狼から来ました

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738ハナゲ ◆hANagEBvfs

――― 24話 修学旅行3日目 ―――




3日目の朝食時間の30分前。
修学旅行中、紺野のオニギリ以外、ろくな物を食べてない浜口は我慢できず、
ホテルの従業員が大広間に朝食を運んでいるのを横目に、
オヒツから、ご飯を勝手によそって塩を振って食べていた。

そこを江頭に見付かった。

「浜口!キサマ!何してる!」

「あ…いや、まだ一杯も食べてへん…」

「ババババババッカモ〜〜ン!!オマエは今日も飯抜きだ!!」

「えっ!ウソやん!」

「ウソじゃない!」

「……」

こうして、浜口は修学旅行中、
一食も皆と卓を囲む事が出来ずに終わる事になった。


739ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/10 00:28 ID:uQS8rY1P



大坂に着いて、お好み焼きの昼食時間も
一人でバスの中で時間を潰す事になる。

すがるような、浜口の小さくつぶらな瞳も、
さすがに ここまで来ては同情を引く効果が薄れ、
皆呆れて、掛ける言葉も無くバスを降りた。


「あかん…さすがにポテチも飽きてきたわ」
飽きたと言いつつ、仕方なしにポテチをポリポリ食べながら、
紺野から貰った お守りを取り出して見る。

「全然、効かへんかったな…」

窓から見える、雲がお好み焼きに見えた…





740ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/10 00:28 ID:uQS8rY1P

そうは言っても、午後の3時から、
3時間の自由行動に期待しない筈が無い。

大坂御堂筋の道頓堀商店街。
その商店街の近くの『浪速旅館』に荷物を置いた朝娘市中学一行は、
江頭の注意事項を聞いた後、6時まで自由行動になった。

勿論、飯田と麻琴も、この旅館のスィートルームに宿泊する。


「さて、どこに行こうか?みんな決まってるの?」

旅館のロビーで、辻班に合流した飯田が、皆を見回す。

「別に決まってないけど…」
そう言いつつ、武田が麻琴に、着いて来いと合図を送る。

「う、うん」
じゃあね と、恥ずかしそうに皆に手を振りながら
街に出て行く武田と麻琴。

「やるなぁ、真治」
感心しながらも、ソワソワしだす 有野と加藤。

「アンタ等なにソワソワしてんねん?アホちゃう?」
呆れ顔の加護は、「ねぇ?」と紺野に同意を求めた。

「ハハ、そうですね」
はにかむ紺野をチラチラ見ていた浜口が
勇気を出して、ズイと紺野の前に出る。
741ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/10 00:29 ID:uQS8rY1P

「な、なに?優君?」
ちょっとビックリする紺野。

「あ、あのなぁ、紺野…お母ちゃんのお土産、一緒に探して欲しいんやけど…」
顔を真っ赤にしながら、紺野に手を差し出して頭を下げる浜口。

「なんです?その格好?」

「お願いします!」
深々と頭を下げて手を差し出す。
http://blanch-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/data/IMG_000057.jpg

「ね、ねるとん や…」
「告白タイムなのです」
「ハハ‥やるねぇ」
加護、辻、飯田がポカンと口を開ける。

「…あ、あの」
困惑の紺野も真っ赤になる。

「お願いします!」
手を差し伸べつつ、ジリジリと前に出る浜口は必死だ。

「…仕方ありませんねぇ」
そう言いながら、紺野は浜口の手を取った。

「よっしゃあ!やったでぇ!」

ようやく、お守りの効果が出てきて、会心のガッツポーズを取る浜口と、
その浜口を見てクスクス笑う紺野は、武田達に続き街に消える。
742ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/10 00:30 ID:uQS8rY1P

「あちゃー、成功したやん」
「ぐっちょんの恋が実ったのです」
「ちょっと、感動的だな」
唖然としながらも、感心する加護、辻、飯田。


「よし、有野、行け」
小声の加藤に、肘で突付かれた有野の番。

「お、お、お、お、お願いします!」
意を決した有野も、浜口に続き 加護の前に飛び出し手を差し出した。

「はぁ?ウチかい?」
ポカンと口を開ける加護。

「お願いします!」
有野も必死だ。

そこに…

「アホ、なにやってんねん」
有野と加護の間に入った、矢部が顎をしゃくって
「ちょっと、付き合えや」
と、加護を促す。

「え?あ、う、うん」

ポケットに手を突っ込んで玄関を出る矢部に
チョコチョコと着いて行く加護。
743ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/10 00:31 ID:uQS8rY1P

「やべっちが あいぼんを かっさらったのです!」
「…すごい」
何故か感動する、辻と飯田。


ガックリと膝を付いて、出て行く2人を見送る有野の頭を
ポンポンと叩いた加藤は「オマエじゃ無理だったんだ」と侮蔑の笑みだ。

「さてと…」
ウンウンと咳払いをして、学生服のカラーを直す加藤は飯田に向き直る。


「…じ、じゃあ、私は のんちゃんと甘い物食べに行くから」
不穏な空気を感じた飯田は、そう言って、辻の手を取り 走り出した。

「えっ?」
目が点になる加藤。

「バイバイなのです!みんな6時には帰るのです!
これは班長命令なのです!」
飯田に手を引かれた辻が、残った3人に手を振って出て行く。


「…そ、そんな…」

呆然と佇(たたず)む加藤は、
キョトンと立っている高橋愛に気付き、チラリと盗み見る。
744ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/10 00:32 ID:uQS8rY1P

「あ、あのぉ…愛ちゃん?」

「なに?」

「俺と‥いや、俺と有野の2人を愛ちゃんのお供に…」

「加藤君は飯田さん狙いじゃなかったの?」

「い、いや!めっそうもございません!」

「本当?」

「ほ、本当です!」
そう言いながら、土下座をする加藤。

「ほら、オマエも土下座するんだよ!」
加藤は、振られたばかりで呆然としている有野の頭を押さえて
一緒に土下座をさせる。

「お願いします!この通りです!」

床に頭をこすり付けて お願いする2人の間を通り抜けて、
高橋はキャップを深々と被り、サングラスをかけて、ニコリと笑った。
745ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/10 00:32 ID:uQS8rY1P

「あ、愛ちゃ〜ん…」
高橋の微笑みを「OK」と受け取った加藤は、涙を流さんばかりに喜ぶ。
考えてみれば、アイドルと街を歩けるなんて夢のようだ。

「ゴメンね」

「へ?」

出た言葉は加藤を固まらせる。

「私、一人のほうが気楽なの」

「…」

タタタと駆け出して、玄関から消える高橋を呆然を見送る『振られ2人組み』。



「ち、ちっくしょう!!」

無情の加藤の叫びと共に、
加藤のビンタを食らった有野の頬が、パーンとロビーに響いた…



746ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/10 00:38 ID:uQS8rY1P
今日はココまでです。次回で修学旅行は終わる予定です。
>>735ハマグチェ…
>>736俺も若くは無いぜ。
>>737アリガトン。       では。
747ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/04/10 00:41 ID:uQS8rY1P
>「大坂×」御堂筋の道頓堀商店街。
 「大阪○」御堂筋の道頓堀商店街。
間違えちゃったぜ。