仮面ライダーののBLACK

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235名無しスター

第三章  「愛」

林の中で小川は仰向けに眠っていた。隣に新垣が座っている。

「まこっちゃーん!里沙ちゃーん!」
スカイライダーが2人に駆け寄って来た。

「・・・あさ美ちゃん?随分様子が変わったね・・」
新垣は色が明るくなったスカイライダーを見て驚いた様子だった。

「あ、なんかちょっとね。」
「あさ美ちゃん、さっきすごかったんやから。・・それより小川さんは?」
高橋は変身を解いて言った。

「・・・あ、そうだ、まこっちゃんは大丈夫?」
紺野も変身を解いていた。・・・どういうわけか髪の毛の色も明るくなっていた。

「うん、疲れて眠ってるだけみたい。目立った外傷もないみたいだし。」
「そう、よかった・・・」
紺野は新垣の隣に座り、小川の顔を覗き込んだ。

「でも、どうして?」
「あっち・・・」
新垣が指差した方向に爆発の跡があった。おそらく怪人のものだろう。

「苦戦したのかな?まこっちゃんあんなに強いのに・・・」
236名無しスター:03/11/17 21:38 ID:kT2D5IEk

「・・・それじゃあ、私あっち見て来るし。」

3人の様子を見ていた高橋は不機嫌そうに言うと、爆発跡の方に歩いていった。
それを紺野と新垣は黙って見送った。

「・・・里沙ちゃん。愛ちゃんのことだけど・・・」
「・・・うん、やっぱりそう思う?」

高橋の小川を見る目はどこか冷たかった。
新垣と紺野は「まこっちゃん」と呼ぶが、高橋だけはいまだに「小川さん」と呼ぶ。

「やっぱり加護さんと辻さんのことをまだ気にして・・・」
「うん。愛ちゃん、あの2人のことを尊敬してるし。何度か助けてもらったりしてすごく世話になってるからね。」

加護と辻は以前ZXに瀕死の重傷を負わされていた。

紺野は小川の方をちらりと見た。
「でも、あの時のまこっちゃんは脳改造されてたんでしょ?」
「うん。愛ちゃんもそれは分かってるはずだよ。でもあの時は加護さんも辻さんも
 かなり危なかったし・・・いまだに割り切れないものがあるんじゃないかなあ?」

「でも、良くないよね。このままじゃ・・・」
「・・・私、ちょっと話してくる。」

新垣は立ち上がり、高橋の方に走っていった。
237名無しスター:03/11/17 21:40 ID:kT2D5IEk

「愛ちゃん。ちょっと話が・・・」
「何?」
「まこっちゃんの事なんだけど。やっぱりまだ・・・」

そう言われて高橋は小川の方を振り返った。小川はまだ眠ったままだった。
さっきの激闘で疲れたのか、いつの間にか紺野も小川の隣で眠り込んでいた。

「うん・・小川さんはいい子やと思うし。それはわかってる・・・」
高橋は顔を伏せて言った。

「やっぱり。・・・でもこれから一緒にやっていく仲間なんだから・・・」
「あれは仕方が無いってことはわかるんやけど。そんでも・・・」

「一度話し合ってみたら?言いたいことを言えばすっきりするかもしれないし。」
「うん・・・でも・・・」
高橋はもう一度小川の方を振り返って見た。

「あれ?・・・」
高橋が異変に気付いた。

「あっ!・・」
新垣も驚いて声を上げた。
238名無しスター:03/11/17 21:40 ID:kT2D5IEk

振り返るといつの間にか小川の姿が消え、紺野一人だけが眠っていた。
「大変だ!」
「あさ美ちゃん、起きて!」

高橋が紺野を揺り起こす。

「あ・・いつの間にか眠って・・・あれ?まこっちゃんは?」
「消えちゃったの!あんな体でどこへ・・・」


「・・あ、そう言えば・・・あの孤児院!」
紺野はあの建物のことを思い出した。

「多分こっちだよ!」
紺野に続いて2人も走り出した。
239名無しスター:03/11/17 21:42 ID:kT2D5IEk

「ククク・・なにがパーフェクトサイボーグだ。ザコじゃないか。」
「・・・畜生!」

孤児院の建物に向かっていた小川は、途中「鉄腕アトラス」と遭遇した。
ZXに変身したものの、あっさりと組み伏せられ、腕をねじ上げられていた。

「こんな奴に・・どうして・・」
ZXはうめくようにつぶやく。どうしても力が出ない。

「時間が無い・・・」

ZXキックを使うしかない。
しかし今度はあの激痛に体が耐えられるかどうか・・・
でも他に方法は無い。ZXの体がだんだん赤くなっていく、

鉄腕アトラスもZXの異変に気付いた。
「何をする気だ・・・」

「待って!」
「だめ!まこっちゃん!」
その時、鉄腕アトラスの後方から叫び声が聞こえた。

「おまえの仲間か?」
「・・・・」
ZXは黙っていた。

鉄腕アトラスは振り向きながら言った。
「ふん!こいつを助けに来たのか?俺が相手をしてやる!まとめてかかって来い!」
240名無しスター:03/11/17 21:43 ID:kT2D5IEk
「よしっ!」
「わかった!」


「・・・・ちょっと待・・・」

「サナギマンの・・・キーック!」
バキィ!
「ライダームーンサルト!」
ドガァ!
「ライドル脳天割り!」
グシャァ!

「・・・今だ!まこっちゃん!」

「ぜ・・・ZXぱんち・・・」
ペシッ!

鉄腕アクロスはその場で崩れ落ち、バッタリと倒れた。
(ライダームーンサルトで決着は付いていたのだが・・)
241名無しスター:03/11/17 21:45 ID:kT2D5IEk

ZXの変身が解け、がっくりと両手を付く小川。

「まこっちゃん!」
あわてて紺野が駆け寄る。

「どうしてこんな無茶なことを・・・」
「だって・・・施設のみんなが・・」

「言ってくれれば手伝うのに・・・ねえ?」
新垣の言葉に高橋も紺野もうなずく。

「だって、これは私の闘いだもの・・・」
「何言ってんの!小川さん!」
高橋が大声を出した。

「私達、全員仲間やし!1人の敵はみんなの敵やし、ましてゼティマ相手やったら・・・
少しぐらい私達に甘えてくれたっていいやない!」

「・・・・」
小川は黙っていた。

「それに、ここのアジトは多分、私のお父さんの仇やの。あなただけの敵やない。
私の『獲物』でもあるんやから・・」

「え、そうなの?愛ちゃん。」

紺野は少し驚いた様子だった。そういえば福井県はすぐ隣だ。


何故か新垣だけは、高橋の話を複雑な表情で少し伏目がちに聞いていた。
242名無しスター:03/11/17 21:47 ID:kT2D5IEk

「それと・・・小川さん。あなたに前から言いたいことがあったんやけど・・・」

「・・・ちょっと、愛ちゃん!」
「今ここで言うことじゃないよ!」

紺野と新垣が割って入る。

「いや、いいから。今言わせて・・・小川さん、あんたなあ・・・」

高橋はチラッと紺野の方を見た。


「・・・小川さん・・・ちょっとあさ美ちゃんとベタベタし過ぎやし!」
243名無しスター:03/11/17 21:48 ID:kT2D5IEk

「はぁ?」

「へ?」

「え?」

3人はそれを聞いて固まった。

「あさ美ちゃんもあさ美ちゃんやん!そりゃ小川さんが来たばかりで寂しがっとるのは分かるけど・・・
 最近全然私の相手をしてくれへんやんか!」

それだけ言うと高橋は黙り込んだ。

「・・・あの・・それで終わり?」
新垣が聞いた。

「そうやけど?・・」
244名無しスター:03/11/17 21:50 ID:kT2D5IEk

「・・・・」
「・・・・」
「・・・プッ!」

「キャハハハハハ!」
「アーハッハッハッハ!!」
「あ、愛ちゃんってかわいー!キャハハハハ・・・」

3人はたまらず大声で笑い出した。

「な、何よみんな。何がおかしいの?私真剣やのに!」
「ご・・ごめんって・・ごめ・・キャハハハ・・・」

紺野は謝ろうとするが、おかしくて言葉が出ない。

「く、苦しい・・・ヒー!」
小川も新垣も腹を抱えて笑い続けた。
245名無しスター:03/11/17 21:52 ID:kT2D5IEk

「みんな・・・ひどい!」
高橋はその場にしゃがんで泣き出してしまった。

「・・な、泣くことないでしょ。愛ちゃん。」
新垣と紺野があわててなだめる。

「ご、ごめんなさい、高橋さん。私、ついあさ美ちゃんに甘えちゃって・・」
小川は高橋の前にしゃがんで言った。

「・・・もういいよ。言いたいことを言ったらスッキリしちゃった・・・
 とにかく仲間なんやから、何でも相談してよね。・・『まこっちゃん』!」

「・・・うん。ありがとう・・『愛ちゃん』・・」

2人は立ち上がって握手をした。
246名無しスター:03/11/17 21:54 ID:79pAwU62

「これでみんな仲間だよね。」
紺野が2人の手の上にポンと手を置いた。新垣も紺野に促され、遅れてその上に手を置いた。

4人はお互い手をつないだまま顔を見つめあう。

「これからは4人仲良く一緒に・・」
「頑張って・・いきまっ・・・」

「しょい!」

4人で「気合い」を入れた。
中澤家で出陣前によく行う儀式だった。

「・・じゃあ、早速なんだけど。みんな力を貸して。」
「わかってるよ。あの孤児院でしょ?」

「よし行こう!」
3人は元気よく駆け出した。

新垣だけは少し元気がない様子だった。