店を出てしばらく歩くと小さな公園があった。
『あそこに座ろうか。』
公園の中に2つ並んでいるブランコ。もう久しく乗ってないな・・・・・
乗ってから軽く揺れてみる。“キィ、キィ”と、独特の音が夜の公園にいやに大きく響く。
「ブランコってこんなに小さかったっけ・・・」
ふとつぶやくと、それに反応するかのように
『あ、あのね、あさ美ちゃん・・・・・』
「ん、な〜に?」
『大事な話ってのはね・・・・・あの・・・その・・・私、好きな人がいるんだ!』
「好きな人?一体誰なの?」
なんだ〜、恋の話か。私に怒ってるんじゃなかったんだ〜。
でも、他人の恋といえども軽々しく考えちゃいけない。
私たちは一応芸能人なんだからそれが原因でスキャンダルに発展、最悪芸能界を引退ということもあるかもしれない。
まぁ、ただ好きな人がいるってだけでここまで考える私もどうかと思うが。
『それがね、ちょっと普通の人じゃないんだ。』
「普通の人じゃないって、どういうこと?
まさか、芸能人ってこと?」
それならそれで更に危険性が増してしまう。
『うん、まぁ、そういうことになるのかな・・・・・』
どういうことだろう、いまいちはっきりしない。
「一体誰なのよ?はっきり言ってよ!」
つい、語調が荒くなってしまった。愛ちゃん怒っちゃったかな〜。
『あ、あのね!私が好きな人っていうのは・・・・・その〜・ ・ ・ ・ ・ あさ美ちゃんなのっ!!』
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
「えっ!?そそ、それはどういう・・・・・」
『ごめんね、ずっと、黙ってようと思ってた。片想いでいいと思ってた。でも、・・・・・我慢できなくなっちゃった。』
私は、何も言うことができなかった。
『あさ美ちゃん、あさ美ちゃんは、あたしのこと・ ・ ・ ・ ・ 嫌いなの?』
「ちがっ!・・・嫌いとかそういうんじゃなくて、やっぱりほら、女の子同士だし・・・・・ね。」
『女の子同士じゃダメなの!?あたしは、あさ美ちゃんが好き!それの何がいけないの!?』
「そうは、いっても・・・・・やっぱり・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
何を言ってあげればいいのかわからず、口ごもってしまう。
『もういい!あたし、帰るね。ごめんね、あさ美ちゃん。』
そう言っていきなり立ち上がり、走り去る愛ちゃん。目に涙が浮かんでいたのは・・・・・気のせいなのだろうか。