仮面ライダーののBLACK

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696名無しハンペン
「安倍さん! 安倍さぁん!」
「安倍さん! どこにおるんですかぁ!」

結局、飯田達は先ほどの高台に戻ってきてしまっていた。
安倍を捜し求める五人の顔に、不安の色が色濃く浮かぶ。

「誰もいない……まさか安倍さんはもう……」
「何馬鹿なこと言ってんの! なっちがあんな奴らに負けるわけ無いでしょ!」

弱気な発言をする紺野を、飯田は強い口調で戒めた。
安倍は自分が認めた人物だ。簡単にやられるような相手ではない。
不安を押し隠し、飯田はそう自分に言い聞かせた。

「それになっちは約束した。
 こんなところで死んだりしない。まだやることがあるんだって。
 だから無事だよ。絶対に……」
「飯田さん……」
「馬鹿な奴らじゃの。のこのこと戻ってくるとはな」

聞こえてきた声に五人はすぐさま戦闘態勢を取る。
どこから現われたのか、岩石男爵は悠然とその様子を眺めていた。
697名無しハンペン:04/02/04 21:03 ID:p0zCopHu
「なっちは……なっちはどこに行ったの!」
「アイツか。さあな、そこら辺でくたばってるんじゃねぇのかい」
「ふざけないで! なっちがそんな簡単にやられるもんか!」
「なら、試してみるかい。さっきはドクロ少佐にもってかれちまったからな。
 まだ戦い足りねぇんだよ。このままじゃ体が鈍ってしょうがねぇや」
「みんな、いくよ!」

飯田はそう叫ぶと両手を斜めに開いた。
精神を集中しながら赤心少林拳の型を決め、前に突き出した両手を90度回転させる。

「変身!」

光に包まれる飯田の横で、残る四人もそれぞれ変身ポーズを取る。

「大・変・身!」
「スカイ! 変身!」
「変・身!」
「超力招来!」

五人の戦士達が勢揃いした。
目の前の相手が恐るべき敵だと言うことは分かっている。
しかし、ここで引くわけにはいかない。

「コイツを倒してなっちを探すよ。いいね、みんな油断しないで」
「任せてください! こいつ一人だけなら、あたし達で倒してやります」
698名無しハンペン:04/02/04 21:04 ID:p0zCopHu
「ふん、大きな口を叩くじゃねぇか!」

岩石男爵は拳を振り上げ、そのまま突っ込んできた。
力任せの攻撃を左右に散開してかわす。
先ほどまでいたところにあった岩が、腕の一振りで粉々に砕け散った。

「おめぇらみてーな小娘どもなんぞ、俺一人で十分なんよ」
「言ったな! くらえ、チェストォ!」

イナズマンが一声かけると、辺りが真っ白に光った。
電気を操る超能力者、イナズマンによる閃光が輝く。

「う、うぉ!」
「ライドルロープ!」
「マイクロチェーン!」

目つぶしにひるんだ隙をつき、XライダーとZXの二人が岩石男爵の腕を絡め取る。

「あさ美ちゃん!」
「OK!」

飛び上がったスカイライダーの体が前方に回転する。

「スカイ! キック!」

そのまま必殺の蹴りが、身動きできないごつごつした体に叩き込まれた。
699名無しハンペン:04/02/04 21:07 ID:JzTCQbNJ
「やるじゃん、アイツラ。ナイスコンビネーション」

思わず呟いたスーパー1。だが、それも一瞬のことであった。
腕の拘束をものともせず、岩石男爵はスカイライダーの蹴り足をがしりと捕んだ。
振り回されたXライダーとZXは吹き飛ばされて前方に転がる。

「ふふん、ぬるい攻撃じゃの」
「きゃあああ!」

足を掴まれたまま無造作に投げ飛ばされたスカイライダーは、
起きあがりかけたXライダー達にぶつかった。
敵の力に驚愕したイナズマンは慌てて仲間の元に駆け寄る。

「みんな大丈夫!」
「く! こいつ強い」
「オマエラまとめてペチャンコにしてくれるわ。くたばれ!」
「う、うわあああ!」

勢いを付け突進してくる岩石男爵。
その迫力に四人はとっさに動くことも出来ない。
体を丸めるように、肩から突っ込んでくる敵。まともに食らえば、ただでは済まない。
そこへスーパー1がするりと割って入った。
700名無しハンペン:04/02/04 21:07 ID:JzTCQbNJ
「お前もつぶされたいんか」
「赤心少林拳、梅花の型!」

兄弟子、弁慶直伝の技。攻撃に使えば剛健、守りに使えば堅牢。
それはまさに赤心少林拳奥義。怒濤の突進をその力に逆らわず、きれいに受け流す。

「な、なにぃ!」

岩石男爵がバランスを崩す。その隙をZXとイナズマンは見逃さなかった。

「今だ! 十時手裏剣!」
「超力稲妻落とし!」
「う、うぉぉ!」

無防備なところに攻撃を受け、さすがの岩石男爵もよろよろとよろけてしまう。
チャンスと見て、スーパー1が宙に舞った。空中で型を決め、右足を真っ直ぐ伸ばす。

「スーパーライダー! 閃光キック!」
「ぬぉぉぉぉ!」

見惚れるほどに美しい体さばき。鋭い蹴りが岩石男爵に突き刺さろうとしたその瞬間。
701名無しハンペン:04/02/04 21:08 ID:JzTCQbNJ
「きゃああ!」

どこからともなく巻き起こった炎が、銀色の体を包み込んだ。
不意打ちを食らったスーパー1はそのまま真下に落下してしまう。

「油断したな、岩石男爵」

声とともに不気味な姿が現われた。
ドクロ少佐は自らが燃やしたスーパー1を冷たく睨み付ける。

「へ! 余計なことをしやがって。これくらいたいしたこたぁねえのよ」
「まあいいさ、せっかくこうして雁首をそろえて来てくれたんだ。
 ここでまとめて片づけてくれる」
「飯田さん!」
「くぅ、二人目か……ヤバいな」

たった一人の敵に五人がかりで苦しい戦いを強いられていたのだ。
それが二人になったということは。飯田の胸に絶望感が広がる。

「さあ、死ぬがいい」

その時、冷たい風の吹きすさぶ丘の上に、朗々としたメロディが響き渡った。
702名無しハンペン:04/02/04 21:09 ID:JzTCQbNJ
「む、何だ!」

ドクロ少佐と岩石男爵は慌てて辺りを見渡す。

「この口笛は……」
「まさか!」

口笛は静かにその音色を止めた。
代わりに高らかな口上が風に乗せて流れてくる。

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。
 悪を倒せと私を呼ぶ!」

飯田は傷ついた体を抱え、小さな声で呟いた。

「ふ、なんだよ。
 やっぱり、やっぱり無事だったんじゃんか……」
703名無しハンペン:04/02/04 21:10 ID:JzTCQbNJ
「そこか!」

ドクロ少佐は手にした鎌をブーメランのように投げた。
鎌は一段高くなっていた丘の岩を粉々に砕く。
そこから現われた姿。

黒を基調とした体。
強さを象徴するかのような頭の角。
風にたなびく黄色いマフラー。
肩を覆う深紅のプロテクター。
そして、胸に輝くSのマーク。
カブト虫の強靱な力を持ち、体内に搭載された発電機で電気を操る改造人間。

「聞け! 悪人ども。
 私は正義の戦士、仮面ライダーストロンガー!!」
「なっち!」

仮面ライダーストロンガーこと、安倍なつみは目前の敵を見下ろし、
気合いを入れるかのように手袋をぎゅっと引き絞った。