「お前がアマゾンか。おかげで手間が省けたぞ」
目の前にいるのがアマゾンだとすれば、二つの腕輪を奪う機会は今をおいて他は
無い。モグラ獣人は勇んで両腕を振上げて圭と取っ組み合いに持ち込む。ショベル
状の爪はその切っ先にギザギザがついていて、それはアマゾンのカッターのように
相手を傷つけることも可能である。組み合ったその時に食い込む爪が、あっという
間に圭の肌に赤い筋を引く。
「うあああっ!」
圭も負けじと叫び声を挙げ、モグラ獣人の毛だらけの肌に臆することなく喰らい
つく。獣人の体毛は瞬く間に黄色い雫を帯び、噛みつかれたモグラ獣人も苦痛に
呻きながら更に圭の身体に爪で一撃を加える。そして、両者痛み分けとなった
ところで二人は互いに大きく間合いを離した。
「お前の両腕にある二つの腕輪は、伝説の超エネルギーの源。ゼティマの
ために無くてはならないものだ」
「何ですって?!」
獣人の言葉に圭の目が大きく見開かれ、獲物を狙う猛禽獣のような鋭い眼光が
相手を射抜く。敵の狙いが二つの腕輪にあることは、村を襲った連中の言葉から
彼女なりに理解していた。しかし、腕輪に隠された秘密の一端が獣人の口から
明らかになった以上、この腕輪を決して渡すわけにはいかない。
「だったらなおさら渡せないね!命に代えても、腕輪は守り抜く!!」
そう言うと圭は一度腕を交差させると再び雄たけびと共に両手を広げ天に叫ぶ。
「アァァァマァァァゾォォォォォン!!」
真っ赤な輝きを宿した鋭いまなざしに、みなぎる闘志が炎と燃える。そして、
まばゆい光と共に姿を現したのは大自然が生んだ正義の戦士、アマゾンライダー。
悪の野望を打ち砕くため、アマゾンは鋭い跳躍と共に獣人の機先を制すべく
飛び掛っていく。
「ケェェェーッ!!」
「ギャッ!」
鋭い爪がモグラ獣人の顔を切り裂く。飛び散る黄色い鮮血をも省みずアマゾンは
なおも更なる攻撃を加えていく。後ろ回し蹴りを鼻っ面にお見舞いすると、
たまらずモグラ獣人は鼻を押さえて後ずさる。
「うへぇ、こりゃかなわん」
文字通り出鼻をくじかれて戦意を喪失したモグラ獣人、たまらずひざまずくと
そのまま物凄い勢いで土を掘り始めた。地中に逃げるつもりなのだ。そして
あっという間に土の中に姿を隠し、まんまと遁走したのである。
しかし、この光景を物陰から見ていた者たちがいた。先ほど圭に発見されて一度は
姿を隠した赤ジューシャの二人組と新たに加わった赤ジューシャの一団、そして東京
に到着したカニ獣人だ。悪の尖兵たちは大勢決した戦いに乱入し、数に任せて一気に
アマゾンを葬り去ろうという算段だ。
「お前達は!!」
「モグラの奴はとんずらしたけど、あたし達は逃がしゃしないからね!!」
アマゾンの怒りのまなざしが敵を捉える。カニ獣人を従えた赤ジューシャたちも
数の上では有利だとばかりに、奇声を挙げながらじりじりとアマゾンににじり寄る。
そして軍団を率いるのは巨大なカニの怪物、カニ獣人だ。
「俺はモグラの様にはいかんぞ。者ども、かかれ!!」