の成り行きを見守る高橋。

「ハハ、格好つけちゃって…って、ありゃ!」

浜口がグーで殴られた。

「もう、あさ美ちゃん、魔力でやっつけなさいよ」
浜口の後ろでオロオロしてる紺野を「何してんのよ」と、イライラしながら見てると、
一台の車高の低い改造車が連中の前で横付けして停車した。


「あ、押尾さん。丁度いい所に来てくれました」
ペコペコと頭を下げる3不良。

「コイツ、ちょっと絞めちゃってくださいよ」
浜口の髪を掴んで顔をグイと持ち上げる。

762ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:27 ID:sOdwaT93

車の窓から顔を出した、押尾と呼ばれた男は、
ギラつく目付きで浜口と紺野を舐めるように睨む。

「生意気な顔だな」
下卑た笑いとドスの効いた声。

「そうでしょう?やっちゃって下さいよ」

「よし、乗せろ」

浜口と紺野は無理矢理、車に押し込められた。


「あっ、拉致られた…」
高橋は慌てて自分のバッグから、一枚の紙を取り出す。


「後を着けるんだよ」
そう言って放り上げた紙は、カラスに変化して
バサバサと翼を広げ、高橋の上空を一回りしてから
黒い拉致車を追いかけた。







763ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:28 ID:sOdwaT93

「ここが有名な道頓堀川や」

人通りの多い道頓堀橋で、矢部と加護は橋の手すりから
濁った泥流を眺める。

「見てみい、きったない川やでぇ。
こんなドブ川に飛び込む奴の気が知れんな」

ハハハと笑う矢部がタバコを取り出して火を点けた。

矢部と同じく道頓堀川を眺める加護は
さっきから、ずっと無口のままだ。

その加護がチラリと矢部を見る。

「…うん?どないした?」

「…タバコ」

「別に大丈夫やろ」
学生服の矢部は、そう言いながら 煙の輪を作ってポンポンと噴出す。

「…体に悪いんとちゃうの?」

「…そうか?」
加護に言われて、口に咥えたタバコを取ってシゲシゲと眺める矢部。

「…ほなら止めるわ」

ピッと弾いたタバコが放物線を描いて泥流に落ちた。
764ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:30 ID:sOdwaT93

淀む川は色んなゴミを運んでくる。
そのドブ川を暫くの間、眺める2人…


「な、なぁ?」
加護は聞きたい事が有った。

「なんや?」

「…な、なんで うちを誘ったん?」

矢部は、少し考えてから
「…有野がな」
と答えた。

「有野がどないしたん?」

「有野が、昨夜(ゆうべ)オマエを誘う言うて、張り切っててな」

「…それで?」

「…少し、ムカついた」

「ハァ?」

矢部は手すりから離れて背中を向けた。

「嫉妬かもしれへん」

チラリと振り返る矢部の横顔…
765ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:31 ID:sOdwaT93

「さ、行くで…」

スタスタと歩く矢部の背中…

「う、うん」

その背中の後に着いてチョコチョコと歩く加護の頬は
道頓堀川に差し込む夕日のように赤くなっていた…


その矢部、加護と すれ違う、キャップを深く被ったサングラスの女子…

「あれ?今の愛ちゃんとちゃう?なんか、焦っとるみたいやったで」
加護が振り返り、雑踏に消える高橋を目で追った。

「そうか?んじゃ、正体がバレて、ファンにでも追い駆けられてんちゃうか?」

「そっか、アイドルも大変やねぇ」
しみじみと頷く加護。

「ハハハ、オマエじゃアイドルに なれへんからなぁ、嫉妬すなよ」

「誰が、あんな子に嫉妬すんねん!」

プイと横を向く加護に、からかう様に笑う矢部。


そんな2人の会話を知る由も無い高橋愛は、
上空を飛ぶ一羽のカラスを追いかけていた…

766ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:32 ID:sOdwaT93



車で拉致された浜口と紺野は、どこかの川の河川敷で降ろされ、
橋の下に引っぱり込まれた。

「何すんのや!オマエ等!」

茶髪と金髪に両腕を捕られて、もがく浜口の声は震えていた。

「ギャハハ、コイツ 女の前だからって威勢がええの!」
ドンと浜口の尻を蹴って転ばせるロンゲ。

「オマエ等、適当に そのバカの相手をしてやれ」
押尾が、大事そうに自分のバッグを抱える紺野を
後ろから羽交い絞めにして胸を鷲掴みにする。

「キャーー!!」
「やめろぉぉおお!!」

「はぁ?やめるか、バ〜カ!」
ゲラゲラと笑う押尾が、子分に顎で合図を送る。

ニヤニヤ笑うロンゲが浜口の鳩尾に拳を入れた。

「うげぇ!」
「やめてぇぇえ!おねがい!!」

「うひょう!いい声で鳴くぜ!」
浜口の呻き声と紺野の悲鳴を合図に、リンチが始まる。
767ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:34 ID:sOdwaT93

「おらぁ!」
ドスッ!
「どうした?ヒーロー!」
ボカン!
「お姫様を助けたいんだろ!」
バキッ!

下卑た笑いの不良達にボコボコに殴られ、
浜口は血を吐き、額が切れ、顔が腫れ上がってくる。

「…こ、紺野に手を出してみろ…ぶっ殺す…」
それでも紺野を守ろうとする気概だけは立派だ。

「だから、やってみろって!ギャハハハ!」
「テメーが死ねや!」
「今の一声で死刑決定な!」

浜口がボロ雑巾のように崩れ落ちても、
不良達の蹴りは執拗に続いた。


ピクリとも動かず、顔の形が変わり、
もう、誰の顔さえかも分からなくなった頃に
ようやくリンチも終焉を向かえる。


何故こんな事になるのか理由が全く解からない。
最初、「やめて」と叫んでいた紺野もショックで声が出なくなっていた。
768ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:36 ID:sOdwaT93

顔が真っ青になりガタガタと震える紺野は、
自分が押尾に体を弄(なぶ)られている事も気付いていなかった。

「よし、今度はコイツを輪姦すぞ」

押尾が紺野の腕を取って、車に引きずり込もうと停車している自分の車を見た。
その顔が驚愕する。


ボンとボンネットが開くと同時にエンジン部分にドンと火がつき
煙が上がり、タイヤがバンバンと音を立ててパンクしたのだ。

「な、なんだ!?」

ガラスが全て割れ、車体にボコボコと銃撃でも受けたような穴が開く。

「……」

完全にオシャカになった車を呆然と見ていた押尾と不良仲間。


「グギャ!!」
押尾が自分の太腿を押さえて転げ回った。

「押尾さん!」
駆け寄る不良達に囲まれた押尾の太腿は肉がめくり上がり
ドクドクと血が出ていた。

769ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:37 ID:sOdwaT93

「アンタ達…死ねば?」

声のする方を見ると、ピクリとも動かない浜口の傍に
帽子を深く被りサングラスで目を隠した、紺野と同じ制服の少女が立っている。

その少女の右手には、拾った小石がジャラジャラと握られていた。
http://blanch-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/data/IMG_000058.jpg

「…なんじゃ!テメーは!」

歩み寄ろうとした金髪の右肩がボンと破裂して、血が噴出す。

少女が投げた小石が金髪の肩に当たって、肉を裂き骨を砕いたのだ。

「あ、愛ちゃん!」
紺野が高橋に気付き、駆け寄る。

「…あさ美ちゃん…殺していい?コイツ等」

そう言いながら高橋が投げた小石は、茶髪の手の平を貫き、
小石と同じ大きさの穴を開ける。

「こ、殺しちゃダメ!」
「じゃあ、殺さない」

しかし、投げる小石はロンゲの顔面に命中、
無残にも鼻が跡形もなく消えた。

「でも、半殺しにする」
770ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:38 ID:sOdwaT93

足元に落ちてる小石を拾って投げる格好は少女のソレだし、
投げる小石のスピードも、たかが知れている。
だが、不良達に当たる小石は肉を潰し、骨を砕いた。

絶叫を上げて転げ回る押尾達の阿鼻叫喚の地獄絵図は、
激痛によって声が出なくなるまで続いた。

高橋が押尾に近付き、顔面を蹴り上げる。
グシャリと鈍い音がして、押尾の顎が潰れた。

「きったないわねぇ…慰謝料貰うわよ」
そう言いながら、失禁し血まみれの不良達のポケットから財布を取り出して、
車中で浜口と紺野から奪った金を含めて、財布の中身を全て抜き取った。

「命だけは助けてあげる…さぁ消えなさい。這ってでも」

命令されても動ける筈がない。
全身の骨が折れているのだ。
だが、呻きながらも這い出す血まみれの不良達。
それは、高橋の言葉に無理矢理操られている木偶人形のようだ。

這い逃げる不良達を見届けた高橋は、浜口の頭を膝に乗せて
血をハンカチで拭き取る紺野を見た。

「それじゃ、拭いきれないよ」
そう言って、自分のバッグから飲料水のペットボトルを
取り出して「はい」と、紺野に手渡す。

「…ありがと」
ペットボトルの水でハンカチを湿らせて、血糊を拭い取る紺野は
ポロポロと涙を流していた。
771ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:40 ID:sOdwaT93

「…ねえ愛ちゃん」
不意に聞きたくなった。

「なに?」

「…どうやったの?」
さっきの殺人技の事だ。

「どうやるも何も、只、アイツ等が死んでもいいと思って投げただけよ」

「…それだけ?」

「あさ美ちゃんも魔女見習いなんでしょ?念を込めるなんて基本技じゃん」
ふうっと溜め息を付きつつ、何故こんな事を聞くんだ、と、高橋は訝しげだ。

「そんな事もできるんだ…」
紺野は、以前中澤が紺野達に言って聞かせた
紺野達と高橋の資質の違いを思い出した。
魔女になる目的の違いが、今の紺野と高橋の違い…

高橋は目的の為なら平気で人を殺せる人間なのだ。

「あさ美ちゃん?」
「なに?」

「私が出て行かなかったら、あさ美ちゃんはアイツ等を殺してたよ」
「…え?」
高橋の言葉に、スーッと血の気の引く思いの、紺野の涙が止まる。
確かに、瀕死の浜口を目の当たりにした紺野は
メラメラと湧き出る殺意を自分自身感じていたのだ。
772ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:41 ID:sOdwaT93

---何故、そんな事が分かるの?---

「あさ美ちゃんのバッグの中…式神入れてるでしょ?」
「…!!」

紺野は愕然とした。
護身用に いつも持ち歩いている五芒星が描かれている
魔法陣の紙の事を高橋は知っていた。
そして、ソレを初めて使いそうになった事を…
(魔法陣の紙は中澤に持ち歩くように言われて、いつも鞄の中に入れているのだ)

「どうして、それを?」

「だ か ら、魔女見習いでしょ?感じるじゃん」
高橋は呆れたように首を振る。

目的の為なら平気で人を殺せる高橋は、
キレて自分を見失い、不良達を殺してたかもしれない紺野の心理状態を
感じ取って、「それなら自分が」と不良達を懲らしめたのかもしれない。



「そんな事より…」
驚きを隠しきれない紺野をよそに、
本当に…本当に、そんな些細な事はどうでもいい、と言った感じの
高橋が、ボコボコに腫れた浜口の顔をしゃがんで覗き込む。

773ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:43 ID:sOdwaT93

「酷いやられようだね」
そっと浜口の顔を撫でる。

「あ…う、うん」

「こんなになるまで、やられて、ダサすぎるよね」
フンと鼻で笑う。

「え?」

「弱いくせに、格好付けるなって感じ」
指で浜口の鼻をピンと弾く。

「愛ちゃん!」

咎める紺野を無視して、スクッと立ち上がる高橋は
「でも…少し格好良かったよ」
と、浜口を見下ろす。

「…え?」

「少し、見直したかも」
ポンポンとスカートの裾を払いながら言う。

「え?え?」

「少し、好きになったかも」
浜口を見る高橋の顔は微笑んでいた。

「え?え?え?」
何故か動揺する紺野。
774ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:44 ID:sOdwaT93

その時、ウ〜ンと唸りながら浜口が意識を取り戻した。

「気付いたみたいね」
「ま、優君!」

「…おぉ、紺野…アイツ等は…?」
意識がぼやけていても、紺野の身が気がかりな浜口。

「浜口君、憶えてないの?」
腰に手を当てた高橋がヤレヤレと呆れたように聞く。

「あれ?…愛ちゃん…なんでココに?」

「浜口君が、アイツ等をボコボコにやっつけたんだよ」
悪びれていても、高橋は浜口に花を持たせたかった。

「…は、ほんまか?」

「本当よ、格好良かったんだから。ねえ、あさ美ちゃん?」
高橋は紺野にウィンクして、話しを合わせろと合図を送る。

「う、うん。格好良かったよ、優君」
合わせた紺野の言葉は嘘ではない。

「…そっかぁ、無意識の俺は無敵やな…良かったな紺野…」
そう言いながら、浜口がまた意識を無くす。
スヤスヤと笑うように目を閉じる所を見ると今度は眠ったようだ。

「ハハ…バカ」
「本当…バカ」
775ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:46 ID:sOdwaT93

紺野と高橋は顔を見合わせてクスッと笑った。

その紺野の顔が、何かに気付きハッとなる。

「愛ちゃん…もしかして、最初から見てたの?」


ニーッと歯を見せて笑う高橋は、
上空を舞う式神のカラスを呼び戻し、魔法陣の紙に戻しながら、
「私は帰るから、あさ美ちゃん達も遅れないで来てね。
また、夕食抜きになっちゃうよ」
そう言いながら、夕日の中に走って消えていった。







浜口の意識が回復するのを待って、タクシーで浪速旅館に戻ったのは
夜の7時をまわっていた頃だった。

玄関には仁王立ちの江頭が待っていたが、
浜口の姿を見ると、慌てて警察に連絡すると騒ぎ出した。

警察に連絡されると困るのは紺野の方だ。
不良達は今頃、死んでるかもしれないのだ。
だから、自分が不良達に絡まれている所を
浜口に助けられて、相手も相当の怪我をした筈だから
警察沙汰にはしないでと、懇願して、その通りになった。
776ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:47 ID:sOdwaT93

罰として、またしても浜口だけ夕食は抜きになった。

そして、看病の為、包帯を巻く為、紺野は夕食の時間を抜け出して
浜口が寝ている、辻班男子の部屋に入った。


上半身裸の浜口は全身痣だらけで、
よく骨折しなかったと少しホッとした。


「はい、これで良しっと」

ペンと背中を叩かれて包帯だらけの浜口は「痛てててて」と仰け反る。

「フフ‥散々な修学旅行でしたね」

「ほんまや」

クスクスと二人で笑うが、笑うのも一苦労の浜口は
またしても「痛てててて」と布団の中で仰け反った。

「もう、ちゃんと寝てください」

「…すまん」

777ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:48 ID:sOdwaT93

コチコチと時計の音が室内に響く…

「…お守り」

「え?」

「せっかく紺野にお守り作ってもらったのに、全然効かへんかったなぁ」

「…ごめんなさい」

「ハハハ、紺野のせいちゃうよ」

「……」

「でも、ひとつぐらい、ええ思い出欲しかったわ…」


「…優君」

「なんや?」

「目、閉じて」

「うん?」

「いいから」

紺野に言われて目を閉じた浜口の唇に、何かが触れた感触…

ハッとして、目を開けた浜口の視界には、唇をそっと離す紺野の顔…
http://blanch-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/data/IMG_000059.jpg
778ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:49 ID:sOdwaT93

「格好良かったよ…」

頬を染める紺野。

「…失敗した」

「…?」

「感覚が全然あらへん…」

顔が腫れ上がって感覚が麻痺している浜口には、
紺野の唇の感触は得られなかった。


「残念でした」

ペロッと舌を出して照れ笑いの紺野は
「エヘヘ」と笑って、部屋を出た。



「ほんま、ついてへんわ…」

そう言って、自分の唇を触る浜口…

紺野のお守りは、確実に効いている…

フニャフニャ笑いの形を作る 浜口の唇が、そう物語っていた…


779ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/20 21:53 ID:sOdwaT93
今日はココまでです。やっと修学旅行編が(;´Д`)オワタ
誰かのリクエストに答えて紺野とハマグチェのその後を書いたが
こんなに長くなるとは思わなかったぜ。

ちゅうことで次回からは殺戮が始まります。   では。