辻達が通う市立朝娘中学校に市外からの転校生が来た。
「オマエ等、驚くなよ〜」
ニヤリと笑う3年1組の担任の江頭先生が
転校生を教室に呼んだ。
ガラリとドアを開けて入ってきた愛くるしい美少女に
教室中がどよめく。
「おおお!愛ちゃんだ!アイドルの愛ちゃんだ!」
「本物かよ?」
「マジかよ!」
口々に歓声を上げる男子生徒達にニッコリと微笑んで、
松浦亜弥の妹分との触れ込みで今話題の、
期待の新人アイドル高橋愛はペロリと舌を出してエヘヘと笑った。
「うおおおお!可愛い!」
「愛ちゃ〜〜〜〜ん!!」
吠える男子達とは裏腹に女子は白けながら顔を見合わせる。
「なんやねん アレ、なぁ のの」
「でも、可愛いのです」
「有名人と同級生ですか…」
一番後ろの席3列の加護、辻、紺野も其々の感想を漏らす。
「オマエ等!うるさいよ!しーしー!」
何故か何時も上半身裸の学級担任 江頭が、騒ぐ男子を静かにさせて
改めて高橋に自己紹介させる。
黒板にサラサラと書くのは自分のサイン。
「おお、やっぱり本物だ〜」と、歓声を上げる教室。
「はじめまして、高橋愛です、お仕事で一緒にいられる時間は
少ないかもしれないけど、仲良くしてね♪」
「うおおおぉぉぉおおおおお!!」
余りの可愛さに男子達は、さっそく虜に成り下がる。
「なんや、訛ってるやん」
イントネーションの訛りに加護が毒づく。
「加護さんも…」
「ウチのは大阪弁!訛りちゃうわ」
クスッと笑う紺野に、すかさず突っ込む加護。
「さて、高橋の席だが…」
男子全員がハイハイと手を上げて自分の隣を差すが、
江頭先生はバカ生徒を無視して紺野の隣を指差した。
「高橋、紺野の隣の席が空いてるから、ソコにしなさい、
紺野も この間 転校してきたばっかりだ、
新人同士仲良くするんだぞ」
一斉に肩を落とす男子…
「アホばっかりやで、ウチ等のクラスの男子共は」
加護は長い溜め息をついた。
紺野の席の隣に座った高橋が、3人に向かって微笑んだ。
「……?…」
愛想笑いで微笑み返す3人…
「よ、よろしく、私 紺野あさ美です、私も転校してきたばかりなの」
「ののは辻希美と言いますです」
紺野と辻の挨拶にも、微笑みは崩さず…
「貴女達、魔女見習いでしょ」
挨拶の変わりに高橋から出た最初の言葉がコレだった。
「え?なんで知ってるのです」
キョトーンとする辻の顔が何かに気付き、
口に手を当てて驚きの声が出るのを抑えた。
高橋のセーラーのポケットから顔を出す真っ白なハムスター。
「フフフ、この事はクラスの皆には内緒ね」
「……」
声も出ない3人に向かってニーッと歯を見せて微笑む
高橋の笑顔は、どこか意地悪そうに見えた。
高橋は仕事が有るので午前中で早退した。
授業の合間の時間に話を聞こうとしたが
新人アイドルは男子に囲まれて話すどころではなかった。
結局、話しは出来ず、高橋が魔女の件は謎のまま放課後を迎えたのである…
今日はココまで、次回は土曜の夜の予定です。
>>254 楽しみにして頂き感謝です。では。