仮面ライダーののBLACK

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366ナナシマン





 『復讐とは冷めると不味い料理である』

            

 
367ナナシマン:03/11/22 23:46 ID:diH+IxF4
第48話 「友よ!魔道に咲いた修羅の花」




 殺された友の仇を求め、さすらいの旅を続ける一人の少女がいた。悲しみを
乗り越え、幼いながらに生き馬の目を抜くが如き娑婆を渡り歩く少女は生きる
ために、彼女は様々な技を極め生業に生かしてきた。復讐の牙を研ぎ澄まし
ながら、悲しみの夜を超えて少女はたった一人で生きてきた。誰にも組せず、
ただ一人往く娘。彼女の名は紗耶香。彼女の物語は、ある出来事から始まる。


 それはある雨の日の夜のことだった。宇宙開発のための研究施設であり、
後に惑星開発用改造人間スーパー1、後の仮面ライダースーパー1を生んだ
E&Sでの飛行士訓練を受けるべく、渡米を来月に控えていた紗耶香。
そんな彼女の壮行会が、友人宅を会場にクラスの仲間たちによって行われて
いた。少女達の笑顔があふれるパーティは終始和やかな雰囲気で進んでいたが、
やがて終わりに近づいた頃、不意に彼女の携帯電話が鳴った。スカートの
ポケットの中から探り当てた携帯電話、その表示部分には見慣れた少女の名前
があった。
368ナナシマン:03/11/22 23:47 ID:diH+IxF4
 『着信:明日香』

 (明日香のやつ・・・何だよ、今頃かけてきて・・・)

 電話の主は彼女の親友である福田明日香であった。当初紗耶香は明日香も
パーティに誘っていたのだが、明日香は再三の誘いにもかかわらず、この時間
まで顔を出すことは無かった。バイトがどうしても抜けられない、と彼女は言って
いたのだが、他校の生徒であることを気にして紗耶香とその友人達に気を使った
のかもしれない。

 「はい、もしもし市井ですが」

 電話の向こうから聞こえてきたのは、いつもと変わらぬ親友の声。壮行会に
行けなかった事を一言詫びた後で、明日香は紗耶香に言った。

 『ねぇ、これから・・・時間あるかな?』

 「うん、大丈夫だけど?」

 『それじゃ、いつもの公園で。待ってるから』

 「うん。じゃ、後で」

 そっけない電話口の言葉にも、いつもの事と笑顔で応える。旅立つ友の顔を
見ておきたいと言う気持ちはやはり抑えきれないのか、明日香はほとんど一方的に
約束をとりつけてさっさと電話を切ってしまった。
369ナナシマン:03/11/22 23:52 ID:diH+IxF4
 「ホント、あの子らしいよ・・・」

紗耶香はそう言って一人つぶやくと、再びポケットの中に携帯電話をしまう。仲間
達に別れを告げて友人宅を後にすると、紗耶香は約束の公園へと駆けていった。

 時計は既に夜の9時を回っていた。少なくとも女子生徒が外を出歩いているのを見て
あまり良い顔はされない時間帯である。今日日塾や習い事でこれくらいの時間に帰宅
するとは言っても、やはり大人はそんな少女達に心配のまなざしを向けることだろう。
しかし、今の紗耶香にはそんなことは全く関係ない。日本を離れる前に、どうしても
会っておきたかった親友が待ってくれているのである。時間など関係なしに、彼女は
会いに出かけただろう。
370ナナシマン:03/11/22 23:52 ID:diH+IxF4
 すると、そんな彼女の邪魔をするかのように突然雨が降り始めた。しかし、紗耶香
には雨宿りをする暇などありはしない。この降り出した雨の中で、明日香が一人自分の
ことを待っているかもしれない。そう思うと、雨になど構ってはいられなかった。
 土砂降りの雨の中、息を弾ませて公園への道を急ぐ紗耶香。この先の角を曲がれば、
公園まではすぐそこだ。と、そんな彼女のすぐ脇を、けたたましいサイレンを鳴らし
ながら一台の救急車が水しぶきを蹴立てて走っていく。その直後、回転する赤い閃光の
眩しさに一瞬立ち止まった少女の視線の先で救急車は停車した。そう、そこは約束の
場所、親友の待つ公園の前を横切る道路であった。
 胸騒ぎを覚えた紗耶香は脇目も振らずに公園への道を急ぐ。息を切らせて駆けつけた
彼女は、取り囲む人だかりの中をストレッチャーに載せられて救急車へと運び込まれる
一人の少女の姿を目撃することとなった。