仮面ライダーののBLACK

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216名無しスター

第二章 「あさ美」

「くそっ!」

スカイライダーは逃げ回るのがやっとだった。
ミノタウルスの拳の破壊力は凄まじく、パンチ一発で周りの大木が2、3本も吹っ飛ぶ。
おまけに時々角のミサイルが飛んでくる。

「どうした、逃げているだけか」
ミノタウルスが叫ぶ。しかしスカイライダーは逃げながらもチャンスを狙っていた。

ミノタウルスの角は2本。生え変わるのには少し時間がかかる。
今、残りの一本が発射され、いったん角が無くなった。

「チャンス!」
スカイライダーは距離を詰めた。ギリギリでミノタウルスのパンチをかわし、その拳にしがみ付いた。
拳を掴んだまま高速で振り回し、一気に放り投げる。

「遠心投げ!」

ミノタウルスは木をなぎ倒しながら転げ回り、岩盤に叩きつけられた。

「今だ!」

スカイライダーはセイリングジャンプで一気に上昇。
そのままミノタウルスに向かって急降下しながらエネルギーを充填。一気に放出した。


「スカーイキーック!」
217名無しスター:03/11/16 17:09 ID:BOnEmIZF
ガシィ!!

「グゥゥ・・・」

「そんな・・・」
必殺のスカイキックが、ミノタウルスの拳の盾に受け止められてしまった。

「・・・ククク。なかなかやるな。だがその程度では俺は倒せんぞ!」
そう言いながらミノタウルスはパンチを放つ。

バキィ!

「うわっ!!」
一瞬放心していたスカイライダーは、パンチを避けきれずそのままふっ飛ばされた。

「くそっ!スカイキックが通用しない?・・」
立ち上がりながら見ると、ミノタウルスの方もよろよろと立ち上がって来たところだった。
さすがに向こうもノーダメージではない。

「・・・ガアアアア!」
雄叫びを上げスカイライダーの方に向かって来る。

「セイッ!・・・シュー・・・・」
スカイライダーは空手の型と呼吸法で気を溜める。

「・・押忍ッ!」
両腕で十字を切って気合いを入れた。


「うあああああ!」

スカイライダーも大声を上げ、ミノタウルスに向かって行った。
218名無しスター:03/11/16 17:11 ID:BOnEmIZF

バキィ!

「うわっ!」
「グアァ!」

両者のパンチがカウンターで入る。
ミノタウルスとスカイライダーはお互い後方に吹っ飛んだ。

「グググ・・・」
「ううう・・・」

「なんてタフな奴だ・・・おまけにだんだん強くなって・・」
少しだけ早くミノタウルスが立ち上がり。よろよろとスカイライダーに歩み寄る。

「まだまだぁ!」
それを見てスカイライダーも立ち上がろうとする。
219名無しスター:03/11/16 17:12 ID:BOnEmIZF
ビシィ!

その時、2人の間に割って入るように衝撃音がした。
鞭のようなものが地面を叩いた音だ。

2人の動きが止まった。

「あさ美ちゃん!」

ライドルロープの音だ。Xライダーだ。

「愛ちゃん!・・・どうしてここに?」
「先輩達は帰って来んし、心配になったで追ってきちゃったんやよ。」

「私も来ちゃった」
後ろから新垣がひょっこり顔を出した。

「ありがとう。2人とも・・・でもこいつは私が」
「わかってるて。手出しはせんよ。でも1個だけアドバイスさせて」

「アドバイス?」
「安倍さんとの特訓を思い出して。」

「特訓?・・・」
220名無しスター:03/11/16 17:15 ID:BOnEmIZF
この1ヶ月の間、紺野は安倍の特訓を受けていた。
「強くなりたい」というのもあったが、先に高橋がパワーアップを果たしたことで少し焦っていたのかも知れない。

最初は飯田に特訓を願い出た。

「飯田さん。私に必殺技を教えて下さい!」
「紺野、間違ってるぞ。」

飯田は冷たくそう言った。
飯田が言うには、ライダーの体質はそれぞれ全く違う。
自分の必殺技は自分で見つけなければならない・・・ということだった。

「正直、どうやったらいいか私にもわからないんだけどね・・ただ私の場合は、
 最初のうちは必要な時に体が勝手に技を出したんだけど・・」

飯田の言うことは分かるような分からないような・・・次に紺野は安倍に頼んでみた。
安倍は紺野の特訓に付き合ってくれた。

だが安倍も飯田と言うことは同じだった。自分の技は自分で見つける。
そのかわりコツだけは教えてくれた。

「いい?何も考えちゃダメだよ。体の動きたいようにするの」
「どうやるんですか?」

「だからそうやって考えちゃダメなの。頭の中を真っ白にするの!」
「どうやって・・・」

「だからぁ!・・・」


特訓の甲斐も無く紺野は新しい技を見つけることも、パワーアップをすることも出来ないでいた。
221名無しスター:03/11/16 17:20 ID:kL8fZjxd

「何も考えるな・・・・って。今、ここで?」
「そうやで。もう少しやから頑張って!」

Xライダーはそう言って後ろに下がった。

ドーン・・・

その時、山の向こうで爆発音がした。

「今のは・・・そうだ。まこっちゃんがあっちに!」
「私が行く!」

新垣は走って林の中へ消えていった。
222名無しスター:03/11/16 17:22 ID:kL8fZjxd

「何をこそこそ話をしている!・・おまえら二人まとめて相手にしてやってもいいんだぞ。」
ミノタウルスは明らかに強がりながらそう言った。

「安心しろ、お前の相手は私1人だ」

再びミノタウルスと対峙するスカイライダー。
しかし、相手は強敵だ。この相手と何も考えずに闘うなど・・・

「・・これでケリをつけてやる。勝負だ!ライダー!」
ミノタウルスは最後の力を振り絞って向かってきた。

「さああ!来ぉい!」
スカイライダーも精一杯大声を出し、迎え撃つ。

「グオオオオオ!」
「やああああああ!」

お互いノーガードで強打を殴りあう。
巨大な拳で殴られ、筋肉が、骨が軋む。
スカイライダーの体のあちこちから悲鳴があがる。
オーバーヒート気味の動力源は限界に近付く。

苦しい・・・
223名無しスター:03/11/16 17:24 ID:kL8fZjxd

・・・段々と意識が薄れてきた。考えている余裕はない。
頭の中が「真っ白」になって来た。

無意識のうちにパンチやキックが出るようになる。昔習い覚えた空手の技だ。

「あさ美ちゃん・・もうちょっとやで」
Xライダーは何かを待っているようだった。

シュバッ!
突然パンチが鋭くなった。

「グオッ!」
ミノタウルスの顔色が変わる。

さっきまでの空手のパンチとはまるで違うフォーム。
続いて蹴りがでる。

バシイィ!
これもさっきまでとは違う。バネのある蹴りだ。

まるで野生の獣のような。いや、昆虫のような・・・
荒々しくも無駄の無い、しなやかな動き。

とことん自分自身を追い詰めることで頭の中から「紺野」の意識を追い出した。
その結果、スカイライダーの「本能」が目覚めたのである。
224名無しスター:03/11/16 17:27 ID:kL8fZjxd

「やったね。あさ美ちゃん!」

スカイライダーは一気に優勢に立った。
ミノタウルスはサンドバックのように打たれまくり、ついに膝を付いた。
スカイライダーはそれを見るとゆっくりと後ろに下がった。

「どうして?チャンスやのに・・・」
Xライダーは首をかしげる。

「グゥッ・・」
ミノタウルスはこのスキにわずかだがダメージを回復させ、ゆっくりと立ち上がろうとする。

「わかった・・・わかったよ愛ちゃん。安倍さん、そして飯田さん」
スカイライダーは両手を見つめながら全身の感覚を味わっていた。

紺野の意識によって押さえつけられていた細胞が、機械が解放され、狂喜するように躍動している。
「これがスカイライダーの力・・・」

スカイライダーは体の言うがままに、ゆっくりと頭の上で両手をクロスさせた。
クロスした手を戻し今度は左手を大きく回転しはじめた。


「・・・『スカイ』・・・変・身!」


スカイライダーの体が光に包まれた。
225名無しスター:03/11/16 17:31 ID:A57fpmsD

「・・・あさ美ちゃん!」
光の中から再びスカイライダーが現れると、体の色が濃い緑色から明るい黄緑色に変わっていた。

「とぉう!」

セイリングジャンプで一気に上空へ。速い!
今までの半分の時間で上空200mに到達する。

そこから反転し急降下。前方回転を繰り返しながらミノタウルスに迫る!


「 大 回 転 ス カ イ キ ー ッ ク !」


「・・・・チッ!・・」

ドガアァァァ!

ミノタウルスに直撃。致命傷だった。
226名無しスター:03/11/16 17:33 ID:A57fpmsD

スカイライダーは倒れたミノタウルスの横に立ち、上から見下ろしていた。
ミノタウルスはもう虫の息だ。

「・・・ありがとう。おかげで強くなれた。礼を言うよ。」
そう言うと背を向けてXライダーの方に歩き出した。

「・・・・フン・・」

ミノタウルスはそう小さくつぶやくと力尽き、爆発の炎に包まれた。
227名無しスター:03/11/16 17:35 ID:A57fpmsD

「愛ちゃん!」
「あさ美ちゃん!」

2人は走りより、抱き合った。

「愛ちゃん、ありがとう!おかげで強くなれたよ。」
「いや、私もあそこまでとは思わんかった・・・すごいよあさ美ちゃん!」

しばらく手を取り合い喜び合っていたが、スカイライダーは大事なことを思い出した。

「・・・そうだ!まこっちゃんが!」
そう言ってスカイライダーは林の中へ駆け出した。

Xライダーはその背中を見送った後、ちょっと遅れて走り出した。