その数時間後。舞台は変わっていつもの公園。静かなこの場所に、ちょっとした
異変が起きていた。
はじめにそれに気がついたのは一人のサラリーマンだった。彼が営業先から帰る
途中に立ち寄ったその公園で、目撃したのは何者かによって掘られた穴だった。
穴、というだけなら何と言うこともなかったのだろうが、それは人間の常識の範疇
では考えられない、大きな生き物によって掘られたものとしか思えないものだった。
この異変はちょっとした騒動となったが、当然のごとくそれを看過できない者達が
いた。騒動が一旦鎮静化したところで、動き出したのはもちろんあの少女達だ。
「これね・・・話題の穴は」
見慣れた公園の地面に突如開いた奇妙な穴。その前に立つ一人の女性。彼女の大きく
見開かれた二つの目が、この怪しげな穴を捉えていた。
「こんな事をする奴は・・・あいつらしかいない」
眼光鋭い目が周囲を見回し、射る様な視線が付近一帯を巡る。と、その時彼女〜圭は
ただならぬ気配を感じ、植え込みのほうへと視線を向けた。すると案の定、覆面を
した二人の女が植え込みに隠れてこちらを窺っているのが見て取れた。しかし、その時
怪しい女達も圭の視線に気づき、すぐさま姿を消す。
(あいつら・・・十面鬼の手下だ)
一瞬で姿を消した怪しい女達が、十面鬼の放った赤ジューシャであることを見抜くと
圭はその後を追って植え込みのほうへと向かった。だが次の瞬間、植え込みを目指す
彼女の眼前に謎の土煙が吹き上がる。
「うわっ!何?!」
突然の土煙に視界を奪われたじろぐ圭に対して、謎の敵が襲い掛かる。地中から突如
姿を現すと、いきなり地中から伸びた手が彼女の足を掴む。
「くっ・・・誰っ!?」
しかし、謎の敵は圭が自分の正体を知る暇さえ与えない。そのまま圭を地中に引きずり
込もうと掴んだ手に力を込める。しかし圭は敵の機先を制して自分の足首を掴む手を
力いっぱい踏みつけ、この刺客からの攻撃を避ける。圭の捕獲に失敗したと悟ると、
謎の敵はついにその姿をあらわにした。圭の眼の前に現れたのは、赤茶色の体毛に
覆われた大きなモグラの化け物。そう、十面鬼によって送り込まれたあのモグラ獣人だ。
「チュチュ〜!俺はモグラ獣人。俺の姿を見た奴は生かしてはおかんぞ!」
「モグラ獣人?!さてはお前、あいつらの仲間だな!!」
地上にその姿を現したモグラ獣人に対し、姿勢を低く構えて臨戦態勢をとる圭。すでに
彼女の体内には野生の力がみなぎっている。一方のモグラ獣人もまた、自分の姿を目撃
した人間を生かしてはおかぬと、シャベル状に発達した手を突きつけて圭を威嚇する。
平和な公園を舞台に対峙する両者。とその時、両手を大きく広げて獣人を迎え撃つ圭の
姿に、ふと獣人は何かに気がついた。目の前にいる女の両腕にはめられた物が何なのか、
獣人は理解していたからだ。
「それはギギの腕輪とガガの腕輪・・・じゃあお前が?!」
「やっぱりゼティマだったか。そう、私はアマゾン!仮面ライダーアマゾンだ!!」