仮面ライダーののBLACK

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621名無しスター
数日後の朝

「じゃあ、今日はこのぐらいにしよっか。」
「そうだね」

早朝の公園。矢口と飯田の二人はそう言って歩き出した。
トレーニングを始めて一ヶ月、残ったのはやっぱりこの二人だけである・・・

「・・・ケイちゃん、今日は来なかったね。」
「やっぱり三日坊主だったね・・・・まったく根性ないんだから!」

そう話しながら二人は公園の外周を並んで歩いていた。
朝の冷たい空気が気持いい。

「ん?・・」

突然飯田が立ち止まり、遠くを眺めだした。

「・・・カオリ、どうしたの?また交信中?」
「違うよ!あれ見て・・」

飯田が指差す方向を見ると、数人の少女が空手の稽古をしていた。
数人の小学生の真ん中であの雅が皆を指導をしている。

「あの子でしょ?矢口がこの前助けた子って。」

「うん。でもなんか人数増えてるね・・・」
622名無しスター:04/01/24 23:38 ID:1rwG+cTt

「・・・あっ!!」

雅は二人の視線に気付き、指導を中断してこちらに向かって走ってきた。

「おはようございます!この前は失礼しました!」
雅は元気良く二人に話しかけた。

「・・・おはよう。朝から元気いいね。」
「今日は一人じゃないんだね。あの子達は空手道場の後輩の子?」

「いいえ、学校の同じクラスの子です。」

「同じクラスって・・・・もしかしてあなた小学生!?」
「え?そうですけど。」

「えええええええ?」

飯田と矢口は目を丸くして驚いた。

「(辻や加護より大人っぽいじゃん・・・)」
「(ていうか、バイク運転したらダメじゃん・・・)」

「どうしたんですか?」

二人のあまりのうろたえぶりを見て雅が心配そうに聞いた。
623名無しスター:04/01/24 23:46 ID:1rwG+cTt

「あ、ごめん。そうは見えなかったもんで・・・」
「で、クラスの子に空手を教えてあげてるの?」

ようやく落ち着いた飯田と矢口は雅に聞いた。

「はい。最近『探偵団ごっこ』を始めまして、護身術の練習をしてるんです。」

「探偵団ごっこ?」

「周りで変な事件とか、奇妙な人とか動物がいたら調べるんです。お二人も何かあったら教えて下さいね。」

もちろん雅を含め、みんなは「ごっこ」だとは思っていない。
仲間うちでは探偵団は「少年仮面ライダー隊」と呼ばれている。
少なくとも彼女たち本人は真剣だ。
彼女たちは雅の呼びかけに応じ、ライダーに協力しようと集まった。
雅の知り合いの中でも特に口の堅い、信用できる子だけが選ばれた。

表向き「ごっこ」と言っているのは「なるべく内緒にしてほしい」というアマゾンの約束を守ってのことだろう。
矢口も飯田もすぐにそのことを察した。
624名無しスター:04/01/25 00:23 ID:WUmyLy9/

「・・・それで、調べてどうするの?警察にでも通報するの?」
飯田はちょっと意地悪な質問をしてみた。

「え、えっと・・ある人に伝えるんです。」

「ある人って?私立探偵とか?それとも『正義の味方』とか?」
「もしかしてこの前話してた『仮面ライダー』のこと?」
「やだ!そんなのいるわけないじゃない。」

矢口も飯田といっしょになってからかって笑って見せた。

「・・・・・」

雅は少し悔しそうな顔して何も言わず黙っていた。

「・・・そんなこと言わずにつき合って下さいよぉ。」
しかしすぐに顔を上げ、笑ってそう言った。

それを見て飯田と矢口は感心した。
ひょっとしてカッとなってこの前のことを話してしまうのでは・・と疑っていたのだ。
この子なら信用してもよさそうだ。

「あ、うん。わかったわかった。」
「そうだね。何かあったら伝えるよ。」

「お願いします。」
625名無しスター:04/01/25 00:29 ID:WUmyLy9/

「じゃあね。」

矢口はそう言って帰ろうとした時、ふとあることに気付いた。

「・・・えっとさ。ちょっと気になったんだけど・・・その『ある人に』どうやって情報を伝えるつもりなの?」

「それは・・・・・」

雅はじっと矢口を顔を見た。
それを見て矢口はドキッとした。

「(・・・まさか、おいらの正体に気付いてるんじゃ・・・)」



「あぁ!忘れてた!・・・どうしよう!・・・・あぁ!・・・」

雅は突然頭を抱えて座り込み、激しく動揺し始めた。

「・・・みんなになんて言えば・・・あぁ!・・・あああ・・・」

どうやら考えてなかったらしい・・・
626名無しスター:04/01/25 00:46 ID:WUmyLy9/
「・・・えっと。じゃあね」

矢口はそそくさと帰り始めた。
慌てて飯田が追いかける。

「ちょっと矢口!あの子に連絡先を伝えなかったの?」

「うっかりして・・・それに住所とか教えるわけにも・・・」

二人は少し離れてヒソヒソと話し始めた。
振り返ると、雅は座り込んだまま気の毒なくらい落ち込んでいる。

「なんとかしないとね・・・」

「あれ?・・」

飯田と矢口は雅の後方から走ってくる人影に気付いた。

「・・・ケイちゃん?」
627名無しスター:04/01/25 00:49 ID:WUmyLy9/

ケイは雅のすぐ横を走り抜け、二人に駆け寄った。

「ごめん。寝坊しちゃって・・・」

「遅いよぉ。」
「また三日坊主かと思っちゃった。」

「今度はちゃんとやるよ。・・・そんなことより二人でコソコソ話して、何かあったの?」

「いや、あの子が・・・・」
矢口は雅の方を指差した。

「あれ?・・・あの子はこの間の・・・」

ケイがそう言いながら雅の方を見るとちょうど雅も顔を上げ、二人の目が合った。
628名無しスター:04/01/25 00:51 ID:WUmyLy9/

「・・・ひいっ!」

雅はケイの顔を見るなり飛び上がるように立ち上がった。

「やっぱりあの二人も暴走族だったんだ!」

そう叫ぶと一目散に逃げ出した。


「・・雅ちゃーん!」
「どうしたの?・・・」

少年仮面ライダー隊の女の子たちも雅を追いかけて走って行った。


「あらら逃げちゃった・・・・あの子がどうしたの?」

「いや、実はね・・・・」

矢口はケイに事情を話し始めた。