猛忍具娘

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264名無し完璧です!
先発オーダーを忘れるとこだった…(汗)

  早大付札幌     横浜
中|里田 まい  |1|柴田 あゆみ|中
遊|紺野 あさ美...|2|新垣 里沙 .|二
捕|飯田 圭織  |3|矢口 真里 .|遊
投|安倍 なつみ...|4|石川 梨華 .|投
三|藤本 美貴  |5|秋野  鈴  ...|右
右|石黒  彩  ..|6|田中 優希 .|左
一|戸田 鈴音  |7|安達 優子 .|一
二|木村 麻美  |8|中川 早紀 .|三
左|大谷 雅恵  |9|古谷 由美 .|捕
265名無し完璧です!:03/12/26 01:10 ID:JY+Ijhhy
     39.秘球攻略
この時がやってきた。
娘。甲子園頂上決戦、横浜高校対早大付札幌高校。
あと数分でプレイボールというところ、どの選手も緊張の色を隠せずにいた。
大舞台には慣れているはずの安倍も、いつでも強気のプレーを見せる矢口も、その例外ではなかった。
それでも、全員持ち前の精神力とそれぞれの方法を駆使して、なんとか自らの心を少しずつながらコントロールしはじめていた。
そんな中、安倍の投球練習を受けていた飯田は横浜のオーダーに僅かながらの疑問を抱いていた。

「なんで柴ちゃんと矢口を入れ替えたんだろう?」

今日はいつもと違い、斬り込み隊長の矢口を3番に、繋ぎ役の柴ちゃんを1番に置いている。
これの意味することは何なのか、飯田はその意図を掴めずにいた。
他の選手もそれぞれの想いを心の中に抱いていた。
ライバルに負けられない者、リベンジを心に誓う者、ただ頂上を見つめる者……。
そんな色んな想いが交錯する中、ついに時は満ちた。
今、審判が高らかに頂上決戦の試合開始をここにコールした。
266名無し完璧です!:03/12/26 01:12 ID:JY+Ijhhy
早大付のマウンドに立つのは安倍。
横浜の先頭打者の柴田、2番の新垣は安倍の快速球にタイミングが合わず、連続三振に倒れた。
安倍の今日の速球はいつも以上に走っている。
そして打席に3番の矢口が入る。

矢口、全力で行かせてもらうよ……。

安倍は速球二つをファールさせて、一気にツーストライクまで追い込んだ。

さすがなっち、当てるのが精一杯だ……。

矢口の打法は数少ない振り子打法。
天性の野球センスでタイミングを計り、嫌いな球をファールで逃げ、好球だけを打ちに行く。
通算打率7割を成し得ている矢口のこの打法は、相手投手としてはかなり嫌な打法だといえるだろう。
この矢口だけは一筋縄ではいかない。
そう判断した安倍と飯田のサインは見事に一致した。
安倍が投球モーションに入る。
が、オーバースローではない。
体を深く沈ませ、地面スレスレからボールを投じるアンダースロー。
そう、安倍の武器、秘球『TSK』だ。
一度高々と浮くボールが揺れ、消え、そして落ちる。
矢口のバットはことごとく空を斬った。
さすがの矢口でも、安倍のこの秘球は当てることすらできなかった。
267名無し完璧です!:03/12/26 01:14 ID:JY+Ijhhy
その裏の早大付の攻撃。
緊張からか、少し体の動きの硬いマウンド上の石川が第一球を投じた。

『カキーン!』

里田の放った痛烈な打球が、石川の右を通過する。
早くも初安打か。
しかし、ショートの矢口が素早く打球に反応。
それでも、さすがに間に合わないだろうと誰もが思ったその瞬間だった。
矢口はトップスピードのまま足からスライディング。
そして、なんと打球を左足で蹴り落とした。
そこからすぐさまボールを拾い、そのままの体勢で一塁へ送球した。
俊足里田もさすがに間に合うわけもなくワンアウト。
矢口の早速の美技に球場全体が沸いた。

「石川ぁ〜、ちゃんと気合投げて投げろよ!」

矢口の美技とお決まりの喝に気をよくした石川。
その後は危なげなく紺野を一塁ゴロ、飯田を三塁フライで初回を三者凡退で終えた。
268名無し完璧です!:03/12/26 01:18 ID:JY+Ijhhy
2回表、横浜の攻撃。
この回は4番の石川からだ。

「安倍さぁ〜ん!」

石川に突然声をかけられて、安倍は驚きを隠せなかった。
そんな事を気にも留めず、石川は言葉を続けた。

「矢口さんに投げたあの球、私にも投げてくださいよ。」

ただのはったりか、それとも何か秘策でもあるのだろうか……。
よくわからないが、石川の顔はとにかく自信に満ち溢れていた。
安倍も飯田も迷っていた。
しかし、石川の次の言葉で踏ん切りがついた。

「まさか逃げませんよね?」

飯田としては、まず『TSK』なら痛手をくらう事はないだろうというのもあった。
しかし、それよりなによりも、安倍のプライドがここで『TSK』を投げないということを許さなかった。
安倍がアンダースローで投げた。
矢口の時と同様、球が浮き、揺れ、消え、そして落ちる。
その瞬間…。

「ハッピーーー!!!」
『グワキィーーーン!!!』

石川がスイングしたと同時に凄まじい打球音だけが球場を支配した。
まったく行方を晦ました打球。
それは突如、バックスクリーンで鈍い金属音を立てて姿を現れた。
一瞬の出来事だった。
石川の目が覚めるような先制弾に誰もが言葉が出なかった。
そんな中、石川はただひとり浮かれモードでベースをゆっくりと一周した。