モーニング娘。の水着写真掲載について

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438書いた人

――― 翌朝

「まぁ・・・昨日は暗くてよく分かんなかったけど、亜依ちゃんホント、綺麗になったわねぇ・・・
うちの希美なんて、相変わらず子どもっぽくってねぇ・・・」
「いやいや、何言うとるんですか・・・ののもめっちゃ綺麗になってますって」
「・・・すっごいデジャヴなんだけどさぁ・・・取り敢えず二人とも、早く食ってくれない?」

至極当然のように、朝食を家族と囲む加護ちゃんの姿があった。
のんちゃんはすこぶる居心地が悪そうに、お味噌汁を啜る。

「ほら、あんたは26にもなって『食う』なんて言うんじゃないの・・・
見てみなさい、さっきから亜依ちゃんずっとよく噛んで食べてるじゃない。
ホントねぇ・・・少しは亜依ちゃんを見習いなさい、って言ってるでしょ?
あさ美ちゃん結婚するっていうのに。あんたは言葉遣い悪いから、いい人も見つかんないのよ」
「いや・・・絶対関係ないでしょ・・・」
「まあまあののもこれで、結構いい人おるんと違いますか?」
「ホントにねぇ・・・そうだったらいいんだけど。
この子、うちでそういう話全然しないから。
亜依ちゃん、いい人いたら、ちょっと希美に紹介してあげてねぇ・・・」
「ハハ・・・探してみますわ」
「・・・ああぁ、もう!! 何で二人とも息ピッタリなのよ!?」
439書いた人:04/02/12 20:06 ID:yZrZwNJh

―――

「いやぁ・・・のののおかん、相変わらず面白いなぁ・・・」
「あいぼん仲良すぎなのよ・・・もういいけどさぁ」

お昼少し前、今日は雑誌の取材でのんちゃんはひとまず事務所へ向かう。
相変わらず空気は冷たいけれど、陽射しが分厚いコートを着ることを許してくれないみたいで。
二人とも身軽な足取りで、人通りの少ない道を並んで歩く。

「取り敢えず、うちはつんくさんに電話してみるから・・・その後・・・そやな。
まこっちゃんのあの場所にでも、花でも持ってってあげるか・・・」

眩しそうに太陽を上目で睨みながら、加護ちゃんは眉を寄せる。
長めの髪が冷たい風に吹かれて、それが掛かって少しのんちゃんはくすぐったそうで。

「・・・ごめんね、ホントはあいぼんも仕事場に一緒に連れてってあげれればいいんだけど」
「まあ、しゃあないな。
うちはもう部外者なんやから・・・ののがうちの事務所に入れないんと一緒や。それに・・・」
「それに?」
440書いた人:04/02/12 20:07 ID:yZrZwNJh

「まこっちゃんのあの交差点、しばらく行ってないしな。
少なくともうちらの10年前では、まこっちゃんは確かに死んでもうてるわけやから、
折角東京来とるんやから手くらい合わせんと・・・それこそ、化けて出られる」
「・・・化けて出たりしないってば・・・」

私がぶうたれたのを聞いて、二人とも声を出して笑った。
つられて私もおかしくなって、思わず笑みが漏れる。
と、加護ちゃんは不意に真面目な顔つきになると、小首を傾げた。

「・・・もしなんなら・・・・・・ホンマ、できたらでええけど、ののも一緒に行くか?」
「・・・うん、そうしたいけどさ。まこっちゃんがこっち来たその日・・・もう5日前か。
その日に行ってるから・・・」

爽やかに笑ったのんちゃんに向けた加護ちゃんの目は、カッと見開かれて。
でもその表情は、驚きのほかに嬉しさを含んだそれで。

「ん・・・そうか・・・行けるようになったんか・・・確か前行ったのって・・・」
「あいぼんに無理やり引っ張って連れてかれた時だよ」
「そやな・・・そうか・・・あそこに自分の意思で・・・
まこっちゃんが中におったこと差っ引いたとしても、行けるようになったんか・・・」

腕を組んで一人でうんうんと頷く様は、とても満足げだった。
441書いた人:04/02/12 20:07 ID:yZrZwNJh

―――

駅で二人は別れると、のんちゃんはそのまま事務所で打ち合わせに入る。
道すがら、『加護ちゃんも連れてってあげたっていいじゃん』って聞いたんだけど、
『大人の事情だよ』と、かわされた。

からかい気味に微笑んだ後教えてくれたのは、辞める時に一悶着あったらしい、ってことだ。
つんくさんが人事不省(?)になっちゃったから、それの後を継げる人がいなくて。
加護ちゃんが辞めるって言うのにも、事務所は辞めるな、の一辺倒だったらしく。

「あいぼん痩せた後さ、恐ろしく人気出たからねぇ・・・そんなタレント、ほっとくわけないでしょ?」

というのは、のんちゃんの言葉。
その笑いに少しシニカルな部分が見えたのは、多分その時ののんちゃん自身と比べてみたからだろう。
442書いた人:04/02/12 20:08 ID:yZrZwNJh

「すっごい皮肉なんだけどさぁ・・・うちらが解散する直前って、多分・・・一番人気が出たときだったんだよね。
あのね一応言っておくけど、まこっちゃんがいなくなったから・・・ってわけじゃないからね。
だからねぇ・・・事務所のほうも必死でさぁ・・・今考えれば、分かんなくもないよ?
でもどんなに頑張ったって、一つにまとめられるわけないじゃん?
それでみんな散り散りになって・・・今も頑張ってる、ってわけよ」
「そっかぁ・・・やっぱり、大変だったんだねぇ」

そこそこ長くかかった打ち合わせの後、不穏当な会話を小声でしながら、廊下を歩いていたその脚が、不意に止まった。
その目線の先には新人さんだろうか、いかにも我侭ですって感じの女の子と、それにひたすら説教を垂れる長身の女性・・・マネージャーだね。
なんつーか・・・デジャヴみたいだなぁ・・・私もあんな風に、怒られたことあったなぁ・・・
と、のんちゃんはにやりと笑うとゆっくりと右手を上げてその二人を指差す。

「頑張ってるのよ・・・あんな風にね」
「?」
443書いた人:04/02/12 20:08 ID:yZrZwNJh

のび太のお母さんみたいにマシンガン説教をしていた人物が、不意にこちらに目を遣ると、パァッと顔中で笑った。
と、叱り付けていた女の子に大声で言う。

「ほら!! 先輩に会ったときは、どうするの?」

女の子はブスッとしながら、それでものんちゃんに軽く頭を下げた。
マネージャーさんの方は、「『おはようございます』は!?」と再び声を荒げる・・・けれど、
目が笑っているから、そんなにマジ切れってわけでもないんだろう。
それでも笑いながら、女の子のやりきれない態度に頭をがしがしと掻いて、妙な苛立ちを表現している・・・
あれ・・・そんなことをやる人っていうと・・・

「エヘヘ・・・よっすぃ〜、相変わらず厳しいね」
「最近の若いヤツはさぁ・・・礼儀とかなってないんだよねぇ・・・」

そう言って『ああ! もう!!』と、妙な咆哮を上げる。
余裕が有るんだか無いんだか分からない、不思議な表情。
短めに揃えた髪の間から見える薄い銀色のピアスに、大人の洒落っ気を感じる。
白い肌の上に、うっすらとだけど年齢を感じさせるものが見えて。

「・・・・・・吉澤・・・さん?」
「ん・・・マネージャーさんやってるのよ」
444書いた人:04/02/12 20:09 ID:yZrZwNJh

その間にも彼女は反抗的な美少女を叱り付けていて。
たださっきまでと違ったのは、なんだか不思議に嬉しそうだったところ。
呆気なく彼女を解放したのは、多分、のんちゃんと話す時間が欲しかったんだろう。

「よっすぃ〜、最近の若いヤツは・・・とか言うと、もうおばちゃんだよ」
「・・・そうなんだけどさぁ・・・急にあの子も掛け持ちにされちゃってねぇ。
どうしてもごっちんと比べちゃってダメだ」
「ごっちんの方は忙しいの?」
「まあ・・・ね。でも今は舞台メインだから、お稽古以外はそんなに忙殺される、ってほどじゃないからさ。
だから私が放り込まれたんだろうね」

二人で肩を並べながらまっすぐな廊下を歩く。
時折のんちゃんが見上げるその視線には、いつもニコニコと笑っている吉澤さんの唇があった。
話題はやっぱり明後日のあさ美ちゃんの式のことで。
二人が話している間は、のんちゃんの思考を混乱させないように、極力言葉を出さない。
吉澤さんは・・・今、後藤さんのマネージャーとかやってるってことかな・・・
芸能界、辞めたのかぁ。少し意外で、残念だった。
そしてそれを、伝えられないことも。
エレベータについたところで、二人は立ち止まる。
445書いた人:04/02/12 20:09 ID:yZrZwNJh

「紺野も驚くだろうなぁ。私みたいなのが、マネージャーとかやってるんだもん」
「でもごっちんは、『よっすぃ〜くらいの感覚の人と一緒の方がやりやすい』って言ってたよ」
「まあ、あたしら両方適当だからね」

軽やかなチャイム音とともに、エレベータの扉が開く。
すぐに足を踏み出したのんちゃんが、不意に振り向いた。
吉澤さんは、外から扉を手で抑えて、やっぱりにっこり笑っていて。

「私、まだ打ち合わせあるからさ。そんじゃ・・・明後日、また」
「あ、ゴメン」

その押さえている手を見るのんちゃんの視線が、少し悲しげに見えた。
それに気付いたのか、吉澤さんは歯を食いしばったまま少し苦笑いをして。

「あのね・・・別にマネージャーだから、こんなことしてるんじゃないからね。
なんつーのかなぁ・・・ダンディズム?」
「よっすぃ〜、女じゃん」
「けどね」
446書いた人:04/02/12 20:10 ID:yZrZwNJh

静かに閉まる扉の向こうで、吉澤さんがニコニコと手を振る。
それに片手を上げて応えながら、のんちゃんはぎこちなく笑った。
三半規管に堪える感覚の後、ゆっくりと減っていく回数表示を見上げながら呟く。

「よっすぃ〜も・・・だいぶ大変だった見たいだけどね。
私には年下だってのもあったんだろうけど、微塵もそんなところ見せなかった」
「でもさ・・・なんだかすっごく頼り甲斐があったよ!」
「ん・・・・・・多分、あの人の場合は強さだったんだよ。
私がまこっちゃんのことを無理やり避け続けてたり、
あいぼんが明るさで弾き飛ばしてたりしてたみたいに。
勿論、梨華ちゃんみたいにまっすぐ向き合ってる人もいたけどさ。
現実に向き合うには、よっすぃ〜には強さが必要だったんだと・・・・・・思うよ?
まあ、逃げちゃってた私が言うことじゃないか」

喉が少し渇いたのは、真冬の暖房のせいだけじゃないだろう。
大丈夫、この10年間を考えて、今はカラカラに喉が渇くとしても。
私は分かっているから、大丈夫だよ。
あなたはちっとも逃げてなんかいないから。

静かに下っていくエレベーターの中で私たちは始終無言だったけど。
たった5日しか時間を一緒に過ごしていない私が分かったんだもん、
加護ちゃんも、石川さんも吉澤さんも、近くにいないあさ美ちゃんだって・・・
きっと分かってるんだと思う。
447書いた人:04/02/12 20:12 ID:yZrZwNJh

事務所のビルを出たところで、空を見上げてのんちゃんは背伸びをした。
お昼前には暖められていた空気も、今は肺に入ると少し冷たかった。

「・・・さって・・・それじゃ、あいぼんに電話でもしてあげるかな」
「いや、さっきから言おうと思ってたんだけどさ、携帯の電源、ずっと切りっぱなしだよ。
打ち合わせ始まるときに、切ったんじゃなかった?」
「・・・マジで?」

偉そうな態度を一変して、慌てて形態を取り出すと電源をつける。

「うわぁ・・・あいぼんからのメールだけで15件来てるんだけど・・・
ストーカーじゃないんだからさぁ・・・」

ぶつぶつと呟きながらも、どこか笑いながら電話をかける。

「どうしよっか・・・あいぼん、スンスン泣いてたら・・・」
「のんちゃんじゃないんだから、そんなこと無いでしょ」
「偉くなったもんだねぇ・・・まこっちゃん」

1コールですぐに電話が繋がると、どうせ冷やかしの一言でも言おうと思ったんだろう、
のんちゃんがブレスをした・・・けれど。
その呼吸は飲み込んだままになった。
私だって、多分おんなじ反応だったと思う。

「・・・・・・のの!! 今すぐ・・・来てや!
つんくさんが電話に・・・・・・出た!!!」