ブオォン!!ブオォォォン!!
ファーーン!ファン!ファアン!
その日の夜、町内を2台のバイクが走り回ってた。
2台とも二人乗りで消音器を外し、爆音を響かせている。
乗っているのは高校生か、ひょっとしたら中学生ぐらいの若い男たちである。
周りの人や車の運転手は眉をひそめつつ、黙ってそれを見ていた。
そのバイクが路地に入ったところで、前に1台のスクーターが立ちはだかった?
「止まりなさい!」
若い女の声だった。
「何だあ、お前は?」
「私は・・正義の味方、仮面ライダー!」
「はぁ?・・・」
「深夜に爆音を撒き散らし、安眠を妨害する悪者め、成敗してやる!」
そう言うと、フルフェイスのヘルメットを被った若い女は、バイクの男たちに向かって行った。
ドガッ!バキッ!
「ウウ・・・」
「いてえよぉ・・・・」
男たちは最初だけ威勢が良かったが、女の使う空手の技にたちまち倒されてしまった。
ヘルメットの女は男たちを見下ろすと、得意げに話し始めた。
「いいこと?今度悪さしたらこの仮面ライダーが承知しないからね・・」
「・・・待ちなさい!」
その時、突然背後から大声がした。
ヘルメットの女が声の方を振り向くと、こちらに歩いてくる人影があった。
「誰だ!こいつらの仲間か?それ以上近づくと・・・」
ヘルメットの女は大声でそう叫び、近づいてくる人影を威嚇した。
しかし、その人影は止まるどころかむしろ歩く速度を増しながらずんずんと近づいてくる。
あっという間に目の前に立ち、身構えるヘルメットの女の手を掴み上げた。
「乱暴はやめなさい!」
パトロール中のケイだった。
「くそっ!はなせ!・・・」
女はケイの手を振り払おうとするが、びくともしない。
「このっ!」
反射的にケイの顔面にパンチを見舞う。
ドシャ!
その瞬間女は足をすくわれ、ケイの足元に倒れこんだ。
「ええっ?嘘・・・」
女は慌てて立ち上がり、体勢を立て直すとケイに襲いかかった。
鋭いパンチ、キックが放たれる。
しかしケイはそれらをなんなくかわす。
「キャア!」
今度は足を掴まれ、軽くポーンと投げ飛ばされた。
「あんまり手間を取らせないで・・・ちょっと聞きたいことがあるだけなの。」
ケイがそう言いながら女に近づく。
「(まさかこいつが暴走族の親玉?・・・どうしよう事務所とかに連れて行かれたら・・・)」
「・・・あっ!空飛ぶ円盤!」
女は突然そう言いながらケイの後ろを指差した。
「えっ?うそ?どこどこ?」
・・・・キュルルルル・・・ブゥン!
「しまった!」
ケイが再び前を向くと、ヘルメットの女がスクーターにまたがり
エンジンをかけているところだった。
「待てー!」
ビィーーーーーーーン!・・・・
ケイが叫ぶのを尻目にスクーターはあっという間に夜の闇に消えていった。
「ふう、怖かった・・・」
スクーターに乗った女、夏焼雅はチラと後方を振り返った。
どうやら誰も追って来ない。
ようやくほっとした様子でアクセルを緩めた。
「世の中には強い人がいるなあ・・・」
いくら空手のチャンピオンでも、文明人と野蛮人では勝負にならないようだ・・・
「でも・・・仮面ライダーって本当にいるのかな?・・・」
雅はスクーターのアクセルを緩め、少しうつむき加減に考え込んだ。
「・・・・・・ぇぇぇぇぇぇ!・・・・」
その直後、かすかに人の叫び声が聞こえた。
雅は驚いて振り向くが後ろには誰もいない・・・
「気のせいか・・・」
そうつぶやき再び前を向いた時、今度ははっきりと声が聞こえてきた。
「・・・待てえええええ!」
「?」
さっき振り向いた方と反対側を見ると、ケイが全力疾走でスクーターと並走していた。
「・・・・・・」
雅はあっけにとられてその光景を見ていた。
「止まれえええええ!!」
ケイは走りながら必死の形相で雅に怒鳴りつけた。
「きゃああああああああああ!!」
雅はスクーターのアクセルを全開にし、全速力で逃げ出した。