仮面ライダーののBLACK

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781名無し天狗
この上は、万民納得のいきます講釈に努めます存念…。

(☆)高島城登城を明日巳の刻に控え、ユキとお順は一旦諏訪神社へと
戻って参りました。

「お待たせ致した宮司。高島城の勇者選びの儀が明日巳の刻にござる故、
 その時まで我ら「亜摩陀無」を警護仕る。」
「然様でございますか、心得ました。イヤ、実は鎖覆面の忍びの群れ…
 あなた様方の申される、その血車党とやらが、一度このお社を襲うておりました。」
「う…それは不覚。宮司、誠に相済まぬ…。」
「いえ…その折に実は奇妙な風体の御仁が現われ、血車党の者共を
 残らず追い払いましてな。」
「?…奇妙な…風体の者?」

お社を空けていた間に起きた出来事に、ユキとお順は釈然とせぬ様子であります。
782名無し天狗:04/02/15 19:58 ID:2yq3JWJx
「して宮司…その者とは?」
「は…その者は頭は遥か北方、蝦夷地に多く棲むと言う熊を模った覆面に
 目だけを覆った赤い面。身体は均衡の取れた白黒の縞のような模様。
 首に黄色い布を、腰には帯をそれぞれ巻き…
 そうじゃ、帯には谷一族のご紋章がございました。」

(☆)この宮司の証言にユキたちは驚きを禁じ得ません。

「谷一族の、御紋!?」
「然様。そしてそのお声は女子の物…くノ一とお見受け致しました。」
「して、その…くノ一の名は!?」
「お名前までは…ただ、そのくノ一はあなた様方に逢うたら「報恩仕る」と
 伝えてくれ、と…。」

宮司の証言からお社を守ったのは谷一族の者と思しきくノ一とわかり、
やや納得したユキたちではございましたが……。

「しかし…「報恩」とは…恩返しの理由のある化身くノ一なら、
 思い当たるのはお美和さんだが…お美和さんは「狂い毒蛾」の筈、
 宮司の証言とは違う…では一体誰が?」
783名無し天狗:04/02/15 20:20 ID:2yq3JWJx
謎の熊くノ一が何者なるか、気に掛かる所ではございますが
取り敢えずその者のお陰で先ずはお社もひと安心、
(☆)されど隙あらば忽ち襲い来る血車党のこと、一瞬でも気を許せば命取り!!
ユキが勇者選びの儀に登城するまでの間ギリギリまで彼女たちは
「亜摩陀無」の警護に当たったのでありました。

(☆)そして一夜明けて、いよいよ登城の日。
笠雲が晴れるか否かの百八日目まで、あと二日と迫りました。

「では宮司、失礼ながら私これより登城致す。
 本来であれば、このまま警護に就きたかったのだが…。」
「存じております。何れにせよ諏訪高島は危急存亡の重大事。
 警護には、こちらのお順殿が引き続き当たると申されております。
 また谷一族の方々も控えておりますれば、お社の方はご安堵召されませ。」
「かたじけない。然らば御免。」

(☆)謝意を示し、ユキは高島城へと向かいます。
784名無し天狗:04/02/15 20:40 ID:2yq3JWJx
(☆)所変わりまして、こちらは高島城・大手門前。
既に門前は、藩内外を問わず「我こそが救国の勇者たらん」と名乗りを上げし
大勢の人々で賑わっており、開門の時を今か今かと待ち続けておりました。
その中には無論、我らがユキの姿も。その彼女に何者かが声を掛けます。

「?・・・おお、そこな娘御!!」
「は?・・・これはこれは、昨日のお役人ではござらぬか。
 先だっては名乗りも無く、ご無礼致した。私の名はユキ。
 越前美浜藩十四万八千石・五木家の家臣でござる。」
「五木…おお、あの名君と誉れ高き弘繁公のご家中か。
 これは失礼。それがしは当高島家の家臣で、佐伯次郎兵衛重定と申す。
 以後、お見知りおき下され。」
「これはご丁寧なご挨拶、痛み入る。
 …して、女子の参加の件はいかが相成られた?」
「おお、例の件じゃな。ご貴殿の申しよう、尤もなりと、主君無二斎様も
 ご貴殿の参加を快くご承諾なされた。
 …と言うか、あの後殿にガッチリと絞られてしもうての、大目玉を喰ろうたわ。」
「ハハハハハ…。」

参加を許され、開門までの間重定と談笑するユキでありました。
785名無し天狗:04/02/15 21:01 ID:2yq3JWJx
(☆)そしていよいよ巳の刻、大手門の扉が
ギィ〜〜〜・・・・・・と、重々しい音を立てて開きます。

「お、どうやら刻限のようじゃ。ではユキ殿、ご健闘をお祈り申しますぞ。」
「かたじけない。」

重定と一旦別れて、ユキはいよいよ「勇者選びの儀」に挑みます!!
現代で申しますところの、オーディションの様相を呈した・・・

おや?現代を舞台にされておいでの方々がクシャミをされたようですな。

(☆)と、冗談はさておき篩い落としの修羅場をユキは順調に、
時には苦戦しつつ通過致します。
読み書きは申すに及ばず、乗馬や弓術と、文武をよく心得たユキにとりましては
釈迦に説法・孔子に儒教!町人共を尻目に、武芸者とほぼ互角に亘り合い、
激戦を勝ち抜いたユキはいよいよ最後の難関・剣術比べの御前試合に挑みます!
786名無し天狗:04/02/15 21:37 ID:2yq3JWJx
そして、遂に迎えました剣術比べの御前試合!
最後まで勝ち抜いたユキは、この試合に敗れれば
その場にて腹を掻っ切る覚悟にて臨みます。

(☆)さて御前試合を見届けますは勿論、諏訪高島のご領主・
高島無二斎信智公、五木弘繁公と肩を並べる程の指折りの名君にございます。
その人となりは温厚にして豪快。それでいて民をよく重んじる慈悲深いお殿様。
おん年六十半ば、髷を結わぬ総髪は雪の如く白く、口回りから顎、
揉み上げの辺りに到るまで蓄えし白い髯はあたかも
現代の風習クリスマスに付き物のサンタクロースの如し!

(☆)その生き仏のようなお殿様をおん前にして、
今まさに御前試合が執り行われようと致しております!!

ユキに自ずと緊張が走ります。果たして相手は何者なるか・・・?

その相手は・・・(☆☆)ユキにとっては実に思い掛けぬ人物でございました!!
787名無し天狗:04/02/15 21:57 ID:2yq3JWJx
(☆)ドドン!試合の開催を告げる触れ太鼓が鳴り響きました。

「これより、諏訪高島藩勇者選びの儀、最終御前試合を執り行いまする!
 無二斎様。此度の御前試合に勝ち上がりましたるは二名!
 何れ劣らぬ強者にござりますれば、宜しくご高覧遊ばされますよう・・・!!」

開催の旨を告げる重定に、無二斎は力強く頷きます。そして・・・!(☆)

「では、二名の者、呼び出しまする。
 先ず一番札!越前美浜藩、五木家のご家臣、ユキ殿!!」
「はっ!!」

重定の呼び出しを受け、勇んでユキは信智公のおん前に参上致します。
そして対戦相手・・・その者の名にユキは戦慄を覚えます!!

「そして二番札!同じく越前美浜藩五木家、江戸詰めのご家臣、
 高山源五右衛門厳実殿!!」
「ははっ!!」
「・・・な、何ィ!!?」

(☆☆)何と言うことでしょう!同じ釜の飯を食んだ五木家の忠臣が、龍征伐を巡って
己の意地と誇りを懸けて相争うことになろうとは!!(☆・☆)
厳実もまた驚愕の色を隠せません。まさかこの場でユキと一戦交えようなどとは
厳実にとりましても晴天の霹靂であったに相違ございません。
788名無し天狗:04/02/15 22:27 ID:2yq3JWJx
「…厳実殿…まさか、ご貴殿も……。」
「ユキ殿、悪う思わんで下され。“義を見てせざるは勇無きなり”。
 五木家に於いても、天下の難儀を救いたいと思うは、貴殿だけではござらん!!」
「…お気は、確かでおられるのか?」
「無論のこと…ユキ殿は化身忍者嵐。その貴殿を相手に生身のそれがしが
 どこまで挑めるかはわからぬが…これも泰平を守るため!!」
「ご事情、しかと相判り申した…さりながら私も心構えは同じ!後には引けませぬ…。
 この上は厳実殿、いざ、尋常に果し合いましょうぞ!!」
「心得た…!!」

(☆)お互い、覚悟は決まったようであります。

さて、試合を前に、信智公よりご挨拶がございます。

「この度は、遠路はるばる当藩龍征伐・勇者選びの儀に
 ご参集頂き、心より礼を申す。いよいよこの御前試合にて、
 龍征伐の勇者が決せられる故、両名、全力を以って臨んで頂きたい!
 では、両名の健闘を心より祈って、挨拶に替えさせて頂く、以上。」
「「ははっ!!」」

その後、重定より試合の細かい規定・注意事項を受け、ユキと厳実は
いよいよ「戦の場」に赴きます!!
789名無し天狗:04/02/15 23:00 ID:2yq3JWJx
「ではここにある木刀にて、剣の腕、存分に振るって頂く。
 よいか、お互いを討つべき龍じゃと思われよ。」
「「ははっ!!」」

重定に促され木刀を手にした両名。正眼に構え、お互いを凝視します。
そして・・・!(☆)

「それでは…始め!!」

(☆)かくして、御前試合の幕は切って落とされたのでございます!
両者とも、互いの出方を窺っておりますのか、対峙致したままピクリとも致しません。
全てが凍り付く程の静寂の中、長いようで短い時。
沈黙の後、お互い左へと重き足取りで歩を進めます…。

(☆)先に仕掛けたのは厳実の方であります!
裂帛の気合いと共に厳実はユキに斬り込みます!!

「いやあああああああっ!!!!」

(☆)上段より打ち下ろされし木刀をすかさずガッシと受け止めるや、
ユキは返す刀でめぇんと一本!!(☆・☆)
しかし厳実も負けてはいない!ユキの一太刀を飛び来る小石を打ち返すが如く
弾き返すとそのまま下段から袈裟斬りを狙います!!
寸での所を跳躍で厳実の一閃をかわしたユキは、その勢いで急降下からの
真っ向唐竹割りで厳実を襲います!!(☆・☆・☆)
790名無し天狗:04/02/15 23:19 ID:2yq3JWJx
そのユキの切っ先三寸を紙一重でかわし、
厳実はユキの着地の一瞬を衝いて突きを繰り出します!!(☆)
その突きを蜻蛉を切ってかわすユキ!!
その後矢継ぎ早に繰り出される厳実の突きを
ユキは現代で申しますところのバック転で悉く回避致します!
ユキはくノ一・女忍びです。忍術を使えばあっと言う間に
決着を付けることが出来ましょうが、これは剣の果し合い!!
無論、剣に秀でしユキではございますが、決着を付けようと逸る気持ちは
どこかしらあったと思われます。されど己を押し殺して事に臨むもまた忍びの道。
もとより、武人に対し礼を失してはならじと、ユキは正々堂々と剣を振るいます。

(☆)かくして一進一退の凄まじい攻防が繰り広げられました。
斬り結ぶこと実に八十合近くに及び、両者とも、徐々に疲労の色が現われ、
しかしお互い意地と誇りを懸けて渾身の斬り合いを展開します!!
791名無し天狗:04/02/15 23:59 ID:2yq3JWJx
やがて一刻の時が流れ、両者とも困憊は頂点に達しておりました。
お互いこの一太刀で雌雄を決せんと、木刀を握る諸手に最後の力を込めます!
(☆)そしてお互い駆け出して、擦れ違い様に最後の一太刀を浴びせたのでした!!(☆☆)

再び、僅かな沈黙が周囲を支配致します。
その場の者たちは皆、息を呑んで勝負の行く末を見守ります…。

長いようで短い静寂の後…先に苦悶の表情を浮かべたのは何とユキの方。
肩を押さえ、木刀を杖に己が身体を支えております。
勝負あったか!?…と思われたその刹那!!
(☆)どうと言う音が響いたのであります。何事か?と一同音のする方を見遣ると
そこには、ユキ同様奮戦の限りを尽くした厳実が横たわっておりました。
厳実はうんうん唸り、ピクリとも致しません。どうやら、勝敗は決したようでございます。

「そこまで!勝者、ユキ殿!!」

一部始終を見届けた信智公の、ユキの勝利を告げる声が高らかに響きます!

かくしてユキは、龍征伐の勇者の栄誉に輝いたのでございます。
792名無し天狗:04/02/16 00:01 ID:g9wrzV3E
今宵は、ここまでに致しとう存じます。続きはまたの講釈で…。