狼から来ました

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486ハナゲ ◆hANagEBvfs

――― 17話 昨日と今日と明日 ―――



どこかのビルの屋上で月夜を見ながら、探検を兼ねる散歩を
毎夜のごとく繰り返すのが、俺達の日課。
http://blanch-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/data/IMG_000053.jpg

『今日の お月さまは笑っているわよ』

『ああ、それは三日月って言うんだよ』

『ヤグさんは物知りなのね』

エヘヘと笑いながら俺に話しかける白猫のメロンちゃんは、
どこかオットリとした使い魔だ。


そんな、メロンちゃんが不意に言った。

『ヤグさん、メロンはねぇ、なっちから命令された事ないんだよ』

『そう言えば、俺もないなぁ…』

言葉は通じないが、俺の御主人、矢口真里の事は
手に取るように分かってるつもりだ。

メロンちゃんも、御主人の なっちの事は良く理解してるんだろう…

多分だけど…
487ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:06 ID:HAAQWDoL

『役に立ちたいと思ってるんだけど、メロンの事ペットとしか
思ってないみたいなの』

『俺も同じ様なもんだよ、悩みなんて、関係無い2人みたいだからねぇ』

『そうなのよ〜、ホウキで飛ぶ練習だって三日坊主だったし…
メロンはせっかく使い魔として生まれたんだから、
役に立ちたいと思って、何か大事件でも起きればいいなぁって、
いつも思ってるの〜』

『…ハハハ』

ニッコリと笑って、恐ろしい事をサラリと言うメロンちゃん…


素敵だぜ…!






488ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:07 ID:HAAQWDoL

高校の外れに位置する一般住宅街、
ここに俺のご主人様、矢口真里一家の住む公営団地が有る。

鉄筋3階建ての団地の315号室が、俺…もとい、真里の家だ。

ベランダから差し込む午後の日差しが心地良い、真里の部屋で
紅茶とケーキで寛(くつろ)ぐのは、勿論 真里とメロンちゃんの飼い主なっち。


そして、俺もメロンちゃんと陽だまりの絨毯の上で日向ぼっこをしている。


真里達の会話に聞き耳を立てながら…



「なっちの家のお父さんが羨ましいよ、うちのお父ちゃんなんて
休みだと昼間っからビール飲んで、テレビに噛り付いてるもんね」

あ〜あ、と溜め息交じりで語る真里に なっちがクスッと笑った。

「何言ってるべさ、矢口のお父さん格好いいよ、
リーゼントで目つきが鋭くて、ロックンローラーみたいだべ」


何回か遊びに来た事がある なっちも、日曜日に来たのは初めてで、
仕事が休みで家でゴロゴロしている、真里の父親さんを見たのも初めてのようだ。

玄関先でペコリとする なっちに対して、無愛想ながらもウィンクをしながら
ピッと2本指を立てて「よう、ゆっくりしていきな…」と声を掛けた、
真里の父親は俳優のような渋い声をしているのだ。
489ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:08 ID:HAAQWDoL

「…ハハハ」

乾いた笑いを発しながら真里が自分の部屋のタンスの一番下の
引き出しを開けて、何やらゴソゴソと探し出して取り出したのは、
一枚の古ぼけて色あせたCDレコード。


うん?…なんだソレ?

俺の疑問を、なっちが代弁してくれた。


「なにこれ?」

無言で差し出されたCDジャケットを見ていた、なっちの目が丸くなっていく。

「この、真ん中の人…矢口のお父さん?」

「そう…お父ちゃん」

俺も初めて知ったが、真里の父親は元歌手だった…

ジャケットに写っているメンバー5人のロックグループ『アローマウス』の
メインボーカル矢口永吉はエレキギターを抱えてタバコを咥えていたのだ。

「すご〜い!矢口のお父さん歌手だったんだ」

「…ハハ、オイラの生まれる前だから、よく知らないんだけどね」

「ふーん」
490ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:09 ID:HAAQWDoL
「今でもギターは大事そうに持ってるんだけどね…
オイラがちっちゃい頃は、よく弾いてくれたんだけど、今は弾いてくれない…
それにね、このCD聞くと、お父ちゃん怒るんだよ」

「なんで?」

「ハハ、オイラにも理由は分からないよ」

あれっ?
真里…なんか、寂しそうな顔してるぞ…


「あ〜、矢口ぃ聞きたいんだ?お父さんの演奏を」

「無理無理!休みの日は昼間っからビール飲んでる親父だよ」

キャハハハと笑う真里。



『ねえヤグさん、真里さんは笑ってるのに、どうして悲しそうなの?』

『……』

不思議そうに真里を見る、メロンちゃんの疑問に
俺は答える事が出来なかった…


ハハ…俺が真里を良く理解してるつもり、って言うのは
文字通り「つもり」だったんだ。

今回の事件が起きるまでは…
491ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:10 ID:HAAQWDoL


なっちとメロンちゃんが帰ってから一時間後、
玄関の呼び鈴が鳴ったので、真里と俺が出ると、
なっちが息を切らせて膝に手を付いてゼーゼー言っていた。
その なっちの右手には一枚のポスター…

「大変だべさ!」
『大変なのよー!』

なっちと肩に乗ったメロンちゃんが同時に声を出した。
まぁ、メロンちゃんの声は真里達には「ニャー」としか聞こえないけど…

「今ね、今ね、帰り道でコレを見つけて…」

ゼーゼー言いながら、なっちが真里に手渡したポスターは
どこかのライブハウスの演奏案内が書かれていた。

【今夜復活、伝説のロックグループ、アローマウス!】

そう書かれている、ポスターを目を丸くして見ている
真里の手を なっちが取った。

「行こう!もうすぐ始まっちゃうよ!」
『開演は7時からよー!』

「で、でも…」
「いいから!」

茶の間にいる親父さんを気にしている風の
真里を引っ張り出して、俺達は走り出す。
492ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:15 ID:HAAQWDoL

『ここよ、ヤグさん!メロンはライブハウスなんて初めてだからもう、胸がドキドキよ』
『あ、ああ…』

眩しいネオンに彩られた、店の看板を見上げながら
俺の心臓もドキドキしてきた。
チケットを買った、真里と なっちに抱かれながらドアを開けると、
俺とメロンちゃんは耳に入ってきた大音量の演奏にビックリして
一瞬逃げ出しそうになったが、真里の顔を見て大人しくした。

複雑そうな真里の顔は、何を考えているか俺にも解からず、
目を輝かせる なっちとは対照的に見えたから…


タバコのヤニが漂う、古びた感じの店内は薄暗く、
テーブルの客席は8割方埋まっていた。
客層も真里達よりは、かなり上のように…
って言うか、おっさんとおばさん ばかりに見える。

俺達は一番後ろのテーブルに座った。

ジーパンとTシャツの中年男達の曲は、小気味良いリズム&ブルース
が殆どで、俺達が店に入って最初に聞いた
大音量のロックは、結局その一曲だけだった。

2つ ジュースを買ってきてテーブルに置いた なっちは最初、
興奮して色々と真里に話しかけてたが、真里は「ああ」とか「うん」としか答えず、
なっちも、何となく真里の空気を読んで、ストローを咥えて大人しく演奏を聴いていた。

俺とメロンちゃんは、サラミを貰って食べた…

真里は最後まで無言だった…
493ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:16 ID:HAAQWDoL




彼等は、なっちから真里の事を聞いて、最初は驚いていたが、
次々と昔話を懐かしそうに話し出した。

ここはアローマウスの楽屋。

なっちが店の人に知り合いだって嘘?を付いて、
グズる矢口の手を引いて案内してもらったのだ。

「なぁ、真里ちゃん、永吉は元気かい?俺達は永吉を探してたんだぜ」

「…うん」

真里は相変わらず、無口だ。

「本当は、アイツがリードボーカルだから戻って欲しいんだけどな」
「ああ、アイツの声じゃないと、俺達の曲じゃないぜ」
「せっかく、再デビューする事が決まりかけているのに…」

彼等の元には、大手のレコード会社から再デビューの
話しが転がり込んできていた。

「なんで、矢口が生まれる前に解散したんですか?」
なっちは、俺が聞きたかった事を聞いてくれる。
たぶん、真里も聞きたい筈だ。

「ハハハ、なんだ?永吉から聞いてなかったのかい?」
顔を見合わせて、頷き合うメンバー達…
494ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:21 ID:HAAQWDoL

彼等の話しだと、最初のアルバムを出した時に、音楽の方向性が違うと
真里の親父さんが何故か言い出して、一方的にバンドを抜けたらしい。
結局、ボーカル不在が響いて解散になったらしいが…

当初は訳も分からずバンドを抜けた親父さんに対して
怒りを持っていた彼等も、今となっては、怒ってなかった。

ただ、水臭いとは思っているようだが…

理由があった。

デビューが決まった時には真里の親父さんは、皆に黙って結婚していて…
デビューという、大事な時期に結婚した事に親父さんは皆に気兼ねしていたんだ。

ある悩みを抱えて…

真里のお母さんのお腹には、真里が宿っていた。

でも、真里のお母さんの母体が芳しくなくて…

(真里は元気に生まれたんだけど、
親父さんは奥さんと子供…将来の事とか色々と考える所があったらしい)

事務所にもメンバーにも結婚した事を隠していた、真里の親父さんは、
真里の為に…
自分の愛する家族の為に、
デビューしたての収入が不安定のバンドを捨てて、
今の仕事(市役所勤め)に就いたのだ。
495ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:22 ID:HAAQWDoL

他のメンバーが、この事を知ったのは
それから暫らくしてからの事だったらしいが、
それまでの誤解や憎しみは解消された。


「ほい、真理ちゃん…」

リーダーのハゲのサムソンが一枚の写真を真里に手渡して見せた。

その写真を見た真里の唇がへの字に尖がっていく…

色あせた写真には、赤ちゃんの真里を抱えて笑う
真里の親父さんが写っていた。

「暫らくしてから、永吉の奥さんから、その写真が送られてきたんだ…
皆さんに、ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした、って手紙を添えてな」


ポンと真里の頭に手を置いたマイケルがニカッと歯を見せた。
「でも、良かったぜ…真里ちゃんが、こんなに大きくなって」

「そんなに、大きくなってないべさ…」

涙目の なっちの突っ込みにメンバー達がドッと笑う…

「なぁ、真里ちゃん…永吉のヤツに伝えてくれないか…
俺達はオマエが帰ってくるのを何時までも待ってる、ってな」

「…うん」
496ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:23 ID:HAAQWDoL


結局、真里は「うん」しか言わなかった…


解かっているよ…

言葉に出して何かを言えば、泣いてしまうからだろ?


だって…
今…
現に…
泣いているもの…


店を出たとたんに、真里は両手で顔を覆って嗚咽を漏らした。


なっちは、黙って真里を抱きしめて頭を撫でてた…



497ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:23 ID:HAAQWDoL

『ヤグさん…真里さんが泣いてる…』

『…うん』

『でも、泣いてるのに、悲しそうじゃないね…』

『…うん』

『どうしてかな…?』

『……』


なぁ、メロンちゃん…

メロンちゃんは気付いているかい?

メロンちゃんだって、今、泣いてるよ。

メロンちゃんは、今、悲しいのかい?

違うだろ?

同じなんだよ。

俺も、真里も、なっちも、メロンちゃんも…


まぁ そういう俺は、涙が出そうなのを必死に我慢してるんだけど…

498ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:26 ID:HAAQWDoL




次の日曜日…

「お父ちゃん♪」

真里の猫なで声に、親父さんはギョッとした。

「な、なんだ?気持ち悪い」

「えへへ…デートしよか?」

「ハァ?」

「いいから、いいから」

親父さんの手を引っ張りながら、連れ出す場所は
勿論、あのライブハウスだ。

まぁ、開演は夜だから、それまでは本当にデートするつもりなんだろう。


俺はニッコリ笑って見送った…
だって、この後メロンちゃんが来る予定だから。

499ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:27 ID:HAAQWDoL


真里と照れる親父さんが出て行ってから一時間後、
ピンポーンと呼び鈴。

「あら?なつみちゃん、真里は さっきお父さんと出て行ったわよ」

玄関に出た お母さんに向かって、なっちと肩に乗ったメロンちゃんは
ニッコリと微笑んだ。

「うん、今日は、お母さんに用が会って来たんだべさ」

「私に…?」

『そうよぅ』

メロンちゃんが「ニャーオ」と鳴いた。





500ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:35 ID:HAAQWDoL

夜になって、俺達はライブハウスへの道をテクテクと歩いた。
なっちから事情を聞いた お母さんは微笑を湛えて、
そして、なっちはギターケースを抱えて。

メロンちゃんは夜空を見上げた。

『ねぇヤグさん、今日のお月さまは、まん丸よ』
『…本当だ、これはね、満月って言うんだよ』
俺はチョッピリ得意気に語ったが、そんな事は意に介せず、
メロンちゃんはニッコリしながら月を見てる。

『メロンねぇ、三日月の日から 毎日お月さんを見てたんだよ』
『へー…』
俺は『暇なんだね』と雰囲気をぶち壊しそうになる事を
言いそうになって少し慌てた。

『それでね、すごい事を発見したの』
『すごい事?』

『うん、とってもすごいの』
『な、なに?教えて?』

『あのねぇ、お月さまはねぇ、毎日少しづつ大きくなるのよ』
『う、うん』

『一昨日のお月様と昨日のお月さまは違うの』
『うん…それで?』

『そしてね、昨日のお月さまと今日のお月さまも違うのよぉ』
『月齢の事かな…?』
501ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:36 ID:HAAQWDoL

『メロンは気付いちゃったの、昨日と今日は一緒じゃないって』
『……?』

『だから、今日と明日も一緒じゃないのよ』

当たり前の事を すごい事だと言うメロンちゃん…
俺には、何が すごいのか良く理解できない。
だから遠まわしに聞いてみた。

『…ハハ、俺には、むつかしくて良く分からないよ』

『むつかしくないの』

『……』


『そういう事なの…』


なぁんだ、そう言う事かぁ…って…おいおい…
でも、俺に向かって微笑むメロンちゃんは女神様に見えた。

『ハ、ハハ‥メロンちゃん、まん丸のお月さま は良い事が有りそうだよ』

『そうなのよ、メロンもそう思ってたの!』

『よし、行こうぜ!』

俺とメロンちゃんは、お母さんと なっちを置いて
一足先にライブハウスに向かって走り出した。
502ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:38 ID:HAAQWDoL






「俺達の昔からのダチを紹介させてもらうぜ!」

もう、数曲終わった所なのか、俺達がライブハウスに入ると、
拍手の中、リーダーのサムソンが客席の後ろを指差した所だった。

スポットライトが当てられた客席は、勿論、真里と親父さんのテーブルだ。

「…お、俺は…」
親父さんは明らかに狼狽しているように見える。

「どうしたんだい?永吉…俺達はオマエさんを探してたんだぜ」

首を振って、ためらう親父さんの背中を真里が押した。

「お、おい、真里…」

「…いいから」

踏ん張ってステージに行くのをためらう親父さんを真里は押す。

「いいから!」
真里の声は震えていた。

ズルズルと真里に押されて、親父さんはステージ前に立ち尽くす。

503ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:39 ID:HAAQWDoL

「…歌ってよ」

「無理だ…」

「…なんでよ!」

「…勝手にバンドを抜けた俺には、歌う資格はない」
真里に促されても、拳を握り締めて項垂れる
親父さんは 怒っているようにも見えた。



「資格は無いかもしれないけど、義務はあるわ」

「…!!…オマエ」

振り向く親父さんの前には真里のお母さん…
なっちがチョコチョコと走り寄って、ギターケースを真里に手渡した。

「アナタは真里に自分の音楽を聞かせる義務があるの」

「……」

「ねぇ‥時々、遠い目で何かを考えてるでしょ?」

「…」

「私には分かるのよ、アナタが何を考えているかを…」

お母さんの言葉に親父さんの涙腺が緩んだ。
504ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:41 ID:HAAQWDoL
「ちっちゃい頃…」

「…む?」

「ちっちゃい頃、お父ちゃんはオイラを膝の上に乗せて、よくギターを弾いてくれた…」
そう言いながら、真里はギターケースを親父さんに渡す。

「…真里…」


「永吉…真里ちゃんはオマエが抜けた理由を知ってるんだぜ」

ステージ上からサムソンが手を差し出す。

「さあ!」

「…どうなっても知らねえぞ、俺は何年もギターを握ってねえし、歌も歌ってねえ」

「フン、そんな事は折込済みだぜ」

ニヤリと笑うサムソンの手を親父さんはガッチリと握った。


固唾を呑んで事の成り行きを見守っていた お客さん達も
親父さんがステージに上がると、ワッと歓声を上げた。

勿論、お母さんも真里も、なっちもメロンちゃんも、そして俺も…

後ろを向いて涙を拭く仕草をする、親父さんの背中は震えている。

だが、振り向いた その顔は、今まで見た事も無い…
つまり、アローマウスのボーカルのソレになっていた。
505ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:43 ID:HAAQWDoL










いつもの登校風景、いつものポプラ並木、
街路樹から漏れる朝の木漏れ日が心地良い。
http://blanch-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/data/IMG_000052.jpg

「あ〜あ、矢口のお父さんは芸能人になっちゃうんだね…」
なっちは羨ましそうにニコニコと笑う。

「ハハハ、売れなかったらオイラん家は貧乏一直線だよ、なぁヤグ?」

結局、親父さんは市役所を辞めて再デビューの道に賭けた。

勿論、お母さんも真里も反対はしない。

何も言わず家族の為に、黙々と働き続けた親父さんは
お母さんと真里と なっちのお陰で自分の夢を掴む事に成功したのだ。

506ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:57 ID:HAAQWDoL

「なっちぃ」

「なんだべ?」

ニコニコする なっちに真里が抱きついた。

「だ〜い好き!」

「わぁぁあ」

よろける なっちとキャハハハと笑う真里…


何時もと変わらない、登校風景…

何時もと変わらない、他愛もない会話…

だけど、今日の風景は昨日と違って見える。



ニッコリと微笑むメロンちゃんと目が合った。



あぁ…そう言う事なのか…



俺は、メロンちゃんが言っていた『すごい事』の意味を 今、理解した。
507ハナゲ ◆hANagEBvfs :04/02/13 15:58 ID:HAAQWDoL



     --- ねぇヤグさん、メロンねぇ すごい事を発見したの ---


      --- お月さまはねぇ、毎日少しづつ大きくなるのよ ---


     --- 一昨日のお月様と昨日のお月さまは違うの ---


   --- そしてね、昨日のお月さまと今日のお月さまも違うのよぉ ---


   --- メロンは気付いちゃったの、昨日と今日は一緒じゃないって ---


         --- だから、今日と明日も一緒じゃないのよ ---




              --- むつかしくないの ---




               --- そういう事なの ---