68 :
名無し天狗:
「者共!出て来い!!」
「鬼火蝮」の号令一下、どこからかワラワラと湧いて出て来る血車党下忍の群れ。
その数、男三十六人、女二十四人。
いずれも、党入りする以前から酌量の余地のない極悪人たちである。
彼らは皆、ギラギラした凶悪な視線をユキたちに向けている。
「こ奴らを斬り捨てぃ!!」
やがて「不死身ましら」の声と共に、下忍たちは一斉にユキたちに斬り掛かってきた!
ユキたちは、血車党の余りの学習能力の無さに呆れつつ次々襲い来る下忍たちを
一人、また一人と斬り伏せてゆく。
「えぇい、いつもながら姑息な手を使いおって!!
このままでは埒が明かぬ、一息に片付けてくれる!!」
懲りもせず迫る下忍に悪態を吐(つ)きつつ、ユキは煙玉を投げつけ、
敵が怯んだ隙にお順と共に五間(一間は現代の距離に換算して一.八二メートル。
つまり五間は九.一メートル)程後方に飛び退いた。
そしてユキはその場に片膝を付いてしゃがみ、逆手持ちのハヤカゼの峰に
左手のひらを添え、お順もその場に四つん這いになった。
69 :
名無し天狗:03/10/27 20:56 ID:CwMRjEo7
隙の無い殺気に下忍たちの動きが止まり、彼らに戦慄が生じる。
ユキは瞑目し、お順はその身を揺する。そして・・・!!
「吹けよ嵐・嵐・嵐!!とぉりゃああぁぁー!!!」
「ブヒヒヒヒヒィィィィ…ンン!!!」
二人は同時に叫び、各々その身を「人智を超越せし者」へと変えて行く!!
ユキは赤鷹の鳥人に、お順は純潔の白馬に!!
「変身忍者!嵐!!見参!!!」
獅子吼の名乗りと共に、嵐に変じたユキはハヤブサオー=お順に跨り、
血車党の群れに突撃する!
「えぇい怯むな!行けー!掛かれぇー!!」
三人の化身忍者たちは狼狽する下忍たちに檄を飛ばす。
彼らに発破を掛けられ、死に物狂いで迎撃する下忍たち。
上忍には決して逆らえない。下忍の悲しい性である。
その下忍たちを嵐は片っ端から斬って伏せ、
ハヤブサオーは蹴散らし、或いは踏み潰していく。
70 :
名無し天狗:03/10/27 21:16 ID:CwMRjEo7
だが、下忍を相手にするのも億劫になったのか、嵐は思い切った技に出た。
「忍法!舞羽滅乱斬り!!」
何と嵐は、手にしていたハヤカゼをブーメランの要領で下忍へ投げつけたのだ!
嵐に投げられたハヤカゼは“舞羽滅乱(ぶうめらん)”の術の名の通り
高速回転をしながら飛び、群れを成す下忍たちをあっという間に
一人残らず斬り倒すと、再び嵐の手元に還っていった。
死屍累々とする下忍たちの骸に手を合わせたあと、
嵐は下馬して三人の化身忍者に怨みの刃を向ける。
「なかなかやりおるな嵐…だが、我らはこうはいかぬぞ!」
「こちらは三人、あんたは一人…どうやって相手をするつもりなのかしら?」
「我ら三人力を合わせれば、貴様など赤子同然!!」
例によって下忍に同情の一片も見せず、余裕の笑みを浮かべる三人。
いや、最早人間の情をサッパリと捨て去った者たちを「人」単位で呼ぶのもおこがましい。
以降、化身忍者の数単位は「匹」と言うことにしたい。
その三“匹”を前に、嵐は慎重になる。
最初に戦った「毒うつぼ」でさえ、得体の知れぬ強力な技量を誇っていたのだから。
71 :
名無し天狗:03/10/27 21:28 ID:CwMRjEo7
いかにしてこの三匹と渡り合うか・・・
嵐は思案を巡らす。
だが、相手はそのような余裕を当然与えない。
先手を打ったのは化身忍者たちだった。
そのうちの一匹「不死身ましら」は、自慢の怪力ですぐ傍にあった大岩を
軽々と持ち上げ、嵐とハヤブサオー目掛けて投げつけた。
彼女たちは難なくかわすが、「不死身ましら」は間髪入れずにその場にある岩を
次々と手当たり次第に投げてくる!!
ハヤブサオーを逃がしつつ、回避を繰り返しつつ「不死身ましら」に接近する嵐。
そして遂に、嵐は「不死身ましら」との至近距離に達した!
「貰った!まず第一の首、申し受ける!!」
72 :
名無し天狗:03/10/27 21:46 ID:CwMRjEo7
「不死身ましら」の首筋目掛け、ハヤカゼを打ち下ろす嵐!
唸る一閃!!だが・・・
ガ キ ィ ィ ィ ィ ・・・・・・ ン ン ン !!!!!!
何かに弾かれたような強く乾いた音が夜空に木霊した。
「!?・・・ば・・・馬鹿な!!?」
驚く嵐。何と「不死身ましら」の皮膚は隕鉄に匹敵する
硬度を持っていようなど、彼女は夢にも思っていなかった。
「フッフッフッフ…見たか嵐!血車忍法・鉄ましらだ。
そんな鈍らな刀で、この俺が斬れるか!?え!?」
「く・・・おのれえええぇぇぇ!!!」
自暴自棄になり、「不死身ましら」にがむしゃらに斬り付ける嵐。
だが、「不死身ましら」の身体には、どこにも傷は付いていない。
嵐は呼吸が乱れ、肩で息をするにまで到ってしまった。
「もうおしまいか嵐、ならば俺の番だ!!」
言うや「不死身ましら」は、片腕一本で嵐の脚を掴み、
ヒョイ、と持ち上げると、近くの岩壁へと強く放り投げた!
ドガッッ!!岩壁に叩き付けられる嵐の身体!!
「ぐああっっ!!!」
重度の打撃が、苦悶に呻く嵐の動きを妨げる!
73 :
名無し天狗:03/10/27 22:11 ID:CwMRjEo7
「余り痛めつけ過ぎるな「不死身ましら」。あとの楽しみが減ってしまうではないか。」
「そうよ。あたいらの分も残しといてよぉ。ネチネチといたぶってやるんだから。ね。」
「不死身ましら」を嗜めながらも、「鬼火蝮」と「毒蛇妙尼」の二匹は
戦況をまるで余興でも楽しむかの如くニヤニヤ笑いながら見守っていた。
「イヤ、済まねぇな、兄貴に姐御。たかがゴミ一匹にムキになっちまったよ。」
苦笑いしながら蛇忍者二匹と交代する「不死身ましら」。
兄弟のように呼び合う彼らだが、実の兄弟ではなく、所謂徒党の仲間・「兄弟分」と言う意味であった。
「う・・・ううぅ・・・・・・。」
一方の嵐は、漸く蓄積された打撃がある程度ではあるが減少され、力を振り絞って立ち上がった。
そこへ蛇忍者二匹…「鬼火蝮」と「毒蛇妙尼」が迫る。
「クックック…どうだ嬉しいだろう。もうじき貴様の恋しい両親との対面が叶うのだぞ。」
「あたいらって、意外と優しいだろ?感謝するんだねぇ、ホホホホホ…。」
「くそ・・・ふざけるなああ!!!」
蛇忍者二匹の嘲笑と挑発に、嵐は奮い立ち身構えた。
「フ…こいつ、まだやるみたいだよ。」
「この期に及んで見苦しい…俺が黙らせてやる!血車忍法・蛇抜け殻!!」
と発した途端、その場にバッタリと倒れた「鬼火蝮」。この様を見ていた嵐は唖然となる。
74 :
名無し天狗:03/10/27 22:26 ID:CwMRjEo7
と、次の瞬間、「鬼火蝮」の身に起きた異変を目の当たりにして、嵐は驚愕した!
「こ・・・これは!!??」
「ホホホ…始まったみたいだねぇ。」
嵐の驚く様をせせら笑う「毒蛇妙尼」。
見れば、「鬼火蝮」の背中中央に亀裂が生じ、それが頭頂部と臀部、
それぞれに向かって伸びているではないか!
「ま・・・まさか、脱皮!!??」
「フフ…そうさ。「蝮」の兄さんは脱皮を繰り返して、その残った抜け殻を
分身として操ることができるのさ!!」
自慢げに「鬼火蝮」の術の概要を告げる「毒蛇妙尼」。
その間にも、抜け殻は増加の一途を辿る。
そして遂に、その数はおよそ三十体にまで及んだ。
「く・・・。」
嵐の顔に焦燥の色が浮かぶ。
その彼女に、群れを成して一斉に押し寄せる抜け殻人形!!
打撃が完全に癒えていない嵐は、気力を振り絞って抜け殻人形を振り切り、
「鬼火蝮」に肉薄しようとするが、抜け殻人形は「鬼火蝮」の意のままに動き、嵐を遮る。
75 :
名無し天狗:03/10/27 22:39 ID:CwMRjEo7
「く…くそっ!こ奴ら…!!」
必死に抵抗する嵐を弄ぶ抜け殻人形の大群。と、そこへ・・・
「シャアアアアアア!!!」
手足を大の字に広げて立つ「毒蛇妙尼」が、自身の身体から
無数の蛇の群れを噴き出し、嵐を襲わせた!!
彼女の体内の蛇は、目・鼻・口・耳・乳首・へそ・
果ては倫理上書けない箇所に到るまで、様々な身体中の
穴という穴から止め処なく飛び出していく。
数え切れない程の蛇たちは、いずれも例外なく嵐に群がり、動きを封じ、
一斉に彼女に噛み付く。その蛇には毒こそないものの、強烈な噛み付きは
嵐を更なる苦悶の地獄に引き込んだ。
絶体絶命の嵐。そこへ「不死身ましら」が加わった三匹が最後の止めを差そうと迫り来る!!