猛忍具娘

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210名無し完璧です!
     31.ダイヤモンドを駆け抜けろ!
延長戦に突入し、突如雨が降り出してきた。
最初は小雨だったものの、徐々に雨脚が強くなってきた。
それに比例するかのように、回を追うごとに両校の応援団のボルテージもかなり上がってきた。
というのも、道重・藤本両投手が凄まじいまでの奪三振ショーを繰り広げていたからだ。
それも両者投げているのがオール速球というのが、球場全体に異様なムードを醸し出させていた。
そんな中、ついに試合は規定最終回の18回へと入った。
まず、岩国の攻撃。
藤本が今日5度目、数としては23奪三振目となる三者連続三振に斬ってとる。
そして18回裏、早大付の攻撃に入る。
さすがに道重にも疲れが見え始めたようだったが、球速は依然として150km/h前後をキープしていた。
そんな道重が藤本に負けじと9番大谷、1番里田を連続三振に斬ってとり、二死までこぎつけた。
そして2番の紺野が打席に入る。
紺野が打ち取られれば、規定により翌日に再試合という事になる。
211名無し完璧です!:03/12/05 01:29 ID:dWrKp9Hx

「私の後を投げ抜いてくれた藤本さんの為にも、ここは打たなきゃ……。」

狙いは速球一本。
紺野は集中力を高める。
初球、外角低めをファール。
二球目は高めに外れてボール。
三球目は内角低めを見逃しストライクで2−1と追い込まれる。
しかし、その後も三球速球をファールで粘る。
ここまではもちろん、全球速球だ。
そして七球目、速球がど真ん中にきた。
紺野は渾身の力でバットを振り抜く。
鋭い打球音と共に打球は一塁線を破った。
ライトが打球を追う。
しかし、あらかじめ流し打ちに備えてか、かなりセンター寄りに守っていたのでなかなか追いつけない。
そうこうしている内に紺野は二塁を回る。
212名無し完璧です!:03/12/05 01:29 ID:dWrKp9Hx
そしてライトが打球にやっと追いつく。
その時には紺野は悠々三塁へと到達しようとしていた。
コーチャーが紺野を制止する。
が、紺野はスピードを緩める気配がない。
そしてそのまま三塁ベースを蹴ってしまった。
ライトがボールを返球する。
しかし、なんとその先には道重がいた。
道重が自ら返球を受け取り、ホームへと鋭い球を返す。

「やあぁぁぁーーーーー!!!!!」

そう叫びながら、最高速のまま紺野が勢いよく頭から飛び込む。
キャッチャーは道重からの送球をキャッチ、そのまま紺野をタッチしにいく。
紺野はその手を払いのけ、キャッチャーの手が弾かれた。
主審はキャッチャーの手の中のボールの行方を覗き込んだ。
213名無し完璧です!:03/12/05 01:34 ID:dWrKp9Hx
勝負の行方を決める白球は、泥まみれになってキャッチャーの手からこぼれていた。
主審の両手が大きく開く。
その瞬間、紺野は嬉しさのあまり、声にならない声を上げた。
早大付ナインは勢いよくベンチを飛び出し、紺野をもみくちゃにする。
中でもイの一番に紺野の下へと駆けつけたのが他でもない藤本だった。

「紺ちゃ〜〜〜ん、ナイスバッティング!!!」
「やりましたよぉ〜、藤本さぁ〜ん!!!」

紺野と藤本は熱い抱擁を交わした。
この二人の大活躍で、雨の中の激戦を制した早大付が決勝戦へと駒を進めた。
一方試合後、惜しくも敗れてしまった道重の下に亀井と田中がやってきた。

「さゆ、試合見とったばい。いい試合やったとや。」
「惜しかったね、さゆ。本当にお疲れ様。」

二人のこの労いの言葉に感極まってしまった道重は、顔をくしゃくしゃにして二人に思い切り泣き縋った。
二人は道重をそのまま優しく慰めてやる。
そしてその後、三人は近くの焼肉屋へと向かい、夜遅くまで反省会をしたそうな。
そう、あの時にした約束を叶えるために……。