(☆)しかしながら、鼬小僧はものの見事にその洋忠の期待をアッサリ裏切り、
藩を追われたその腹いせからかまたしても盗っ人に逆戻り!(☆☆)
元の木阿弥となった鼬小僧は以前にも増して凶悪残忍なやり口で
諸国を荒らし回ったのでございます。
(☆)目に付いた物を片っ端から強奪し、刃向かう者は老・若・幼・男・女を問わず
情け容赦無く血祭りに上げ、それはもう血車党に匹敵する程の
極悪非道の大判振る舞い!!(☆)
何とあろうことか一時はその血車党の下忍にまで成り下がったこともあると言う
人面獣心の彼のこと、当然、お尋ね者として諸国津々浦々に人相書きが出回りましたるも、
鼬小僧は逃げ足が速く、ご公儀や奉行所の役人、地方の代官は勿論、
血車党の盗んできたお宝を独り占めしようとした彼の者を追う下忍たちですら
誰も鼬小僧を捕らえることが出来ません。(☆)
こうして鼬小僧は自慢の逃げ足と大胆かつ冷酷非情な盗みで日本全土を震え上がらせ、
本能の赴くままにやりたい放題好き放題の限りを尽くし今に到ったのであります。
(☆)さて、話を元に戻しましょう。
最悪の再会を果たしたユキと鼬小僧。
鼬小僧は憎悪に満ち溢れた眼差しで眼前のユキを凝視しております。
(☆)しかしユキはそんな鼬小僧を無視して、斬られたおせいと
彼女に縋ってむせび泣く惣兵衛の下に歩み寄り、おせいの刀傷の具合を
念入りに診ております。暫しの沈黙の後、ユキは惣兵衛に優しく諭すようにこう告げました。
「大丈夫、傷は浅い。今はただ気を失っているようだ。一刻も早う傷の手当てを…。」
(☆)ユキの言葉に安堵した惣兵衛は、彼女に強く訴え掛けます。
「おせいが…女房が無事で安心しました。
旅の方、お願いします!どうか娘を、娘のお小夜を……!!」
「存じておる、あとは任せよ。それよりも早く…。」
「はい!!」
娘・お小夜の助命を約束され、更に安心した惣兵衛は、
傷ついたおせいを抱えて母屋へと向かったのでありました。
(☆)さて、再度鼬小僧と対峙するユキは、それまでの武家の娘の旅姿から
忍び装束に早替わりし、鼬小僧を睨みつつ身構えます。
745 :
名無し一等海士:04/02/11 22:48 ID:2/qK2ijI
ここが見れるようになってる、、、
しばらく前には「人大杉」で見れなかったのに
だいぶ話が進んだんですね
これで心置きなく出港できます
>745
鯖移転前は専用ブラウザ無ければ見れなかったからね・・・てかそのHNって
もしかしてそうなの?
そのユキに対し、鼬小僧は地べたに突っ伏して横たわるお小夜に
長太刀を突き付けておりますが…いや、何と申しましょうか、
ここまで人と言うものは、鬼になれるものでございましょうか。
今も昔も、人の心は、移ろい易いものでございます。
(☆)その鼬小僧の口をついて、思い掛けない言葉がユキに投げ掛けられます!
(☆・☆)「それ以上近寄ると…このガキの命ゃないぞぉ!!
ワシがこうなってしまったのは…お前の所為でもあるんだぞ!!」
…(溜息)いやはや、呆れ返ってものが申せません。
自分が藩を追われたのはユキも関わっているなどとは逆恨みもいいところ!!
(☆)ここまですっかり身も心も歪みきった鼬小僧に、ユキのみならず
名主始め周囲の人々は憐みと蔑みの視線を送るのでした。
「つくづく不憫な男よ、まだあのことを根に持っておったのか…
それにつけても、そこまで歪んでいようとは…ご家老様がお怒りになるのも無理は無いか。」
「うるさーい!!」
(☆)己の非を断じて認めようとせぬ鼬小僧、筋違いの恨み言をユキに冷ややかに切り返され、
怒りに身を任せて闇雲に長太刀を振り回してユキに襲い掛かります!!
(☆☆)ですが、いくらいかに優れた業物を携えていようとも、
剣の腕前が伴っていなければ、てんで話になりません。
狂ったように繰り出される長太刀の切っ先は悉く軽くかわされ、
ただただ己を追い込むばかり。
(☆)やがて焦りの色が見えた鼬小僧、その隙を衝いてユキは
造作無き当て身を彼の者に喰らわせたのであります。
(☆)先程の威勢はどこへやら、ユキの当て身を喰らって
グッタリとうな垂れる鼬小僧。
「これ主(あるじ)!早うこの男に縄を打たぬか!後この刀も預かっておけ。」
「え…へ、へぇ!オイ、早く、縄を持って来い!」
ユキに促され、鼬小僧を手近な松の木に縛りつけ、長太刀を取り上げた名主たちは
彼女に感謝の意を表します。
「本当にありがとうございました。何とこのご恩に報いたらよいやら…
あの、もしよろしければ、暫く我が家にご逗留なされては?
お小夜坊もおいで。おっ母ぁの傷が治るまで、ワシが面倒を看てやるぞ。
おっ父ぅには、ワシから言っておくからの。」
「然様ですか、ならばお言葉に甘えまして…我々もちと
お尋ね致したきことがございますので。」
かくしてユキとお順は、暫く名主の家に厄介になることになったのでございます。
一方のお小夜ですが、数日後、母・おせいの負傷も癒えて、また親子三人幸せに
暮らしたと言うのは申すまでもございません。