「くそっ!・・・」
さすがのケイもこれ以上追いかけるのは無理だ。
その場で立ち止まり、肩で息をしながら膝に手を付いた。
キキィ!!
そこへ猛スピードで走ってきたバイクが音を立てて止まった。
「ケイちゃん、乗って!」
「遅いよ、矢口!」
ケイはそう言ってバイクの後部シートに飛び乗る。
「やっぱりあの子なの?」
「うん、多分間違いないよ。」
矢口とケイは2人で夜間パトロール中だった。
(ジャングラーは目立つので、今日は矢口と2人乗りだった。)
そこで偶然さっきの場面に出くわした。
ケイすぐに出て行こうとしたが、矢口は少し躊躇した。
あの空手の動きに見覚えがあったからだ。
顔が知られているかも知れない・・・
矢口は物陰に隠れ、とりあえずケイ一人で様子を見に行ったのだった。
「でもあの子、どうしてあんなことを・・・」
「くそ、追いつけなかった・・・やっぱり明日からトレーニングを再開するよ!」
「・・・・いや、必要無いと思うよ・・・」
雅は後ろをチラチラと振り返りながら必死に逃げようとする。
しかし無改造のスクーターでは60km/hが限度だ。
矢口の運転するバイクは雅のスクーターにみるみる近づいていく。
キキキィィィ―!
矢口が追いついたと思った瞬間、突然スクーターがブレーキをかけた。
「あっ!あぶない!」
慌てて矢口は横に避ける。
勢い余った矢口はスクーターを追い越してしまった。
スクーターはその隙に路地に逃げ込む。
「・・・・しまった!」
矢口は慌ててUターンして路地に入った・・・
「あれ?・・」
路地に入るとスクーターが倒れていた。
「・・・コケたのかな?」
「でも、あの子は?」
雅の姿が見当たらない。
「走って逃げたのかな?・・・」
「ちょっと、これ見てよ・・・」
ケイがスクーターの異変に気付いた。
「コケた跡が無いね。」
地面にも、スクーターの側面にも擦ったような跡が無い。
「それに、これ・・・」
逆にフロントカウルは穴が開き、握り潰されたように曲がっている。
「壁にぶつかった・・・わけじゃないよね、これ。」
二人は立ち上がり、警戒して周りを見渡し始めた。
「あれ見て!」
矢口がそう言って指差した方向に、月明かりに照らされた人影があった。
いや「人」とは思えないシルエットだ。屋根の上をジャンプしながら移動している。
「あっ、あの子が!」
よく見るとその影が雅を抱えている。
「追いかけるよ!」
「バイクじゃ無理よ・・・ハァーー!・・・」
バイクに飛び乗った矢口の横でケイが腕をクロスさせた。
「ちょっと!まさかここで・・・」
「アーーマーーゾーーン!・・・」
そう叫びながらクロスさせた腕を開くとケイの目が赤く光り、全身がまばゆい光に包まれた。
「先に行って待ってるからね」
光の中から現れたアマゾンはそう言ってをジャンプし、さっきの影を追いかけた。