仮面ライダーののBLACK

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173ナナシマン
「圭ちゃん、出た!ゼティマが出た!!」

 圭に届けとばかりに叫びながら裕子は走る。モグラ獣人が縛られていたあの場所
まではそう遠くはなく、ちょっとひとっ走りしたところで彼女は再び圭のところに
たどり着いた。息を切らせて周囲を窺うと、圭はそこらに生えている雑草と思しき
植物を摘んで、身に着けたベルト「コンドラー」の中央に配置されたすりこ木で
すり潰していた。だが、そんな彼女も裕子の声を聞き、作業の手を止める。

 「ゼティマがどうしたの?」

 「あの赤い女達が現れたんよ。そんで、今モグラと闘ってる!」

 「モグラが?!」

 「遅れは取らんって言うてたけど、なんぼ獣人でも病み上がりには勝ち目ないよ」

 「・・・ちょっとあたし行って来る。モグラを助けなきゃ」

 圭はモグラ獣人のために、我々文明圏の人間には雑草としか思えない草の中から
薬効を持つ植物を集め、薬を作っていたのだ。しかし、そのモグラ獣人は弱った
身体を押して赤ジューシャ達と戦っている。ソレを知るや、圭はすりこ木を再び
ベルトのバックルにセットしてすばやく立ち上がると、モグラ獣人を救出するべく
戦いの舞台へと駆けていった。
174ナナシマン:03/11/12 21:27 ID:4SGRi/4f
 一方、赤ジューシャ部隊とモグラ獣人の戦いは一進一退の攻防の末、モグラ獣人
が数で勝る赤ジューシャ達をかろうじて撃退していた。精根尽き果てたその背中越し
に、這々の体で敗走する赤ジューシャたちの姿が見えた時、モグラ獣人は戦いの
終わりを悟った。

 「チュチュ〜。ちょっと手こずっちまったい・・・」

膝を折り、そのまま前のめりに倒れこむモグラ獣人。赤ジューシャを撃退しなければ
自分が裏切り者として処刑されてしまう。そして何より、自分を助けてくれた圭と
裕子に恩返しがしたかった。避けられない戦いだったが、彼は辛くも勝利を収めた。
ひとまず二人の危機を回避できたことで、彼にしてみれば二人に恩を返すことが出来た
格好になるはずだった。ところがである。

 「モグラ、貴様天日干しにされてバテたか?」

何者かの声が獣人の耳にとどく。疲労でおぼろげな意識にも、それは何者の声なのかが
はっきり認識できた。

 「お前は・・・カニ獣人?!」

 「その通り。アマゾンに切り落とされた、両腕の礼を言いたくてな」

 暗緑色の巨大なカニの怪物がモグラ獣人の眼前に立ちはだかる。カニ獣人は、移植に
よって手に入れた鎌の両腕を打ち振い、弱ったモグラ獣人に襲いかかった。

 「まずはお前から片付けてやるぞ、モグラ獣人!」

そう言うや、いきなりカニ獣人は立ち上がれないモグラ獣人を足蹴にする。カニ獣人の
強襲を避けるだけで精一杯のモグラ獣人は、殴られてもけられてもただ転がるだけしか
出来ない。