狼から来ました

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296ハナゲ ◆hANagEBvfs

――― 13話 魔女の条件 ―――


「なんで愛ちゃんが飛べて、のの達が飛べないのです」
「素質が違うんじゃないべか?」
「ああ、あっちは売り出し中のアイドルだしな」
「納得できへんわ!」
「私はホウキさえ貰ってませんよ」

MAHO堂で議論を交わす魔女見習い達は
テレビで生中継されてる『死人返り』の事件には無関心のようだ。
自分達が何故 飛べないのかを一生懸命解明しようと必死に話し合っている。

中澤は我関せずと、椅子に深々と腰掛けタバコをふかしてテレビを見ていた。

「もう、その娘に直接聞くしかないべ?」
「安倍さんは怖がりを治せば飛べるから余裕なのです」
「そやで、安倍さんは余裕持ち過ぎやで」
「お前等、なんで なっちを攻めるんだよ」
「私はホウキさえ貰ってません!」

「…ハ、ハハ‥」
溜め息を付く安倍は中澤に助けを求めて視線を送った。

「ふん、お前等 仕事もせんでウルサイのぅ」

「お客さん、いないのです」
「そやで…って、そう言えば 誰もおらんな」
「そうだな、何時もは忙しい時間なのに…」
「私はホウキさえ…」
297ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:18 ID:X+rgpDm/
「ねぇ、裕子婆ちゃん、教えて…愛ちゃんって娘が飛べる理由」
安倍の訴えるような潤んだ瞳に中澤は…

「…分かったわい」
安倍に懇願されて中澤は溜め息混じりに話し出した。

「お前達の目標は何じゃ?」

「…それは、飛ぶ事かな」
矢口の答えに皆頷く。

「それをクリアしたら、どうするんじゃ?」
小馬鹿にしたように聞く中澤。

「それは…」
全員、お互いの顔を見合わせて答えに窮した。

フンと鼻で笑う中澤はタバコを深く吸い込んで紫煙を吐き出す。

「それでは質問を変えるぞい、お前達は目標の為に
他人が不幸になっても構わんか?」

「…え?」
皆ポカンと口を開けた。

「自分の為に人が死んでも構わんかと聞いておる」

「…‥」
全員無言でブンブンと首を振った。

「出来んじゃろ?じゃが、あの娘には それが出来る、
そこがお前達が魔女に為れない理由じゃ」
298ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:19 ID:X+rgpDm/

「どういう事なのです?」

辻の質問に「やれやれ‥」とタバコを揉み消しつつ、
自分の私見じゃがと断りを入れて中澤は続けた。

「自分の目的の為には人が死んでも構わないと言う心構えが魔を呼び込む…
それが魔術じゃ、あの娘はお前達とは違って飛ぶ事が目標なのでは無い、
どんな目的が有るのかは知らんが、あの娘が飛ぶ事が出来たのは極めんとする魔道の
道程に有る通過点にすぎないんじゃ」

「よく分からないのです」
「…う〜ん、難しいわ」
それでもキョトンとする辻と唸る加護。

「つまり、悪い子じゃないと魔女になれないと言う事だよ」
「ああ、成る程なのです」
邪心も無い自分達が飛ぶという道程には、時間が掛かると理解して
声を落とす矢口の解説に、成る程と頷く2人。

「そういう事じゃ…じゃがな」
ニヤリと笑う中澤はテレビに視線を移して、皆に見るように促した。

テレビの生中継は陰陽婆の『死人送り』が失敗して
砂のように崩れ落ちる姿がビデオで繰り返し映し出されていた。

「げげっ!死んだのです!」
「大変な事になってるやん!」
「なに?この幽霊みたいなのは!?」

テレビに釘付けになる魔女見習い達に向かって
中澤は話しを続けた。
299ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:19 ID:X+rgpDm/

「石黒やワシ、ましてや あの娘には絶対出来ない…
いや、魔界街でもお前達だけにしか出来ない魔法がある」

そう言いながら席を立つ中澤。

「…え?」

「ホウキを持って、着いて来るんじゃ」

疑問を顔に表しながらも、中澤を追って店を出る魔女見習い達…

「私、ホウキ持ってませんよ」
「構わんわい」

紺野はMAHO堂に鍵を掛けて、CRUISEの看板を立てた…













300ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:25 ID:X+rgpDm/

ズルズルと足を引きずりながらスローモーションのように歩く
瘴気を身にまとった『死人返り』は、目指す目標であろう
朝娘市警察本署までの距離200メートルの所まで迫っていた。
辿り着いたらどんな事象が起こるかも分からない今回の事件に
現場の隊長は頭を抱えている。

「俺はどうすればいいんだ!」
署長も逃げの算段を図っていて、全ての責任を警官隊長に押し付けていた。

「どうしようも無いんじゃない?」
諦めたのか、飯田もタバコをふかして傍観の構えだ。

そこに…

「ああ!飯田さんなのです!」
「うん?」
後ろから声が聞こえて振り返ると、辻とその仲間達がホウキを持って立っていた。

「のんちゃん、どうしたの?」
チョコチョコと駆け寄る辻の頭を撫でながら聞いた。

「さぁ?よく分からないのです、それより飯田さんは刑事なのですか?」
「ハハ…バレたか」
別に隠していた訳ではない、
只、話すタイミングを逃して今までズルズルになっていただけだ。

「危なくなったら逃げるんだよ」
「アーイ」
辻の出現に少し驚いたが、見物にでも来たのだろうと思っていると
その後ろから杖を持つ腰の曲がった黒尽くめの老婆が
「どかんかい役立たず共」と、警官隊を押し退けて辻達の前に出てきた。
301ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:26 ID:X+rgpDm/

「だ、誰だ?アンタは?」
警官隊長は中澤に対して不審の目を向ける。

「ホッホッホ、おぬしの首、繋がりそうじゃな」
「え?」
中澤の言葉に、まさか、と思い口元が緩む隊長。

「あの妖物を退治すると言っておるんじゃ」
「えー!」
やっぱり、と驚き、口が笑いの形になる隊長。

「退治するのは、その子供達じゃがな」
「工エエェェェ、、」
嘘だろう? と口をへの字にして落胆する隊長。

「謝礼は師匠のワシがタンマリと貰うがのぅ、ホッホッホ」
「…ほ、本当に出来るのか?」
それでも、縋(すが)るしかなかった。

金にガメツイのは、どの世の婆も一緒だ。
中澤は子供達と聞いて唖然とする警官隊長を無視して、
ホウキを持つ手が震えてビビる弟子達を死人を囲むように立たせた。
302ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:27 ID:X+rgpDm/

「のんちゃん!」
緊張の面持ちでホウキを持つ辻に飯田が心配して声を掛ける。

それでも辻は、飯田の心配を他所に手を振って笑う。

「…のんちゃん…危険だって分かってるのか?」

「おぬし、辻の知り合いか?」
胸に手を当ててハラハラしながら頷く飯田に、
黙って見ておれ、と余裕の中澤は紺野にチラリと視線を移した。

「私は…?」
「お前には最後にやってもらう事が有る、この紙に念を込めながら魔法陣を描くのじゃ」
中澤の横に立つ紺野に白い紙と筆を渡す。

「え…?」
「ふん…お前には本当の意味での魔道士になって貰うつもりじゃ、
じゃから、ホウキなどという玩具(おもちゃ)はやらん、覚悟せい」
中澤は紺野にホウキを渡さない理由を告げた。

「…魔道士って、突然すぎます」

「ワシは前から考えておった、それより今は目の前の事が先決じゃ!」
眼前に広がる光景に、中澤は顎をしゃくって見せた。

303ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:27 ID:X+rgpDm/

「裕子婆ちゃん!どうすんだよ!?」
『死人返り』を囲んだのはいいが、どうすれば良いのか解からず、
矢口が堪らず声を出す。

「お前達の持ってる、そのホウキで妖物を扇ぐんじゃ!やれっ!」

中澤の声に反応したように、其々の使い魔が4人の頭にチョコンと乗った。

「わ、分かったのです!」
「おっしゃあ!」
「やったるでぇ!」
「や、やるべさ!」

訳も分からず連れて来られたが、その訳がようやく解かり、
覚悟を決めた4人は魔法のホウキを死人に向かって振った。

---ブオォォオオ!---

吹いた風は瘴気を霧散して浄化する…

4本のホウキが起こした風は瘴気を纏(まと)った顔さえも見えない死人に吹きすさび、
黒い煙のような瘴気を払い、真っ赤なカクテルドレスに身を包んだ死人の素顔を晒した。

「げげげ!」
「うぎゃー!」
「わぁぁあ!」
「ひぃぃいい!」

生前の面影を僅かに残している、ゾンビのような無残に爛れた死人の顔に恐怖し、
ペタリと腰が抜ける魔女見習い達…
だが、死人の歩みは止まっていた。
304ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:36 ID:X+rgpDm/

「何やっとるんじゃ!バカモン!風を送り続けるんじゃ!」

中澤の怒声にヨタヨタと立ち上がり、それでもホウキを振る4人。

「怖いのです!」
「バケモンだよ!」
「あかん、これは あかんでぇ!」
「夢に出るべさ!」

怖さからか、バタバタと振るホウキの風は勢いを増し
死人の動きを完全に止めた。

「これが、お前達にしか出来ない魔法じゃ!
邪念の無いお前達のホウキは魔を払う破邪の風を起こせるのじゃ!
高橋とか言う、あの魔女見習いには到底出来ない芸当よ!
分かったら張り切ってやるんじゃ!」

中澤の言葉にホウキを振る全員が顔を見合わせて頷く。

「よっしゃー!やったるでぇ!!」
ほんの少し、魔女見習い達の顔付きが精悍になった。

魔女として、ちょっぴり希望が沸いたのだ。

「さて、紺野よ、次はお前の出番じゃ…その紙を杭状に丸めるんじゃ」
「…はい」
紺野は自分が描いた魔法陣の紙を言われた通りに丸めると
中澤が自分の杖で、その紙をチョコンと突いた。
305ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:37 ID:X+rgpDm/
「…こ、これは」

「それで、あの妖物の額を突くんじゃ」

紺野が手に持つソレは、白い杭に変化していた…






魔女見習い達を固唾を呑んで見守る警官隊員達の中に
愕然と膝を突いて震える巡査がいた。

「…い‥市井ちゃん…」

乾いた声を振り絞るように出したのは後藤真希だった。

見る影も無い、魔物と化した死人の目には、
この世に対する恨みの闇の光が宿っている。

「…何でだよぉ」

後藤の挙動に気付いた隊員が震える後藤を見た。

「…何でなんだよう!!」

立ち上がった後藤の噛み締める歯はガチガチと鳴っていた。

「ふざけるなぁぁあ!!さやかぁぁああ!!!」

雄叫びを上げる後藤の勢いに驚いた、周りにいた隊員達は尻餅を付いた。
306ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:42 ID:X+rgpDm/







「よし、行くんじゃ」

「は…はい」

中澤に促され、白い杭をギュッと握り締めた紺野が決意を固めて
踏み出そうとするのを誰かが腕を取って止めた。

「なんじゃ?お前は?」

「あの化け物の知り合いだ…」

中澤を見ずに死人を凝視する後藤の瞳からは涙が流れている。

「…い、痛い、離して!」
腕を渾身の力で腕を握られていた紺野が身を捻って振りほどく。

「どうするつもりじゃ?」

「貴女達がやろうとしている事を私にやらせてくれ…」

「無理じゃ」
「何故!」
即答する中澤と納得しない後藤。
307ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:43 ID:X+rgpDm/

「このワシの弟子は瘴気では死なん体質じゃ、
それでも浴びれば暫らくは毒によって苦しむ…」

瘴気の事を初めて聞いて「エッ?」と引く紺野の顔からサーッと血の気が失せる。

「じゃが、お前は死ぬ」

「…構わない」

「……」

「やらせてくれ…」

頭を下げる後藤の手に、紺野は そっと白い杭を握らせた。

「それを貴女のお知り合いの額に突き刺すんです」

「…ありがとう」

杭をギュッと握る後藤は無言で死人と化した市井に近付く…

308ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:46 ID:X+rgpDm/

「紺野…お前、あ奴は死ぬぞ」
何をしたのか分かっているのか、と中澤の言葉は攻めていた。

「……」

「紺野!」

「あの人は死にません…」
後藤を見詰める紺野はポツリと呟いた。

「…?」

「想いが伝わりました…」
後藤に掴まれた腕をそっと擦る紺野の額には珠のような汗が浮いている。

後藤を見詰める紺野は、瘴気の毒に怖気付いた訳ではなかった…

「中澤さん…私、賭けてみます…私が魔道士になれるかを」

「……そうか」

その言葉に何を感じたのか、中澤はそれ以上何も言わなかった…





309ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:47 ID:X+rgpDm/

4人の魔女見習い達が「??」とする中、
後藤は死人市井に徐(おもむろ)に近付いた。

「…市井ちゃん」

呼んでも答えるはずの無い死人の濁った目と
視線が合った瞬間、市井が何かの感情を持ったように後藤には見えた。

「苦しかったのかい…?」

後藤は魔法の杭を震える両手で握って大きく振り上げた。

「ぅ、、ぅぅうう、、、」

どちらが発したのかも分からない、嗚咽とも取れない声が漏れる…

「う、うわあぁぁあぁああ!!!」

叫びと同時に振り下ろした白い杭が市井の額に吸い込まれた。
いや、市井が杭に吸い込まれたのか…

瞬間的に死人は呆気なく消えたのだ。

前のめりに倒れる後藤を残して…

紙に戻った杭は風に舞い、ヒラヒラと紺野の手に戻った。



310ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:49 ID:X+rgpDm/
「やったー!やったよ!飯田!俺の首は繋がったよ!」
警官隊長は嬉しさの余り飯田に抱きつき、
怒った飯田の顔面パンチを食らう羽目になり、
大任を終えた辻達も、目の前で倒れている後藤の事も忘れ、
バンザーイと手を上げて喜んだ。

ギャラリーの歓声に包まれる中、
中澤は倒れている後藤に近付き、そっと手を置いた。

「…ふむ」

後藤の体を触った中澤は紺野を手招きして呼び寄せた。

「瘴気に汚染されとる…じゃが、死んではいない」

「…そうですか」
ホッとした様子の紺野は胸に手を当てて安堵の溜め息を付く。

「で?…魔道士はどうするんじゃ?」
勿論なるんじゃろう、と当たり前の様に聞いた中澤だが…

「…考えさせて下さい」
眼鏡をキラリと光らせた紺野は手に戻った魔法陣の紙を中澤に返した。

「な…!」

紺野はペロリと舌を出してニッコリと笑う。

「だって、私もホウキに乗って空を飛びたいですから」

夕日の赤が空を染め始めた魔界街メインストリートを覆う歓声の中、
意識の無い後藤を運ぶ、救急隊のサイレンの音だけが空しく響いた…
311ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:50 ID:X+rgpDm/






その日の夕方には魔女見習い達はすっかり有名人になっていた。
『死人返り』の残したメインストリートに残る、黒い煙のような瘴気の塊を
魔法のホウキで全て浄化掃除をしたのだ。
ホウキで掃くと瘴気は霧散して毒性さえも跡形も無く消えた。

ずうっと飛ぶ事を夢見て、無心で念じ通した彼女達のホウキは、
何時の間にか邪悪な魔を浄化する魔力を持つ魔法のホウキになっていたのだ。

「わぁぁ!凄いのです!」
「綺麗サッパリと無くなるなぁ」
「これで、有名人になれるやんか」
「掃除って、気持ち良いべさ!」

驚く報道メディアは掃除作業をテレビで中継し、得意気にカメラに納まった安倍は、
魔女見習いの事を家族に内緒にしてたのを思い出して青くなったが、後の祭りだった。

一人で帰宅して怒られるのが怖くなった安倍は矢口と一緒に帰ったが
訝しがる父親に一生懸命(魔女になって良い事ばかり)説明した甲斐が有って
怒られる事も無く、矢口も一緒に夕食を貰い一安心だ。
312ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:53 ID:X+rgpDm/

「なに〜?その猫、かわいい!!」
「へへへ、いいでしょ、何でも言う事聞くんだよ」

使い魔の『ヤグ』と『まろん』を見た麻美は自分も魔女になると
駄々をこねたが、これ以上家族に魔女が出来るのを恐れた
父親が絶対駄目だと反対して、麻美の唇を尖らせた。

慌てふためく父親を見て、顔を見合わせ吹き出す安倍と矢口に
釣られて笑い出す母親と妹…
ばつが悪そうに顔を赤くして照れ笑いする父親も、何時しか大声で笑った。

今日は良い事をしたんだ、と実感した安倍は
今まで家族に黙っていた胸のつっかえが取れて心から笑った…






313ハナゲ ◆hANagEBvfs :03/12/20 20:54 ID:X+rgpDm/

一方、辻と加護と紺野は飯田刑事のオゴリで街一番の高級レストランで
ディナーをご馳走になり、初めて見る豪華な料理に目を輝かせていた。

「高そうな料理なのです」
ゴクリと唾を飲み込む辻は初めてのレストランにソワソワしている。

「ん〜、4人で50万ぐらいかな…」
あっさりと金額を言う飯田は腕捲りをして食べる態勢に入った。

「げっ!ご‥50万円!!えっらい御馳走やんか!」
値段で料理の価値を決める加護は、まだまだ お子ちゃまの域を出ていない。

「でも、いいんでしょうか?…そんな高い料理…」
チラリと飯田を見る紺野の目は、大丈夫なの?と聞いているようだ。

「ハハハ、私の金じゃないから大丈夫!」
支払いは勿論 朝娘市警察だから、財布の痛まない飯田は豪快だった。

「さぁ!食べようぜ!足らなかったらジャンジャン注文していいからな!」

「わぁ!すごいのです!いただきますなのです!」
「よっしゃあ!食ったるでぇ!」
「…いただきます」

億単位の損害が出る所をチャラにした魔女見習い達の働きを考えると
50万円の出費は安過ぎる位なのだが、嬉しそうに食べる辻達には丁度良いのかもしれない。

無邪気な3人を見詰める飯田の瞳が、そう語っているようだった…