仮面ライダーののBLACK

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393ナナシマン
 「福田さーん、回診ですよ」

 不意に扉の向こうから声が聞こえる。どうやら担当医が回診にやってきた
ようだ。しかし、明日香はこの声に対して怪訝な表情を浮かべて言う。

 「おかしいな・・・午後の回診は3時のはずなのに」

 「予定より早まったんじゃない?よくあるじゃん、そういうの」

明日香の疑問に対して、気にすることは無いと紗耶香は言う。だが、なおも
明日香は続けた。

 「ううん。予定が変更になるんなら事前に電話が入ってくるはずなんだ。
あたしの担当の先生、ヘンに几帳面って言うか・・・」

すると、そんな言葉をさえぎるように病室のドアが開く。そこに姿を現した
のは、一人の男性医師と数人のナース達だった。それは先ほど紗耶香が
出会った、あの失礼な一団だ。

394ナナシマン:03/11/27 23:18 ID:p7elb9eU
 「福田さん、回診の時間ですが」

 医師もナース達も、その顔には遠慮やいたわりなどという人間味は微塵も
感じられない。まるで作り物のような目から注がれる、冷徹な視線が二人に
突き刺さる。

 「ちょっとねぇ、いくら自分とこの患者だからってノックもなしに病室に
入るなんて失礼じゃない!」

 廊下ですれ違ったときの無礼をまだ根に持っていた紗耶香は、ここぞと
ばかりに非難の怒声を浴びせる。と、その時だ。

 「ごちゃごちゃとうるさい小娘め・・・」

 「係わり合いになると命は無いぞ」

脅迫めいたセリフを口々に吐きながら、医師の後ろに控えていたナース達が
にじり寄る。やがてその能面のような顔には赤い隈取が走り、その顔はまるで
死人のように青ざめた顔へ変化していく。そして次の瞬間、白衣を脱ぎ捨てた
彼女達は、黒いレオタードに身を包んだ怪しげな姿に変わっていた。
395ナナシマン:03/11/27 23:18 ID:p7elb9eU
 「あんた達は・・・一体何者なの?!」

急いでベッドから飛び降りた明日香を庇うように、そばにおいていた傘を剣の
ように構える紗耶香。相手は明らかに、自分達に害意を持ってその正体を
現した。ただならぬ気配の中、身構える紗耶香の前に歩み出たのはこの怪しい
女達を引き連れて現れた男性医師だった。

 「もしかして、あんたも偽の医者・・・?」

 「・・・いかにも。見せてやろう、この俺の正体を」

そう言うと、偽医師は両腕を交差して構え、ゆっくりと円を描くようにして
動かす。その怪しい腕の動きにあわせ、男の顔は紫色の鱗に覆われた蛇のような
顔へと変貌していく。そして、脱げ落ちた白衣の下から現れたのは、顔と同じ
紫色の鱗と、黄色がかった蛇腹の身体だった。眼の前で彼は見たことも無い
ような異形の者へと変化したのである。

 「きゃーっ!!」

異形の者のあまりのおぞましさに悲鳴をあげる紗耶香。異形の者の片腕は毒蛇を
象った形をしていて、その毒蛇もまるで一個の生命体のような禍々しい毒気を
放っている。異形の刺客〜怪人の姿は毒蛇の王、コブラを思わせた。

 「俺は『コブラ男』!公園ではしくじったが、今度は間違いなく殺す!」
396ナナシマン:03/11/27 23:30 ID:p7elb9eU
 紗耶香はコブラ男に対して傘を振りかざして打ちかかる。しかし、敵の身体を
いくら打ち据えようともびくともしない。右に左に振り下ろしても、コブラ男は
表情一つ変えず平然と紗耶香の攻撃を受け続けている。

 「ちくしょう・・・これならっ!!」

敵はもはや人間の常識など通用しない化け物だ。紗耶香は意を決して、怪人の
懐に飛び込むとその腹に傘の先を突き刺す。だが、5ミリほど先端が突き刺さった
ところで傘は無残に折れ曲がってしまった。コブラ男と視線が交錯した瞬間、
右腕から放たれた強烈な一打が紗耶香を吹き飛ばした。ベッドで腰の辺りを強打
した紗耶香、衝撃で息が詰まってしまった。

 「うぐっ!!」

立ち上がれない紗耶香。そんな彼女の元へと歩み寄ると、コブラ男は首根っこを
掴み、そのまま紗耶香を片手で吊り上げた。

 「それほどまでに死にたければ、お前から先に殺してやろうか?!」

首を掴む手に尋常ならざる力が込められ、紗耶香の頚動脈を締め上げる。意識が
自然と遠のいていき、その視界には徐々に狭まっていく。と、その時。