仮面ライダーののBLACK

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481ナナシマン
 鬼勘一家、極道渡世に生きるものでその名を知らぬものはいない。この街で最も
勢力を誇る暴力団組織である鬼勘一家の「鬼勘」とは、一家を仕切る大親分である
「鬼の勘三」の通り名を縮めたものである。
 鬼勘は拳龍会と組んでゼティマに通じ勢力を拡大してきた男であり、そのことは
紗耶香もすでに承知していた。そう彼女はあの日以来、修羅と化して各地の暴力団
組織や犯罪組織を独力で壊滅させてきたのである。
 かつて異形の者達や謎の軍団の前に、力なく怯えることしか出来なかった少女は
いつしか百戦錬磨、そこいらのヤクザ者や愚連隊などとうてい足元にも及ばぬ胆力
と技を身につけていた。そんな彼女にとって、この手の輩などさして問題ではない。

 「ここは天下の往来、あんた達みたいな与太者のためにあるんじゃないよ?」

人差し指でスッ、とハットのひさしを上げて紗耶香はニヤリと笑う。大胆不敵と
しか言い様のないこの振る舞いに、極道の面目を汚されたか二人組の男は声を荒げ
少女に詰め寄ってきた。
482ナナシマン:03/12/22 21:20 ID:b1/ddUYG
 「ガキだと思って大目に見るとでも思ってんのか?!ふざけやがっ・・・」

 男が最後まで言い終わらぬうち、紗耶香はすばやく男の懐に入り込むと隠し持った
銃のグリップで腹部に一撃を加える。腹部を襲った鈍痛に男が苦悶の表情を浮かべて
崩れ落ちると、その様子を見たもう一人の男が紗耶香の胸倉に掴みかかろうと襲って
きた。だがその直後、男の鼻先に突きつけられたのは銀色に輝く銃身だった。

 「とりあえず・・・あんたの親分さんのところに案内してよ」

 「なっ・・・お前どっかの鉄砲玉か?!」

 「さぁね・・・案内する気がないなら無理にとは言わないけど、もしかしたら
鼻と口以外にもうひとつ、顔に穴が開くことになるかもね♪」

不敵な笑みを浮かべながら、紗耶香はゆっくりと撃鉄を親指で引く。リボルバーが
回転する音を間近に聞き、男の額に滝のような脂汗がにじむ。
483ナナシマン:03/12/22 21:20 ID:b1/ddUYG
 「・・・待ってくれぇ!親父に会いてェなら俺が口を利いてやってもいい!」

 「利いてやる、って態度が気に食わないなぁ・・・」

 「わっ、判りましたっ!紹介させていただきます、はい!!」

肩で風切る極道者の勢いはもはや無く、目の前にいるのは倍も年が離れているで
あろう少女〜もっとも相手は気づいていないだろうが〜に命乞いする哀れな男。
銃を突きつけたせいとはいえ、すっかり従順になった男に紗耶香はにっこりと
微笑み、こう言った。

 「はい、よくできました♪」

言うや紗耶香はいきなり引き金を引く。一気に血の気がうせ、男は死を覚悟する。
しかし、その瞬間に聞こえてきたのはガチッ、という乾いた音だけだった。鼻っ面
を打ち抜き銃声を響かせるはずの銃には、実は最初から弾など入っていなかった
のだ。へなへなと崩れ落ちる男を尻目に、紗耶香はさっさとセダンのドアを開け、
勝手に後部座席に乗り込む。

 「ふん・・・サービス悪いね」

後席で大きく足を投げ出すと、紗耶香はそのままテンガロンハットを再び目深に
被って眠り込む。因縁を吹っかけてきたヤクザ者を返り討ちにしただけでなく、
事務所に案内しろと言い放った紗耶香。そこにはいかなる思惑があるのか。そして、
そんな彼女乗せたまま車は走り出した。