「こいつのどこが仮面ライダーだ!」
郊外の廃ビルの地下室で、怪人「ガマゴエモン」は大声で叫び、雅を投げ飛ばした。
雅は数メートル飛ばされ、隅に積んであったゴミの山に落っこちた。
「ガキのお遊びだったとはな、汚名返上のチャンスだと思ったのに・・・」
もう一人の怪人「サラマンドラ」は呆れてその様子を見ていた。
「くそ!」
ガマゴエモンは悔し紛れに手にした槍を振り回すと、太い鉄筋コンクリートの柱が真っ二つに切り裂かれ、
音を立てて崩れ落ちた。
「(この人たちは一体なんなの?・・・)」
雅は怯えて声も出せない。
「ともかく、この辺りにライダーが出現するという噂はガセだったな。おい、一足先に帰って報告しておけ」
「イーッ!」
ガマゴエモンがそう言うと戦闘員の一人が出口に向かって走って行った。
「で、こいつはどうするんだ?」
サラマンドラが雅のほうを指差した。
「そうだな、姿を見られたからな・・・」
ガマゴエモンはそう言いながら雅に近づく。
雅は逃げようとするが射すくめられたように動けない。
「気をつけろよ、油断させる作戦かも知れん。急にライダーに変身するかも知れないぜ。」
「(変身?・・・)」
「なあに、そのほうが好都合だ。いずれにしろ体を切り刻めば分かることだ」
ガマゴエモンはそう言って手にした槍を光らせた。
「い・・・いやあーーー!!」
ここでやっと雅は悲鳴を上げた。
「大声を出しても無駄だ。誰にも聞こえやしねえよ」
この辺りはゴーストタウンと化していた。
なんでも地元の暴力団と怪しい拳法使いが組んで、あくどい手で強引に地上げを進めていたらしい。
暴力団は最近姿を見せなくなったらしいが、半径500メートルに人は住んでいない。
ましてや地下室である。悲鳴は誰にも聞こえないはずだった。