続きでございます。
(☆)名主が諏訪神社を訪ねて書き記したと言う碑文。
その内容は、実に想像を絶するものにございました。
以下、ユキたちが読み下した碑文の詳細にございます…。(☆)
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太古・神武帝の御世、魔界より現れ出でて国々を蹂躙せし禍々しき者共是有り。
彼の者共、寸分も違わずに人の姿に身を窶し、人界に紛れて人知れず殺戮を行う。
人、是なる魔物を総じて「義を論すも愚かなり」とて、「愚論義(ぐろんぎ)」と称す。
愚論義、普く跳梁跋扈・横行闊歩の限りを尽くし、人界を闇に閉ざすなり。
神々もまた大いに困惑し、愚論義討伐の法を深く思案す。
その折り、信濃国を統治せし「凛斗(りんと)」なる神々の一族が愚論義討伐に名乗りを上げ、
その任の一切を負うなり。
凛斗の衆、神々の中に於いて遊戯の如く殺戮を繰り広げし愚論義に対し
一際烈火の如く怒れり。
故に、長きに亘りて策を論じて、その末に一人の勇者に一縷の希望を託す。
その者、名を「多岐優空我命(たきすぐるくうがのみこと)」と言うなり。
空我命、その名の如く多岐に及びて多種多様の技能を身に付けし傑物にて、
その技能の冴えたるや、他の追随を許さず右に出る者無し。
無論、武術にも知略にも優れたり。
愚論義討伐の長の任を受けし空我命、早速に一族の鍛冶師と神官に
愚論義討伐の為の武具の製作を依頼す。
空我命の命を受け、鍛冶師と神官は全身全霊を込めて神力と霊力の宿りし
摩訶不思議なる霊石「亜摩陀無」を成す。
時同じくして、鍛冶師と神官は「亜摩陀無」を頑なに保護すべく
「嗚呼玖瑠」なる箱も併せて作り上げ、空我命に献上す。
空我命、「亜摩陀無」を収めし「嗚呼玖瑠」に帯を取り付けて腰に巻き、
一心に念ずればその姿、黄金に輝く鍬の如き角と虫を思わせし容貌の兜に
溝を境に人の腹の如く六つに分かれた赤き鎧に身を固めたる武者の姿に成りけり。
空我命、その力を如何無く駆使し、愚論義の猛威に挑むなり。・・・・・・
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(☆)(咳払)失礼。先程「全容」と申しましたが、ユキたちは碑文の写しを読み進めるうちに
どうやらあちらこちらが朽ち落ちている箇所に差し掛かったようでございます。
止む無くユキたちはその部分の解読を断念し、更に読み進めて参ります。(☆☆)
では、朽ち落ちたページを除いての碑文の続きでございます。(☆)