ともかく、紺ちゃんと2人で来いと言われてるわけだし、行かないわけにもいくまい。
とりあえず亜弥ちゃんの家に行ってみなければ・・・・・
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西郷樹:04/01/20 22:55 ID:BB43qPRw
結局、亜弥ちゃんのマネージャーさんの車で連れてきてもらったわけだが、
肝心のマネージャーさんは、
『僕はやっぱり行きませんよ。あれ以上松浦を怒らせたらマズイですので。』
と、言ってマンションの前で終わるまで待っていてくれるらしい。
一体いつまで待つ気なのだろう・・・・・
それ以前に“終わる”かどうかの保証もないのに・・・・・・・・・・
紺ちゃんと2人で車を降りる。
美貴たちがやらなければいけないのは、
“とりあえず亜弥ちゃんの機嫌を直して、お仕事を通常通りにやらせること。”だ。
事務所ではそう言われたものの、果たして美貴にそんなことができるのだろうか。
・・・・・いや、違う。やらなければいけないのだ。
何といったって、この事件の原因は美貴にあるのだから。
紺ちゃんにも責任はなくもないが、それを押しつけるのは無理だろう。
顔を会わせてからほとんど喋ってないし、亜弥ちゃんとの電話で話してからは更に不安そうな表情をしている。
いつのまにか“松浦亜弥”という人の力はものすごいものになっていたらしい。
いや、美貴もそれを感じてはいた。
しかし、亜弥ちゃん自身がそれをふりかざすようなことをしなかったから表に出なかっただけなのだ。
それだけに、今回のことは許せなかったのだろう。
もっとも、そんな亜弥ちゃんがこれほどのことをする原因が美貴だということは、
ひょっとしたら自慢にしていいのかもしれない。
美貴もすごい子と仲良くなっていたもんだと考えながらマンションの中に入る。
セキュリティはしっかりしてるので、亜弥ちゃんにロックを外してもらうしかない。
亜弥ちゃんの部屋番号を押して応答を待っていると、
すぐに、しかし、いかにも不機嫌そうな亜弥ちゃんの声が聞こえてくる。
『はい?』
「あ、美貴だけど・・・・・」
『ああ、今開ける。』
ロックがかかっていた扉が開き、エレベーターに乗り込む。
亜弥ちゃんの部屋がある階のボタンを押し、エレベーターの扉が閉まる。
亜弥ちゃんの部屋は高いところにあるから、エレベーターを使っても結構かかる。
美貴は、思い切って紺ちゃんに話しかけた。
「あの・・・ごめんね、紺ちゃん。」
『ううん、何で美貴ちゃんが謝るの?』
「だって、美貴が原因で紺ちゃんもこんな目に・・・・・」
『・・・・・やっぱりそういう関係だったの?』
「・・・・・・・・・・」
こういうときにはどう言えばいいものなのだろう。
正直に、はい、そうです。とはとても言えない雰囲気だし、
ここで紺ちゃんに希望を持たせることを言えば亜弥ちゃんに何をされるかわからない。
「その、まぁ・・・・・ね。」
『私は美貴ちゃんにとって何だったの!?
ただの遊び道具だったの?私は・・・・・私は・・・・・・・・・・!!』
「ゴメン・・・本当にゴメン。でも、亜弥ちゃんとのことは美貴も真剣なの。」
そう言ったきり、紺ちゃんはうつむいたままになってしまった。
微妙に泣いているようだ。
それでも目的の階にエレベーターがつくと、顔を上げていつもの紺ちゃんの顔に戻っていた。
強いな、この子は。
美貴なんかよりもよっぽど強い子なのかもしれない。
亜弥ちゃんの部屋の前についた。
一瞬ためらってから、インターホンを押す。
少しの間があってから鍵の“ガチャ”という音がする。
入れということなのだろう。