台本どおりに進行するスレ

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176HN募集中。。。




私は雨の中を歩いた。
雨の中を傘もささずに歩いていると、やっぱり色んな事を思い出した。

家を出たこと。援交のオヤジと、ピュンという良く分からなかった音のこと。
よしこのこと。お母さんとユウキのこと。ファミレスのこと。
ヤグチさんのこと。

そんなことたちを思い出したけど、思っていたほど気分は悪くならなかった。
むしろ、なんだか今までのことが滑稽で明確な繋がりをもって、
頭の中でくねくねうねうねとしながら、私を微笑ませたようだった。

歩きながら声を押し殺してふふっと笑うと、向かいからやって来た人が、
すれ違いざま、あからさまに怪訝そうな様子で私を見つめていた。
顔は見てないがなんとなく雰囲気で分かる。そんなものだ。と私は理解している。
177HN募集中。。。:03/11/18 00:40 ID:MoANhqil

雨足が強まる中で立ち止まって、私は周りを見回した。
たくさんの傘たちは、相変わらず無機質にそこらへんをウロウロしていた。
私はさっきはその無感情さに怒りと孤独を感じたくせに、今度は何も感じなかった。
きっと私もこの一部なんだな、と、ただそれだけ思った。

すると、ふいに虚しくなった。私ももうこのゲームの一部か。
このゲームに徐々に組み込まれつつある自分が、嫌だった。むかついた。悲しかった。

そうして、馬鹿みたいに降り続ける雨の中で、
ただ漠然と雨に打たれているとすべてが馬鹿らしく思えた。

私はポケットに突っ込んであるピストルに手をかけた。なんだか手が震えた。

「あれ?ごっちん?」
178HN募集中。。。:03/11/18 00:41 ID:MoANhqil

聞き慣れた声が聞こえると同時に、肩に手を掛けられて、
私は反射的にピストルから手を離した。そして、慌てて上着の裾をぐいと引っ張った。
なんでそう思ったのか分からないけど、ピストルを、見つかっちゃいけない気がした。

「何焦ってんねん。それよりどしたん?ちょい、こっち向く。」

少し厳しくて、刺があるけど、優しい響きの関西弁は相変わらずだった。
裕ちゃんは、私があっと思うより先に、私の肩を掴むと強引に身体を自分の方に向けさせる。
私の心配に反して、不思議に、あれほど痛かった肩の痛みはいつの間にか引いていた。

私は裕ちゃんの何か言いたそうな顔を見つめる。
サラサラとした金髪。ブルーのコンタクトレンズ。真っ赤な口紅。
そして、どこか怒ってる表情。裕ちゃんは、なんだか怒っていた。

私は、なんで裕ちゃんが怒っているのか分からないけど、
昔裕ちゃんが怒ると、いつもそうしていたようにふにゃっと笑った。
裕ちゃんは私の顔を見ると、固い表情をふわっと崩すと、
髪をかきあげて昔のようにワハハと豪快に笑った。

髪をかきあげた裕ちゃんからは、あの頃と同じ香水の香りがした。
裕ちゃんが娘。を卒業してから匂うことの無かった香水の香りがした。
179HN募集中。。。:03/11/18 00:42 ID:MoANhqil

「ほんまごっちんはお徳やな〜。笑ったら許されるんやから。」

裕ちゃんはまだ笑いながらそう言うと、雨に打たれる私の上に傘を差し出した。
私は笑ったら許される、という言葉に引っかかりを感じたけれど、
雨がぼつぼつと傘の上で踊る音を聞くと、そのこととは関係無しに、
雨ってばやっぱり冷たいんだな、と思った。私はうつむいた。
寒くて、身体がぶるぶる震えて仕方が無かった。

そうして、しばらく傘の下でうつむいたままの私を、
裕ちゃんはさっきとは違うとても優しい目で、見つめていた。

「心配してるんやで。みんな。」

裕ちゃんは震える私の頭を優しく、まるで子供にするように撫でてくれた。
だけど、裕ちゃんが何を言っているのか、私にはまるで分からなかった。
180HN募集中。。。:03/11/18 00:43 ID:MoANhqil

「ごっちんが昨日からおらんくなった!ってな、みんな大騒ぎや。」

「ウチにもヤグチから連絡が来てな。」

「ごっちんの家にも行ってみたんやけど、誰もおらんし、ほんま、心配しとったんやで。」

「やからな、何か悩みとかあって、メンバーに言いにくいようならウチに相談し。」

「ウチならまあごっちんの倍近く生きとるし、今は娘。とは距離があるんやから、」

「深く考えんと、ウチに相談するんやで。」

裕ちゃんは私に語り聞かせるようにゆっくりとした優しい口調でそう言うと、
びしょびしょに濡れた私を、優しく抱きしめてくれた。
裕ちゃんの優しさには悪いが、私はよく分からなくなった。
今はゲームなのか、現実なのか。
なるほど、裕ちゃんの言う事は今が現実だと思えば大方筋が通る。
181HN募集中。。。:03/11/18 00:44 ID:MoANhqil

裕ちゃんは私に語り聞かせるようにゆっくりとした優しい口調でそう言うと、
びしょびしょに濡れた私を、優しく抱きしめてくれた。
裕ちゃんの優しさには悪いが、私はよく分からなくなった。
今はゲームなのか、現実なのか。
なるほど、裕ちゃんの言う事は今が現実だと思えば大方筋が通る。

だけど、それだとなんで家に誰もいないんだろう?
現実の私とゲームの私の区別って一体何なんだろう?
そもそもこの人生ゲームの仕組みはどういうことなんだろう?

疑問はたくさんあったけれど、私の震える身体を何も訊くことなく、
ただ抱きしめてくれる裕ちゃんの暖かさを無粋に返すことなんかできない。
私はやっぱりふにゃっと笑って「うん。」と答えるしかなかった。

私はこの現実めいた胡散臭さ爆発の作り物っぽさに、吐き気がした。

ゲームだろうが、現実だろうが、どうだっていい。私はもう、疲れたんだ。