摩天楼に入ると、メロンの部下らしき男達が次々と襲いかかっていた。
吉澤、小川、高橋の三人はこの脅威を払いのけ、ついにメロンのビルへと辿り着いた。
「ハァハァハァ…まったくとんでもねえ所だぜミダラ摩天楼ってのは」
「ほんと、おもしろい所やの。麻琴ちゃん」
「おいおい二人とも。本番はここからだぜ」
自動ドアが開いた。吉澤を先頭に3人は並んでドアをくぐる。
1Fは大きなホールになっていた。そしてその奥に4人の個性的な女が立ち並ぶ。
「なぁ〜んだ。お待ちかねって訳か」
「世界王者がわざわざこんな所までご苦労ですわね。何の御用でしょう?」
「とぼけんなよ!石川梨華って子がここにいるんだろ」
「いるわね」
「返せ」
「お断りね」
「ぶっ飛ばすぞ」
「やれるものなら」
ボス斉藤のその一言で、メロンの4人と吉澤高橋小川の3人、計7人が一斉に構えた!
最初に動いたのは吉澤。物凄い勢いでボス斉藤に殴りかかる。
そこへ横合いからパワー自慢の大谷がぶつかり、二人は組み合ってもつれる。
囲まれた吉澤の手助けにと愛が飛んだ。
大谷を蹴り飛ばそうと足を出した瞬間、その足を別の角度から絡む取るもう一つの足。
愛の蹴りを止めたのは柴田であった。
大谷を弾き飛ばしようやく立ち上がった吉澤を、後ろから斉藤が締め付けてきた。
これだけ密着されると自慢のパンチも使えない。
パワーのある大谷と執拗な斉藤の二人がかりに、吉澤は苦戦していた。
一刻も早く吉澤の手助けにいきたいと考える愛であったが、動けずにいた。
(なんやこいつ…)
目の前に立つ柴田あゆみという女のせいである。
自慢のスピードで振り切ろうとしても、表情一つ変えず付いて来る。
グラウンドに持ち込もうとしても、その類まれなるセンスで弾かれる。
(こいつ…強い)
愛は改めて、向かい合う柴田の顔を見た。
メロンの中でも明らかに頭一つ抜けた実力を秘めている。
これほどの実力者が、どうしてこんな所でくすぶっているのだと思った。
「お仲間がピンチみたいですよ。小川麻琴さん」
「うるせえっ!」
吉澤高橋から少し離れた入口付近で、麻琴は村田と向かい合っていた。
「さて、雑魚はとっとと片付けて、私も世界チャンプ狩りに加わろうかな」
「あ?」
「3対1じゃ、流石の世界チャンプも死亡確定でしょ」
麻琴の目つきが変わった。村田の連打をガードしながら前へ突進する。
自分の事はいい。だけどアニキ分の吉澤を罵倒することだけは許せなかった。
吉澤ばりの右ストレートが村田の顔面を捕えた!
「どっちが雑魚だコラ!」
一気に勝負を決めようと、麻琴は倒れた村田に向かって突進する。
マウントを取りかけたそのとき、村田が驚く様な動きでその隙間をすり抜けた。
「な、なんだぁ」
「失礼。ですがやはり雑魚は貴方の方です」
麻琴は目を見張った。村田の顔にさっきまではなかった異様なマスクが被さっているのだ。
いつの間に被ったのか、気付きもしなかった。
「何の真似だそりゃあ!ふざけてんじゃねえぞ!」
「ふざけてなんていないさ。おっと、私のことはXとでも呼んでくれたまえ」
「エックスゥ?やっぱりふざけてんじゃねえか!」
麻琴はまた突進した。Xは異様な構えでそれを待ち受ける。
「自由の毛がに!」
異様な技であった。しかし麻琴は吹き飛ばされた。
さっきまでとはまるで別人。その言動。その佇まい。全てが異様であった。
麻琴は驚嘆の表情でXを見上げた。
(裏社会で最強最悪と恐れられている…これがメロン)
(やっぱり、こいつらには手を出すべきじゃなかった…)